第100話 37階層守護者、シェリー。
ダンジョンマスター心得その17
ダンジョン同士仲良くして、切磋琢磨していきましょう。
37階層。
干支階層の中で南西微西に位置するそこは、申、シェリーが守護者を務める、真似と成長の砦。
侵入者に課される試練は、即座に自らの技を真似してくるサル達と戦い、それを上回ることで乗り越えシェリーを倒す、というもの。
フィールドは砦なのだから、サル達は砦を守っていて侵入者が砦を攻める。
用意された砦は1つではない。階層の内側、中間、外側、と3層に渡って設けられており、その3層全てに10以上の大小様々な砦が設置されているのだ。
侵入者は、まず外側の砦を攻める。その際、外側にある砦ならば、どの砦を攻めても良い。
砦は大小が様々などころか、能力も様々。防衛能力や攻撃能力を持った砦や魔法的な防御能力を有した砦から、ただの丘や柵があるだけの広場まである。
そのため落としやすい砦や有利な戦いを展開できる砦を、自由に選択可能である。
しかし砦を落とすと、今度はその砦を守る防衛戦が始まる。
逃げて行ったサル達と入れ替わるように、別のサル達が大挙して押し寄せてくるのだ。
ここで守りきれば、その砦はクリア。今度は中間層の砦を攻められるようになる。もちろん中間層の砦を落とせば、また攻められる。
つまり、落とし難い砦を選んだなら、攻める際に不利になり、落とし易い砦を選んだなら、防衛の際に不利になる、ということ。
防衛戦時の不利は、大きく響くと思われる。ダンジョンは侵入者にメリットを与えるほど恩恵を受けられるため、砦の防衛力と得意な場所を選択できる余地を与えたなら戦力はかなり向上するのだ。おそらく厳しい。
だが、かと言って落とし難い砦を選べば、攻める際に多くの技を必要とする。技が真似されてしまう以上、防衛戦時にその技が多数使われることになるため、どちらにせよ防衛は苦しくなる。
それでも頑張って勝ち進み内側に辿り着いて、どの砦を攻めるか選択すれば、そこでボス戦だ。その砦にはシェリーがいる。
そこを落とし、守りきったなら、階層攻略完了。もちろん砦を攻撃している際にシェリーを倒せたならば、その時点で階層攻略完了である。
必須とされる移動距離は、もしかすると一番短いかもしれない。
極端な話、平坦な道をほぼ一直線に5km進めば良いだけだからだ。もちろんそれには破格の強さが必要になるが、不可能ではない。
とは言え普通に攻略したなら、移動は砦攻略と防衛のため多くなるし、総移動距離はかなり長いものになる。
また、おそらく37階層は移動距離だけでなく、攻略にかかる時間も、かなり長いものになるだろう。
3つの砦を奪い、3つの砦で守ることになるここでは、つまるところ大規模な集団戦を6度行うということだ。
それも、力、知力、気力、それぞれを消耗して、どれがか空になったタイミングでしか決着のつかない戦いが。そんなものが短時間で終わるはずがない。
さらに魔物側に真似をする特性がある以上、戦い方は似通い噛み合い始め、拮抗する場面が多くなるだろうし、膠着状態にも陥りやすくなる。
そのため、いかに粘り強く、そして向上を求められるかが、ここでは進むために最も重要である。
だがしかし。中には、そんなものを必要としない者もいる。
例えば、極大の広域攻撃を得意とする、強者。
彼ら彼女らは、ともすればたった一撃で戦いを終わらせることが可能である。
例え相手が砦に引きこもっていようとも、極大の魔法で砦ごと破壊し、例え相手が砦を囲んで来ようとも、極大の魔法で軍勢を崩壊させる。そう、そんな者であれば、この37階層など、たったの4手でシェリーの元まで辿り着くことができ、ともすれば合計5手で階層を攻略できるかもしれない。
