戦いの狼煙
前回の後輩冒険者をドン引きさせたマリコちゃん
武器屋に行く。錬金術師と知り合う。ヤヴァイ武器造る。
朝起きたらちゃんとカタリナちゃんは家にいた。
色々とカタリナちゃんがドン引きしてたので家出しないか心配だったけど大丈夫だった。安心した。
外に出る時以外は、武器はカノンちゃんが収納してるので持ち逃げとかもできないし。私は手ぶらで歩きたいので渡しっぱなしだけど。
そして、ヤヴァイ武器を手に入れた私達は、ダンジョンでモンスを狩る生活をスタートさせた。
初日は、6階層の腰みの履いたゴブリンだった。
見た目ウンバボより怖くないし楽勝。10匹くらいに囲まれてもあまり危険を感じなかった。全部一撃だし。ボスは黒かった。
そのまま次も攻略。7階層は、スケルトンでなかなかのファンタジー感だった。
木刀でぶっ叩くと当たった位置によって綺麗に骨がバラバラになるか差が出る。
ボスに着くまでどっちが綺麗に壊せるかカタリナちゃんと競う。カノンちゃんは骨拾うのに勤しんでいた。ボスは黒かった。
ダンジョンから出ると夕方になる前だったので買い忘れていた二段ベットを購入。カノンちゃんが上を使い私が下を使うことになった。
二日目は、8階層のでっかいバッタだ。以前トカゲのおっさんジョーさんが話してたヤツだった。
一日かけて狩りまくってドロップアイテムの足を集める。
カノンちゃんが「そのうちジョーさんに渡すんだー」っと大喜びだった。
数が多くまとまって飛んでくるとキモイけど一撃なので楽勝の部類だった。ボスは黒かった。
三日目は、9階層で目が光る狼だった。ダンジョン内もなんか薄暗いフロアだったので光る目が怖かったけど二三匹倒したらなれた。一撃で倒せるし。
フロアが広くカノンちゃんが道を覚えていなかったので丸一日探索してボスを倒した。ボスは黒かった。
四日目は、大台の10階層、モンスはでっかいスライムで一メートル半くらいの大きさだった。
一撃なので1階層と差して変わらないので9階層より弱く感じるくらい。
カノンちゃんが道を覚えていたので半日でボスを倒した。
ボスは意外に手ごわく複数の触手を素早く伸ばしてきた。
必死に避けたりしたけどカタリナちゃんが核を一刺ししたら倒せた。ボスは黒いだけじゃなかった。
お昼ごはんを食べに外に出たら偶然ジョーさんが居たので虫の足を少し渡す。全部は流石に持てなかった。
ジョーさんと世間話をしたところウンバボ族の二人が昨日の夜帰ってきたそうなのでギルドに向かうとギルドに着く前に大通りで二人を発見したので夕食を一緒に食べる約束をする。
初対面だったカタリナちゃんの紹介を軽くして前に行ったお洒落なレストランで現地集合することにして一旦別れる。
その後レストランで予約をしてから雑貨屋にいった。私の提案でプレゼント包装するためだ。
でも包装紙が売ってなかったので可愛い布にリボンで包んで代用することにして一旦家に戻った。
***
家についてお茶しながらまったりしてからウンバボ族にあげるプレゼントを布で包つつみリボンで結びおまけでポンポンを作ってつける。
私がリボンを付けるのを見てカノンちゃんが「リボン付けたい!」っというのでメル姉さん分をお願いした。
「やったーうまくできた!」
「これが異世界の紐の結び方……リボンひとつでこんなに華やかになるとは凄いですね」
カノンちゃんがリボンを結ぶのを見てカタリナちゃんも興味深々だ。
「さてあとは二人にプレゼントするだけだね」
「うんうん! きっと二人とも大喜びするよー」
「二人とも凄過ぎて引かないといいですね。」
最近カタリナちゃんがちょっと辛辣になってきている……。でも確かに引くかも、素材国宝級らしいし。友達が感謝の気持ちで国宝ー。いや無い無い。
「確かにビックリし過ぎる可能性はあるね」
