第120話 コロシアム後半、ヨイコ、ヤスミ、モア、メア、ムルニス。
悪逆非道のダンジョンマスター心得その9
敵も味方も、育てることが大切です。敵が育ってるのを見たことないけど。
全身にオイルを塗ったキキョウは、大きなクルーザーの甲板にベットを作り、そこで日光を浴びている。
クルーザーを操縦するのはコーリー。サハリーはキキョウを大きな団扇で扇ぎ、シェリーはシェイカーを振ってジュースを作っていた。
窪地前半組の中で、そのクルーザーに乗っているのは、アルディエルのみ。
アルディエルは、クルーザーから釣り糸を垂らし、釣った魚をその場で捌いてキキョウに献上している。
ワグナエラは、砂浜にカゴを逆さまに置いて、その上でマジックを披露していた。それなりに好評を博しているようだ。
レンギエルは、バットをゴルフクラブに持ち替え、ゴルフ大会に出場。人数が増えたので、参加者はそこそこおり、かなり盛り上がっていた。
ルイシエラは、先ほどの俺のように、オイルを塗らされている。
塗らせているのはラミエルだ。ただ、お互いニコニコしているので、俺とは違うかもしれない。
無理矢理塗らされ、そしてイタズラされるのは、俺だけのようだった。
「どうして……俺は……、俺はこんなにも敬われないんだ……」
俺は砂浜に膝をつき、項垂れた。自然と、涙が零れ、砂浜に痕をつけていく。
「俺は、ダンジョンマスターなのに。尊厳が……、尊厳が、欲しいです……」
そして、心から振り絞るようにそう呟いた。
波の音が、ザザーンと、俺を慰めるように響いた。
「……えーん……、……えーん……」
「――ん?」
しかし、そんな波の音の中に、誰かの泣いている声が混じっているように聞こえた。気のせいだろうか。
「えーん。えーん」
いや、気のせいではない。どこかで誰かが泣いていた。
その泣き声には、大きな大きな悲しみが込められている。どうやら、俺よりも悲しんでいる者がいるらしい。
侵入者がいない以上、泣いている者がいるのならば、それはすべからくダンジョンモンスターである。ダンジョンマスターとして、その零れる涙を見て見ぬふりすることなどできない。
俺は、すぐ隣で泣いている子の下へ駆け寄って、隣にしゃがみ、優しく声をかけた。
「えーん。えーん」
「どうしたんだいお嬢さん、泣くのはおよし。俺に理由を言ってごらん」
「えーん。あのねー、お腹が空いたのー」
俺が声をかけると、その子は顔を上げて、そう答えた。目には涙が浮かんでいた。余程にひもじい思いをしていたのだろう。
「そうか、お腹が空いたのか。……でも、ごめんな。俺は、何もあげられないんだ」
俺は謝った。あげたい気持ちはある。だが、世の中は、気持ちだけではどうにもならない。
「お嬢さん、あるじ様のPは全部、これから生成する子達のためのものなんだ。だから、使えるPっていうのは、もうないんだ。すまない、食べ物を生成することはでき――」
「あるじ様がぶーっ」
「いたーっ。ニルっ、ニルさんっ、生成するからっ、生成するから、食べないでーっ」
結果、俺はただでさえ足りないPを、さらに減らすことになってしまった。なんてこったい。
俺は、ビーチチェアーやオイルに塗れたマットがあるここに、さらにちゃぶ台を追加した。
そして、その上にご飯を生成していく。
ニルはそれを見るや否や、懐からマイ箸を取り出して食べ始めた。とっても美味しそう。お腹が減っていたんだなあ、そりゃああるじ様と呼ぶ存在をも食べようとするさ。尊敬してないからじゃあない。
「……あれ? なあ、ニルや、さっき焼きそばとか、色々食べてなかったっけ? お腹いっぱいになってるはずじゃない?」
「もぐもぐ、食べてないよー」
「そうか、食べてなかったか」
「うん。もぐもぐ」
「じゃあ、やっぱり、お腹空いてたんだな。俺のことを尊敬してないわけじゃなかったんだな」
「うん。もぐもぐ」
「……あれ? サービスエリアがあるんだから、あそこから食べ物持ってきたら良いだけじゃない? 俺生成する必要ないんじゃない?」
「うん。もぐもぐ」
「……なあ、ニルや。俺のこと、尊敬してるか?」
「尊敬ってなにー、食べれるのー?」
「……」
「冗談だよー。すっごく尊敬してるよー、あるじ様ー。わたしはね、農家さんとか料理人さんとか、食べ物を作る人が、一番えらいって思ってるから」
「そうか、ありがとう。嬉しいよ。ただ俺は、食べ物を作る人ではないけどね」
「もぐもぐもぐ。がつがつがつ。おかわりー」
