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跡、そしてその先  作者: 文字之 二三
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思考開始 2

青垣 葵(あおがき あおい)は嫌な奴だ。僕は数々の友人から性格の難を指摘されてはいるが、それでも、彼女と比べれば、僕は今まで一度だって悪い事をしたことがない善良なる人間だと言っても構わないと思われるほどに彼女は嫌な奴だ。

「人の事を悪く言うのは悪い事だ」

「言ってなんかねーだろ。思っただけだ」

てかなんで思ったことが伝わってんだよ。そんなに顔に出やすいのか?僕。

「いやそんなことはないな。鹿くんほど表情が読めない奴はいない。というか、いっつも暗い顔してるから正直いつも暗いこと考えてそう」

「超能力者なんですか葵さん!?」

そういう見透かしたとこが最悪だってんだよ。

「超能力者とか、いるわけないじゃん。何言っての鹿くん。バッカじゃん」

けらけら、と葵は笑った。

「お前ホント性格悪いのな」

「結局言うのかよ」

真っ黒なショートヘアに、少し鋭い綺麗な瞳。桐奈とは違って、スタイルだってかなり良い。口さえ開かなければ可愛いのにな。

「それにしても、鹿くん、いつにも増してテンション低いね」

「・・・リラックスしてるってこと?」

「私、思うんだけど、日本語として既に定着した英単語についていちいち正しい意味とか持ち出すことはとても鬱陶しいしめんどくさいからそんな事をする奴は黙って死ぬべきだと言えないかな」

「言えねーよ!そんなことで人を殺すな!」

テンションって緊張って意味ですからー!的な。

「うーん、鹿くんがいいってんなら構わないんだけどね」

「そんなこと言われても、ないものはないだろ。早めの五月病みたいな感じじゃねえの?」

葵は頬杖をついて、少し考えるようにして言う。

「そういえば、赤木先輩、学校来てないんだっけ」

「ああ、そうらしいな。桐奈もそう言ってた」

「変、だよね。あんな人が不登校ってわけもないだろうし」

そもそも、いじめられるとか、家庭に問題があるからだとか、そういう次元にある人ではないのだ。

「鹿くん、なんか知ってんじゃないの?」

「どうして」

「だって君、そういうの好きでしょ」

「別に」

葵はプフッ、と失笑する。

「別にって・・・、男子中学生かよ君は」

「笑ってんじゃねーよ。高校生と中学生の間には歴然たる差がある」

「いやいや、女子から見れば、いつだってあんまし変わんないよ」

そんなこと言うなっつーの。だったら女子は小学生の頃からなんの進歩もないんだよ。

「でも、調べるんでしょう、先輩のこと」

「だから、やらないよ?」

「はいはい、そうですか。私は、君には何もしないでほしいけどね」

くすくすと、可笑しそうに笑う。

いい加減、こいつと話していてもやるせなくなるだけだと思った。

だから、僕は何も答えなかった。何も言わずに、そのまま教室を出ることにした。

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