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第四十一話「オーガも酒呑童子も人間の事が心から好きだったみたいなので、親睦を深めるために宴を開く事にした」

『Lv.43 Cランク・オーガ 好感度:95%』


 ヴィルフリートの好感度が大幅に上昇している。

 これなら彼を人間化出来るかもしれないな……。


「イザベラと出会ってからの三カ月間。本当に毎日が楽しかった。こんな時間がずっと続いて欲しい。だけどイザベラには家族も居る。俺達オーガと暮らし続ける訳にもいかないんだ……」

「ヴィルフリート、素直になれよ。君は心からイザベラの事が好きなんだろう?」

「それはそうだ……! 初めて他人を好きになったんだ! 俺はこれからもイザベラと一緒に居たい!」


『Lv.43 Cランク・オーガ 好感度:100%』


 視界に映る好感度が強く輝いた。


「イザベラ、ヴィルフリートが人間だったら良かったと思ってるんだよね」

「何を言っているの……?」

「俺と手を繋いで、ヴィルフリートの体に触れるんだ」

「え……?」


 イザベラが恐る恐る俺の手を握った。

 二人でヴィルフリートの体に触れる。


「ヴィルフリート・封印!」


 瞬間、オーガの肉体が雷光のごとく光り輝いた。

 思わず目を瞑ると、俺の目の前には褐色の青年が立っていた……。


 身長百八十センチ程のイケメン。

 オーガが人間になればこんな容姿になるのか。


「嘘……信じられない……本当にヴィルフリートが人間に……!?」


 ヴィルフリートは不思議そうに体を触り、慌てて下半身を隠した。

 それから布を巻くと、跪いてイザベラの手を握った。


「俺と付き合ってくれないか?」

「ええ……! 嬉しいわ……ヴィルフリート……」


 俺は困っている人間を支えるサポーターである。

 これからは人間に恋をする魔物の願いを叶えるために働くのも良いだろう。

 人間化の力を目の当たりにしたオーガ達が一斉に俺を取り囲んだ。


「俺も人間にしてくれ!」

「いや、俺が先だ! 俺も人間になって若い娘と付き合うぞ!」

「いやいや、俺は人間になって冒険者という職業に就きたいんだ! 人間になればこんな山奥で暮らす必要もないからな! 俺達は人間になってイステルで暮らすんだ!」

「おう! 俺達全員で人間になろう! さぁ早く俺達を人間に変えてくれ!」


 話が思わぬ方向に進み、戸惑いながらオーガの言葉を聞く。

 雷山のオーガを人間化し、イステルで暮らせる様にサポートするのも良いだろう。


 イステルは人間化したCランクのオーガの力を借りられる。

 元々人間好きだったオーガ達は人間と共にゴブリンを狩りながら暮らせる。

 お互いにとってメリットしかないのだ。


「どうした……お前ら、騒がしいぞ」


 背後から禍々しい魔力を感じると、俺は慌てて振り返った。

 まるでイフリートの時の自分を見ている様だ。

 全身の筋肉が異常なまでに発達した巨体の酒呑童子。

 体には魔物の毛皮を纏っており、赤い髪はだらしなく伸びている。

 まるで人間とオーガの中間種の様だ。

 頭部からは二本の赤い角が生えており、瞳の色も体毛と同じ赤色だ。


 エリカよりも鋭い視線が俺を震え上がらせる。

 手には金属製の棍棒を持っており、人間化したヴィルフリートを見下ろしている。


「ヴィルフリートが急に人間に変わった様な気がしたんだが、お前はヴィルフリートなのか?」

「そうだ、お頭。俺はビアンカと共に人間の村で暮らす」

「人間の村? イステルの事か。しかし……世の中には不思議な力があるものだ。魔物を人間に変える事が出来るとはな。お前の仕業か?」


 酒呑童子がイザベラを見下ろした。

 イザベラは酒呑童子を恐れているのか、慌てて首を横に振り、俺の手を握りしめた。


「魔物を封印したのは俺だよ。酒呑童子」

「ほう、鬼語を話せる人間とは珍しいな。ここには何の用で来た? 人間」

「俺は冒険者のラインハルト・シュヴァルツ。ここには酒呑童子とオーガが人間の敵なのか調べに来たんだ」

「それで、ラインハルト・シュヴァルツ。お前は俺達を敵だと判断したのか?」

「いいや。オーガは人間を守る神聖な魔物だと理解したよ」


 レーネとフローラが俺の背後に隠れた。

 格上の魔物に怯えているのだろう。

 アナスタシアだけが涼しい笑みを浮かべている。


「そうかそうか! やっと話が分かる人間と出会えたという訳か。こいつはめでたい! 今日は共にエールを飲み明かそうではないか」


