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第115話 76階層から150階層

ダンジョンマスター心得その4

基本を大切にしましょう。……基本ってなに?

 青い空。


 白い雲。


 華やかな水着。


 そして――。


「海だーっ」


「行くぜ、100m級の、ビックウェーブだーっ」


「いやああああああーっ」


 俺は波にさらわれ、そのまま海中を漂い、底引き網漁を行うオルテ丸の網に引っかかり、救出された。

 助かった……。


「……今日は……大漁。……ニルも喜ぶ」

 あれ? 助かってない?


 76階層から78階層。地下都市の上、地上部分。そして70階層へと流れ込む滝の源泉。

 ここは砂浜と海でできた階層だ。

 倒さなければならない階層ボスもいなければ、襲いかかってくるような魔物もいない、安全で美しく、楽しいリゾート階層。ここまで階層ボスを倒し、もしくは崖を登りきり辿りついた侵入者達への、御褒美階層一つ目である。なのに……。


「危ないところだった……」

 作り手である俺が、到着した瞬間に死にかけるとは……。


「あははは、わりーわりー」

 殺しかけたその1であるマキナは、笑いながらそう言うと、白いビキニ姿のままサーフボードを持って海へと駆け出して行った。紐がほどける呪いを、俺はその後ろ姿に送った。


「どうぞご主人様、粗茶ですが」

 見殺しにしかけたその1であるセラは、メイド服ではなく黒いビキニに姿で、俺にお茶を持って来た。ただ、メイド服でなければメイド力は下がるのかもしれない。こんな暑い日に湯気がもんもんとたつお茶とは。あとご主人様に粗茶を出すんじゃない。ビキニは布を後ろで結ぶ形だったため、それがほどける呪いをかけておいた。


「……ふう。しばし……休憩」

 殺しかけたその2であるオルテは、オーバーオールの雨具と雨がっぱいう猟師姿。海を舐めていないという点では良いと思うが……。呪いはかけられなかった。


「主様。見て下さいましたか。第1回ビーチフラッグ大会の優勝も私でした。続いては水上オートバイを使っての競技を行いたいと思いますので、設備投資をお願い致します」

「主殿、浮き輪を生成せい。輪っかのではなく、寝そべることのできるやつじゃ。はよう」

「あるじ様ー。あるじ様は諦めるから、代わりのご飯、ご飯ー」


 そして、見殺しにしかけたその2、その3、殺しかけたその3がやってきた。

 ローズは赤い一体型の水着、キキョウはパレオのついた紫と金色の水着、ニルはフリルスカートの緑色の水着。全員、脱げてしまえばいい。


「もし脱げたら、セクハラで大変なことになるのは魔王だけどな」

「みんな、水着は脱げないように、しっかり着ような。欲しい物はなんでも生成してあげるから、ダンジョンマスターとの約束だ」

 青いビキニを着たユキの、パンツの紐が解けそうだったので、ちゃんと結んでおいた。危ないところだった。


 ここは御褒美階層一つ目のであるはずなのに……。


 俺は、悲しい気持ちで海を、水平線を眺めた。

 ああ、心が癒されていく……。


 半径25kmから半径5kmまでの、20kmという大きな距離を、たった3階層で埋めるここは、2つのビーチ階層と1つの海洋階層でできている。


 2つのビーチ階層とは、76階層と78階層。

 どちらも階層としての奥行きは1kmで、波打ち際は大体半分の位置。なので、俺達が今遊んでいる78階層には500mの砂浜があり、この水平線の向こうの76階層にも500mの砂浜がある。所々、砂浜が1kmあったり、逆に1mもなかったりするが、基本的にはどちらも同じ奥行きである。


 ただ、砂浜の横幅は違う。

 76階層の方が外にあるから長い、と見せかけ、78階層の方が長いのだ。なぜなら、78階層はドーナツ型の階層全てが一周ぐるりと砂浜になっているのに対し、76階層の砂浜は、12に区切られてしまっている。