37階層に侵入してきた魔物は、金華妖狐。
生成に1100Pも要する強大な種族であり、妖狐系の魔物の中でも強力な部類。魔法能力が凄まじいことはもちろん、妖狐系として特異で強力な種族特性を数多く有する。特筆すべきは、あたかも不死であるかのような、生命力や魔力の異常回復。
例え砦ごと消滅するような極大の魔法を放ったとしても、その回復法があれば、放つ前と何も変わらぬ魔力を取り戻すだろう。
例え砦に群がる多数のサル達を葬り去ったとしても、その回復法があれば、放つ前と何も変わらぬ魔力を取り戻すだろう。
金華妖狐は、息をするような自然さで、4度魔法を使って2つの砦と2つの軍勢を崩壊させた。
そしてその万全の状態のまま、あっと言う間にシェリーの下へ辿り着いた。
「さあ、終わりなさい。サウザントサンド」
体高3mを越える巨大な金華妖狐は、人語を巧みに操り、そしてそれ以上に魔法を巧みに操り、レンガで造った物見矢倉のような砦を極大の魔法で覆った。
それは金華妖狐が得意とする、土魔法。
しかしただの土魔法ではなく、土属性特有の打撃の超威力と、それとは両立しないはずの侵食力を発揮する異常な魔法。
この金華妖狐がネームドモンスターとして積んできた経験が集約されたような、最強の必殺技だった。
「こんな感じですね」
だがその魔法は、次の瞬間、同じ威力、同じ構成の魔法をぶつけられ、何も起こらなかったかのごとく対消滅した。
「はっ?」
金華妖狐は驚きの声をあげた。
先ほどまでその一撃は、砦ごと破壊できていた。
しかし今回は、ダンジョンの設定として割と簡単に破壊可能な砦が、一切壊れていない。砦の上には相変わらず、1人が立っていた。
「残念ですが、これはさっき見ましたねー。もうできるので、他の技でお願いしまーす」
それは37階層のボス、シェリー。
シェリーはあっけらかんと、この状況をまるで理解していないような口調で金華妖狐に向かって手を振る。
金華妖狐はその瞬間、目を血走らせるほどの怒りを見せた。
自慢の技をアッサリ防がれ、あまつさえ簡単な技だから別のをやれとケチをつけられたのだ。その怒りも当然だろう。
そしてその怒りのままに強大な、しかし怒っているとは思えないほど精密に技を汲み上げた。
「我が心象が現を侵すことを許したまえ、幻影の御業、恐怖の輪廻、正常回帰、不浄の理。サウザントイリュージョン」
それは金華妖狐が得意とする、土魔法、それから妖狐系全ての魔物が最も得意とする幻影魔法の合わせ技。
現実を侵食する幻術だ。
威力や発動速度こそ、先ほどの技に劣るものの、その攻撃は通常の防御法では決して防御できない。
対処は難しく、これまで何度もジャイアントキリングを達成してきた、金華妖狐の華々しい戦績を支える恐るべき必殺技である。
決して在り得ぬ幻影が、しかし在り得る現実が、シェリーに襲いかかった。
だが、それもまた、対消滅するように即座にかき消された。
「見たことはないですけど、似た様なのは見たことありますね。これ劣化版ですねっ。真似する価値はなかったですっ。他の技でお願いしまーす」
そうして、満面の笑顔で、また手を振った。
「くっ。いい加減に。炎の波動よ、踊り、舞い、燃え散らせ。サウザン――」
「サウザントフレイム」
シェリーの様子にさらに怒りを募らせた金華妖狐は、今度は火の魔法を使おうとしたが、しかし魔法完成直前に、同じ火の魔法に打ち消された。
「良い技だと思いますけど、でも知ってますねー。技名は全然違いますけど」
「な――っ」
金華妖狐は怒りの表情を、再び驚愕の表情に変えた。
さらには戦闘中にも関わらず、体の動きを完全に止めてしまった。