 恐ろしい酒呑童子が微笑むと、仲間達は胸をなでおろした。

 視界に酒呑童子のステータスが映っている。


『Lv.63 Bランク・酒呑童子 好感度:40%』


 やはり人間に友好的な魔物は初期の好感度が高い。

 それに酒呑童子のレベルは60を超えている。

 肉体も屈強だが、体内には強い魔力を秘めているのだろう。


 イザベラとヴィルフリートはお互いの望みが叶った事が心から嬉しいのだろう。

 微笑み合いながら手を握っている。


 ヴィルフリートを封印した事により、俺自身も雷属性を得た。

 新たな魔法、サンダーとエンチャント・サンダーの魔法を習得した様だ。


「イザベラ、俺は封印した魔物と強制的に召喚契約を結ぶ力を持っているんだけど、今のままではヴィルフリートが俺の召喚獣になってるから、ヴィルフリートと召喚契約を結んで貰って良いかな」

「ええ、ヴィルフリート、私の召喚獣になりたい?」

「ああ。勿論だとも。いつでもイザベラが俺を呼び出せる様に、俺は君の召喚獣になりたい」


 召喚契約を結べば、召喚の魔法陣を使用して魔物を呼び出す事が出来る。

 俺は一度も使用した事がないが、離れていても仲間を呼び出せる。


 それからイザベラがヴィルフリートと召喚契約を結んだ。

 俺のギルドカードからヴィルフリートの項目が消えている。


「ラインハルトさん、魔物を封印しても仲間にならないって、何だか珍しいパターンですね」

「そうだね。今までは封印した魔物はみんな仲間になってたから」

「サシャさんもビアンカさんの事が気になってるみたいですし、王都を目指す旅には同行出来ないんでしょうね……」

「ビアンカ達はイステルの冒険者だから、きっとサシャはイステルに残るだろうね。俺と召喚契約を結んだからといっても、常に俺と一緒に居なければならない訳でもないからね」

「そうですよね。それでも私はラインハルトさんと一緒に居たいですよ」

「レーネも一緒に居る!」

「勿論わらわもじゃ……」


 レーネとアナスタシアが俺に抱き着くと、俺は彼女達の頭を撫でた。

 サシャは自分よりも先に人間とカップルになったヴィルフリートが羨ましいのだろう。

 ヴィルフリートの肩に飛び乗り、彼の耳を甘噛みしている。

 何か主張したい事がある時は人間の耳を噛む癖があるのだろう。


「サシャ、何か言いたい事があるのか?」

「別に……ただ羨ましいんだよ。俺も人間になろうかな」

「空を飛べなくなるけど、それでもいいの?」

「いつでもガーゴイルの姿に戻れるんだよな?」

「そうだよ。魔物、人間、武器の三種類の姿に自在に変化出来るんだ」

「それなら……俺も暫く人間になってみようかな。空を飛べないのは寂しいけど、人間になって冒険者として生きるのも良いかもしれない」

「少なくとも、冒険者になれば一日中働いて500ゴールドしか貰えないって事は無いからね」

「本当か!? お金があれば毎日フルーツ牛乳も飲めるんだよな」

「そうだよ。やっぱりサシャはイステルで冒険者になりたいのかい?」


 サシャは首を傾げ、クリクリとした青い瞳を輝かせて俺を見つめた。


「そうだな。俺はイステルの近くで生まれ育ったから。やっぱりイステルで暮らしたいよ。ラインハルト達は王都を目指すんだよな?」

「ああ。だから俺達とは暫く別れる事になるね」


 酒呑童子の家に入ると、オーガ達が忙しそうに宴の支度を始めた。

 家の隅でイザベラとヴィルフリートがイチャついている。

 つくづく人間化の力は偉大だと感じる。


「俺は爺さんと出会うまでは一人で生きてきたんだ。イステルで冒険者として生きるよ。ラインハルト、俺を人間の姿に変えてくれ」

「わかった。サシャ・封印!」


 サシャの肉体が炎に包まれると、炎の中から全裸の少年が現れた。

 サシャはオーガから服を貰い、ビアンカの元に走って行った。

 きっと彼なら良い冒険者になれるだろう。


「さぁ野郎共、宴を始めるぞ! ラインハルト・シュヴァルツは俺の隣に座れ! とことん酒を飲ませてやるからな!」

「わかったよ……」


 エリカとは異なる強引さを感じる酒呑童子の振る舞いに、思わず楽しさを感じる。

 少し酒を飲んだらエリカが待つイステルに戻らなければならない。

 イフリートの姿で空を飛べば数十分でイステルに戻れるだろう。

 今は暫く酒呑童子達との宴を楽しもう……。

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