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第五十三話「ケットシーの村に向かう前に魔物娘達と語り合っていたら、エリカが積極的すぎた件について」

 アナスタシアが石の魔法で作り上げた浴室に入る。

 どことなくイステルの大浴場に似ている気がする。

 浴槽には水の魔石で水を満たし、火の魔石を入れて水の温度を上げているのだろう。


 やはりアナスタシアは地属性に特化した魔物だからか、造形魔法もお手の物だ。

 石の盾や壁を作り上げて敵の攻撃を防げるのだ。

 小さな家や風呂を作る事は造作もないのだろう。


 暫く湯船に浸かっていると、エリカが浴室に入ってきた。

 彼女は俺の背中に寄りかかり、静かに天井を見上げている。


「本当に不思議な魔法だな……石から家や風呂が作れるのだから」

「そうだね、アナスタシアの魔法にはいつも助けられているよ」

「私は敵を燃やす事しか出来ないが、アナスタシアの様にラインハルトの役に立つにはどうしたら良いだろうか……」

「今でも十分助けて貰ってるよ。エリカは今のままで良いんだよ」

「そ、そうか……私は料理も出来ないし、アナスタシアみたいに優しくもないし、フローラみたいに空気が読める訳でもないが、それでもお前は私の事が好きか……?」

「ああ、俺はエリカが好きだよ」

「本当に本当か……? ずっと私を愛するのか? 浮気などはしないよな?」

「本当に本当だよ。エリカって意外と心配性だよね」


 エリカが振り返り、俺の背中に抱き着く。

 体にタオルを巻いていても、彼女の豊かな胸の感覚が伝わってくる。


「お前は女ばかり増やして、私と過ごす時間が減っているではないか……全く、とんでもない浮気男だな! 次から次へと女ばかり増やして……」

「ソロモン王の加護の関係上、魔物を封印したら人間化するんだから仕方がないだろう?」

「それは分かるが……お前は私のだけのものなのだ……私が初めて心から信じた人間を奪われたくないのだ……」

「じゃあこれからもずっと傍に居れば良いだろう? 俺はエリカとずっと一緒に居るつもりだよ」

「約束だな……? 間違っても人間の女と付き合ったりはしないな?」

「約束だよ」


 エリカの方を振り向き、彼女の小さな頭を撫でる。

 随分を吸収したタオルが彼女のDカップの胸の形をはっきりと浮かび上がらせている。

 視線を落とせば豊かな胸の谷間が見える。


 エリカは鋭い三白眼を嬉しそうに細め、満面の笑みを浮かべながら俺に抱き着いた。

 彼女の胸が俺の胸板に当たり、思わず嬉しさと緊張を感じる。


「これからもお前は仲間を増やし続ける事だろう……だけど、私と過ごす時間は確保してくれよ……全く、ラインハルトったらどれだけ女好きなのだ。次から次へとタイプの違う女を増やして。私はいつも新しい女が増える度に胸の辺りが苦しくなる……この気持ちはなんなのだ? ラインハルト……」


 エリカが俺の手を取り、自分の胸に押し付けた。

 柔らかな彼女の胸の感触と温かさに思わず胸が高鳴る。


 浴室の扉が勢いよく開くと、酒瓶を持ったギレーヌが入ってきた。

 それからフローラ、アナスタシア、レーネも浴室に入って来る。


 ギレーヌは豪快に浴槽に入ると、エリカから俺を引き離した。

 それから俺の肩に腕を回し、酒瓶を俺の口に当てる。


「まぁ飲め。今日は宴だからな!」

「ちょ……風呂でお酒って……」

「お前さん、あたしの酒が飲めないってのか? それとも、エリカとイチャイチャしていたかったのか? 邪魔して悪かったとは思わねぇぞ。お前さんはあたしの主でもあるんだからな!」

