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第113話 1階層から40階層。

悪逆非道のダンジョンマスター心得その2

ダンジョンマスターは大切に。

 生成する際、同じ括りにして大量にPを消費し生成すれば、変換効率は高くなる。

 1Pでは銅貨1枚しか生成できないが、10Pなら100枚を、100Pらな1万枚を、1000Pなら100万枚を、1万Pなら1億枚を生成できるように。


 とはいえ、その方法を使っても、ダンジョンを広げるためにかかるPは、膨大なものになる。


 地形を生成する。

 環境を生成する。

 ギミックを生成する。

 設定を生成する。

 罠を生成する。

 建物を生成する。

 アイテムを生成する。

 魔物を生成する。


 それらを、同じ括りで生成することはできないからだ。


 地形は地形、環境は環境。別個に生成しなければならない。

 例えば、四獣階層を生成したいのなら、山の盛り上がり、湖のための窪み、洞窟のための穴などの地形を一旦生成し、それから山の木、湖の水、そして極寒や灼熱の環境を付け足す必要がある。

 地形環境などの全ての設定を終えてから、同時に出現させるやり方でも、結局同じ。


 浮かぶ大地や歩ける鎖の安全地帯など、地形自体に特殊なギミックや設定が組み込まれている場合ならば、同じ括りにできるのだが、そんなことができる生成は一部に過ぎない。

 それを、より多く見つけ出し取り入れることが、ダンジョンマスターの腕の見せどころ、能力でもあるとも言えるが……、ともあれダンジョンを広げる際には、どうしたって非効率な生成しかできず、大量のPが必要になる。


 だから俺達は、非効率な生成しかできない。


 効率的な生成方法は他にも、1つずつ階層を仕上げていくのではなく、広げるだけ広げ複数階層の地形を一気に生成し、Pが貯まってから環境や魔物を付け足していく方法。

 アイテムをそこに生成したダンジョンモンスター達に作らせる方法。

 自然型ダンジョンなら、元からある環境を利用する方法。

 色々とあるにはある。


 最もポピュラーな方法では、コピーアンドペーストのような形で作っていくやり方だろうか。

 例えば、ダンジョン的単位面積が、同階層内に5つ入る場合、その内1つに地形やギミック、罠、魔物などを生成すれば、残る4つ全てに反映させられるのだ。むろん0Pで。つまり、かけたPの5倍分の生成物を作れる、ということ。

 大きい階層であれば大きい階層であるほど、ダンジョン的単位面積がいくつも入っているため、自然型ダンジョンで言うなら外側の低階層であれば、より節約できる。


 デメリットとして、隠しエリアも共通になること、同じ風景が繰り返されること、別の単位面積に逃げられるとダンジョンモンスターが追跡できないこと、などがある。そうやって生成された魔物は、自らが生成されたダンジョン的単位面積から出られないので。

 そのせいか、人からはしばし、ダンジョン的単位面積の境目を、ダンジョンの切れ目、と表現されるなど、侮辱的なことを言われてしまう。まあそれは下手な作り方で、普通はそういう境目は侵入者自体も通行不可能なように、山なり崖なり壁なりを作っておくし、隠しエリアなんかはコピペせずに、それぞれに改めて設けるものだが。


 そういうわけで、Pの節約方法は色々あるのだ。


 しかしそれをどれだけ使ったところで、Pの消費は膨大なものになる。

 ダンジョンを広げるとはそういうこと。その事実は変えられない。


 それに、Pを貯めようと思っても、侵入者は、日々悩みの種を投下してきて、そこにPをかけねばならない事態に追い込まれる。

 一気にPを消費して生成すれば安く済むのに、日々10P20P100P、そのくらいを小まめに消費しなければならず、また、Lvが上がりどんどん最終階層に近づいてくる。あるいは最終階層を攻略するための力をつける。そのせいで、作りたいダンジョンを生成するだなんてのは、夢のまた夢。


