カップ焼きそばの美味しい食べ方
思うに、カップ焼きそばを美味しく作るには、まず出会うことが大切だ。
帰りがけにふらりと立ち寄ったコンビニで、夕飯はどれにしようかとさ迷ううちに、カップ焼きそばを見つけるんだ。
なるほど、カップ焼きそばもいいかな。などと思いつつ、パッケージに描かれた焼きそばの絵を見ているうちに、香ばしい匂いが鼻腔に広がる錯覚に陥り、腹の虫がクルクルと鳴く。
そうして引き寄せられるようにカップ焼きそばを買ってしまい、些か焦るようにして住処に帰ると、適当なヤカンでお湯を沸かし始める。
湯が沸くまでの間に、荷物をおろして部屋着に着替えれば、焦れったい思いも少しはマシになる。
すっかり支度を終えたら、カップ焼きそばの包装を引き剥がし、紙蓋に書かれた作り方を読み込む。十分に手順を理解したら、いよいよ蓋をパリパリと剥がして、矢印で示されたところで止める。
カップ麺ならではの縮れた麺の上に乗っているかやくやソース、仕上げに使うふりかけの袋を取り出して、かやくを麺の上に出してやると、その辺りでヤカンのお湯が沸く。
湯気の立つ熱々のお湯を麺とかやくの入った容器にゆっくり注ぎ込むと、その瞬間に独特の香りが湯気に乗ってふわりと舞い上がり、高揚感をかきたてる。
そっと蓋を閉じてその上にソースの袋を置いた後の3分間は、世界で最も長い3分間だ。そっと椅子にでも腰掛けて、完成した焼きそばのことを考える。妄想するんだ。
ホカホカの縮れ麺には、濃い味のソースが絡まって、決して色鮮やかとは言えないが、この感じが却って良い。割り箸をパキンと割って、豪快に麺を持ち上げ、一思いに啜ってやれば甘辛いソースが舌を躍らせ、全身に幸せがほとばしる。感嘆と幸福感に吐息を漏らせば、例の香ばしい匂いが広がる。キャベツのジャキジャキとした歯触りが、柔らかい麺の食感に程よいアクセントを加えて、何とも言えない心地よさを醸し出す。ジャンクな美味しさを堪能していると、気が付けば手は既に次の一口分の麺を持ち上げて待機している。恥じらいなど捨てて、がっつくようにしてまた麺を啜る。そして「ああ、たまんねえ。これだよ。これ」と独りごちるのだ。
そうこうしているうちに、3分間が経っていることに気がつく。
いよいよかと湯切り口を開けて湯を切り、とにかく早くかっ喰らいたい気持ちを抑えながら、蓋を剥がしてソースをかける。ワシャワシャと麺を混ぜる度に、湯気と香気が立ち上り、抑えていた食欲が燃え上がる。
蓋にひっついたキャベツに目もくれないで、思うままに食らいつく。
これが、カップ焼きそばの美味しい食べ方だ。