駆け出し冒険者講習会
前回の白ビキニで劇団員に抱きついたマリコちゃん
トカゲの奢りで飯食べる。仲間が増えた。
夕食を食べ終えた私達は、我が家に帰る。
カナリアちゃんに荷物とか無いか確認したところ。劇場に住んでいたため盗賊の放った炎で燃えてしまったそうだ。
彼女は、夜の稽古中に火災に気づき着の身着のまま外に飛び出したため今着ている銀猫の衣装と小道具の銀剣それと洗濯に出していた予備衣装と普段着だけとのこと。
劇団解散時に団員の人に貰った柔らかい皮でできたバックにそれを全部詰め込んでいた。
カノンちゃんにハーブティを入れてもらって人心地つきながらこれからのことを話す。
「とりあえず着替え用に服あげるね。カノンちゃん今日買った服だして」
「ほいな!」
「収納魔法!? そういえば、女神教の一部の聖騎士が少しだけ使えると聞いたことが……」
カタリナちゃんが無限収納に驚愕するもカノンちゃんが服やら雑貨を次々出してくれる。床一面に並べると我ながら一杯買ったなーって思う。
私も当然着るので衣服を半分だけ分けてあげる。石鹸等の日用品も余分に買っていたのでみんなで共用で使うことにした。
「マリコさんありがとうございます。しかも新品ばかり頂いてしまってすみません」
「気にしなくていいよ。また買いに行けばいいだけだし。サイズが合ってよかったよ」
カタリナちゃんの身長は、私よりちょっと高いけど着れそうでよかった。服も好みの物だった様でいい笑顔してる。ちょっとした表情でもすごく可愛い、流石舞台の主演。
「そういえばマリコさんとカノンさんって女神教の教徒さんなんですよね? なんで新品の服なんて買ったんですか?」
「私は今着替えが無くって仕方なくこの白ビキニを着ていてまして……。そうだよ、私着替えたい! お風呂! お風呂沸かそう!」
「お風呂!? この家お風呂あるんですか!? 凄い!」
カタリナちゃん今度はお風呂に驚いた。
洗い場に一緒に行って桶に魔法で適当に水を貯めて暖める私とカノンちゃんを見て更に驚く。
今日のカノンちゃんの魔法詠唱は「水の精霊さんお風呂入りたいんで水ちょーだい」だけだし。
「そんな適当な詠唱でお湯が作れるなんて……。それにエルフのカノンさんはともかくマリコさんも魔法使えるなんて……。そんな凄い人達がこの町で冒険者やってるなんて……」
「っえ? 魔法使える人って少数派なの?」
「戦闘レベルの魔法使えたら騎士団とかからスカウトされたり貴族のお抱えになる事も簡単じゃないんですか? 私世間知らずなんでしょうか?」
おぉ、魔法使える人少ないか質問したら逆に質問されてしまったよ。適当に魔法使えてるし魔物も暴力で解決してたから深く考えてなかった。
それよりこの質問どう返事をしよう。まぁ多分問題ないだろうしカノンちゃん同様に異世界から転移したこと話しとこう。
「うーんまぁ色々と私も世間知らずで分からないよ。カノンちゃん先お風呂入るしリビング戻ったら理由説明するよ」
リビングに戻りテーブルでお見合い状態で向かい合いお話する。
「いきなりで信じられないと思うんだけど私こことは違う異世界から転移してきたんだ。カノンちゃんは、黒髪、黒目を見て分かったらしいよ」
カナリアちゃんの目が見開く! 流石劇団員! 眼力がヤヴァイ! 可愛い!
「そんな……おとぎ話でしか聞いた事が無い人物と同等の存在が目の前に居るなんて信じられません……」
「転生してきたから魔法も多分使えたんだと思うよ。他にも不思議な力があるんだけど……まぁこっちは、封印するつもりだけど」
「異世界人が本当にいるなんて……まだ頭が追いつかなくて凄い人が目の前に居るって感覚がありません。目の前に居るマリコさんは普通の女の子ですし」
「まだ何も凄いことなんてしてないし当然だよ。そんな事よりも私の居た世界の話でもしてあげるよ。そのほうが実感沸くだろうし、楽しいよ! カタリナちゃん異世界の劇団とかどんなのか知りたいでしょ?」
「異世界の劇団! 凄く興味あります! 是非お願いします!」
そんな訳で日本の季節の劇団がやっていたにゃんこの劇の様子やらを身振り手振りして話す。
日本の劇のメイクとか照明や効果音や演奏の事を話すとテーブルから身を乗り出す食いつきっぷりだった。
この子は、本当に劇が大好きなんだなーとか思ってたらカノンちゃんがお風呂から出てきたので次に私が入る。やっとこの白ビキニが脱げる……。
私がお風呂から上がりリビングで楽しそうに話をしてる二人に「お風呂でたよー」っと声をかける。
そして、声をかけた瞬間カタリナちゃんが椅子から飛びのき土下座した。
いったい私がお風呂に入っていた間に何があったんだ……。銀猫土下座してんだけど……。土下座文化……ウンバボ族発生なのか。
「マリコ様が神から加護を受けているとは露知らず! ご無礼! 私、申し開きのできないことを! どうかこのまま頭をお踏みください!」
どっかで聞いた台詞だ! 私だ! そして私はSではない! 私は「頭をあげろぉー」っと無理やりカタリナちゃんを抱き起こす。
「もー! 私は神そのものでもなければ普通の乙女なんだから土下座なんかしないでよ! カノンちゃんもいったいなに話したの!?」
