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エピローグは葡萄の町で

「さぁ、ここに新たな夫婦が誕生した。めでたい事だ、儂のとっておきを出すぞ!!用意はできているか、私の妻よ!!」


あれから20年と少し、あの時の腹の子である2番目の息子は、町民全員の前で公開求婚するという大事件(?)が勃発。数年前から祭りにお呼びしていた、上級神官である『葡萄の乙女』にプロポーズです!!


出会った時から次男が彼女を気にしていたのには、気付いていました。やはり『騎士』と『乙女』は惹かれあうのでしょうか、次男は『葡萄の騎士』のギフトを授かり、学び舎で勉強したとても真面目な子


親に恋の助言など恥ずかしかったのかもしれません、かなり1人で悩んでいた様子。兄に相談すればよかったのではないかと思いますが、嫁経由でばれるのが恥ずかしかったのかしら?


実はその『乙女』、いわく付きだなんて言われている人なのです。『恋に溺れ純潔を散らしてしまった、愚かな元乙女』なんて言われているそうですわ。婚約時から交流が続くあの学者様が言うには


「確かに恋に溺れてしまったのは事実ですけれども、はっきり言ってあれは男にだまされたんですよ。神殿育ちの初心な娘を手玉に取ろうとしたのです……、あの落ち込み様は見ていられないものがありますね」

「……婚姻前に純潔を失った事で、ギフトを失ってしまったのでしょうか?私は『淑女』ですが契った後も、子を産んだ今でも『淑女』ですわよ。『乙女』は違うのでしょうか、あなた、知っていらして?」

「そのような形で魔法属性を失ったという話は、少なくとも儂は聞いたことないね。失う時は神の意に背いた時か、必要なくなった時ではないかなぁ……」


旦那様は魔術師兼学者でもあるので、詳しいかと思って問いかけますとこのような答えが返ってきます。私には必要なくなった時と言うのが、どのような状態を指すのかわかりませんが


「では純潔であることは関係ありませんのよね」

「ないよ。結婚したって親にとっては何時まで経っても『娘』だし、よっぽど悪い子でない限りは絶縁なんてしないだろうね」

「ですわよね……」


考え込んだ所為で、しばし会話が止まる私たち。しばらくたってから学者様が提案をなさったのです、その噂の『乙女』を仕込みの祭りに呼んでくれないかと


「会っていただければわかりますよ、彼女は葡萄に愛されています。しかし彼女は殻に閉じこもってしまいました。その殻を開くためには、少し神殿から離した方がいいのではないかと神官長はお考えです」

「……だました男って言うのは、葡萄伯爵家縁の者なんですね」

「えぇ、王都西のあの伯爵家です。お2人もあの家の者を知っておられるので、話が早いかとお願いに来た次第です」

「まぁ……」


あの生理的に無理だったアイツの縁者なのね……、男にだまされて純潔を失っているくらいどうって事ないわ。私だって結婚前に捧げたのだからと奮起し、旦那様にその『乙女』を祭りに招待しようと言いました


「君がそう言うなら、儂に嫌は無いよ。学者様のおすすめだし、きっと素敵なお嬢さんだ。そうと決まれば神殿に連絡差し上げ、お迎えする準備をしないとな」


私の旦那様はあれから少しお太りになられたけれども、あいもかわらず高貴で優しく優秀で。ちょっと出来すぎ感は、お腹が出てきたことで薄れたけれども、愛する夫であることは変わりなく。私の話もきちんと聞いて吟味して下さる素敵な旦那様なのです






そして彼女と交流する事、数回。全然、良い子でした。若い『葡萄の乙女』たちも彼女を慕っている様子、やはり噂などあてにならないのです。夫のとっとと求婚成功させてしまおうという、乾杯の準備を進める声に


「もちろんです、私に抜かりはありません。私達の結婚した年に仕込んだ特上品ですもの、色々な意味で(・・・・・・)とっておきですわよ」


式のすぐあと、同時期に仕込んだワインと2番目の息子ですものね。何て言うと下品かしら?


「えぇ!!あ、あれを出して……しまうのか?」

「今出さずに、何時出すつもりなのですか?」

「え、いや、あれは結婚30周年に開けようと……」

「行き渡ったかしら、はい、かんぱ~い!!」


『葡萄の乙女』が返事をする前に、拒否されないように私たちは勝手に盛り上がる


例のだました男っていうのが、やっぱりあの生理的に受け付けなかったアイツの息子だと聞いて、これは嫁にしなければと奮発いたしましたわ。……正直、『薔薇の淑女(わたくし)』を得る事が出来なかった所為で、『乙女』を手籠めにしたのかもなんて思ったのです


私の所為かもしれない……なんて、こんなこと言うと旦那様が悲しむから表には出しませんが、彼にはばれているかもしれませんね。私がしっかり義母として彼女を守ってあげよう、そう思ったのでした


旦那様は普段は思慮深い勉強家が、あんな情熱的に乙女を口説くなんてと驚いていた。誰に似たんだか、なんて仰るけれどもそっくりですわよ。私は笑いながら旦那様に言う


「旦那様ですわ、ご自分でおわかりになりませんの?」

「儂か?そうかな、あんなだったかなぁ?」

「私を奪っておいて忘れてしまうなんて、なんて酷い人なのかしら。やっぱり似ていませんわね」


真実は私から誘ったのだけれども、軽く拗ねると旦那様は笑顔でこう言うわ


「だって、君が魅力的だったから。儂の愛しい薔薇」


そう言ってすかさず頬に口づけを贈ってくださる。ほらやっぱり、似ている


「今度の孫は男の子かしら、女の子かしら」

「家は男系だから、男の子の可能性が高いと思うがどうだろう?」

「そして困ったお嫁さんを連れてくるのね……、次はどんな子かしらね」


最初は私、薔薇と葡萄の関係性に翻弄されて。次は長男、『桃の乙女』を見初めて、こちらは桃と葡萄の関係にひと悶着。そして次男は、葡萄に愛されている『葡萄の乙女』に焦がれた


……次男は『葡萄の騎士』のギフト持ちだから、順当と言えば順当ね。困ったことなど特に無かったわね





そして次男の娘たちがまさかの三つ子『葡萄の乙女』となり一波乱あることを、今の私には知る由は無かったのでした。でも、波乱はあっても上手く収まるわ。だって旦那様の血を引く子供たちですもの


優しく賢い血を引いているのだから。

改稿版の新キャラをちょこっと紹介


※学者様……謎の学者様、外回りばかりしている所謂フィールドワーク好き学者様。あまりにもウロウロするため知り合いが多く、あまりにもウロウロするため『娘』が嘆いている。改稿版『葡萄の乙女と神殿騎士様のお話』では、元カレにワインを渡した人になっています(笑)。


本編は終了、次は裏話となります。もう少しお付き合い下さると、嬉しいです。

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