ちゃぶ台を挟んで向こう側にいるニルが、お茶椀を俺に差し出してきた。はいはい、と俺はそれを受け取り、しゃもじを使って、おひつからご飯をよそっていく。
美味しく見えるよう盛りつけるには、いくつかコツがある。ダンジョンマスターなので、技術が必要なことは習得できないが、知識が反映される部分に関しては問題なく習得できる。俺は白ご飯がふわっと浮かぶかのように盛りつけて、ニルに手渡した。
ニルは、ありがとーと受け取ると、また嬉しそうに白ご飯をかきこんでいく。
なんて幸せそうなんだ。
でもね、ニルや。その幸せは、俺の犠牲の上に成り立ってるんだよ。
1P。2P。3P。4P。ダンジョンのためのPは、ニルのお腹の中にどんどんどんどん、吸い込まれていった。
だが、しかし、その時。
俺の脳裏に電撃が走った。ピキーンと、悪魔のような作戦を閃いてしまったのだ。
力が、欲しいか? と侵入者に対して問いかける、まさにダンジョンマスターらしい作戦をだ。
ニルは今、俺のなけなしのPを使ってご飯を食べている。Pが貴重であることは、ダンジョンモンスターなら誰もが知っているのだから、それを消費することに負い目がないなんてことはあり得ない。申し訳ないと、無意識の中では思っているはずだ。
だからこそ、頼み事をされたなら、聞いてしまう。断ることなどできないに違いない。次に生成するコロシアム後半組の前で、俺に超従順で尊敬した態度をとってくれ、という頼みを、聞かないわけにはいかない。
「くくくく」
俺はニヒルに笑った。
これで、コロシアム後半組からの尊敬は、確定したようなものだ。
なぜなら、このダンジョンにおける最高権力は、初期組の7人が握っている。そんな7人の内の1人に、従順に振舞われ尊敬されているのだ、まず間違いなく、ダンジョンマスターは凄い、さすが、そんな溢れんばかりの尊敬を見せるに違いない。
「ふはははははは」
ニルよ。
俺に従え。
「ニル君。君は知っているかね? ただより高いものはない、という言葉を」
「知らなーい」
「そうか、知らなかったか。いやなに、別にその言葉を知ってる知らないは関係ないさ。実はニルに、お願いがあってね」
「えー、やだー」
「……お願いがあってね」
「いやー」
「ご飯食べたでしょ。尊敬するだけで良いから。ね?」
「いやなのー」
「ほうら、おひつ追加だよー。好きなだけ食べてね」
「わーい。仕方ないなあ、お願い聞いてあげるよー。すっごい尊敬してるよー」
作戦は大成功。
見たかっ、俺の交渉術をっ。
というわけで、コロシアム後半組、5人の生成開始っ。
コロシアムのボスの最大の特徴は、窪地と真逆。
地形や環境に適応する窪地ボスとは違い、コロシアムボスは、地形や環境を変更する。
コロシアムは、屋内で、地形や環境に特別なものは何もない。そしてコロシアムである以上、地形も環境も、その舞台1つである。
そこで10度も戦わなければならないなんて、侵入者からしてみれば、ただただ単純でつまらないものになってしまうに違いない。そもそも、単純な地形ならば、既にミロクの階層がある。ここもそうすると、内容が完全に被る。
決め細やかな俺の性格的に、そんなことをするわけがない。
つまりここは、そうではないのだ。
ボスがその舞台に降り立った瞬間、ギューン、と、舞台がボス仕様に変化する。壁ができたり、床が浮いたり、地形も環境も、何もかもが変わる。
変化後の舞台は、10のボスそれぞれで全く違う上に、干支のような、地下や牧場でもなければ、四獣のような暑い寒い、地下都市や窪地ともまた違う、自然ではありえない地形環境。
それが、コロシアムボスの特徴。
侵入者は、そんなありえない10の環境の中で戦うのだ。
単純さはどこにもなく、とても面白いものとなるだろう。
はてさて、どんな舞台にしようか。
そして、それに合う種族はなんだろうか。それを考えるのは、生成する俺からしても、とても面白い。
まずは、コロシアム最後、60階層から。
別に、階層の順番通りに戦う必要は、コロシアムにはないが、大方は、ここまで9階層のボスを打ち倒してやってくるのだろう。
だから、そんな強者に、相応しい舞台にする。
具体的に言うのなら、色々な苦難を乗り越えて、どんなものがきても大丈夫だと思っているその慢心を、へし折る階層にする、ということだ。
内容は、五感の喪失。
ボスの種族は、五感の内、元々ほとんどがないような、デュラハン。
『 デュラハンソルジャー
ユニーク
性別:女性 ・・・0P
造形:人型 小さな子供 将来は美人さん 笑顔の破壊力 ・・・2000P
