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第8話 早く眠るんだ、セラっ。

ダンジョンマスター格言その8

死ぬ時は死ぬ。だからこそ生きる時は生きる。

 マキナは乱暴で単純。

 セラは……。

「ご主人様は、底無しのお馬鹿さんでいらっしゃるようですね」

 冷淡で毒舌?


 マキナは面倒見が良い性格で、セラは忠義に厚い世話好きのはずなんだけどなあ……。


『 名前:セラ

  種別:ネームドモンスター

  種族:吸血鬼公爵

  性別:女

  人間換算年齢:22

  Lv:0

  人間換算ステータスLv:155

  職業:ダンジョン最終ボス代理兼メイド

  称号:ダンジョンマスターのパートナー

  固有能力:真祖返り ・吸血鬼の特性を趣向の範囲に収められる。

      :完全無欠の奉仕術 ・一つの欠けもない奉仕が可能になる。

      :血脈掌握 ・支配下に置いた血液と同系の血液を魅了する。

      :石化の魔眼 ・左、視界内の対象を石化する。

      :ダンジョンの知識 ・ダンジョンについての知識を得る。

  種族特性:吸血 ・吸血した相手を支配する。定期的に血を飲まなければいけなくなる。

      :闇の支配者 ・夜にステータス上昇、太陽が出ている間ステータス低下、太陽に対し脆弱になる。

      :公爵の威厳 ・誰の支配下にもない侯爵以下の吸血鬼と、侯爵以下の支配下の吸血鬼を支配する。

      :蝙蝠分裂 ・蝙蝠に化けられる。数は自由、化けている最中はステータス低下。

      :吸血鬼の再生力 ・損傷や欠損を再生する。

      :魅了の魔眼 ・目が合った者を虜にする。

  特殊技能:マナドレイン ・魔力を干渉の度に吸収する。

      :フォールサイト ・未来の事象を予見する。

      :スピリットブレイク ・恐怖により精神体へダメージを与える。

  存在コスト:4500

  再生P:30000P 』


 上級竜などの、別格とも言える種族を抜けば、その頂点に立っていてもおかしくない吸血鬼公爵。

 その種族に20倍のPをかけ、生成した結果、凄いことになりました。


 まず固有能力が異様なまでに多い。そして効果が高い。効果の量を知る術は、俺にないんですけど、名称的にね。

 パッと見で真祖返りは、凄いじゃないですか。その説明も。

 ランダム魔眼も、石化って。最強の一角じゃないですか。メイドに石化の魔眼がいるのかい?


 しかし、設定した際は、完全無欠の吸血鬼、という特徴だったはずなのに、完全無欠の奉仕術、という固有能力になっている、どういうことなんだろうか。


 そして、特殊技能も、また強い。

 必殺技、と言い換えても良い特殊技能に、上位種が2つも3つも載せちゃいけないよ。


 特殊技能の欄に表記されるのは、その者の強さに見合わない、強力な技のみ。

 例えば、小さな子供であれば、剣を使った技の一つもできれば、十分必殺技になるため、特殊技能にはスラッシュなど、初歩の剣技も登録される。


 しかし強くなってくると、その程度はできるのが当たり前になる。あくまで初歩の技だからね。

 そうなると、スラッシュは必殺技、特殊技能とは呼べなくなり、記載されなくなる。

 もちろん使えなくなったりはしないが、この表示はあくまで、俺に強さを分かりやすく説明するものであるため、ビックリするようなものしか載っていない。


 つまり、特殊技能欄に載っているものは、上級竜や吸血鬼公爵と言った、最強クラスの種族ですら、使えたら驚いてしまうような技であり、まさしく必殺技、必ず殺せる技である。

 そこに3つも載せるなんて、あんた……、怖いよ。

 なにさスピリットブレイクって。一体あの特徴と適性からどういう経緯でそれが身についたの……、メイドがブレイクさせる相手って、一体誰なんだい?


