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好敵手  作者: 深月咲楽
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序章

 イワタ演芸場の会議室1を覗くと、全てのスタッフとメンバーが集まっていた。集合時間は午後2時。現在、午後3時ちょっと過ぎ。またお得意の大遅刻をやってしまった。

 私・新田彩香にったあやかの所属している岩田事務所が戦後すぐに建てたというこのイワタ演芸場は、現在では芸人育成の場となっている。若手芸人のライブだけでなく、打ち合わせや稽古場としても利用されていた。今日行われるのは、3日後に迫っている、私達、涼之介すずのすけの単独ライブのミーティングだ。

 その涼之介のツッコミを担当している私が遅れてしまったのではお話にならないが、幸いスタッフやメンバーがしっかりしているため、通常であればある程度話が進んでいるはずだった。しかし、その日は少々雰囲気が違った。

 色々な案が書かれているはずのホワイトボードは、真っ白なまま。そして、皆、それぞれ険しい顔で腕を組み、無言のままテーブルの上に置かれたカセットデッキをにらみつけている。

「ごめんなさい。家出ようと思ったら、火星人の集団がドアの前に座り込んどって、握手してくれ言われて……。うちらの人気も宇宙規模やね。ははは」

 見え見えの嘘を付きながら、自分の席に座る。いつもならここで「アホか、お前は」とか「どうせやったら、もっとおもろいこと言えや」とか呆れたようなツッコミが入るはずなのだが、今日は何も返って来ない。どうやら、皆、相当怒っているらしい。

 しまったなあ。もっと早く寝たらよかった。昨夜は同期のピン芸人、家村宏太いえむらこうたと夜桜見物の名の下に飲み明かしてしまい、家に帰ったのが午前5時。結局、布団に入れたのは午前7時で、目が醒めたら午後2時だった。大急ぎで用意をして出てきたつもりなのだが……。

 それもこれも、この春のうららかな気候のせいや。いや、やっぱり私の不摂生な生活が……。ダメや、もう少し生活態度を改めな。

 激しく反省しつつ、目だけで周りの様子をうかがっていると、私より3コ上の井頭修いがしらおさむが、ようやく口を開いた。彼は昨年、漫才コンビを解散し、現在は構成作家として活動している。私達の単独ライブやラジオなどにも、いつも参加してくれていた。

「彩香、お前、昨夜のアウトサイドのラジオ、聴いたか?」

「アウトサイドのラジオ?」

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