性格:興味の移り変わりが激しい 思いこんだら一直線 勉強嫌いで遊びたい 冒険夢見るお年頃 大人扱いされると嬉しい ・・・1000P
特徴:コロシアムのチャンピオン 人気者 小学生 お調子者 真実の欠片 早着替え 鎧換装 地形変動床罠パネル 地形変動パネル入替 地形変動感知無効 環境変動視覚不能 環境変動聴覚不能 環境変動嗅覚不能 環境変動味覚不能 環境変動感覚不能 環境変動直感不能 環境変動ランダム発動 ランダム魔眼 ・・・3400P
適性:学習 HP吸収 MP吸収 ・・・400P
能力値:全能力成長率上昇 ・・・2400P 』
地形変動や環境変動は、かなり高位の能力である。
四獣の元となった種族のように、ただいるだけでその一帯の環境を変えてしまうクラスの魔物につく能力だからだ。ゆえにこれだけたくさんの数の地形変動や環境変動をつけてしまうと、Pが相当高くなってしまう。特徴だけで、1万Pに収まらなくなるくらいに。
しかし、そこにランダム発動をつけ、いずれか1つしか発動させられなくすることで、反対に大幅に安くすることに成功した。
ダンジョンマスターの巧手である。
だが、造形がこんなに高くなった理由は、そんなダンジョンマスターの知能をもってしても分からない。
デュラハンなんて元々人型じゃん。どうして人型をつけただけでこんなに高くなるんだか。いや、人型をつけてもそこまで劇的に高くなったわけじゃあなかったか。どちらかというと、グンと上がったのは笑顔の破壊力をつけた時かな? デュラハンさんは、笑わないのだろうか。
次、59階層。
五感喪失の前哨戦として、無効化の環境。
内容は、魔法攻撃無効。
種族は、物理攻撃が効かない、ガスの魔物。
『 デスエッジフォッグ
ユニーク
性別:女性 ・・・50P
造形:亜人型 しなやかお姉さん 体柔らかい 破顔の破壊力 ・・・800P
性格:サービス精神満点で構いたがり 常識人 年齢より老けて見られることを気にしている 常識人なので大概の人と上手く付き合えるが常識破りは凄く困る ・・・850P
特徴:コロシアムのチャンピオン 女教師 小学校教諭 お色気担当 ショットガンの使い手 速射 歩く火薬庫 地形変動ブロック壁 地形変動魔法吸収 地形変動物理反発 環境変動魔法効果減少 環境変動理効果増大 ランダム魔眼 ・・・4200P
適性:銃術 思考 学習 HP吸収 MP吸収 ・・・900P
能力値:全能力成長率上昇 ・・・2400P 』
銃をメイン武器とした珍しいタイプ。地下都市のキースティーも銃を扱うが、あちらは魔法戦もバンバン行われる場所でのこと。こちらの魔法無効化空間とは、戦い方がまた異なる。一方で上手く戦えたからと言って、もう一方で上手く戦えるとは限らない。
地形変動は、舞台の上にブロックの壁をいくつか出す程度で、変化はそうないが、魔法無効というだけで、侵入者にとっては未知に近い環境になってくれるだろう。
ガスの魔物には物理攻撃が効き難いというのに、魔法が無効だなんて、こんな階層を作るダンジョンマスターは、いい性格をしているねえ。
次は58階層。
魔法無効化があるのなら、物理無効化も存在する。
内容は、物理攻撃無効。
種族は、魔法をメインに使う魔物。
『 マジカルハイウィッチ
ユニーク
性別:女性 ・・・0P
造形:人型 童顔 幼児体型 泣き顔の破壊力 ・・・1000P
性格:何でも拘る拘り派 昔気質 年齢の割には子供っぽく振舞うぶりっ子 ウザさを受け入れてくれる人でないと仲良くなれない ・・・1050P
特徴:コロシアムのチャンピオン 魔女っ子 魔法少女 占い師 マジカルステッキ 派手な変身 派手な地味技 地形変動浮遊ブロック壁 地形変動物理吸収 地形変動魔法反発 環境変動物理効果減少 環境変動魔法効果増大 ランダム魔眼 ・・・4250P
適性:学習 HP吸収 MP吸収 ・・・500P
能力値:全能力成長率上昇 ・・・2400P 』
適性は安く済んだが、特徴が高い。
さすがに、物理攻撃を無効化するのはPがかなりかかってしまうようだ。占い師などの、かなり安い特徴をつけても、元々の生成Pの5倍以上もかかっている。
他のダンジョンにはこれだけ特徴をてんこもりにした魔物は、絶対いないだろうなあ。通りで毎度毎度ぶっとんだ個性の持ち主になるわけだ。
ともかく魔法少女として頑張って欲しい。
57階層。
物理無効化の前なので、物理面を重視した階層にしよう。
内容は、超重力。
種族は、そんな重力にも負けない、強力な魔物。
『 アイアンハイサイクロプス
ユニーク
