「霧の森」
第8話「霧の森」
ふぁーあ、眠たい目をこすりながらベッドから起きる
「おはようユリア」
「おはよう、キミ魔力は戻ったかい?」
「うん、完全に回復したよ」
僕はユリアと話しながら服を着替える、この服はここの元の支配者の物らしい、シンプルな服だがローシャいわくセンスが無いとのことだ、でも替えの服が無いのだから仕方がない
着替え終わりローシャのいるはずの食事場に行く
「ローシャさん入りますよ」
ノックをしてドアを開ける
「あれっまだ寝てるのか」
ローシャは机の上で眠っていた、きっと昨日の夜遅くまで何かしていたんだろう
「朝ご飯作っちゃおうか」
「そうだね流石にこれ以上あれが続くのは勘弁だし、キミの料理も食べてみたいしね」
材料がないか置いてある冷蔵庫を開ける
「えっ、普通の食べ物が入ってる..」
驚いたことに冷蔵庫の中には一般的な食材が入っていた、一体誰が入れたのだろう
「ボクは何もしてないしローシャもそうだろうから元の支配者が入れたんじゃないかな」
ようやくまともな食事にありつけるのだ食材の出どころはこの際気にしない事にしよう
「じゃあ僕は材料を切ってるからその間に火の魔石を取ってきてもらってもいい?」
「わかったよ」
ユリアが部屋を出て行く
冷蔵庫に入っていたのは肉、野菜、魚、米、パンなど一般的な食材だった
「じゃあせっかく火の魔石を取ってきてもらうんだし魚でも焼こうかな」
冷蔵庫から魚を取り出す
「取ってきたよ」
ユリアが帰ってきた
「ありがとうユリア」
魔石を受け取り料理を進める
「よしもうすぐ完成だ、ローシャさん起きてください」
料理を盛り付けながら後ろの机で寝ているローシャに声をかける
「ううーん、もう朝なんか?」
ローシャが背伸びをして席を立つ
「あかん、昨日の資料片す前に寝てもうたわ」
そういってローシャは机の上にあった本を手に奥の部屋に向かう
本のタイトルがちらりと見える、「呪術辞典」確かにそう書いてあった一体何を研究しているのか
そう思いながら料理を机に配膳する
「今日の朝食智也が作ったん?」
ローシャが部屋から出てきて驚く
「はい、冷蔵庫に食材が入ってたんでそれを使って作りました」
「ありがとうな、ほな早速食べよか」
朝食を食べ終わり食器を片付ける
「今日の練習なんやけどな、うちは用事があって付き合えへんから霧の森で魔獣狩りでもしたらどうや?」
「わかりました、霧の森って洞窟の側にある場所ですよね」
「そやで、あそこは名前の通り夜になると霧が出て帰れなくなってまうから日が落ちる前に帰ってくるんやで」
その時洞窟がグラリと揺れる
「なんやっ」
だが揺れはすぐに収まった
「地震ですかね」
この世界でも地震が起こるのだろうか
「今までは一回もなかったんやけどな、ひょっとしたら昨日の練習で洞窟にヒビが入ってもうたんかもな」
さらりと恐ろしいことを口にする
「洞窟が崩れそうになったらすぐに逃げてくださいね、じゃあ行ってきます」
部屋を出てユリアと森へと向かう
ローシャの側に影が現れる
「智也君はもう行ったかい?」
「もう大丈夫やで」
「そうか、ところで例の件はどうだったんだい?」
ローシャが手をひらひらさせる
「全然ダメや、あれは相当なもんやで早くてもあと2日はかかるんちゃうかな」
「宝石姫にそこまで言わせるとはね、流石は僕の好敵手といったところか、何か原因はあるのかい?」
洞窟の中で物語の影は進む
「キミこっちであってるのかい?」
地図を出しながら森に入る前の林を歩く
「もうすぐ見えてくるはずだよ、あっ」
突然景色がガラッと変わる、どうやらここが境目のようだ
