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第七章 そして故郷へ(一)

 食材は大分減ってしまったけれど、明日にはヒマワリ島に着く。昼夜かねた食事にしてしまって不満も出たけれど、明日までのがまんだ。

 そうして一日目は早めにベッドに入った。


 次の日の朝、青い顔でルカが起きてきた。

「おはよー……。ダレン、早いね」

「おう、昨日不満だらけだったからな。朝くらいはうまいもん作ろうかと思って。……って大丈夫か?」

 ルカはイスに座ってテーブルにうなだれる。とても具合が悪そうだ。

「ハンモックって船酔いしやすいのね……。揺れるからかしら? 次からはアランに譲るわ」

 ダレンは「ははは」とかわいた笑いを浮かべる。実はベッドの方が船酔いしにくいとは知っていたが、あまりにもアランとルカがハンモックにあこがれを抱いているから言い出せなかったのだ。まぁ自分が船酔いしたくないというのもあったが。

「水でもいるか?」

「うん、ちょうだい」

 少し罪悪感を覚えたが、水を飲んだルカは少し顔色が良くなったので安心した。

 ダレンは朝食をテーブルに並べていく。

「俺、アランを起こしてくるよ」

「おはよー……。いいにおいだね」

 ちょうどアランが顔をのぞかせた。肩にはリィも一緒だ。

「おう、ねぼすけ。一番最後だったから片づけはおまえな」

「えー? リィは?」

「リィはアランの手伝い」

「リィー」

 不満だけど仕方がない。アランとリィはテーブルについた。

「いっただっきまーす!」

 三人の声が重なる。

 今日の朝食は、ライ麦パンに野菜スープだ。スープにベーコンのいい味が出ていて、四人ともぺろりと食べてしまった。

「さて、今日の夕方前にはヒマワリ島に着くよな。いい風が吹いてるといいんだけど」

「きのうの雲の感じではいいと思うよ。追い風に乗って行けると思う」

「よし、じゃあ片づけたら出発だ!」

 そうしてアランとリィは片づけに向かう。ダレンとルカは甲板に上がって帆を張った。

 アランの言ったとおり、風は追い風だ。ダレンは碇を上げる。

 片づけを終えたアランとリィも甲板に上がってきた。

「よーし! じゃあ出航だ!」


 船は進む。ダレンはマストの上を見上げていた。視線の先ではマストの上につけられた白い旗が風にたなびいている。

 腕を組んで上を向いている兄にアランは気づいた。

「お兄ちゃん? なにしてるの?」

「おぉアラン。なぁあれさ、どう思う?」

「あれ?」

 アランはダレンの視線をなぞる。その先にはなんのへんてつもない旗がたなびいているだけだ。

「旗が、なに?」

「つまらんと思わないのか!? 無地の白って! 悪くはないけどハデにいきたくないか!?」

 ダレンの勢いにアランはぽかんとする。

「まぁ、もうちょっと模様とかがあってもいいよね」

「だろ!? ってことでルカ! 最初のおしごとです!」

 甲板に座ってスケッチブックを広げていたルカは、首をまげてダレンを見た。なにを描くか考えていて二人の話は聞いていなかったようだ。

「ん? なに?」

「あの旗に絵を描いてほしいんだ!」

 そう言ってダレンはびしっと旗を指差した。ルカの視線がダレンの指先をなぞって上へと向かう。

「あの白い旗?」

「あぁ! あの旗に俺たちのマークを描いてほしい」

 ルカはふむ、と考え込んだ。スケッチブックの新しいページを開き、えんぴつでさらさらと描き込んでいく。

「こんなのはどう?」

 十数分後、ルカはスケッチブックをひっくり返した。

 ダレンとアランとリィはそれをのぞき込む。三人の表情がぱあっと明るくなった。

「いいじゃん!」

「いいね!」

「リィ!」

 重なった声にルカは嬉しそうだ。

 ダレンはリィを振り返った。ダレンは旗を指差して叫ぶ。

「リィ! あれ頼む!」

「リッ!」

 リィは短く返事をすると、するするっとマストを上る。そして旗を外すとまた下りてきた。

「よっし、じゃあルカ頼むよ」

「りょうかいキャプテン!」

 ルカは腕をまくった。

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