 北、北東微北、北東微東、などなど12方向に、川のように流れ込む海によって。


 ダンジョン中心を基点に、半径24kmから半径25kmのドーナツ型の円で構成される76階層は、上から見たならば70階層と隣接している。横から見たならば、そこには高さ2500mもの隔たりがあるものの、場所だけでいうのならお隣さんだ。76階層は、70階層の崖を登った頂上にある。

 だから、滝の出発地点は、この76階層。

 落ちている水は、ダンジョンの不思議な力によって、滝の途中から真水に変わっているものの、77階層の海の水である。


 そのため、海の水は、砂浜へ川のように流れ込み、区切ってしまっているのだ。


 滝の幅は6km以上あるのだから、当然川幅も6km以上。

 滝のない北西微北と北東微北にある水路へ繋がる川も、同じ幅。


 窪地の絶景を上から眺めながら、76階層を1周しようとしたなら、そんな大河までもを見られる、ということだ。大きすぎて、圧倒されるばかりだろう。

 なお、歩いて1周できるようにと、それらの川には、橋がかかっている。

 6kmを1つで繋いだ橋もあれば、中洲を中継する橋、いくつかの浮島を経由する橋、色々。10mない橋しかないところもあったりする。


 泳いで渡ることはしない方が良い。普通に流されて2500m落下するから。

 水路なら落下はしないけど。


 水路は、そのままの高さのまま、窪地の上空2500mを、数々の水路橋に支えられて通り抜け、遺跡迷宮をぶった切る形で通り、本物の海と本物の川に繋がっていてる。

 船が乗り入れることもできるようになっているのだ。

 そのため33階層のダンジョンをぐるりと一周する道にかかる橋も、76階層の砂浜の橋も、船が来た時には通せるようにと、可動橋となっている。パカっと開いたり、上に持ちあがったり、色々な動きのものを取り入れてみた。

 俺も男の子ではあるので、そういう機構的なものは見ているだけで面白い。


 しかしまあ、女の子はそういうものよりも、やっぱり海の方が好きなんだろうな。

 潜って綺麗な珊瑚を見たりだとか。

 貝殻集めだとか。


「マスター、クラーケン生成してくれーっ。水中戦だーっ」

「良いですね。どちらが早く倒せるか勝負しましょう」

「……負けん」


 魔物対峙だとか。

「はっはっは、良いぞー。怪我しないようにな」


 全く。女の子だなあ。


 ……いや女の子の楽しみ方と違うねっ。

 なんてこったい。


 というかこの海は、見た目綺麗で襲ってこないダンジョンモンスターばかり、ってのも売りだったのに、超凶悪なの生成しちゃったよ。

 ……まあ良いや、77階層から出なけりゃ、遊びに来た侵入者を襲うことはない。77階層は18kmと、海にしては小さいがダンジョンとしては広いので、何の指定もしなくても出たりしないし。

 むしろ、そこで渡ろうとする船を牽制してくれたなら、安易にこっち側に来ようとする侵入者達の気を引き締める効果があるだろう。


 こっち側には、御褒美階層二つ目があるのだから。


 76階層の隣は70階層と、数階層飛んでいるが、78階層の隣の方がもっと飛んでいる。

 78階層の隣は、91階層から98階層だ。


 そこにあるのは、宝の山。


 この世界においては、大国の救世主たる勇者ですら得られなかった、真の宝。


 91階層から98階層。

 半径5kmから半径1kmまでのそこは、全ての階層が、78階層と100階層に隣接している。

 つまり、自然型ダンジョンの特徴と言えるドーナツ型ではなく、ドーナツ型を8等分した扇形。四獣階層をさらに二分したような形になっている。


 全長は4kmとダンジョンにしては長いが、幅は短い。

 外側の円周は合わせて31.4kmであるため、1階層分ならおおよそ4km、内側の円周なら1階層分は1kmを下回る。面積で考えても、やはりかなり狭い階層になっている。


 78階層が標高0mで、100階層が標高1000mにあるので、間にあるその階層は、全長4kmで高さ1000mを登るという、勾配25%の険しい坂道の階層なのだが、1枚一反程度の段々畑と、その間に設けられた幅2mほどの石の階段で構成されるため、基本的には平らな部分で構成されている。