性別:女性 ・・・0P
造形:亜人型 両眼あり 身長183cm どや顔の破壊力 ・・・1000P
性格:健康オタク 純情おぼこ ノリが暑苦しく、ついてこれない人は健康を損なっていると心配になる ・・・500P
特徴:コロシアムのチャンピオン フィットネストレーナー ヨガインストラクター ジムインストラクター 怪力無双 負荷トレーニング 垂れない胸 地形変動吸引床 地形変動高低差床 環境変動重量増大 環境変動質量増大 環境変動引力床 ランダム魔眼 ・・・4000P
適性:魔力操作 思考 学習 HP吸収 MP吸収 ・・・1200P
能力値:全能力成長率上昇 ・・・2400P 』
強力な重力を発生させる環境変動がなかったため、いくつを組み合わせてみた。
高低差のある地形のため、移動の際には縦の移動を一々行わなければならず、侵入者は重力の重みを知るだろう。
なお、サイクロプスは亜人型にしても、目が1つしかなく、身長が2、3mくらいになるようだったので、両眼と身長183cを追加した。両眼がちょっと高かった。
最後、56階層。
超重力の前なのだから、どんな階層かは決まっている。
内容は、無重力。
種族は、なんかふわふわしたやつ。
『 フリーヘルジュエリーフィッシュ
ユニーク
性別:女性 ・・・0P
造形:人型 大きな目 ダイナマイトボディー 困り顔の破壊力 ・・・700P
性格:他人に全く流されない 言われたことはやる 拘りのあるカメレオン 営業スマイル得意 ・・・950P
特徴:コロシアムのチャンピオン 役者 大女優 スター 衛星周回する盾 紙のような回避力 薔薇の花束 地形変動放出床 地形変動高低差天井 環境変動質量無効 環境変動慣性固定 環境変動反動固定 ランダム魔眼 ・・・4300P
適性:盾術 思考 学習 HP吸収 ・・・850P
能力値:全能力成長率上昇 ・・・2400P 』
質量を無効化するものがあったのでつけてみた。地形変動の放出床と合わされば、無重力状態になり、フワフワと浮かび上がるはずだ。
なお、無重力空間にいる、ということで宇宙を連想し、スターをつけてみたのだが、いかがなものだろうか。シャレが効きすぎているだろうか。変なやつになるのだろうか。
薔薇の花束を貰う人になるんだろうか、抱えた人になるんだろうか、それとも、薔薇をくわえた人になるのだろうか。くわえた人だけにはならないで欲しいなあ。
それはさておき、コロシアム後半5階層の面々の設定が完了した。
どいつもこいつも、それぞれの階層の特徴を最大限活かすような特徴や造形、性格になった。正直、地形変動や環境変動は、やりすぎなくらいつけている。
そのため、狙いの効果は出るだろうが、狙いの効果以上に何かが出そうだ。まあ、それもボスとして必要な力だろうから、万々歳だが。
しかし、コロシアムのボス達は、窪地のボス達と違って、地形や環境に適応しているわけではない。
生成された際につけられた能力は、生まれ持った力と同等の扱いになるため、全く対応できないわけではないと思うが、それでも、特異なコロシアムの舞台には、ボスすらも対策を迫られるに違いない。
あまり効果以上のものが出ると、戦い辛くなり過ぎる気がする。上手い感じに収まってくれることを、切に願う。個性も含めて。
「いやあ、どんな風になるかなあ。怖さ半分、楽しさ半分って感じだな。ごくり」
「わたしは食欲全部って感じだよー。じゅるり」
「前にも言ったけど、じゅるりはやめようね」
「……、――はっ。ぱくりっ?」
「なにを閃いた感出してるんだっ、食べたらダメっ、ダメよっ」
俺はニルに一生懸命説明し、いよいよ生成を行う。
『これで生成を開始します。よろしいですか?』
「生成っ」
俺がそう言った瞬間、現れたのは5つの光。
「ドキドキするー」
「ねっ。ぺこぺこするねー」
ちなみに、説明は失敗している。
黒と緑を合わせたような、光沢のある靄。これが大人になりたい幼女。
淡い黄緑色のガス状の靄。これが女教師。
薄い青色の布のような靄。これが魔法少女。
黄みを帯びた白色の靄。これが健康オタク。
赤と青で半分に分かれた、フワフワした靄。これが大女優。
5つの靄からは、次々と美女達が現れた。
いや、その内2人は随分小さい。幼女だ。
「デュラハンソルジャーの君が、ヨイコ」
「うむ承ったのだ、御門様や。妾の名はヨイコである、コロシアムのことは全て妾に任せておくのだっ。なーっはっはっはっはっは」
緑がかった黒い短い髪を、ツインテールにまとめた美幼女、ヨイコは高らかに笑った。