「えーっと、森で出会ったこととー。寝てたら凶暴な魔物が出てマリコちゃんが倒してくれてそのお金でこの家借りたことと……あぁーあと魔法使えるのは神様にあって加護もらったからでマリコちゃんは最高にヤヴァイって──」
「それだー! 神様には会ってないよ! 神様のお婆ちゃんだからね! まぁ……確かに凄いお方には違いないんですけど……」
カタリナちゃんが「マリコ様……マリコ様……ヤヴァイ」っとぶつぶつ言っているので「様付けはご勘弁を……とりあえずお風呂入っちゃいな」っと洗い場へ行ってもらった。
「カノンちゃん……加護もらった件は外で絶対話さないでね……騒ぎになるよこれ」
「了解した!」
元気よく返事をするカノンちゃん。その後は、普通に今日使った石鹸の使い心地とかもうちょっと手桶が大きいと洗った髪を流すの楽だよねとか取り留めない話をしているとカタリナちゃんが出てくる。
お風呂にあまり入ったことの無いカタリナちゃんもお風呂が気に入ったらしくリラックスできたのか戻ってきたら「マリコさんさっきはすみませんでした」っと私の様付けも治っていたので一安心する。
「後はだらだらして寝るだけだけどベットどうしよっか?」
「カタリナちゃんわたしと一緒に寝よーよー」
「っえ、いいんですかカノンさん」
「もちろんだよーばっちこーいだよ!」
「ばっち?」
私が巨大化してカノンちゃんにバットで叩いてもらった時に言った「ばっちこーい」はどうやらこっちの世界で使われていない言葉だったらしい。
一回言っただけで適切に使いこなす。カノンちゃん恐ろしい子!
「あと、明日どうしよっか? 昼間ダンジョンいってお昼食べたらベット買いにいく? カノンちゃん欲しがってた二段ベット買っちゃう?」
「いいのマリコちゃん!! アレ欲しかったんだよ!」
「今の貯蓄だったら平気だよ。それにこれからダンジョンで稼ぐんだし」
「私のためになんかすみません」
そうだ私達は、これからダンジョンで稼ぐのだ! 寝るまで時間あるし冒険経験者であるカノンちゃんに色々教えてもらおう!
「そんな訳でカノン先生! ダンジョンでの稼ぎ方を教えてください」
「先生!? くふっくふふふ」
カノンちゃんは、下っ端生活が長かったのかおだてられると直にご機嫌になる。把握済みだ!
「では! カノン先生の第一回駆け出し冒険者講習会をはじめまーす。ダンジョンの1階層から5階層までの魔物は全部ドロップアイテムが食べ物なのでこの階層が攻略できてればとりあえず飢え死にしません! 4階層と5階層は、ダンジョン内に草が一杯生えてるので食べれる草を見分けられるようになると草も食べられるようになります! 6階層から9階層は食べれません! バッタも美味しくないので注意! 10階層はスライムの大きいやつなので食べれます!」
自信満々に言うカノンちゃん。うちの欲しい情報それちゃうねん。しかもこういう時は、ですます口調ができるのか……。
「カノンちゃん……食べれる情報じゃなくって、稼ぐ方法知りたいんだけど……」
「うーん私一人だと死んじゃうので稼げないし深い階層のことは詳しく知らないんだけど20階層以降は魔石売るだけでも生活できるみたいだよー。10階層から20階層はゴーレムばっかりだけどドロップアイテムが売れるよー。上の階層でも高値で売れるものとか下の階層でも安く売れるとかよくわかんないよー。下の階層に行くほど魔物が強くなるのは変わらないけどー」
ダンジョンってなんかこうもっと稼げるイメージあったんだけど……。
そもそもカノンちゃん一人暮らしするだけの経済力はあったんだよね? まさかその日暮らし?
「カノンちゃん……前家借りた時のお金ってどうやって稼いだの?」
「あれは冒険者ギルドの合同クエストでもらったんだよー。南西の未開の森の調査をみんなで行ってきたんだよー。みんなが魔物沢山倒して、わたしが沢山魔物を無限収納に仕舞って持って帰ったんだよ。帰ったらお前が一番の功労者だーって言われて大金もらっちゃった」
「カノンさん深遠の深き森の調査に行かれたとか……あの森の深いところの魔物はこの大陸の中でもかなり凶暴なものだと聞いたことが……それに収納が無限なんですか……」
「うんうん! わたしは逃げ回るので精一杯でだったよ。荷物運ぶだけ!」
おぉ……なんという事でしょう。カノンさん深遠の深き森とかどれだけ深いんだよ……。頭痛が、頭痛が痛いよ。しかしこれは困った。
ダンジョン攻略が稼げるか怪しいので場合によってはまた森で熊と戦った時みたいな戦闘をして稼がないといけなくなるなのるかも……。
まぁ貯金あるしなんとかなるか。うん、なる。問題ない。
「まぁ、とりあえず他に稼ぐ当てもないしダンジョン攻略地道に頑張りますか。冒険者ギルドにも気が向いたら顔だしてクエストも良さそうだったらも受ければいいし」
「だねー」
「分かりました!」
その後は、カノンちゃんにお願いされて日本のアニメの話をした。魔法少女の苦悩と友情に感動して号泣していた。
カタリナちゃんも「これは是非とも舞台にして残さねば……」っと夢中になっていた。
今日も姦しい私達の女子トークは、深夜まで続くのだった。