 どこで間違えてしまったのだろう。どこで失われてしまったのだろう。

 俺への優しさは。ダンジョンマスターとしての幸せは。


 止めよう、考えるのは。


 そうだ、今度は俺のステータスを見てみよう。

 勲章が多数ついたことは確かだが、どんな勲章がついたのかは分からない。正直、楽しみである、俺の生き様は、一体どのようなものだったのか。

 俺は、それを見て、気分を一旦リセットすることにした。

「良し、セラよ、ちょっと待っててくれ」

「かしこまりました、お待ちしております」


『 名前:--

  種族:人間

  職業:ダンジョンマスター

  勲章:異世界の知識を持つ者 自殺志願者 常軌を逸したマスター 豪胆マスター 初めては固有モンスター 名付け親 命名センス 強者殺し 覇者殺し 到達者殺し 超越者殺し ドラゴンスレイヤー殺し 将の器 剣聖の名を継ぎし者 祝踏破者駆逐 大物取り 上級竜を倒せし者 宝物ダンジョン 魔境の支配者 百の骸を吸いし迷宮 千の骸を吸いし迷宮 骸の迷宮 死に神の派遣者 万の軍を退けしダンジョン 余命宣告を受けし者 節約上手 貯金好き ドケチ P依存者 性格重視マスター キャラ萌え ド変態 特徴付けマスター シチュエーション萌えマスター 吐き気を催す醜悪なる存在 スキル大好きマスター スキル愛 異常性愛者 ステータス重視マスター 偏屈脳筋 省みぬ挑発野郎 豪運 九死に一生の天運 明日死ぬ Pアホ使用者 ギャンブル依存症 上級風竜を従えし者 』


 ……。わお。

 悪口が多すぎて全然リセットされないどうしよう。


「セラ、お待たせ。悪かったね待たせてしまって」

「ご主人様、勲章はダンジョン運営に最も大切なものです、確認しないと仰るのであれば、私は説得するのみですが」

「確認します」


 セラを見ても、自分を見ても、怒られているじゃないか。自業自得ってこういうことなのか? 分かり易い。


『 初めては固有モンスター

   初めて生成したモンスターが固有モンスターな若気の至りなダンジョンマスターにそういう時期あるよねーと授けられる勲章

   ・魔物復活時消費P軽減 』

『 名付け親

   初めてネームドモンスターを作ったダンジョンマスターにお祝いとして授けられる。

   ・100P獲得 』

『 命名センス

   2体目のネームドモンスターを作ったダンジョンマスターに授けられる。

   ・200P獲得 』


 この辺りは心安らぐんだけど、次からだよ次、特に次。


『 死に神の派遣者

   高階層の絶対強者をあえて低階層に送り込み侵入者を蹂躙させる、ダンジョンマスターとして恥ずべき行為を平然と行うブラックダンジョンに授けられる。

   ・魔石等級上昇

   ・ダンジョンコア波動強化

   ・ネームドモンスター思考力強化

   ・トラップ死亡確率制限解放 』


 俺のせいか? それは俺のせいなのか?

