武器がヤヴァイ
前回のキノコに汚されたマリコちゃん
ダンジョンに行く。乙女の尊厳を失う。ボスを倒す。
私たちは、昼食を食べ終えカノンちゃんのお勧めの武器屋に行くことにした。
なんでも趣味で武器屋をやってる人なので値切ったり多少の無理を言っても文句いいつつやってくれるらしい。
カノンちゃんが「こんにちはー」っと挨拶しながら中に入るとマッチョの海パンのおっさんとグラマラスな白ビキニのお姉さんが話しをしていた。
「おっちゃん久しぶりー」
「おう! エルフの嬢ちゃん。ヤジリが買える金がたまったのか?」
「おっちゃん今日はヤジリじゃないけどついでにヤジリ1000個お願いー」
おっさんがヤジリを取りに店の奥に入っていく「マジか、あの貧乏エルフが1000個も買えるようになるとは感慨深いぜ……」っとなんか涙を浮かべていた。いいおっさんらしい。そして白ビキニのお姉さんにも話しかける。
「メリッサちゃんも久しぶりー」
「カノンさん元気でしたか? 森に引越して以来だからまだ一月たってないのかな?」
「森の家は解約してこっちでまたダンジョン探索することにしたんだー」
「そうなの? じゃ後ろにいる子が新しいパーティーの子かな? 私は錬金術師のメリッサといいます」
私とカタリナちゃんも挨拶する。このメリッサさんボンキュッポンである。二十歳くらいかな? めっちゃグラマラスに白ビキニなので同姓でも目のやり場に困る……。カノンちゃん曰く女神教徒の人をジロジロ見てはいけないらしいし。
「メリッサちゃんとこんなと所で会うと思わなかったよー。メリッサちゃん武器使わないし」
「私は合金の納品にきたのよ。工房持ってからはちゃんと錬金術して生活できるようになってね。ここにはおじさんにお願いして合金を売ってもらってるの」
「おぅ! おかげで俺はこの合金をドワーフどもに卸してやるだけで稼げんだ。趣味の鍛冶仕事の時間が増えてありがたいぜ。嬢ちゃんヤジリだ!」
カノンちゃんが5万円を渡そうてして渋い顔になり「おっちゃんまけてー」っと言うと「言うと思ったからすでに50個おまけしてる」っとッキリっとした顔をキメる。
カノンちゃんがヤジリを仕舞いお礼を言って店を出ようとする。ちょっとまてー!
「っちょ! カノンちゃん! 違うから! 今日はカタリナちゃんの武器買いにきたんだよ!」
「っあ! 忘れてた!」
「っそっそうだったのか……そっちの黒い髪の嬢ちゃんも冒険者か? うちの武器はキノ国のドワーフが作った技物から俺の作った趣味の包丁とか最高のものと最低のものが混ざってるから気をつけろよ! ハッハッハッハー」
おっさんが元気よく笑う。自分で作っといて最低言うなよと思いつつも笑顔でよろしくお願いしますと言っておく。
とりあえずカタリナちゃんの銀の細剣直せるか知りたいのでカノンちゃんにお願いしてカウンターに出して見てもらう。
「お前こんな玩具で戦ってたのか? 折れるだろ玩具だし。グリップ上の銀っぽい飾りは綺麗だな。まぁうちじゃ買い取れないな」
「いや売りたいのではなくって修理できないかと思いまして。もしくは似たものありますか? 銀の細剣」
「そうだなー折れた剣の部分だけ交換もできないこともないな。下部分が分離できるなこれ」
おっさんがカチャカチャトントンやって剣とグリップと鍔? 名称とかよく分からないけど分解する。
「俺が剣の部分を同じサイズで造れんこともないがうちの設備じゃ合金も溶かせんし趣味程度の実力だからナマクラしかできん。そもそも細いから折れやすい。めんどくせーからそこらへんの片手剣買ってけ。できたら高いの買え」
「さらりと営業トークが……ちょっと見てみます」
そういって私とカタリナちゃんは、武器選びをする。
カノンちゃんは、メリッサさんとなんか昔話に華を咲かせていたので放置する。
武器の種類は、本当に沢山あって大剣もあるし片手剣もある細剣もあったけどなんか無骨で可愛くない、これなら意匠の凝ってる片手剣の方がいい鞘も凝ってるし。
値札がついていたのでお値段を確認する……三百万円だった……。これは無理。
他も見ると蛇剣とかファンタジー感が溢れるものも発見。いいよね蛇剣……四百五十万円。無理。
安いものが無いかと見ると樽の中に見慣れたバットが……千九百八十円。