三期組の中で敬語を使わない子は初かな? しかし全く嫌味はない。やはり小さな子はこうでなければ。……あ、でも大人にもよしなにとか言われてたな、まあ良いや。
「デスエッジフォッグの君が、ヤスミ」
「拝命ありがとうございます御門様。また、ヨイコ様の無礼な態度をお詫び致します。どうぞ不躾な子供とお笑い頂ければ幸いです」
淡い黄緑色の髪を長く伸ばしたヤスミは、挨拶と同時に、ヨイコの態度について謝ってきた。
「いやいや、全然気にしないよ。可愛いもんじゃないか」
「ありがとうございます。御門様の寛大なお心に、精一杯の感謝を。ヨイコ様、挨拶は礼儀正しく。これはどこでも基本ですよ」
ヤスミはヨイコの保護者的な立ち位置なのかな? 様付けしてるけど。
「ヤスミっ、妾を子供扱いするなっ。妾は大人なのだっ、大人のレディなのだっ」
「大人のレディは、きちんとご挨拶できると思いますけど? 私みたいに、ね?」
「うううー。御門様や、よろしくお願いしますなのだ」
「あ、いえ、こちらこそよろしくお願いします」
ヨイコはどやっと顔をヤスミに向けると、ヤスミは飛びっきりの破顔でヨイコを撫で回した。するとヨイコも飛びっきりの笑顔になる。
いやいや、仲が良さそうでなによりです。
「続いて。マジカルハイウィッチの君が、モア」
「わっかりましたあ御門様。モアはいっぱい、いーっぱい頑張らせてもらいまーす」
もう1人の幼女、青い内巻きの髪の毛のモアは、キャピキャピしながら返事をした。この子もまた若いなあ、本当にキャピキャピしてるよ。……キャピキャピ?
「いやあ、本当に若い子って良いわあ、ピュアッピュアねっ。眩しいっ、目があ、目がああー。――はっ、同じ空気吸ってるだけであーっしも若返るっ? ならもっと吸っとこ。スーハー、スーハーって、そんなわけないんだけどーっ」
違うな、キャピキャピは死語。この子は多分、おばさんだ。見た目は小学生だが、間違いなく30歳を越えている。
ロリババアってことか……。
「次、アイアンハイサイクロプスの君が、メア」
「承りました御門様。これからの自分の活躍、楽しみにしておいて下さい」
黄みがかった白い髪のメアは、真面目な表情で俺にそう言ってくれた。なんて頼もしい、お言葉に甘えて楽しみにさせてもらおう。
「必ずや、ヨガをこの異世界でも流行らせてみせます」
ただ、俺の思惑とは少し違う頑張りのようだが。
「最後、フリーヘルジュエリーフィッシュの君が、ムルニス」
「拝命、承りました御門様。この身に余る光栄にございます。命の限りお尽くしさせていただきとうございます。わてらのシマにのこのこ乗り込んできた無作法者共のタマぁ、しかと献上してみせますゆえ。どうぞ、死が2人を分かつまで、よろしゅうお願いします」
センターで赤い髪と青い髪に分かれるミドルヘアーのムルニスは、頭を下げてそう誓った。なんて頼もしい。
ただ、なんでだろう。任侠的な感じを受けるんだけど。
「薔薇は……、どこに?」
「美しい花には棘がある。そういうことやさかい、お気をつけ頂きとう存じます」
なるほど……。やはり俺の思惑とは、少し違うようだった。
女優じゃなかったの? スターってそんな感じなの? どちらかと言えば、相手がお星様になっちゃうぜ?
「「「「「ニル様。コロシアム前半階層守護者、ただいま着任致しました。まずは挨拶が遅れましたことをお詫び致します。王としての役を担いましたが、力不足は百も承知しております。これよりニル様の手となり足となり、いつの日か役を全うできるよう、励む所存です。どうぞよろしくお願い致します」」」」なのだ」
「頑張ってねー」
俺の疑問を他所に、5人の階層守護者達は跪き、ニルへの挨拶を済ませた。
その挨拶は、やはり俺への挨拶より随分恭しかった。どう考えても、俺への尊敬よりもニルへの尊敬の方が上回っている。いつも通り。
だがしかし、今回は秘策がある。
俺は疑問を一旦捨て置き、その溢れんばかりの尊敬を俺に向ける秘策を決行した。
「ニル、ニル、今だ。今、言うんだ」
俺はコソっとニルに耳打ちする。
「俺を尊敬していると言うんだ。さりげなくな」
「分かったー」
すると、ニルもまたコソっと耳打ちして答えてきた。
作戦開始だっ。
「んー、尊敬してるなー。わたしはあるじ様のこと、尊敬してるなー」
「ほ、本当かい? ニル。俺のことを、ニルは、尊敬しているというのかい? こりゃあ、驚きだー」
「凄く尊敬してるよー。わたしがあるじ様のことを尊敬してないはずないでしょー」