 走ろうと思えばとても簡単で、階層の端から端へ、容易く辿り付けるだろう。


 自然型ダンジョンは、ダンジョンコアから放射状に広がるため、内側の高階層ほど狭くなってしまうジレンマを抱えているが、90階層を越える階層なら、中心からの距離をもっと長く生成することも、短くても一周か二周しなければ攻略できないようにすることも可能だ。

 だから、この8階層は本当に狭く、そして単純な部類になる。ダンジョンモンスターを配置するにしても、中々困るほどに。


 しかし問題ない。

 なぜなら、そもそもが侵入者を倒すための階層ではないのだ。ここにダンジョンモンスターは1体も配置しない。


 ここは名付けてサービスエリア。


 91階層は主食、穀物。

 各種米、各種麦、トウモロコシ等の各種イネ、それから各種芋類。それらが実る田んぼや畑が、段々畑に全域に広がる。


 92階層は野菜。

 キャベツにレタスにニンジンにキュウリ、ナス、カボチャ、トマトにピーマン。ネギに白菜、大根、ほうれん草、ゴーヤ、各種キノコに豆類も。パセリもあるよ。そんなありとあらゆる野菜が、段々畑で栽培されている。


 93階層は卵や乳。

 卵や乳を出すのは鶏や牛や山羊。段々畑には小屋が設置されていて、回収は非常に容易。一応肉としても食べれはするが、美味しくない。


 94階層は魚介類に海草類。

 養殖のような形。海や川は別にあるため、天然物も手に入るが、そこではそこの魔物が闊歩しているし、美味しいかどうかは分からない。ここの魚介や海草は、間違いなく美味しい。


 95階層は調味料。

 砂糖に塩、胡椒、オリーブオイルに、醤油やみりん、ドレッシングまでもが用意してある。


 96階層はフルーツ。

 古今東西、いや古いのはあまり美味しくないからちゃんと品種改良した今風のフルーツが実っている。種も入っているが外で育てて育つんだろうか、穀物もそうだが育たないような気がする。


 97階層は肉。

 牛に豚に鳥、羊や馬など各種お肉を取り揃えている。我が家の肉類も、ここから取ってくるのが一番安い。ありがとう97階層。


 98階層、最後は、酒。

 ビール、ワイン、ウイスキー、どんな酒も取り揃えている。我がの酒類も、ここから取ってくるのが一番安い。ありがとう、ありがとう98階層。


 こういうものが取り放題の御褒美階層だからだ。


 いやあ、これでかつてあったような、美味しい食事のためにと召喚勇者がダンジョン踏破に乗り出してくることもなくなるだろう。ひと安心だ。


 こういった食材は、アイテム扱いなのだが、ダンジョンなのでアイテムも魔物同様に再生させることができる。普通に生成するよりも、随分安い。

 ただ、ちょっと前までは不可能だった。


 再生可能の対象となるアイテムは初期状態だと、例えば鉱山に置く用の鉄だとか、そこらに生えるただの薬草だとか、環境にあったもののみになる。

 対象外のアイテムを再生できるようにするには、幾度も幾度も生成しなければならないのだ。そんな時がくるのは、もっとダンジョンとして成熟する100年200年後のことである。

 と思っていたが、いつの間にか達成していた。2年とちょっとで、よくぞ達成できたもんだ。嬉しいような、悲しいような。結局遠慮がなくなっただけで、P消費量は変わんないような。


 ともあれ、サービスエリアではあるし、取り放題と銘打っているが、侵入者の諸君、マナーを守ってとりましょう。


「クラーケンを倒したら腹が減ったな」

「なにか食うかの」

「わーい、行こー行こー、いっぱい食べるぞーっ」

 侵入者の諸君は、真似しちゃいけないよ。


 まあ、しかし、こういう御褒美があるのだから、もう踏破されることはない、そう思って良いんじゃなかろうか。


 ダンジョンが踏破されれば、ダンジョンがあった年数分は、ダンジョンマスターやダンジョンコアがなくとも動き続けるが、しかし終わりが来ることは確実。

 こんな美味しいものを出すダンジョンを終わらせたくはないだろう。


「あれ? 魔王は前、倒したら倒したやつがダンジョンマスターになるとかって勲章貰ってなかったっけ? ダンジョン存続するだろ」

「……」


 もっとアピールしなければ。……アピールをっ。


 いや、御褒美アピールの前に、無害なアピールをしなきゃなんないか。このままダンジョン外への殺戮を続けたなら、いずれ世界の敵と……もうみなされているかもしれいが、なんやかんや大変なことになるかもしれない。