「演技してみてはどうでしょうか?」
「演技ー?」
カタリナちゃんが立ち上がり「ウンバボ族の方がドン引きしたところでこれです!」っと言い後ろを向く、一呼吸おいてこちらを向くと涙目になって眉毛をハの字にしてこう言う。
「私……迷惑だったの、かな……?」
「キターーーーーー!!」
思わず叫ぶ私、これはヤヴァイ! 同姓でもきゅんとくる演技! ごちそう様です。
カノンちゃんも「おぉぉぉぉぉぉ」っとなんか呻いてる。
「カタリナちゃん素晴らしい! もう一回! っじゃなくてやりすぎだよ! でもウンバボ族の人が困ってたらカノンちゃんがちょっと困り顔するのはアリかもだね」
「まぁダメだったらの最終手段ということにしましょう。ではカノンさん練習しましょう」
「いやだよー。二人を騙すみたいだしー。ふつうに喜ぶよきっとー」
渋るカノンちゃんにノリノリで演技指導するカタリナちゃん。さすが元劇団員。
途中からカノンちゃんもノリノリになり私もノリノリで一緒に演技指導してもらう。
そんな感じで遊んでいたら時間になったのでお店に向かう。
店に入り待合室で待っているとウンバボ族のふたりもやってきたのでボーイさんに案内してもいテーブルに着く。予約してたので待ち時間なし。ボルボンボさん上半身裸だけどドレスコードOK。さすが異世界。
雑談していると料理が次々と運ばれてくる。魚介の盛られたサラダや一口サイズに切られたお肉、カボチャっぽいスープとか美味だった。ウンバボ族もご満悦。
「メル姉ー今回はどんなクエストだったのー?」
「ザイルの町の調査だよ。町周辺の調査だったんだが町は事前情報通り壊滅して人っ子一人いなかったよ。周辺の草原で不思議に数種類の魔物が終結してしててな。まー二百体ぐらいだったから私達で片付けた。調査は切り上げて戻ってきたんだ」
ウンバボ族……複数種類のモンスが二百体でも普通に片付ける。さすが昭和ヤンキーの末裔だ。
「それにしてもこんな旨いもんは俺たちの育った北大陸でもなかなかお目にかからないな!」
ボルボンボさんが堀の深い濃い顔で笑みを浮かべお肉を食べる。
「へーボルボンボさん達って北大陸の出身なんですか?」
適当に話したらもぐもぐしてるボルボンボさんに変ってメル姉さんが答えてくれた。
「私達兄妹は北大陸のウンバボ平原のグンマから来たんだ。まーウンバボ族のほとんどのヤツはウンバボ平原から出ることは無いよ」
この二人兄妹だったのか……似てない。ボルボンボさん10歳以位はなれてそうだし。
「そうなんですか? ではなんでメル姉さん達はこの大陸に?」
その質問にゴクンっとお肉を飲み込んだボルボンボさんが答える。
「俺は見たかったんだよ最後のウンバボ大帝が見たものを……」
「兄さんは南大陸を制覇して世界制覇を成就した5代目ウンバボ大帝がこの地を制覇した後に帝国を解散させ一人この地に残った理由が知りたかったんだ。私はそれに着いて来ただけさ」
「あぁ……俺達は見たことも無かった海を渡って南の最先端、大帝最後の地へ向かう旅をしたんだ。まぁ巨大な墓石があるだけだったが美しい海が見えるいい場所だったな。それに帝国を解散した後も一人残った理由もなんとなくだが分かった。旅をするうちにできたダチ公だ。」
「そうだな兄さん……私達はココを去るには沢山の荷物を抱え過ぎちまったな。カノンお前もその一つだよ」
おぉ……適当に話し振ったらなんかしんみりしちゃったよ。カノンちゃんちょっとうるうるしてる。カタリナちゃんも真剣な表情で聞き入っちゃてる。
そんな所に空気の読めないボーイさんがデザートのフルーツを持ってくる。フルーツは、キャバクラ盛りだ。
フルーツが減ってきたところで私がカノンちゃんを肘で突く。プレゼントを渡すのだ。