「なんてこったい。はははー。ところで、ニルは一体、俺のどういうところを尊敬しているんだい?」
「尊敬しているところー? んんー、3つあるよー」
作戦は順調だっ。
「なんだって? 3つも? こりゃあ1本とられたぜ。その3つってのを、誰にも言わないから、教えてくれないかい? みんな、メモの準備は良いかな?」
「あるじ様の良いところはー。1つ、美味しい。2つ、食べ物をくれる。3つ、美味しい。だよー」
作戦失敗だっ。
「じゅるり」
「じゅるりを俺に向けるんじゃないっ。早く、早くお小遣いを渡すから、みんな、こっちに来るんだっ」
「あるじ様がぶーっ」
「あああああー」
俺はニルにもぐもぐされながら、あらあら、という生暖かい目をした5人にお小遣いを渡していった。
『 名前:ヨイコ
種別:ネームドモンスター
種族:デュラハンソルジャー
性別:女
人間換算年齢:10
Lv:0
人間換算ステータスLv:126
職業:コロシアムのチャンピオン
称号:消遊の闘姫
固有能力:闘技女王 ・闘技場内において全ての行動に補正。闘技場外での戦闘行動において全てに補正。
:十感喪失 ・支配領域内では視覚聴覚嗅覚味覚感覚勘覚、生覚魔覚魂覚夢覚がランダムで喪失する。
:カタチアルモノ ・身体の欠損を無効化し、生命力と魔力の自動回復量を上昇する。
:運命の扉 ・選択においてランダムで出現し、開けば運命が確定する。
:全力の魔眼 ・左右、視界内の対象は全力を発揮する。
種族特性:首無しの鎧 ・物理魔法ダメージ減少、衝撃減少。
:首無しの武器 ・物理魔法ダメージ上昇、衝撃上昇。
:騎馬術 ・生物無生物問わず乗り物を乗りこなす。
特殊技能:エネルギードレイン ・生命力と魔力を干渉するたびに吸収する。
:フレイルギャビット ・攻撃の衝撃を上昇させるが命中した対象を移動させない。
:インフィニットノート ・学習すればした分だけ効率良く学べる。
存在コスト:2400
再生P:10000P 』
「ありがとうなのだっ。行くぞーヤスミー、遊ぶのだーっ。ヘルメスはどこだーっ、パラソルを持つのだーっ」
髪色とは違う、緑に黒が混じったような左右の瞳のヨイこは、お小遣いを受け取った瞬間、駆けだした。猛ダッシュだ。
砂浜でそんなダッシュしちゃいかんよ。近くにいる人が、大量の砂を被ることになるからね。
『 名前:ヤスミ
種別:ネームドモンスター
種族:デスエッジフォッグ
性別:女
人間換算年齢:23
Lv:0
人間換算ステータスLv:119
職業:コロシアムのチャンピオン
称号:散消の闘姫
固有能力:闘技女王 ・闘技場内において全ての行動に補正。闘技場外での戦闘行動において全てに補正。
:魔法無効の物理空間 ・支配領域内の魔法攻撃や魔法干渉を無力化し、物理攻撃や物理干渉を強大にする。
:節度なき戦線 ・対象が自身の許容能力を越える場合、自身を強化する。
:凡庸の魔眼 ・左、視界内の対象の固有能力を封じる。
種族特性:煙の体 ・物理攻撃ダメージを減少する。
:刃煙の傷 ・自身から染み出る香りを吸った対象を、対応する香りの傷を与える。
:攪拌する身体 ・攻撃による衝撃やダメージを減少し、再生を容易にする。
特殊技能:エネルギードレイン ・生命力と魔力を干渉するたびに吸収する。
:ブラッドサーカス ・無差別に銃撃を与える。
:フルポテンシャル ・ステータスを上昇させる。
存在コスト:2400
再生P:10000P 』
「ありがとうございます御門様。大切に使います。しかしヨイコ様がまたしてもご迷惑を……。叱っておきますので、どうか寛大な処置を。お待ち下さいヨイコ様、海に入る前に準備運動をしないといけませんよ。それにヘルメスはまだ生成されておりません。もうちょっと待ってあげて下さい」
髪色と同じ淡い黄緑色の右の瞳と、髪色とは違う灰色の左の瞳のヤスミは、俺にかかった砂をパッパと払うと、早歩きでヨイコの方へ向かっていった。
早歩きなのに、なんか気持ち悪いくらい早い。廊下を走っちゃだめな先生だから、それが鍛えられたんだろうか。あ、ヨイコを捕まえた。
『 名前:モア
種別:ネームドモンスター
種族:マジカルハイウィッチ
性別:女
人間換算年齢:31
Lv:0
人間換算ステータスLv:109
職業:コロシアムのチャンピオン
称号:墜散の闘姫
固有能力:闘技女王 ・闘技場内において全ての行動に補正。闘技場外での戦闘行動において全てに補正。
:物理無効の魔法空間 ・支配領域内の物理攻撃や物理干渉を無力化し、魔法攻撃や魔法干渉を強大にする。