 これ以上、彼女達に虐殺を繰り返させてはいけない。


「まあ、その対策は完璧だがね」


 その対策とは、至極単純なもの。

 彼女達が、どうしても自分の階層で戦いたくなるような、素敵な階層にすること。ただ一つ。


 サービスエリアでも満足できなければ。もっと強くなりたければ。このダンジョンにはもっと先がある。


 79階層から90階層。

 アリス、イーファス、ヴェルティス、エリン、カノン、ケナン、コーリー、サハリー、シェリー、スノ、ソヴレーノ、タキノ。それぞれがボスを務める干支階層。


 かつては地上に、ダンジョン中心から21km地点を基点とし、半径5kmの円が、12方向に配置される形で存在した階層。

 しかし今はそこに、海と砂浜しかない。干支階層は影も形もない。


 いや、それは違うか。

 影だけは、ある。


 今の干支階層は、ダンジョン中心から23km地点を基点とし、半径8kmの円となり、そして、上空1500mに位置する。

 そう、空に浮いたのだ。


 それぞれの地形に変わりはなく、やはり中央には天空城砦から伸びる鎖が繋がっているが、空に浮いている。


 なぜなら、……嘆願書がきたから。

 階層を浮かせろ、天空階層にしろ。そんな嘆願書が、13通。……誰だ1人で2通送ったのは。


 まあ、そんな願いを叶えて、干支階層は空を飛んだのだ。


 それらが乗る大地は、天空城砦の大地とは違って、各環境の色合いをしており、底面がまっ平ら。そして階層中央にある台座の裏側、底面中央にも台座が設置されている。その台座からは、天空城砦に繋がる鎖と同じように鎖が伸び、地上の移送の塔と繋がっている。

 なお、大地の表側の台座も、裏側の台座も、中は空洞になっていて、そこに出入りするための扉がついている。そして2つの空洞は繋がっている。

 そのため、行き来が可能だ。


 例によって例の如く、真なるルートはそこでもある。

 登れる鎖だが、やめて欲しい。


 さて、干支階層が浮いたということは、四獣階層ももちろん浮いている。


 99階層。

 ククリ、リリト、トトナ、ナナミがボスを務める四獣階層。

 かつては地上に、ダンジョン中心500mから13kmまでの12.5kmを、4つに分ける形で存在した階層。しかし数々の嘆願書、といっても5通だが、その効力により天空に浮遊した。こっちの余分な1通はミロクかな? 他の4通と字が違うし。


 階層の大きさは少し大きくなって、ダンジョン中心500mから15kmまでの14.5km。

 地形に変わりはなく、山、池、平地、洞窟、祠、それらがそのまま残っている。環境ももちろん変わらず。


 それらが乗る大地は、干支階層と同じ区、色はそれぞれの環境の色をしており、底面はまっ平ら。厚さもあまりない。

 ただ、99階層には標高1000mの山が聳えているのだが、それは元々50階層、現在でいう100階層に繋がっていた部分であり、内側の切れ目で丁度頂上を迎える。そしてこの階層はそのままの地形で天空に浮いたため、その部分だけ大地の厚さが1000mを越えているとも言える。言わなくても良いが。


 そんな干支階層や四獣階層への入り口は、ミロクの階層から。


 100階層。

 地上最終階層のここは、半径1kmの円でできている。以前は500mの円だったので、ちょっと大きくなった。


 そのちょっと大きくなった部分に、干支階層の入り口である、干支を模った獣が奉られた社が存在する。


 100階層中心近くから、12方向それぞれへと続く無数の鳥居をくぐれば、その社。前に立って、目を瞑る、祈る、なんらかのアクションを起こせば、対応する方向の階層に辿り着くのだ。