「メル姉、ボルボンボさん、駆け出し冒険者だったわたしを何度も何度も助けてくれてありがとう。おかげで仲間とダンジョンで稼ぐ冒険者になれました。これはわたしの気持ちです。受け取ってください」
カノンちゃんがそう言い可愛い布で包んだプレゼントをメル姉さん、次にボルボンボさんに渡すと感極まったのかメル姉さんが「カノン……」っと言い一筋の涙を流しボルボンボさんも上を向く「これは目から出た汗だ……」っと意味不明なことを呟いている。ウンバボ族は、結構涙腺が弱いようだ。
メル姉さんが「これ中見ても?」っと言うので「物凄いものですが偶然からできた副産物ですのでもらってくださいね。カノンちゃんの気持ちがいっぱい詰まってますから」っと私が念押ししておく。受け取り拒否はダメ。
そして袋からバットを取り出した二人が驚愕する。メル姉さんが花と葉の意匠を指でなぞりながら呟く。
「あの時の花か……しかしこれは凄いな……ウンバボ族でもこんな物を作ることはできないぞ。ウンバボの神木で作られたウンバボスティックよりも力を感じる……それに手になじむ……」
「わたしの持ってた世界樹を使ってメリッサちゃんに頼んで作ってもらったんだー」
「おい! 世界樹なのか! 伝説のアニキが使ってたものと同じじゃないか! いいのか!?」
「私達もビックリしましたが例の如くカノンさんが拾った物から作られてますので気にせずもらってあげて下さい」
メル姉さんがバットを置きカノンちゃんの両手を握る。
「一生の宝物にするよ。これでカノンを守る」
ボルボンボさんも拳をカノンちゃんに差出し「俺もだ」っと言いカノンちゃんも拳をコツンとぶつける。
そして食べ終わった私達はレストランを出て家路に着く。
ウンバボ族の二人は夜だけどこのままダンジョンで一狩りしてから帰ると逆方向へ歩いていった。
我が家に帰るとカノンちゃんにお礼を言われた。二人にお礼ができたのが相当嬉しかったらしい。
上機嫌でお風呂に入りそのあとも三人で心地よく談笑してから寝た。
***
朝起きてご飯を食べならがの定例ミーティングをする。
「昨日10階層攻略したし今日は休みにしてお買い物でも行こっか?」
「意義なーし」
「私も賛成です」
そんな私達らしい適当なミーティングを終えて家を出る。
カタリナちゃんが診療所でリハビリ中のお父さんに会いたいそうなので女神教の診療所に行く。
教会に隣接されてるので面談中は別行動でカノンちゃんがお祈りをして新しい白ビキニをゲットする。
私も一度白ビキニのお世話になったのでお祈りする。
帰りに白ビキニを渡されそうになるが丁寧にお断りする。それもう着たくないです。
入り口で待ってカタリナちゃんと合流して町に繰り出す。
服屋に向かっている最中に急に町人が騒ぎ走りだす。町の雰囲気が変る。
何事かと中央通りへ行くと衛兵さんが叫んでいた。
「大群の魔物がこの町の東側から迫っています! 至急非難、逃げられない方は戸締りをしてください! 戦える方は東口に集まってください!」
マジか……東口は私達の行っているダンジョンの近くだ。私達の家にも近い。
魔物の襲来……。それにしても突然だ。呆然とする私の服の袖をカノンちゃんが引っ張る。
「マリコちゃん! この町を守るよ! まずはメリッサちゃんの工房! メリッサちゃんわたしが居ないと戦えないから!」
「私も戦います! お父さんが居るこの町ら逃げることはできません!」
「わかったよ二人とも。私も我が家を守らないとね! っじゃメリッサさんの工房へ急ごう!」
そうして私達は町を守るために魔物の大群と戦うことにした。
私は、その時久しぶりに神様のお婆ちゃんの言ってたことを思い出した。
この異世界には沢山の助けを求める人がいると言っていたことを……私はもらった力を最大に使うのは今なんだと拳を強く握り締めた。