 コイツには俺の叫びが、慟哭が聞こえなかったというのかっ。確かにマキナの咆哮のせいで、俺自身にも聞こえちゃいなかったが。

 それにブラックダンジョンってなんだよ、企業みたいに言うなよ。

 こっちの世界って、まだブラック企業とかがとりだたされるような環境じゃないだろう。


『 性格重視マスター

   魔物生成時性格に投入可能Pの半分のPを振った性格を重視するダンジョンマスターに授けられる。

   ・性格項目制限緩和

   ・設定性格影響力上昇 』

『 キャラ萌え

   魔物生成時性格に投入可能Pの全Pを振った性格を重視するダンジョンマスターに授けられる。

   ・性格項目制限緩和

   ・設定性格影響力上昇

   ・性格設定消費P軽減 』

『 ド変態

   ネームドモンスターに対し卑怯な勝負を挑み屈服させ、本意を歪めようとする鬱屈した最低なダンジョンマスターに授けられる勲章。

   ・性格項目制限解放

   ・設定性格影響力大上昇

   ・性格設定消費P大減

   ・ネームドモンスター思考力向上 』


 慟哭は聞こえなかったというのに、あの高笑いは聞こえていたというのかっ。

 確かに静かな森に響き渡っていましたがね、マキナが大分魔物を殺戮したからかなあ、静かだったよ、こだましてた。


 どうして……。


「いかがでしょう。どのような勲章がおありですか?」

「も、もう少し見れば、良い勲章があると思うんだっ。悪口だけじゃないはずだっ、もう少し待ってくれっ」

「かしこまりました」


『 特徴付けマスター

   魔物生成時特徴に投入可能Pの半分のPを振った特徴を重視するダンジョンマスターに授けられる。

   ・特徴項目制限緩和

   ・設定特徴影響力上昇 』

『 シチュエーション萌えマスター

   魔物生成時特徴に投入可能Pの全Pを振った特徴を重視するダンジョンマスターに授けられる。

   ・特徴項目制限緩和

   ・設定特徴影響力上昇

   ・特徴設定消費P軽減 』

『 吐き気を催す醜悪なる存在

   ネームドモンスターに対し憔悴させた隙に自身の思うように洗脳しようとする下劣で最悪なダンジョンマスターに授けられる勲章。

   ・特徴項目制限解放

   ・設定特徴影響力大上昇

   ・特徴設定消費P大減

   ・ネームドモンスター思考力向上 』


 醜悪……。


『 スキル大好きマスター

   魔物生成時適性に投入可能Pの半分のPを振った適性を重視するダンジョンマスターに授けられる。

   ・適性項目制限緩和

   ・設定適性影響力上昇 』

『 スキル愛

   魔物生成時適性に投入可能Pの全Pを振った適性を重視するダンジョンマスターに授けられる。

   ・適性項目制限緩和

   ・設定適性影響力上昇

   ・適性設定消費P軽減 』

『 異常性愛者

   コアに対しての攻撃や衝撃に多感な思いを覚えるダンジョンマスターにいけないとの思いを込めて授けられる勲章。

   ・適性項目制限解放

   ・設定適性影響力大上昇

   ・適性設定消費P大減

   ・ネームドモンスター思考力向上 』


 異常性愛……。


 どうして、どうして……。


『 ステータス重視マスター

   魔物生成時能力値に投入可能Pを全て振った能力値を重視するダンジョンマスターに授けられる。

   ・能力値項目制限緩和

   ・設定能力値影響力上昇 』

『 偏屈脳筋

   魔物生成時能力値に投入可能Pの全Pを振った能力値を重視するダンジョンマスターに授けられる。

   ・能力値項目制限緩和

   ・設定能力値影響力上昇

   ・能力値設定消費P軽減 』


『 豪運

   とても運が良い者に授けられる。

   ・運が良くなる 』

『 明日死ぬ

   運を使い果たしていそうなくらい運が良かったダンジョンに授けられる。

   ・運が良くなる 』


『 Pアホ使用者

   P使用時規定の5倍以上のPを使用するアホなマスターに授けられる。

   ・P使用効果上昇 』

『 ギャンブル依存症

   P使用時規定の10倍以上のPを使用したギャンブル狂いのマスターに授けられる。

   ・P使用効果上昇

   ・ネームドモンスター思考能力向上 』


『 上級風竜を従えし者

   上級風竜を配下に加えた者に授けられる。

   風竜のステータス上昇 』


 依存症2つ目……。

 「どうしてーっ」


 一体どれだけのものに依存しているんだ、どれだけ縋らなきゃ生きていけないんだ。そんなに辛いことがあったのか?

 ……あったなあ、というかあるなあ。未来で起こる戦争と、現在進行形での殺戮。


 殺戮……。

 ……。


 ……。


 ……。

 心が、心が痛いよう。

 悪口が多いよ、多過ぎるよ。効果は良いのに、どうしてそんなに悪口ばかりなの?