 四獣階層の入り口は、勾玉があったような、ねじれた塔。

 ただしそれは、半径500m地点に移動していて、高さは3000m以上になった。


 とはいえ、そこから塔の頂上に行くのではなく、登ってすぐにある祠で、アクションを起こせば、四獣階層の平野部にすぐ移動できる。

 ただ、勾玉はその塔の頂上にあるため、四獣階層に辿り着いたなら、歩いて移動して山を登って、頂上からぴょこっと顔を出している塔に、再び入る必要がある。そうして勾玉をとって、階層中央の祠に捧げれば、ボス出現。

 四獣階層を横断するのが面倒なら、別に塔を最上階まで登っても良いが、……多分辛い。登る人なんていないと思ってるから、何も置いてないし。


 ともあれ、干支階層四獣階層共に、内容は変わらない。

 だから、難易度は階層が上がった分と、空中に浮いたことで出たネームドモンスターのやる気の分だけ、上昇している。


 なお、100階層は、嘆願書も届かなかったため、浮いていない。

 そんなことしなくても、元々ミロクが登場するエレベーターは浮いているので。


 ただ、干支階層や四獣階層よりも、エレベーターが高い位置にないとダメだろう、ということで、エレベーターは高度3500mまで上がる仕様になっている。

 標高1000mの上にあるので、体感は2500m。


 だがそこまで上げると、天空城砦にぶつかってしまうために、天空城砦も高度を2000m上げなければならなかった。天空城砦は、今は高度7000mに位置する。

 風呂の設備を増やしたとか、そんな程度のことしか変えてないのに、Pがめちゃくちゃかかったよ。

 楽しかったけど。


 これが、既存階層の内容。


 ちなみに、干支四獣階層は、普段は視認できず、資格を持つ者だけが、見ようと思った時に見られるという、特別感溢れる仕様。

 見えていない状態では、風や熱なども遮らないため、その下の地上階層でも思う存分、太陽や月の輝きを、そして恵みの雨を、浴びることが可能だ。

 ダンジョンでなければ叶わなかった設定であり、だからこそ、まさにダンジョンに相応しく、その凄さが伝わってくる。また、地形生成時の設定との併せ技でもあるから、ダンジョンマスターの凄さもまた、垣間見える。


 もちろん、ダンジョンモンスターとしても、ここで戦うと思えば、腕が鳴るだろう。嘆願書を書いたあの子達の想像をさらに越えた、素晴らしい階層になったはずだ。


 このダンジョンにおいて、守護階層が空中に浮くとは、大きな大きな意味を持つ。

 特別なのだ。

 まあ、隔離迷宮も宙に浮いているが、そっちは侵入者とか関係ない、ネームドモンスターのLv上げエリアなので良いだろう。浮いているのは特別なのだ。


 だから、ここで戦うとなれば、きっとみんな、気合も入るだろう。

 本当に良い階層になったな。

 これなら、これなら絶対に大丈夫だ。


 きっと、俺が今回生成した階層、そこだけで彼女達は戦ってくれるはずさ。彼女達なら、大丈夫さ。

 自らの階層のみを守護し、もう二度と虐殺なんてせず、そして俺の言うことをきちんと聞いてくれる子達になるさ。何も心配いらない。ああ、本当に、それはなんて幸せなことなんだろうか、まるで、夢のようだ……。


「でもマスター、多分それは、本当に夢だぜ?」

「……ですよねえ」


 ダンジョンがどれだけ変わろうとも、虐殺の日々はきっと続く。


 俺は、悲しい気持ちで海を、水平線を眺めた。

 ああ、心が癒され……ないっ。


「今から生成するメンバーは、いかれてないメンバーになりますように」

お読みいただきありがとうございます。


ブックマークもして頂きありがとうございます。

ダンジョンモンスターが増えるのは、次々話の予定です。名前を覚えるのも難しいとは思いますが、出てきたことだけを覚えて頂ければ幸いです。どうぞ宜しくお願いします。

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