「霧の森、ここも参加者の誰かと関係してるのかな?」
「ここは参加者とは関係がないと思うよ、森自体が魔力をもってるわけじゃないみたいだし夜に霧が出るっていうのも自然現象なんじゃないかな」
森の奥へと入って行く、森の木々が光を遮り森の中は暗く生き物もいなかった
「魔力を感じる、魔獣が近いよ」
「そうだね、この感じ前に戦った時と同じだ」
警戒しながら前へと進む、すると木の陰から魔獣が飛び出してきた
「一匹だけなら!<アイスブレード>!」
手に創った氷刀で魔獣を切り裂く
背後からももう一匹襲いかかってくる
「甘い!」
身を翻し一刀両断する
「この程度ならどうにかなりそうだね」
「キミ、油断はしないようにね」
森の中に赤く光る目が何個か見えた
「怒らしちゃったみたいだね」
前方から魔獣が5匹飛びかかってくる
「練習相手になってもらうよ、凍り付け!」
魔獣が氷塊と化す、そして
「魔に帰れ<マジックトランス無>」
魔獣は氷の中で砕け消滅した
「ずいぶん上手くなったね」
「昨日あれだけ練習したしね」
それから魔獣を倒しながら森の奥へと進んでいった
「なんか少し魔獣の数が減った気がする」
「そうだね、それに魔獣とは違う魔力を感じるよもしかしたら他の参加者かも」
突然辺りが霧に包まれる
「夜まで出ないんじゃなかったのか」
「この魔力、嫌な予感がするキミ早く戻るんだ」
ユリアが緊迫した表情を見せる
僕は走ってきた道を戻って行く、だが走れど走れど景色は変わらない
「まずいな、この霧が空間を歪めているのか?」
「空間が歪んでいるというよりボクたちが霧の中に囚われたようだけどね」
突然目の前に大きな赤い光が見える
「もしかして魔獣?」
その光はこちらに迫ってくる、そして突如にその姿を現わす
それは今まで見てきた魔獣の10倍ほどの大きさの魔獣だった
とっさに横へ転がり魔獣の突進を避ける
「あんなのも出るのか、まずいな霧で視界が..」
少しでも距離を取ると魔獣の姿は赤く光る目だけになってしまう、それでも相手は的確にこちらを狙ってきた
もしかして僕の魔力を頼りに攻撃してきてるのか、ならこっちも同じことが出来るかも
目が近づいてくる、相手の魔力を感じ距離を推測する、そして上に跳躍した
「ここだ!<氷槍-ブリザードランス>!」
真下に氷の槍を投げつける
ヴガァー、魔獣の苦しむ声が聞こえる
そのまま地面に降り立つ衝撃で斬りつける
「<アイスブレード>二刀流!」
魔獣は苦しみ悶えながら奥へと逃げようとする
魔獣の後を追おうと前方へ走り出す、すると魔獣の目の光が突然消える
「キミ!戻るんだ早く!」
ユリアに言われて前に進もうとしていた足を踏み止める、その瞬間僕の目の前に武具のようなものが飛んでくる
「なんなんだこれ」
武具は地面に突き刺さるとふわりと霧のように消えてしまった
「外してしまいましたか、君には痛い思いをさせてしまいますね非常に残念です」
目の前の霧が晴れる、現れたのは僕の3倍はある太った人間のようで霧のような不可解な存在だった
「お前がなんでここにいるんだい、<霧の魔神-ファフス>!」
次話 霧の魔神
第8話いかがだったでしょうか
霧の森に突如現れた本来ならいるはずのない幻想種
その存在を皮切りに物語は大きく動き始めます
では次の物語で
作者の二度寝により更新は朝の7時の予約投稿にしたいと思います、魔法図書館編についてはその日に書いている関係で投稿が遅くなります
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