しかしそれも仕方ないことである。必殺技を真似されることは100歩譲って分かっても、自分の発動よりも早く放たれるというのは意味が分からなかった。
「――くっ、サウザントロ――」
「サウザントロック、ですねっ」
魔法は再びぶつかり合い、消滅した。
魔法がぶつかり合った位置は、真ん中よりも金華妖狐寄りで、つまりはまたしても自らの魔法発動よりも、後から使ったシェリーの方が魔法発動が早かった、ということである。
金華妖狐は困惑した。
意味が分からない、と。
しかし、知能の高い金華妖狐には、その現象自体の意味が分からなくても、起こっている事実が示す意味ならば分かった。
格の問題が。
「汎用的な技ですよね、便利ですけど真似する価値はないです。それより、なんで名前を全部サウザントにしてるんですかー、好きなんですか? 教えて下さーい、そこだけ教えて下さーい」
シェリーはそう言うと、目を爛々と輝かせ、震えるほどの笑顔を振りまいてた。
それが金華妖狐にとって、どれほど恐怖をもたらすのか、それは本人に聞いてみなければ分からない。
ただその顔は、見るからに絶望に満ち満ちていた。
だからだろうか。
金華妖狐の力が膨れ上がる。
金華妖狐が優れているのは回復法だ。能力を大幅に向上させることではない。
だからこれは金華妖狐の技ではない。金華妖狐のダンジョンマスターの技、そう、狂化だ。
「あああああああアアアアアアー、コレナラ、コレナラアアー、クライナサイッ、サウザント――」
狂化の力はステータスを跳ね上げる意外にも、魔法の制御力なども上昇させる効果がある。
自力で行う狂化では、精密な動作ができなくなることも多いが、それは不完全な狂化だからに過ぎない。ダンジョンマスターや神が行う完全な狂化は、必要のない理性以外の全てを上昇させる。
「――フレイムッ」
金華妖狐は先ほどまで詠唱を行ってでしか使えなかった技を、詠唱なしで発動させた。
それも、先ほど放とうとした同技とは、比べ物にならないほどの威力を持たせて。
「だからそれは見ましたって」
けれども、結果は似た様なものだった。
炎を手元から円柱状に放ち、一点を長時間焼き続けることや避けられても追尾させられるサウザントフレイムは、金華妖狐の手元でシェリーの放つサウザントフレイムにぶつかって、相殺した。
「――っ、サ、サウザ――」
「サウザントサンドですね。はい」
「サウザ――」
「今度はミラージュの方ですね。はい」
「サ、ミレニアムス――」
「ミレニアムストーンですね。知ってますよー」
「アイアン――」
「アイアンサウザントですね。それっ」
「サ、サウザントプレスッ」
「新技が来ましたねっ。でも、似た様な技はもう知ってるので大丈夫ですっ。こんな感じですよね?」
それは、何度も何度も。
金華妖狐が何度魔法を使おうとも、それは金華妖狐の手元で毎度毎度相殺された。
例え今しがた思いついた新技を使っても、同じ結果にしかならない。
金華妖狐の特筆すべき点は、あたかも不死であるかのような、生命力や魔力の異常回復である。
だから、間近で相殺されその余波をその身に受けても、生命力は変わりない。極大の魔法を何度放っても、魔力は変わりない。どちらも十分で、戦うのに支障はない。
けれども回復できないものとてある。
金華妖狐は、再び魔法を使おうと、体に力を込めた。
「サ――」
「はい」
しかしそれと同時に、シェリーも右手を前に向ける。
ビクっと金華妖狐の体が震えた。
そして、もう次の言葉を紡げなくなった。
これ以上言葉を発せば、魔力を込めれば……。どうなるかが如実に分かってしまっているからだ。
「……」
