休日と岐路
前回のスーパージャグラーマリコさん
微妙な空気を作る。修復する。大道芸に目覚める。
神様からも謝罪されホッと一息つく。神様もやり過ぎたと思ったんだろう。
しばらくするとメイドさんが、夕食の準備が出来たと呼びに来る。
メニューはお肉でガッツリ系。美味しく頂いて、食後の紅茶を飲む。貴族さんちのお茶だけあって、なんかいい茶葉の香りがする。お高そう。
お茶を飲んでいるとベリンダさんが私に話し掛ける。
「マリコ、さっき少し話したが、お前の今後について教会側と話をしてきた。これからもダラの町で暮らしてくれて大丈夫だ」
「ご迷惑掛けてすみませんでした」
「気にするな。お前達の様な、有能な冒険者は町に留めて置くように、父からも言われているからな。それにこれは……。私、個人の希望でもあるしな」
「ベリンダ、友達少ないもんなー」
「アンネ! お前もだろ! いや今はその話しではなく……」
そういってベリンダさんは立ち上がる。そして私に銀色の髪飾りを渡す。
「ベリンダさんこれは?」
「聖女の髪飾りのレプリカだ。マリコに渡す様にアリエンヌ司教から頼まれた。教会側はマリコを聖人認定するが、公には公開せず秘匿することを約束してくれた。箝口令も出してもらった。ただその髪飾りは教会の権力を表すものだ。使い方によっては、地方貴族くらい取り潰せるものだから、取り扱いには気をつけてくれ」
「ありがとうございます。でも、なんか怖いですね。カノンちゃん、これ当分使わないだろうし仕舞っといて」
渋々と「もー、マリコちゃん、貴重品は自分で持ってよー」っと言いながら仕舞ってくれる。
それにしても権力を表す物か。水戸黄門の印籠みたいに使えるかな?
私がそんな事を考えて居るとメル姉さんがい言う。
「箝口令を敷いたと言ったが、民衆には顔を見られてる、秘匿するのは無理があるんじゃないか?」
「そうですよね。近くで見てる人は少ないとは思いますけど、外出る時は変装とかした方が良いかもしれませんね」
「そうだな。私も王祭の優勝で知名度があるし、カノンはこの大陸では数少ないエルフだ。マリコも少数の黒髪、黒目だしな」
メル姉さんがそう言うと、カタリナちゃんが「変装ならお任せを!」っと張り切り、カノンちゃんも「面白そー」っとノリノリだ。
「まーそういうことだ。何があるか分からないから、あまり無理はしてくれるなよ。あとボニーにも礼を言っておけよ。相続を放棄したといえ、帝国で皇帝に次ぐ権力を持ってると言われる一族の出だからな。今日の交渉でも相当な圧力になっただろうさ」
「そうだったんですか? ボニーさんありがとうございました」
「マリコさん気にしないで良いわ。貴女は私の妹の様なものですから」
「そういえばこの世界って誰が治めてるんですか? この世界の人間でないので権力関係全然分からなくって」
権力とは無縁な生活をするつもりだったので、今まで気にしてなかったけど、自分自身がなんか権力もってしまったっぽいし、面倒だけど一応確認しないと。
私が質問すると、カノンちゃんが解説モードで教えてくれる。
「世界を治めてるのは北大陸のアビオン帝国で、全ての国はアビオン皇帝の元に当地されてるよー。キノ国王やボニーさんちのボー国王も、皆名目上は配下って事になってるんだよー。まぁー、各地の統治は王様が好き勝手に治めて、法律とかは主に皇帝側で決めるんだよー。法や倫理から大きく一脱した行為をすると、皇帝の連合軍や女神教の聖騎士団がやってきて粛清するよー」
カノンちゃんの説明だと皇帝が全世界を支配する君主制ってとこかな? 世界制覇してるのか。皇帝凄い。よく分からなかったけど、まぁいいか。
「そうなんだー。今度また色々教えてね。んじゃ、そろそろお風呂でも入ろうかな」
「わたしも一緒に入るー」
「ご一緒します」
「私もお供しますわ」
そんな訳で皆で四人一緒にお風呂に入る。
今日のお礼ということで、ボニーさんをヘチマのスペシャルコースでおもてなし。ヘチマランクが上がった気がした。
お風呂から出てダイニングに戻ると、大人達が酒盛りを始めていた。毎日飲んでるなこの人達。
いつの間にか帰ってきたエラさんも一緒に飲んでる。
アンネさんが「ジャグリングやろうぜ!」っと言うので少し皆に披露する。
でもアンネさん既に飲んでるのでボールジャグリングだけ。流石にナイフは、お酒入った状態じゃダメ。
見ている皆の反応は……微妙。最初だけ「おー」ってなったけど。
まぁボール投げてるだけだし、音楽とか無いと盛り上がりに欠けるし。
反応がいまいちだったので、アンネさんがしょぼくれてしまった。
「アンネさん元気だしてくださいよー」
「元気ぃーー!!」
「いひゃぁぁー!!!」
背後から羽交い絞めにされて、耳を舐められてる!?