 ダンジョンマスターにだって心があることを、勲章を作成した君達は知らないのかい?


「ご主人様、なにやら顔が暗くなっていますね。御安心下さい、例えいかなる勲章を授かっていようとも、ご主人様は我々のダンジョンマスターですよ」

 俺が心の内側で嘆いていると、セラがそう語りかけてきてくれた。

 とてもとても優しい声で。


 そうか、察知適性はこんな時に活きるのか。

 心の内側にある、誰にも言えない嘆きを感じてくれるんだ。

 これが、これがネームドモンスター、俺の心のオアシス。


「セラ……ありが――」

「ですから、悪辣なる勲章があったとしても、効果が良いならば、それを利用し、逸早く防衛を築きましょう」

「と、う。……え?」

「それだけに心血を注いで下さい。くだらない感傷など今は不必要です」


 ……くだらない、だと?

 ダンジョンマスターにとって誇りがどれだけ大事か、ダンジョンマスターにとって生き様がどれだけ大事か、ダンジョンモンスターが分からないわけじゃないだろう。

 それをくだらない、くだらないとはっ。

「セラ――」

「返事は?」

「はい。ご主人様は頑張ります」


 生き様かあ……。誰だ、生まれより生き方が大事だと言ってたやつは。僕にその道は、少しだけ無理そうです。


 ……。

 さて、気を取り直したところで、ダンジョンの構成を考えるお仕事に入る。

 どうにか踏破されないようなダンジョンにしよう。


 あーでもないこーでもない。

 議論をセラを繰り返す。


「よーっす、ただいまー」

「お帰りなさいませマキナ様」

 そうして、空が暗くなってきた頃合。


 マキナが、ガチャリと扉を開けて拠点に帰って来た。簡易的な、掘っ建て小屋のような家の中に。


 そう、ここには現在、家が建てられている。

 今はここが、我等が最終階層。最後の拠点。

 中にいるのは、俺とマキナとセラの3人と、ダンジョンコア1つ。


「うおい、よせよセラ。マキナで良いぜ?」

「ダンジョン最終階層の守護者であり、最も古くからいる第一の魔物、そして竜王の血を引く上級風竜であられるマキナ様を、呼び捨てにするなど恐れ多いです」

「こそばゆいなー。セラだってすげえじゃねえか、マキナで良いぜ」

「では、お言葉に甘えてマキナ、と。お帰りなさいマキナ」

「おう、ただいま」


 自己紹介はまだのはずだが、お互いその存在も素性も知っている2人。ダンジョンモンスターだから繋がりがあるとかなんとか。思わずダンジョンマスターもホッコリ。


「お帰りマキナ、どうだった? ってP入りまくってるから分かるけど」

「大分倒してやったぜ、雑魚の戦い方だってちゃんと観察したぞ。その分漏れたのがここに来たみたいだけどな」

 100体単位での進軍を漏れたと言うのかしら。


「まあセラがいるから大丈夫だと思ってたし、無理なら転移して倒してたからな」

「あの程度なら私でも問題ありません、大丈夫ですよ」

「だろうな、へへへ」


『 名前:マキナ

  種別:ネームドモンスター

  種族:上級風竜

  性別:女

  人間換算年齢:18

  Lv:10

  人間換算ステータスLv:340

  職業:ダンジョン最終階層ラストボス

  称号:ダンジョンの守護者

  固有能力:竜王の血脈 ・竜因魔法、竜魔法の威力上昇。状況に応じてステータス上昇。支配の完全無効。

      :無限の蓄積 ・思考能力を増加させ、他者の経験を踏襲する。