流石バット、安いなっとか思ってたら同じ樽に木刀を発見、横に文字が書いてありカタリナちゃんに読んでもらうとダラの町記念と書いてあるそうだ……。お値段千五百円。
「買おうかな……」
バットよりは巫女っぽい、こちら御神木で作られたありがたい木刀ですと言い張ろうそうしよう、それならギリ巫女っぽい。
私がカウンターに木刀を置くとカノンちゃんが私を呼ぶ。
「マリコちゃん! メリッサちゃんがカタリナちゃんの銀剣直せるかもってー。それ買わなくていいよー」
おっさんに渡してるところで言わないでー。これで買うの止めたら感じ悪い。「これ私使いますのでこのままお会計お願いします」っと言い清算してからメリッサさんから詳しいことを聞く。
「私、錬金術で鉱物の合成と変形ができます。さっきの折れた剣を見て思ったのですけど硬くて尖った金属を作るだけなら恐らくできます。よかったら私の工房へ行きませんか?」
「メリッサちゃんの工房見てみたーい。マリコちゃんカタリナちゃん行こー」
「うん もちろんいいよ」
「メリッサさんよろしくお願いします。」
そんな訳でメリッサさんの工房へ行く。わりと我が家の近所だった。
中に入ると雑貨屋みたいに色々置いてある。
ハーブティとか香辛料もあるし回復用のポーションや魔石といったファンタジーっぽいものが陳列されてる。
魔石ってそもそも何に使うんだろうと気になり聞いてみたら魔法使う人が魔力切れしたら魔石から吸収して回復ができるそうだ。
他にも魔道具なるものを作るのに使うらしく魔法のランタンとか魔石を燃料にするランタンとか置いてあった。
そしてお店の奥に入るといかにも! って感じの工房があるじゃないですか! 私のテンションが上がる。
これはいいファンタジー感だ。大きな鍋に魔方陣みたいな模様の刻まれた机、フラスコや試験管のような科学っぽいものもある。
カノンちゃんも友達の工房にテンションがあがって大喜びしている。
「それじゃ早速合金造ろうかしら……素材はこれとこれと……」
ゴソゴソと引き出しから鉱物を取り出す。鉄っぽいものから銀っぽいキラキラしたもの、他にも艶の無い銀色のものとか種類も沢山だ。
「これって銀ですよね? 私お金持っていなくて……」
カタリナちゃんが金銭を心配しているようだ。そういえばお値段聞いてなかった。聞こうと思ったらその前にメリッサさんが答えてくれた。
「お金は結構です。カノンさんのお友達ですので。カノンさんと私は草の友、一緒に日々ダンジョンで食べれる葉っぱを試食した苦楽を共にした仲間なの。うちの売れ筋のハーブティーもカノンさん考案なのよ」
「っそっそうだったんですか……」
カタリナちゃんドン引きである。白ビキニでエルフのカノンちゃんが白ビキニのグラマナスなお姉さんにその辺に生えてる草食べさせるとか……ある意味すごい絵図らだ……。
「そういう訳でお代は結構です。っあ! カノンさん極小魔石ありますか? あれ合金で混ぜるとと魔力付与が上がるので。合金に混ぜやすいけど値段が安いしこの町に私しか錬金術師がいないせいでなかなか量が流通しないんですよ」
「もちろん! 小銭拾いのカノンさんですよ! もってますとも!」
カノンちゃんがちっちゃい魔石が入った酒のビンを取り出す。
「こんなに沢山あるなんて……これごと二千円で売ってもらえません?」
「いいよー」
カノンちゃんが了承しお金をもらいみんなの共用財布にお金をいれる。
稼いだお金は共用の財布にいれて管理したけどこれぐらいなら自分の財布に入れればいいのに。カノンちゃん律儀だ。
二人で1階層に行った時に私がスライム倒してる間もその辺に落ちてる魔石せっせと拾ってたのがこんなところで役にたつとは……。
正直誰かが持ち帰りもしなかった1円の価値の魔石を拾うカノンちゃんに軽く引いてたよ。
「魔力が高そうなの混ぜるといいのー? 面白そうなのいっぱいあるよー」
調子に乗ったカノンちゃんが謎鉱石やら謎石とか棒を取り出す。
「これは軽い銀ですね。熔けないので鍛冶屋さんは嫌いますが硬いし合金にはいいの。他にもこれ使っていいの? あとこの棒はなに? なんか不思議な感じがするのだけど?」
「それ世界樹だよーハイエルフのお墓の上に生えてるから魔力あるって聞いたよー」