:魔女っ子変身 ・衣装の変換、能力値の全てが上昇し、運命力に補正。
:再臨の魔女 ・人の理と心を取り戻す。
:贖罪の魔眼 ・右、視界内の対象の心を平静に戻し、赦す心を肥大化させる。
種族特性:魔女の魔法力 ・魔法に関する事柄に補正。
:魔女の知識 ・薬学と魔法に関する知識を得る。
:人を踏み外す魔 ・人の理と心理を失い、ステータスとスキルを上昇させる。
特殊技能:エネルギードレイン ・生命力と魔力を干渉するたびに吸収する。
:ルールアンサー ・法則に適合する。
:フルパワーマジカル ・魔法の威力を強大にする。
存在コスト:2400
再生P:10000P 』
「ありがとうございまあす御門様。大切に使いますねっ、えーっと、ヌイグルミとおー、可愛いアクセサリーとおー、それからあー、お化粧品も欲しいなあ。だって……、お肌も曲がり角を過ぎたから……。ええ、大切に使います、本当に、すみませんねえ、いやあ、ありがとうございます」
髪色に似た濃い青の右目と、髪色と同じ薄い青色の左目のモアは、ぶりっ子のようにプリプリしているなと思うと、最後の方は頭をかきながら言った。
年齢が30を越えているだけあって落ち着いている。別に俺がその年齢にわざわざしたわけじゃないんだ。それに31はまだ若い方だよっ、頑張って。
『 名前:メア
種別:ネームドモンスター
種族:アイアンハイサイクロプス
性別:女
人間換算年齢:29
Lv:0
人間換算ステータスLv:130
職業:コロシアムのチャンピオン
称号:輝墜の闘姫
固有能力:闘技女王 ・闘技場内において全ての行動に補正。闘技場外での戦闘行動において全てに補正。
:超重力 ・支配領域内を超重力状態にし、エネルギーを減衰する。
:健全なる魂 ・外力により肉体や精神が変形せず囚われない。魂魄の再生能力上昇。
:両眼開花 ・知性と魔法を手に入れる。
:固定の魔眼 ・左、視界内の対象を視界から外れても指定した性質を固定し続ける。
種族特性:片目巨鬼の力 ・物理ダメージ上昇、物理衝撃上昇。物理ダメージ減少、物理衝撃減少。
:片目巨鬼の体力 ・どれだけ動いても疲れない。
:巨躯の追跡 ・障害物を無力化し追跡できる。
特殊技能:エネルギードレイン ・生命力と魔力を干渉するたびに吸収する。
:フラッグアーマー ・魔力の衣を纏い、一時的にステータスを上昇させる。
:ルールザンブ ・経験を急速に引き出し対応を取れる。
存在コスト:2400
再生P:10000P 』
「ありがとうございます御門様。ヨガ教室の開業資金に充てたいと思います」
髪色と同じ黄みがかった白い右目と、茶色に近い黄色の左目のメアは、お小遣いの使い道を俺に教えてくれた。知りたくはなかったが。
いや、ダンジョンの施設拡張に使われると思えば、他のことで消費されるよりは良いのか?
よし、頼んだぜ、メアっ。
『 名前:ムルニス
種別:ネームドモンスター
種族:フリーヘルジュエリーフィッシュ
性別:女
人間換算年齢:27
Lv:0
人間換算ステータスLv:113
職業:コロシアムのチャンピオン
称号:無輝の闘姫
固有能力:闘技女王 ・闘技場内において全ての行動に補正。闘技場外での戦闘行動において全てに補正。
:無重力 ・支配領域内を無重力状態にし、推進力を無効化する。
:不触の煌き ・触れず捕まえられない。一定距離内にいる者は、敵対行動がとれない。
:応援の魔眼 ・右、自身への応援を自身の力にし、視界内の対象への応援を自身の応援に変える。
種族特性:漂う袋 ・水の中でも自由な行動が可能。
:錯乱触手 ・触手に触れた相手を錯乱状態にする。
:漂う傘 ・空中を漂える。
特殊技能:エネルギードレイン ・生命力と魔力を干渉するたびに吸収する。
:ローゼススクリュー ・薔薇の盾を旋回させる。
:アップグレード ・一時的に思考を一段上昇させる。
存在コスト:2400
再生P:10000P 』
「感謝致します御門様。いつの日か、レッドカーペットを共に歩けることを夢見ております。わてのケジメ、しかと見届けて下さいな」
髪色とは違う黄色の右目と、髪色と同じ赤と青で2つに分かれた左目のムルニスは、三つ指を立てて深々と頭を下げ、お小遣いを受け取った。
なんだか重い……重いよ……。
そして、5人は全員更衣室へと向かった。
途中、ヨイコが水着を半分だけ着たような状態で飛び出してきたが、すぐにヤスミに連れ戻されていた。そんなに遊びたいのか、海を作って良かったよ。
ただまあ、コロシアム後半組も、中々曲者ぞろいのようだ。
