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公爵閣下の私室から品評会3回目へ

「私は物腰柔らかでフワフワしているので、本命にそうだとは受け取ってもらえないだろうと、両親が言う訳ですよ。失礼でしょう?」


公爵閣下(ひとさま)の私室で、『事実上の』婚約後のゆったりとした触れ合い中、彼はそう話し出した


「まぁ念の為、絶対求婚していると解ってもらえる物を用意していますのでご安心を。……爺や、例の物を」

「かしこまりました」


チリチリと呼び鈴を鳴らすと、下ろされた天蓋の隙間から、爺やさんの手がすっと差し入れられます。彼は何か小さな箱を受け取り、そのままカパリと開封。そっと私の手を取って、指に飾られたものは年代物とわかる高価な指輪。白金の台に葡萄色の貴石が葡萄の様に配置され、優美な蔦が彫刻された品。葡萄栽培家らしい装飾で


「わが家の家宝です」

「何て重たいものを!!」

「でも、これなら信じてもらえますよね?」


その指に軽く口づけを贈られる


「……それは、どうでしょうか。あなた、侯爵家ですもの、20個くらい買えるのではないかしら……」

「1個だって買えませんよ、それ先祖伝来の王家からの賜りものですから」

「重すぎるッ!!」

「さて、夜も更けてきたことです。もう休みましょうか、……まだ眠くない?可愛い人」


私はまだ眠くないと言って、彼の腕の中にしなだれかかったのでした。深い口づけを交わしながら、恥ずかしがってばかりいて事態をこじらせていた私は、ガツガツいったお蔭だと改めて思う。第一印象大事ですわ、肉食系で何が悪いと……だからチョロイとか言われてしまっても、ね


今とても幸せ




まぁ、後から人様のベッドでナニしてしまったのだろうと反省しましたが、後悔はしていませんわ






熱い一夜を過ごした私たちは、周りが引く程熱愛カップルとなり品評会へと登場した。お互いの腰に腕を回してイチャイチャベタベタ、リア充ですが何か?《4の国》の言葉は不思議ですわ、現実が充実しているなんて今の私にぴったりの言葉です


ただ、気をつけないと爆発するらしいですわよ。魔法なのでしょうか?


そうやってリア充オーラを出しまくっている私たちのある意味仲人でもある、葡萄伯爵嫡子は遠くから冷たい眼差しで私たちを睨んでいた。わざわざ彼の元へ2人で移動し、挨拶をする。それはもう、イチャイチャしながらね


嫌がらせですわ、おほほほほ


「久しぶりだね、伯爵家の。君のその傲慢さのお蔭で、私は宝物を得る事が出来たよ。多分すぐにでもそれは増えることだろう」

「……それはそれは、ずいぶんと身持ちの軽い娘なことで」

「いえいえ、金にモノを言わせて私を足止めする間に脅す卑怯者よりは、全然いいでしょう」

「何のことだか、わかりませんね」


私の下腹を意味ありげに撫で上げながら、彼は言う。あの大口契約を持ちかけてきた何某とやらは、葡萄伯爵嫡子の回し者だったそうで。相手はなんと侯爵位を持つ方で、一体どんな手を使って共犯にしたのか非常に謎な人……


「結婚前に純潔を失うなど、淑女の風上にも置けない女ですね。俺なら願い下げですよ」

「わが国は『愛と豊穣の神』様が見守って下さる農業大国。愛があれば、豊穣を望むことはおかしくないでしょう?……『事実上の』結婚ですよ、まぁ少々先走ってしまった感は否めないですが、それは全て男の責任です。私が我慢できなかったのですから、ね」


そう言って額に口づけを贈られた。葡萄伯爵嫡子は怒りを隠そうとしないまま、背を向け去っていく。見せつける為にイチャイチャしていましたが、彼が去ってもそのままイチャイチャ続行中。だって愛しているのですもの


そんな私たちに触発されたのか、あちらこちらで愛の告白大会が開催中。特に目立っていたのは公爵閣下と『梨の乙女』のお2人。高貴な方に跪かれて愛を請われる状況なんて、なかなか見れるものではありません。告白は上手くいったようで、私たちに負けないという様に腰を抱き公開口づけ


公爵閣下、ちょっとやり過ぎだと思いますわよ?






品評会と言う名のお見合いの会、最後を飾るのは舞踏会。彼から頂いた『念』入りの髪飾りに手を加えます


庭にあったミニ薔薇を数本いただいて、薔薇の水分を魔力に置き換えていくのです。本来装飾品を作る際には特殊な樹脂を使うのですが、城へは持ってきていないので私の魔力を使います。特殊な樹脂とは何ぞやと思われますでしょうが、その辺は企業秘密ですわ


絹の薔薇造花をあくまで主役に、私の処理したミニ薔薇を添えて。あぁ、2人の共同作業……。初めての作業は昨夜シてしまいましたけれども、深く考えてはいけませんわよ


舞踏会へお出ましになる国王陛下と王妃陛下にご挨拶をすれば、簡易ではありますが婚約が整います。あらかじめ王太子殿下や王女殿下、公爵閣下からお話を通してもらっているので、よほどのことが無い限り婚約者と認められます。そしてよほどのこと対策に髪飾りを改造中


私を手に入れるのは諦めても与えられた屈辱を、そのままにしておくような人ではないと思われるのよね。私が言うのもなんだけれども、勝手に植えればいいじゃないの、私必要かしら?


他国のワイナリーだって薔薇や桃を植える所はあるでしょう。あら、今思いついてしまったのですが、淑女のギフトを使えば病気に強くなるのではないのかしら?



それってむしろ葡萄にこそ、病原体がいってしまう可能性が……



「綺麗ですね、瑞々しいまま装飾品にするなんて素晴らしい技術です」


考え事をしている間に葡萄侯爵嫡子様は部屋へやって来て、そして作業中の私の手を覗き込んできました


「技術と言うよりは、ギフトを使っていますの。水分と魔力を置換して、疑似的な状態保存とでも言いましょうか。……魔術師のあなたに褒められるほどの技術では、ありませんのよ」

「いいえ、見事なものです。以前にも言いましたが、私は魔術師としては下位なので、こんなに繊細な魔力操作はできません」


魔術に関しては大雑把なんですよ、なんて。椅子に座る私を後ろから抱きしめて彼は言う


「最後にアレから贈り物があるかもしれませんね、油断しないように」

「えぇ、わかっていますわ。だから(・・・)これを作っていますのよ」


私はもう負けません、伯爵がなんぼのもんじゃいです!!

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