「カノンさん……軽いノリで言ってるのですが……これ国宝級なのだけど……」
「そんなん知らないよー。わたし世界樹に住んでたから採り放題だったよー」
「カノンちゃんその棒多分……家で物乾しに使ってるのと同じなんだけど……」
「っそっそうだったんですか……」
カタリナちゃん本日2回目のドン引き。家出しないか心配だ。今朝も国宝で洗濯物乾かしてたし。
メリッサさんも素材にビビリつつも刃物で削り合金するための準備を始める。
準備した素材を全て錬金台と呼んでた台に乗っけて両手を置く。
メリッサさんが魔法を詠唱すると錬金台に刻まれていた魔方陣が徐々に光を放ち素材が合さっていく。
そして塊だったそれが細い剣なる。ちょっと細めだ。
そこまでやって一旦休憩してから更にその上に更に合金をして多重構成にしてくれた。
最後の仕上げで剣の付け根の少し太くなっているところに美しい意匠を施してくれた。
その剣を使い銀剣を組み立てる。まぁ銀じゃないけど。
そして、カタリナちゃんの銀剣バージョン2の完成である。
「すっご……これはヤヴァイ……」
流石にヤヴァイ言わざるを得ない。組みたてた瞬間光ってたし。関係ないパーツの部分が光った瞬間に別の物質になったし。これなんかヤヴァイもん造った感が半端無い。
メリッサさんも「これが世界樹の力……」っと放心状態だ。
でき上がった銀剣をもらったカタリナちゃんもビビリまくりだ。
「私がこんな剣を持つなんて……むしろ……売って……そのお金で……」
カタリナちゃんぷるぷるしながらブツブツ言ってるパニックだなこれ。カノンちゃんなんか恐ろしいものを所有してる……。そして、その時私は閃いた!
「メリッサさんさっきは世界樹を削って使ってましたが変形させることはできますか?」
「えぇ……できると思います。」
「カノンちゃん世界樹一杯あるなら私の武器も作ってもらってもいい? さっき買った木刀も世界樹で造ったらきっとすごいよ。あとウンバボスティックも造ればきっとウンバボ族喜ぶと思うよ!」
「マリコちゃん天才! 一杯あるよ! 矢を作る用の細いのが多いけど太いのも何本かあるから作れるよ! 今度ご飯食べに行く時にメル姉達にプレゼントしよー!」
そしてカノンちゃんが見本のバットと木刀それに世界樹を取り出しメリッサさんに渡す。
メリッサさんは、ガクブルしながらもそれを受け取り錬台に持って行く。
私たちは、台所を借りて夕飯を作る。日も落ちてお腹も減ったので。
部屋にお肉の焼けるいい香りが立ち込める中メリッサさんは、錬金台で世界樹を変形して硬化させいた。何回かピカーって光ったので多分成功したのだろう。
カノンちゃんが「ご飯できたよー」っとメリッサさんを呼ぴ夕食にする。メリッサさんは、少しやつれた顔になってる。そのうちお詫びしよう。
ご飯を食べ終えてからでき上がった武器の品評会。
メリッサさんがおずおずと3つの武器を置くと私達が食い入るように見る。
「「「ヤヴァイ……」」」
三人ともそのできの良さに同時に声を上げる。そのあともヤヴァイを連呼する。
木刀には、刃の部分に華やかな細かい模様が刻まれていてもう芸術品の域でヤヴァイ。
バットの一本は、グリップ上のところに咆哮するモンスのウンバボが刻まれていてカッコ良くてヤヴァイ。
もう一本は、グリップ上に花と葉っぱが刻まれててセンス良くてヤヴァイ。
ご飯作ってたあんな短時間でここまでの物が……。でもなんで一本は、花と葉っぱなんだろ?
「メリッサさん本当にありがとうございました。最高です。ひとつ教えて欲しいんですけどバットはなんで花と葉っぱのデザインなんですか?」
「これメルさんにプレゼントするのですよね? 以前カノンさんにお願いされてメルさんのベルトのバックルを造ったのでその時のデザインと合わせたの。その花メルさんの好きな花らしいので」
「うんそうだよーこれならメル姉大喜びするよー」
こうして私達はかなり良さげな武器をゲットした。
メリッサさんには、お礼として端材の世界樹をあげたら土下座されそうな勢いで逆にお礼をいわれた。あとは帰ってお風呂に入って寝るだけだ。
今日は、カタリナちゃんがドン引きしまくりだった。今夜は、家出しないか見張っておこう……。