      :時の魔眼 ・右、自身と周囲の時を支配する。

      :予知の魔眼 ・左、未来を見る。

  種族特性:風竜因魔法 ・風の竜因魔法使用可能。

      :竜魔法 ・竜魔法使用可能。

      :上級竜の膂力 ・防御能力を無視してダメージを与える。

      :上級竜の鎧 ・あらゆる攻撃や変化に高い耐性を有する。

      :上級竜の翼 ・質量、重力、慣性を無視し移動可能。

      :上級竜の再生力 ・身体の破損欠損を即座に再生できる。HPMP自然回復上昇。

      :人化 ・人間形態に変化可能

  特殊技能:オーラドレイン ・生命力と魔力を干渉の度に吸収する。

      :カタストロフブラスト ・空気と空間を歪ませ存在を無視して座標を破壊する。

  存在コスト:30000

  再生P:60000P 』


 そんなマキナの情報。


 全然ホッコリできないねえ。

 Lv上がり過ぎじゃありません? ネームドモンスターってもっと、10年20年100年のスパンかけて成長するんでしょう?

 というかステータスがLv340並になっちゃった。早いよう。


 あと特殊技能が1つ増えてるんだけど……、なんかヤバイのがついてるじゃないですか。1日で新技開発すんなよ。ダンジョン側がそんな風に強くなったらダメじゃんっ。

 というかそれだけ強くなるのに君は一体どれだけの犠牲を……。


『 名前:セラ

  種別:ネームドモンスター

  種族:吸血鬼公爵

  性別:女

  人間換算年齢:22

  Lv:6

  人間換算ステータスLv:179

  職業:ダンジョン最終ボス代理兼メイド

  称号:ダンジョンマスターのパートナー

  固有能力:真祖返り ・吸血鬼の特性を趣向の範囲に収められる。

      :完全無欠の奉仕術 ・一つの欠けもない奉仕が可能になる。

      :血脈掌握 ・支配下に置いた血液と同系の血液を魅了する。

      :石化の魔眼 ・左、視界内の対象を石化する。

      :ダンジョンの知識 ・ダンジョンについての知識を得る。

  種族特性:吸血 ・吸血した相手を支配する。定期的に血を飲まなければいけなくなる。

      :闇の支配者 ・夜にステータス上昇、太陽が出ている間ステータス低下、太陽に対し脆弱になる。

      :公爵の威厳 ・誰の支配下にもない侯爵以下の吸血鬼と、侯爵以下の支配下の吸血鬼を支配する。

      :蝙蝠分裂 ・蝙蝠に化けられる。数は自由、化けている最中はステータス低下。

      :吸血鬼の再生力 ・損傷や欠損を再生する。

      :魅了の魔眼 ・目が合った者を虜にする。

  特殊技能:マナドレイン ・魔力を干渉の度に吸収する。

      :フォールサイト ・未来の事象を予見する。

      :スピリットブレイク ・恐怖により精神体へダメージを与える。

      :メルトダウン ・自身を見た者を魅了状態にする。

  存在コスト:4500

  再生P:30000P 』


 ああこの子もなんか身につけてた。そうですか、そうなんですか。まあ強くなってくれれば安心なんですけれど……。

 一体どれだけの犠牲を……。目の前で見てたけど……。


 いやあ、強くなる速度がおかしい。そして戦う階層もおかしい。

 ネームドモンスターは普通、どこかの階層で待ち受けるボスだから、戦う機会に恵まれないんですよ?