正面から話し掛けてたのに、一瞬で背後に廻られるなんて! 異世界ガチ百合を舐めていた。いや! 私が舐められてる!
私は「セイ!」っと後頭部で頭突きする。
アンネさんの頭にヒット。ゴンっと音が鳴り「イター」っとしゃがみこむ。天誅!
私もいつまでもやられっぱなしでは無い。アンネさんの取り扱いにも少し慣れた。
そんな感じでおふざけしてから、眠たくなったら就寝。
翌日はお休み。明日の朝には、キノ城下を出発してダラに帰るので、自由に遊べるのは今日一日だけ。異世界ショッピングを楽しみたい。
変装はちょっとだけした。私は髪形をお団子ヘアーにしただけ。
あと、ベリンダさん達とボニーさんは別行動、王城に行くらしい。多分私が色々やらかしたからだ。すみません。
そんな訳で残りの皆で、中央広場まで馬車で運んでもらってから、ショッピングと洒落込む。帰りは、夕方に馬車で同じ場所に迎えに来てもらうことにした。
適当に服屋や雑貨を見る。服はいまいち。
お高い服屋は貴族さんの着る服だし、普段着には使えない。
安い服屋は簡素な麻の服、ある意味ナチュラル・オーガニックって感じで、好きな人は好きそう。
でもセンスだけでいったら、ダラのおっさんの服屋の方がいいや。
後、カノンちゃんが花育てると言っていたので、植木鉢をいくつか購入。
それ以外は、特にこれといった物も無く、歩いていると市場を発見。
キノ城下は海も近いので鮮魚もいっぱい。ここぞとばかりに買い込む。カノンちゃんの収納魔法は、食べ物が痛まない、謎仕様なのでありがたい。
途中、カノンちゃんが足の生えた、一メートル位のマグロっぽい魚を発見。この世界っぽい魚です。しかし私もこの世界の体性が付いてきた。この程度では慌てない。
「マリコちゃんこれ食べよー」
そう言いながら生足をペチペチ叩くと、魚が「っや、っやめとぅぇ……」っと言う。いや流石に喋るなよ! 鮮度良過ぎるよ!
「おぉぉ!? 魚喋った!?」
「カノンちゃん、これは流石に食欲なくなるよ! おじさん! この魚気持ち悪いから捨てた方がいいですよ!」
魚屋のおじさんに文句を言っておく。足が生えてる時点で店に並べちゃあかん。
「っお、おぅ。まさか喋るとはな……。面白い形してるから、良い客寄せになると思ったんだけどなぁ……」
再び謎フィッシュに視線を向けて気がつく。謎フィッシュを飾るようにヒトデが置いてあるじゃないですか!スターフィッシュ!
あの横スクロールアクションの主人公は、スターで無敵になる。私、無敵になれるかも!?
「おじさんそれください!」
「これは飾りだぞ? 食えるのか?」
おじさんが動揺したけど、アジっぽい魚を十匹購入しておまけでヒトデも貰う。
ついでに、近くにある貝を焼いて食べれる屋台を、紹介してもいそちらに向かう。ヒトデを生でいただくのは抵抗あるのでそこで焼かせて貰おう。
貝の屋台は、テーブルの上に七輪みたいのがあって、好きな貝を選んで食べるバイキング方式。貝以外にもイカとか海老もある。新鮮な魚介を美味しくいただく。
お腹も膨れたところで、ヒトデ、実食!