「それはそうだけど……」


 ギレーヌが俺を抱き寄せているからか、彼女のGカップの胸が体に触れる。

 ギレーヌはそんな事はお構いなしに、酒を呷って俺の頭を撫でる。


「ラインハルトさん……明日はエステルさんの村に行くんですよね?」

「そうだよ。まずはシュターナーの付近に巣食うブラックベアを討伐しようか」

「王都ファステンバーグまではまだ掛かりそうですね」

「ああ。だけど、あちこち見て回るのも良いんじゃないかな」

「はい……私はダンジョンの中で育ったので、今の生活が本当に新鮮で、毎日が幸せですよ。出来る事ならずっとこうして皆さんと暮らしたいです」

「大丈夫、ずっと一緒に居られるよ」

「はい! 王都での生活も楽しみですけど、旅の生活も様々な出会いがあって面白いですね」


 俺の隣に腰を掛け、タオルで体を隠しながら微笑むフローラに見とれる。

 シミやシワ等とは一切無縁の様な透き通る白い肌が美しい。


 それからアナスタシアとレーネが浴槽に入ると、俺は目のやり場を失った。

 仕方がなく天井を見上げ、誰の体も凝視しない様に気を付ける。


 すると、俺の膝の上にレーネが乗った。

 彼女はいつもこうして俺の傍に居てくれるのだ。


「ラインハルト、レーネはシュルスクのパイが食べたいよ」

「そうだね、俺も甘い物が食べたいな。王都に着いたら作ってあげるよ」

「ラインハルトはエステルみたいな獣人が好き?」

「別に、獣人が好きって訳でもないけど、ケットシーは可愛いと思うよ」


 獣人という単語に反応したアナスタシアがゆっくりと近づいてくる。

 俺からレーネを引き離し、何故か彼女が俺の膝の上に乗る。


「え……? アナスタシア!?」

「お主はわらわが膝に座るのは嫌かの……?」

「嫌ではないけど……恥ずかしいというか……」

「レーネは恥ずかしくなくてもわらわは恥ずかしいという事かの? お主はわらわを女として見てくれているのじゃな。そうじゃ、わらわ、お主が寿命を迎える前に子を作りたいぞ」

「は……!? 俺とアナスタシアの子供!?」

「うむ。何を驚いておる? お主はわらわが嫌いなのか?」

「いやいや、またエリカみたいな事言わないでよ」

「わらわは妖狐じゃからな、もう千年も生きておる。きっと強い力を持った人間にでも襲われん限りは永遠と生き続けるじゃろう……お主が寿命を迎えても、お主の子が居ればわらわは幸せに暮らせるじゃろ?」

「それはそうだけど……」


 俺は将来、魔物娘と結婚でもするのだろうか?

 いや、人間と魔物が結婚したという話は聞いた事が無い。

 魔物との間に子を作った人間の話は何度か聞いた事があるが……。

 元々、獣人も人間と魔物が交わって生まれた種族だ。


 俺が魔物娘達と愛を育むのか。

 確かに彼女達は人間にしか見えないが……。


「ゆっくり考えさせてくれるかな?」

「勿論じゃとも。わらわは急ぎはせん。ラインハルトや、わらわは先に上がるからの」

「ああ、俺もすぐ上がるよ」


 それから俺はギレーヌの背中を流し、仲間達と雑談してから風呂を出た。

 エステルはすっかり疲れ切っているのか、部屋の隅で体を丸くして眠っている。

 こうしていると普通の黒猫にしか見えないが、彼女も魔物なのだ。


 明日の早朝にシュターナーを目指して移動を始める。

 今日は早めに眠り、魔力と体力を回復させ、万全の状態でブラックベアを討伐しよう。


 馬車の家から布団を出して床に敷き、川の字になって皆で眠る。

 俺はエリカとアナスタシアに挟まれ、エリカは珍しく俺の胸に顔を埋めている。

 エリカは仲間が増えて自分と過ごす時間が減ったと言っていたな。

 強気な態度とは裏腹に、意外と寂しがり屋な彼女もまた可愛く感じる。


「ラインハルト、眠るまで抱きしめてくれる……?」

「ああ、良いよ」


 パジャマ姿のエリカを抱きしめ、暫く目を瞑っていると、彼女はすぐに眠りに就いた。

 アナスタシアが背後から俺の体に触れると、俺は振り返ってアナスタシアを見つめた。

 赤と緑色のオッドアイが何とも美しく、垂れ目気味の瞳を細め、俺の頬に手を触れた。


「ラインハルトや……わらわも抱きしめてはくれんかの……?」

「寂しいの?」

「そうではないぞ……ただ、お主のぬくもりを感じていたいだけなのじゃ」

「恥ずかしい事言わないでよ」


 アナスタシアを抱き寄せ、彼女の細く艶のある銀色の髪を撫でる。

 恍惚とした表情で俺を見つめるアナスタシアに思わず見とれる。


 魔物娘とは何と美しいのだろうか。

 特に、人間化したアナスタシアは仲間達の中でも格別に美人だ。


「わらわはお主が作るお稲荷さんが大好きじゃ、わらわはお主と過ごす時間が何よりも好きじゃ、わらわはずっとこんな時間が続けば良いと思っておる。ラインハルトや、わらわを強く抱きしめておくれ……」

「……」


 無言でアナスタシアを抱きしめると、彼女は俺の腕の中で幸せそうに眠りに就いた……。

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