 1回負けたら復活にかかるPがえぐいから、一戦一戦緊張するしで。でもそういうのを乗り越えてのダンジョンマスター、そしてダンジョンなんですよ? 一体なぜ……。


 ……ともかく、うん、色々置いといて、2人共強くなってくれているようで安心だ。仲も良いからね。

 ネームドモンスター同士は仲が悪い可能性もあるため、そこの部分でも安心しました。順調ですよ。頬が濡れているのは、気のせいさ。


「今、セラとこのダンジョンをどうしていくか。あっちで夜営しようとしている大軍をどうしようか悩んでるんだ」

「ならアタシがブレス一発撃ってきてやるよ、一発で300はやれるだろ、転送してくれ」

「ダメだよっ」

「なんでだよー。じゃあ自分で行く」

「待て待てーっ」


「んだよ強くなっただろ、もうあん中で1番強い奴にだって勝てるぞ」

「ダンジョンの仕様抜きの1対1ならな。対竜装備した2万対1だぞ、お前より強かった上級風竜相手にも勝ってるんだからダメです」

「ちぇー」

「そもそも勝てる勝てないの話じゃなくダンジョンの倫理の話よ」

「それは知らねえ」


 知らねえかー。

 まあ、うん、ショックは少ない。俺は知ってたからね。

 というか、ダンジョンモンスターが低階層まで出張ったらマイナス補正激しいんだから1番強いのには無理だろ。


 ……いや竜因魔法がなあ。攻撃だけなら多分全力できるんだよねえ、勝てるかもな。絶対に行かせないようにしよう。


「それとマキナ君、君を転送するのってP消費凄いから無理。セラもだけど、君らは移動する場合、全部自分でお願いします。Pも結構目減りしてきたからね」

「残りのPは、再度増えて、およそ7万Pとなっております」

「めちゃくちゃ増えてるっ」

 一体どれだけの犠牲を……。音声鳴り響いてたけど……。


「ご主人様が私を普通にお作り下されば、10万P余っていたのですが」

「……、ま、まあその分頑張ってくれ」

「善処します」


「そうだ、マスター将棋か囲碁しようぜー。チェスとかオセロってやつでも良いぞ」

「明日な。っていうかお前が壊したからどっちも盤ないし」

「作れよ、10Pくらいだろ?」

「なに高級なのにしようとしているんだ、明日な。もう寝なさい。良い子は寝る時間よ」

「ぶーぶー。あれ、つか寝床はー?」


「竜なんだから、どっかの洞穴で寝たら良いじゃん」

「嫌だよ、あれはあれだぞ、自分のテリトリーで寝てるわけで、洞窟が好きなわけじゃないからな?」

 知らないよ。


「アタシのテリトリーはここ、だからマスター、寝床」

「はいはい」

 俺は20Pを消費し、布団を生成する。ちょっと高級な、キングサイズの布団。掘っ建て小屋の大半が埋まってしまうが、問題ない。こんな高級なのに20Pだなんて、安すぎるぜ。


「これくらいあれば3人は寝れるな」

「えー狭い」

「不埒ですね」

「いやそういう考えじゃなく、Pの節約です。健全ですよ」


「まあどうでも良いけどよ。おやすみー」

「あ、コラ、体を洗ってから寝なさい」

「竜は汚れないからー。――スースー」

「寝るの早いっ」


 確かに種族特性を見た感じ、汚れはしないんだろうけど、ううーん。

 しかし、Lvが上がっても、アホの子さ加減は変わらないようだ。なんだか一安心……して良いのかどうなのかは分からない。

「じゃあ俺達もそろそろ」


「私が召喚した蝙蝠達によりますと、あの軍は……」

 続くの? あれ……、寝る流れじゃないの? 俺達も。

「ダンジョンモンスターやダンジョンマスターに、食事や睡眠、排泄は必要ありませんので」

 心読まれた。


「何か?」

「い、いや、でもほら。俺人間種だから、こう、気持ち的にいるじゃん? 君らもダンジョンマスターの俺基準になるんだし、気持ち的に食事睡眠ってしたいだろ?」

「私は吸血鬼ですから、夜の方が調子も出ますので。今夜は、いえこれからは、寝かせませんよ」


 ……そのセリフにハートがついていないだけで、こんなに怖くなるとは思いもしなかった。異世界の知識は、今日も肝心なことを教えてくれない。

質問感想、毎度のことながらお待ちしております。


誤字脱字も読み返すと毎回直しを入れる事態となっております、御見苦しいかと存じますがご容赦下さい。また教えていただけると幸いです。


3人目登場は10話となります。今後とも引き続きよろしくお願い致します。

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