焼いたヒトデをふーふーして冷ましてから半分に割る。中にウニっぽいのが入ってる。微妙にグロイ……。
お味は……。うん、ウニっぽいし不味くはない。磯臭いけど。
そして体は……変化無い。これじゃないのか。残念。
昼食も済んだので、再び、うろうろして雑貨屋とか見る。途中疲れてお茶したり、まったり休日を楽しむ。昨日の騒動が嘘の様な、平和な一日。
雑貨屋さんでは、トランプとオセロを発見、ちょっと高かったけど購入。きっと過去の転生者が考案したんだと思う。
夕方になって中央の広場で、馬車を待つ。
屋台で買った細いチェロスっぽいお菓子を、皆で食べポリポリ食べる。
食べ終わる頃に、丁度馬車が迎えにくる。ナイスタイミング。
馬車に揺られベリンダさんちに帰る。
お屋敷に戻った後は、夕食をいただいて、お風呂に入って部屋でまったり。
それからトランプでババ抜きして遊ぶ。ババ抜きなのは、購入時についていたルールブックに書いてあったから。私読めないけど。
皆は、ポーカーフェイス? なんすかそれ? っといった感じなので、一枚引く毎にワーキャー言って意外と盛り上がる。
ここでの生活も馴れてきたなー。明日帰ると思うとちょっと名残惜しい。そんな事を考えながらベットで就寝。
翌日、準備を整え、馬車に乗り込もうと外に出ると、アリエンヌさん筆頭に、沢山の女神教の人達が整列して待っていた。アリエンヌさんが私に話し掛けてくる。
「先日は、ありがとうございました。そして……申し訳有りませんでした。神が光臨し舞い上がってしまい、マリコ様のお気持ちを蔑ろにしてしまいました……」
「もう怒ってませんから大丈夫ですよ。むしろアンネさんとの絆が深まった気がしたり、良い事もありましたから。そうですよね、アンネさん」
「そうだな! 司教さん私も、その……悪かったな、ごめんな」
「こちらこそ、道を踏みはずしそうになったところを、正して頂いて有難うございました」
アリエンヌさんはそう言うと、二つの木箱を信者の人に持ってもらう。
「こちらはキノ城下で採れた食材です。皆様で召上がってください」
「ありがとうございます。それでは、私達ダラへ帰りますので失礼します」
さっそくカノンちゃんが木箱を収納しようとするが、一箱だけ収納できない。時間が勿体ないので取り合えず馬車に乗せる。
別れの言葉を交わして、アリエンヌさん達に手を振って出発する。
途中、キノ城下ギルドに寄って、木箱数個をカノンちゃんが集荷。ギルドマスターに別れの挨拶をする。
キノのお城が視界から遠くに見える。さらばキノ城下。
岐路は、盗賊が出たりするイベントもなく、馬車でトランプとかして時間を潰す。
夕方に宿泊予定のダランの町に着く。
馬車から降りようとしたら、アリエンヌさんに貰った木箱から、声が聞こえた気がした。中身が気になり木箱を開ける。
木箱を開けると、沢山の氷に敷き詰められた、見覚えのある足の生えた魚が……。
「っさ、っ寒いよぉぉ……」
「って! またお前かぁ!!」
普通の魚も入ってたけど、こいつ一緒に入れるとかマジアリエンヌさん。
私がそっと木箱を閉じようとするとカノンちゃんが制止する。
「マリコちゃん! これ我が家で飼おう! 面白い! 前からペット欲しかったんだよ!」
「っちょ これ! ペットは無いよ!? 育て方、見当もつかないし!」
「多分、水にいれとけば平気だよー。魚だしー」
カノンちゃんは、木箱の氷を収納して、魔法で水を入れる。そして魚に話し掛ける。
「どおー? まだ寒い? 大丈夫ー?」
「っあ、っありがとぅ……」
会話が成立してるだと!?
私が驚愕していると、カノンちゃんが野菜スティックを魚に差し出す。
「流石に野菜は食べないよっと」突っ込みしようと思ってたら、ポリポリ食べだす魚。この世界の魚ヤヴァイ。
カノンちゃんが魚の頭をなでなでしながら言う。
「なかなか可愛いねー。よーし! 君の名前はシャルロット!」
「立派な名前付けちゃった!? 本当に飼うの?」
「まぁ、いいじゃないですかマリコさん。死んだら食べればいいんですし」
カタリナちゃんがさらっと怖いことを言う。これ食べたくないよ……。
でもカノンちゃん名前までつけちゃったし飼うしかないか。
「カノンちゃん。ちゃんと面倒みるんだよ」
「勿論だよー。マリコちゃんも許しも得たし、我が家の新しい家族! シャルロット! よろしく!」
「っよ、っよろしくぅ……」
我が家に変なペットができた……。生臭いぃ……。
※次回更新は、19日(木)の20:00更新を予定しております。
ブックマーク登録・評価いただけると励みになります!