 自らの持つ実力の全てを、ダンジョン生成にぶつけることは、俺達ダンジョンマスターにとって、あまりに難しいことだ。


 ……。

 ……。


 まあ、336万7521Pあれば、今の話はなんの関係もありませんが。


 ……。

 ……。


 そんなわけで完成しました。

 誇りと希望に輝く、我がダンジョンが。


 全150階層、半径100km、北は海から南は町までの超大型ダンジョン。

 その全容が、玉座に座る俺の周辺には映しだされてる。


 まだ、40階層以降の階層ボス、裏ボス、それから管理人などの、ネームドモンスターの生成は残っているが、それも今日で全て生成する。


 これから俺は歩むのだ。

 このダンジョンと共に、覇道を。


 そして、正道を。


 ……夢みたいだ、正道を歩けるだなんて……。今までは邪道というか悪道というか、そんなんだったもんなあ。


 さあ、そんなできたてホヤホヤのダンジョンの一端を紹介しよう。


 まずは1階層から40階層をざっと。


 ダンジョン中心を基点に、コンパスで半径70kmの線を引いたそこから、半径100kmの線までが、1階層から40階層。

 もちろん外が1階層で、内が40階層。大体1階層1kmで、ドーナツ状の形になっている。


 30kmなのに40階層あって、全然1kmじゃねえじゃねえか、と、計算が合わないのは、21階層から30階層が、31階層から40階層の下、地下に存在するから。


 それら40階層は地下も含め、元々の地形を多く活用している。

 人の集落や町、魔物の住処が、数多くダンジョンの中に入ってしまうために、あまり環境を変えると暮らし辛かろうと思い、ほぼそのままにしているのだ。そのため暮らし続けていくのになんの不自由もない。

 むしろ、川幅が広く流れが急で渡れなかった大河には、大きな大きな橋をかけ、断崖絶壁にはロープを張って、山にはトンネルを空け、枯れた湖に水を入れ、平野には馬車が走り易いようにと道を設け、そんなことをしたので、暮らし易い環境に変わったと思う。


 まあ、橋やトンネルができたことで往来が活発になり、その集落の産業が潰れたり、魔物が川や山を越えてやってきたり、湖ができたことで水を管理していた家が没落したり、水場に魔物が集まってきたり、そういう問題は色々あるだろうが、そこは知らない。

 それぞれの営みなんて、俺の預かり知るところではないので。


 とまあ、1階層から40階層はそんな感じ。

 ただし10階層毎に、コンセプトは存在し、その分が、通常の地形や環境に、色々と追加されている。また、階層自体が隠されている場所もある。


 1階層から10階層のコンセプトは、自然。

 呼称もそのまま、自然階層。


 元の地形や環境を採用してはいるが、自然の品質を高めようとしてみている。例えば北西微北方向は、海とガッツリ被っているのだが、そこら辺には漁礁を作ってみたり、森にしても木々の品質が良くなるよう配慮してみたり、土を変えてみたり。鉱山からも多数のアイテムが出てくるようにした。

 ダンジョンだから、資源は無限。

 侵入者に配慮した階層だからか、そういったアイテムの再生費用も安くなったし。


 そうしてこちらも、人や魔物を活動させたことで、衝突して死ぬ人や魔物、不要となった製作物を、Pにして回収する。

 低階層では稼ぐことが難しいために、旨味を与えて生活させ、そうやって稼ぐ手は、往々にして存在するのだ。そんな手を打てる時期がくるだなんて、夢にも思っちゃいなかったが、いやあ、長生きはしてみるもんだ。


 11階層から20階層のコンセプトは、廃墟。

 呼称もそのまま、廃墟階層。


 元の地形や環境に加え、ここには、かつて町が栄えていたかのような廃墟をいくつも用意した。ロマン溢れる階層だ。

 とはいえ、そこに超文明の遺産があるとか、そんなことは全くない。アイテムがちょいちょいあったり、人や魔物の住処になったり、俺自身が作っていて楽しいだけだ。


 ただ、変わっている点として、11階層が隠し階層になっていることが挙げられる。

 10階層の次は、12階層になっているのだ。歩けども歩けども11階層はどこにも見つからない。そのためここは、10階層10kmではなく、9階層で10km。1階層は1kmちょっとある。