何をしてもそっくりそのまま返される、それも自分が先に使っているのに、自分より早く使われて。それは、一体どれほどの恐怖があるのだろう。その恐怖は、金華妖狐の心に回復できないダメージを与えた。
「止まっちゃいましたけど? あ、もしかして新技ですかっ? 良いですねっ、あ、そうだ私は、37階層、第九の鎖の番人、シェリーです。1番真似のできる種族は金華妖狐で、尊敬する種族も金華妖狐です」
シェリーは砦からぴょんと飛び降りる。その顔は、とびっきりの笑顔で、ハツラツとした笑顔で、元気な笑顔で、見る者誰しもに明るい光を差し込むものだろう。
誰しもが、同じくらいの笑顔に変わるだろう。
しかしその笑顔を一身に受けている金華妖狐の顔に、笑顔は一切なかった。
「さあ、もっと頑張って、私に真似させて下さい。限界を越えて、この先使ってくるかもしれない技を見せて下さいっ。どうぞっ」
37階層は、真似と成長の階層。
侵入者は砦を攻略するために使った技を、砦防衛の際に使われる。そして次の砦攻略の際に、先ほど防衛の際に使った技を使われる。同じ力、同じ練度で。
だから、成長するしか勝ち目はない。
いかに粘り強くそして向上を求められるかが、進むために重要とは、そういう意味だ。
ゆえに、この真似と成長の試練の37階層では、諦めた者から死んでいく。
「絶対できますよー、頑張って下さーい。待ってまーすっ」
金華妖狐は狂化され、理性が薄れているにも関わらずその場に立ち尽した。
指1本動かすことさえ真似されてしまいそうで、恐怖のあまり動かせない。できたのは、そう、無力さに涙を流すことだけだった。
37階層に挑んだ海ダンジョンの金華妖狐は、ボスに勝利すること叶わず、敗退した。
『 名前:シェリー
種別:ネームドモンスター
種族:ラーニングモンキー
性別:女
人間換算年齢:16
Lv:209
人間換算ステータスLv:299
職業:第九の鎖の番人
称号:対抗不能の何でも屋
固有能力:本物を越える模倣 ・模倣した際、補正が入る。模倣物や模倣技法のもたらす効果が向上する。
:弛まぬ天才 ・言動の全てに補正。
:ホ時の思い出 ・15時から17時の間、全ての行動に対し補正が入る。12人の味方の内最も南西微西にいるとさらに補正。
:猿化 ・猿の姿になることができる。
:複写の魔眼 ・左右、発動した、もしくは発動されている固有能力や種族特性などを一定時間発動できるようになる。
種族特性:高い学習能力 ・学ぶことに補正。
:障害機動 ・障害物がある方が、移動力が向上する。
:秩序 ・制定されたルールに従う際ステータス上昇。
:進化の途中 ・対象の成長に合わせて、同じように成長できる。
特殊技能:ヴァイタルドレイン ・生命力を干渉するたびに吸収する。
:マインドドレイン ・気力を干渉するたびに吸収できる。
:オールキュアップ ・全ての能力を上昇させる。
:シックスセンス ・未来予測に匹敵する勘を手に入れる。
:トリックアート ・思い描いた効果をもたらす細工を施すことができる。
存在コスト:1800
再生P:11000P 』
これだけは言わせて欲しい。
「対策がバッチリ過ぎるっ」
対策をバッチリし過ぎて、完封しちゃってるじゃないか、他所のダンジョンの最強を。
君達は果たして、自分の階層を把握しているのだろうか。
29階層から40階層だよ?
攻略するためのLvの目安はLv60~Lv100だよ? 冒険者で言うなら、D級、強い人ならF級E級でも来られる階層だよ?
君達は果たして、自分の役割を把握しているのだろうか。
俺がどういった目的で君達を生成したか知っているかい?
新人冒険者に様々な試練を与えて、成長してくれることを祈ってだぜ?