何人かはそこまで曲者じゃない、控えめな性格の子もいるんだけどなあ。コロシアム後半組だと……メアとか? まあ、ボスじゃなくてヨガ教室やるって言ってるから、まともなダンジョンモンスターではないか……。
というか、ダンジョンモンスターとしてまともだとかそれ以前に、きっと彼女達は根本からおかしいと俺は思う。
なぜなら――。
「がじがじ。あるじ様美味しい」
目の前で人が食われようとしているのに、助けるそぶりすら見せないまま、行ってしまった。
ダンジョンマスターかどうかはさておき、目の前に食われそうな人がいれば普通は助けるだろうよっ。一体どうなっているっ。
「ニルや、ニルやい。もう良いんじゃないか? あるじ様はもう十分食べられたよ」
「次、右手ねー」
誰か、誰か助けてくれっ。
そう思って辺りを見回すと、丁度、3人の少女が目に入った。
「アリスっ、イーファスっ、ヴェルティスっ。お菓子をあげるよっ。おいでーっ」
その声に、3人はピクリと耳を動かす。そして、間をおかずにたたたーと走ってやってきた。
「「「王様っ」」」
良かった。これで助かった。
「早くお菓子生成して下さいっ。ワタシの分と、イーの分とヴェルの分と、ニル先輩の分と……、それから、後輩達5人の分も生成してくれて良いですよ」
「ヨイコのような小さな子は、いっぱい食べないといけませんので、たくさん生成してくれても良いですね」
「後輩かー。できてみると結構、可愛いもんよねー。あ、べ、別にこれから優しくしてあげようとか、思ってないんだからねっ」
「優しいなあ君達は。しかし、ちょっと待ってね、今、右手が食べられてるから。すまないが、助けてくれないかい?」
「そんなことよりっ」
「早くお菓子をっ」
「生成してよねっ」
……そうか。
そういえばそうだ。俺は忘れていたが、このダンジョンでは、最初に生成したメンバーほど、いかれているのだ。
つまり、三期組が見て見ぬふりをしたこの状況を、二期組がなんとかするはずもなかった。
その優しさを俺にも分けてくれよっ。
「ん? 右手、なんだか変な味がする」
「え、どうしたの?」
「キキョウの味がする」
「どうしてキキョウの味を知っている。仲間を食べちゃダメよ、でもそうだな、キキョウの味がするのは、さっきオイル塗ってたからじゃないか?」
「じゃあ腕っ。がぶーっ」
「ぐああああー」
「あれ? ここはユキの味がする」
「あああああー、え? ユキ……ああ、さっきくっつかれてたからかなあ。でもそれだけで?」
「やめよ。えーっと、なら首筋っ」
「怖い怖いっ」
「むむ、ここはセラの味がする」
「怖――、え、セラの? え、なんで? 首筋からなんでセラの味が?」
「……」
一体どうして……。
しかしその答えを考える間もなく、ニルは悲しい顔をしてわなわなと震えだした。
「わたし以外に食べさせるなんて、これは、浮気……」
「えっ?」
「これって、浮気現場を目撃しちゃったって、やつですかね。ドロドロです」
「そうみたいですね。完全に修羅場だと思いますよ」
「やっぱり王様ってクズね。ニル先輩以外にも食べさせるだなんて」
なんだかヒソヒソされている……。俺が悪いのか? というか、食べるって何っ?
「えーん、えーん。わたしのあるじ様がー」
「ニル先輩っ。大丈夫ですっ、王様はいつだってニル先輩に食べられるのを待ってますっ」
「そうですよっ。大丈夫に決まってますっ。ほら、王様も言って下さい、ニル先輩に言って下さいっ」
「何をグズグズしてんのよっ。早く言いなさいよっ。王様のせいでしょっ?」
「え、ええ……。ニ、ニル、ぼ、僕の体をお食べ」
俺がそう言った瞬間、ニルは顔を上げた。そして――。
「あるじ様がぶがぶーっ」
「あああああーっ」
ああ、食べるってこういうことか。
俺はニルに食べられながら、3人にお菓子を渡した。
三期組にこの場面を見られて失う尊敬を、少しでも少なくするために。
アリス、イーファス、ヴェルティスは、満面の笑みでお菓子を受け取り、更衣室から、思い思いのビキニに身を包んで出てきた5人に、お菓子を配って回る。
みな、喜んでいるようだ。
良かった。本当に良かった。
「美味しいもの食べてる時って、一番幸せだからねー」
「そうだよなあ。つまり、ニルは今幸せってことかな? あっはっは」
「ん? 違うけど?」
「……」
お読み頂きありがとうございます。
またもや長い話となりました。このような長い話を読んで、ブックマークや評価をして下さった方、感想を下さった方、本当にありがとうございます。
これからも頑張ります。