 そしてこの廃墟は、なんなら、11階層を隠すためだけに、建ち並んでいるとも言える。天空に浮かぶ、11階層を。


 21階層から30階層のコンセプトは、地下。

 呼称もそのまま、地下階層。


 適当に散策するだけでもいくつも見つけられる入口から、地下に入る。洞窟のように細い道が続くここは、攻略に近づけば近づくほど、階層数が増える形になっているため、1階層1kmでもなければ、内側に行けば良いというわけでもない。

 そして、22階層は普通に存在するが、しかしそこからは隠しルートに入るための道が満載となっている。是非侵入者には探してみて欲しい。


 ただ、倒さなければならないボスなどはいないので、スルーしたい人はスルーしたら良いと思います。

 冒険者で言うとE級D級の人は、実力がこの階層近辺程度だと思うので、入った方が良いとは思うが。だってこの地下階層抜かしたら、20階層から一気に31階層にワープするわけだし。


 31階層から40階層のコンセプトは、交通。

 呼称もそのまま、交通階層。


 せまっ苦しい地下とは違い、平原が目立つここに、俺はいくつも通りやすい道を設けた。その道はダンジョンモンスターも入らない安全な道、街道と呼べる。

 他の階層にも安全な道はちょいちょいあるし、王国帝国魔王国、もう1つ隣接する小国へ向けては、40階層までノンストップで来られるように、真直ぐの道が設置してあるが、ここのように階層をぐるりと一周できるような道は、他にはない。


 それはダンジョン中心から半径78kmの線上に存在する。

 その線をを中心として、幅50mほど。長さは一周なので、500km近く。真っ白の道なのに、昼間は太陽の光をある程度吸収し眩しくなく、しかし夜はぼんやりと緑色に光る、そんな道だ。


 そこが、33階層。

 だからここもまた9階層10kmで、1階層1kmちょっととなる。なんだか、1階層1kmのとこの方が少ないなあ。まあ、約で言えば1kmだから、別に良いか。


 なお、33階層には、もう少し色々ある。

 北、北東微北、北東微東、東、つまり干支方向12箇所には、それぞれ展望台が建てられている。この世界風に言えば、物見矢倉か。まあ、名称は移送の塔なので、展望台でも物見矢倉でもないのだが。移送の塔は高く、ガラス窓のはめ込まれた展望台があり、そして天辺には鎖の台座がある。鎖は天空城砦方面に向かって伸び、途中で消えている。


 12方向、鎖の台座、とくれば、そこはもう干支階層だ。

 通路の内側、移送の塔から半径3kmの半円は、33階層になっており、通路を除いてそれぞれの方向に対応した、干支階層と同様の環境と仕組みを持つ。


 干支階層は元々、侵入者を育てるためにと考えたのに、あの子達はもう育ちきった転生者や転移者も倒してたからね。練習にならないです。

 なので、ここに同様の仕組みを作った。これで、未熟な人達は練習してくれると良い。そして、それをクリアした人達だけが、移送の塔の本当の意味を知る。


 これが、ざっと1階層から40階層。


 侵入者を倒すことを目的とせず、共存しつつもPを得るためにと考え抜かれた階層だ。そして概算では実際に利益も上げられるようになっている。

 いやはや全く、自らの才能が恐ろしいよ。


 こんな素晴らしいダンジョンを考えつけるのだ、きっと今までも類い稀なるダンジョンを経営していたのだろうねえ。


 うん。


 きっと……、間違い、ないよ。


 さあ、次はダンジョン本番を見ていこうっ。俺は悲しみに押し潰されないように、そう意気揚々と映像を切り替えた。

お読み頂きありがとうございます。

またブックマークなどありがとうございます。ちょっと説明会が続くと思います。ダンジョンの内容を考えるのは楽しいですが、伝えるのは苦手です。致命的な弱点です。

なので、なんとなーくでも良いで、お読み頂けるだけで嬉しいです。終わりましたら、ネームドモンスターの生成に入りますので、その時また楽しめるよう、頑張ります。


お読みいただきありがとうございました。

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