登校
夏も終盤。蝉の声も切なく聞こえる、この時期が私は好きですーー。
(なにが悲しくて俺はコイツと・・・)
「まさか秋山くんが僕と一緒に学校へ行ってくれるなんて、嬉しいなーー」
「別に、同じ学校なんだから行く方角は一緒だし仕方なくだよ。
てゆうか、お前はやめろって言ってもついてくんだろうが!」
「そんなに照れなくても~」
「もういい・・・」
怒ることに疲れた。
佐久真と出会ってからというもの、怒ることはこれほどまでにエネルギーを使うものなのかと心底実感する。
相変わらず、自分のすぐ横には顔いっぱいに笑顔を浮かべている佐久間の姿がある。
普段は長めの前髪に隠れてあまり見えないが、よく見れば端正な顔立ちをしており、正直少しいや結構格好いい部類に入るのではないかと思う。
(顔面格差だ・・・)
少しイラっとしたので、サラサラした髪を数本引っ張ってやった。
「痛っ。え、なに?僕なにか悪いことやった??」
心から心配そうにうろたえる姿に、少しだけ笑ってしまう。
こういうところは良いなと思ってしまう。
(こういうの、何て言うんだっけ。えーっと、そうだ優越感だ!
もしかして、俺って結構性格悪い?)
黙り込んでしまった秋山に、本当に怒らせてしまったのかと思った佐久真がびくびくと顔色を窺ってくる。
「あ、秋山くん・・・?」
「ん?」
「怒ってる?」
「別に~」
「ーー今日はあの透って人いないんだね」
「ーーーっ」
いきなり核心をついた話し方に、一瞬呼吸が止まった。
なんでこんな時にその話しを放り込んできたのか、意図がつかめない。
「なんでいきなり、そんなこと・・・」
「だって、いつも一緒にいるから。今日はいないんだなーって思って」
小首を傾げて問う佐久真。笑っているのに、目だけは笑っていない。
それを知っていたから俺は、コイツにだけは近づかないようにしようと、そう思っていたのにーー。
気が付けば、こんな所まで踏み込んでしまっていた。
「ケンカでもした?」
「お前には関係ない」
これ以上踏み込ませないように、そっと線を引く。頭の中ではとっくの昔から警鐘がなっていた。
「・・・関係ない、ねぇ」
小さく呟く声もまた、笑ってはいない。
「ま、いいや。ね、秋山くん」
「な、なんだよ」
話を変えてグイグイ迫ってくる佐久真に、内心と物理的にも距離を開きつつ聞き返す。
佐久真のこういう飄々とした態度が、こいつを掴みきれない原因の一つではないかと思う。
佐久真はサラサラしている髪を風に遊ばせながら、前を歩きこっちを見ることなく話しかけてくる。
「秋山くんにとって、あの透って人はどういった存在?」
「・・・は?」
質問の意味がわからない。いったい佐久真が何を考え、なんでそんなことを聞くのか理解が出来ない。
「なんでそんなことーー」
「いいから!答えて」
振り返ることなく発せられた言葉は静かな熱を湛えていて、触れてしまえばこちらもただではすまないような、そんな気がした。
「・・・透は幼馴染みで、大事な親友だ」
「親 、友」
言葉の意味を咀嚼するように、ゆっくり何度も親友という言葉を紡ぐ。その様は異様で奇っ怪で、愚直だったーー。
「そっか、親友かー。それなら、うん、まぁいいか」
「ーー?」
佐久真の空気がいつも通りのものへと変わった。理由はわからない。
(なにがいいんだ?)
わからないことばかりだが、異様な空気から逃れられたことだけでよしとする。触らぬ神に祟りなしという言葉に従うことにした。
異様な言動もだが、なにより佐久真という人間自体が秋山にとって奇っ怪そのものだった。
「ね、秋山くん。ーー僕はきみが言う親友っていう言葉を、信じていいんだよね?」
いつもの飄々とした態度ではなく、心配そうに尋ねる佐久真の様子がうかがえる。
(珍しいーー)
「もちろん、透は大事な親友だから」
「・・・゛大事゛はいらない」
「え?」
佐久真の声が小さくて聞き取れない。
しかし、佐久真には笑って誤魔化されてしまった。
「なーんでもない!さ、早くしないと遅刻しちゃうよ!」
「わ、本当だ、やばっ!!」
二人して学校への道のりを急ぐ。ここだけを切り取って見ればごくごく普通の光景。普通の学生が仲良く登校している、そんな平凡な光景ーー。
彼の異様で奇っ怪な中身をしる者が見れば、それは摩訶不思議な光景。誰にも予想出来なかった未来、それが今目の前に広がっていた。
『僕はきみにとってどういう存在なのだろうーーー』
んー、話しが進んでないなー。そんなこといっちゃだーめ笑
これから、頑張って進めます!のでどうかご容赦を・・・。
楽しんで頂ける作品を目指して