一体君達は誰を倒しているんだっ。
100階層のネームドモンスター、それから500名の軍隊、Lv200、勇者、英雄、転移者、転生者。
新人冒険者に立ちはだかる壁が高過ぎるだろっ。
「あとやっぱり恨みが凄いっ」
金華妖狐相手の恨みが根深すぎる、倒し方が完全に鬱憤を晴らす戦い方じゃないか。
普段は元気印みたいな言動してるのに、怖いよっ、ヤバイやつだよ。いや普段から割とヤバイやつだけどさ。……普段からかなりヤバイやつだけどさ。
「帰って参りましたよ王様ーっ。たっだいまでーすっ」
すると、玉座の間にヤバイやつ、シェリーが戻ってきた。
黄土色のツインテールの美少女は、先ほどまで激しい戦闘を行っていたとは思えないような風体と、元気ハツラツな顔をしている。
シェリーはダッシュで俺の元までやってくると、フライングクロスチョップをかましてきた後、俺が何の映像を見ていたかを確認して、言う。
「あんまり真似できなかったので恥ずかしいですっ。私の予定ではもっと新技をたくさん見て、たくさん真似するところを、王様に見てもらいたかったんですけど」
そんな風に、ちょっと明るさを失った声で。
そう言った後は、もう何も言わず、悲しげに俯くと今度はそれを隠すように笑って、しかしやはり俯いて悲しげに笑って。
「あー……シェリー」
「なんですかっ?」
数秒の沈黙があって、シェリーは悲しげな顔をさらに悲しげにしたが、俺が声をかけた途端、無理に笑うような目に変わる。
だから、俺は、こう言った。
「十分さ。最高の真似っ子だったぜ、シェリー」
もう自分でも何を言っているか分からないが、元気印のようなシェリーにこんな悲しい顔をさせたままだなんて、そんな選択肢こそ俺には分からない。
「いえ、そこは私、プライドがあるので」
あれ断られたっ。
は、初めてのパターンだ……。
「帰りました王様。シェリーの方が早かったみたいだね、お疲れ。どうだった? というかサハリー、起きて起きて」
「ぐぅすぅ、コーリーの背中は、最高のベット。コーリーは最高、最高、とっても必要。だからぐぅぐぅ」
腕を組み、真似職人としては今回の戦いは……と眉間にシワを作って語りだすシェリーに、戦闘を終え玉座の間へと帰ってきたコーリーとサハリーが声をかける。
するとシェリーは険しい顔をパッと笑顔に変えて、ダッシュで2人の方へ向かって行った。
「最高? 必要? ……じゃあ仕方ないなあ、お風呂までくらいならおんぶしてってあげるよ」
「お風呂の中までも行ってくれればなお最高……」
「そのコーリーさん操縦術っ、素晴らしいですっ。教えて下さいっ、教えて下さーいっ」
「操縦術っ? そんな、別に操縦なんてされてないよっ」
「コーリー操縦術は秘密。これは秘密ううううううう、うううううああああうううううああああー」
「教えて教えて教えて下さいっ、私も乗りますここにーっ」
「操縦術あるのっ? え? というかシェリー揺らさないで揺らさないで。乗らないでっコラ降りなさい」
「コーリー最高。やってくれると信じてる」
「コーリーさん最高です。やってくれるって信じてますっ」
3人は、パーソナルスペースなどどこ吹く風とでも言うような距離にまで近づいて、それどころか3人重なってニコニコ笑ってお喋りしながら、玉座の間から出て行った。
うんうん、勝って良かった。
あんな笑顔が見れるんなら、本当に勝って良かったと思う。
心からそう思います。
コーリーが順調に悪い未来へ進んでいる気もするが……、まあ良いだろう。
俺は、目の前に出しているいくつかの映像の内、現在戦闘中の干支階層の映像に目を移す。
干支階層への侵入は、時間差で行われているため、コーリー、サハリー、シェリーの3人は終わってしまったが、残る3人の所はまだまだ終わっていない。
だから俺は――。
「次に見る子は、まともな戦いをしていますように。せめて普通の戦いをしていますように」
そう祈――。
『んぎもちいいいいっ。王様あー王様あー、早く見て下さい。タキノちゃんのことメスブタのように鳴くあられもない姿をっ、早くううううんぎもちいいいいっ』
「……」
……。
……。
それが、まさか叶わない願いだとは、この時の俺には、知るよしもなかった。
お読みいただきありがとうございます。
投稿ペース下がり中です。頑張ります。




