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異世界でラーメンを食いました。

 俺達は超時空コンビニの帰り、村の入り口でアビゲイルさんと再会した。

 彼女は俺に魔王になって世界を滅ぼせなどと無茶なことを言う。

「魔王ってなんです?」

「魔王は古い世界を壊し、新しい世界を創る者です」

 好意的に解釈すればアビゲイルさんの解釈もありだろう。

 だが一人で世界を滅ぼすような魔族や特異能力者ならばともかく普通の人間が一人で魔王を名乗るのは滑稽を通り越して可哀想だ。

「なぜ僕が魔王になるべきなんでしょう」

「今はあなたに教えることはできません」

「それでは魔王にはなれません」

「判りました。それではまた近いうちにお会いしましょう」

 アビゲイルさんは気味が悪いぐらいあっさり引き下がった。彼女は俺たちがスライム狩していた森のほうに歩いていく。一応解説しておくと、アビゲイルさんとの会話は英語である。

「諦めてくれたんですかね?」

「神殿騎士団に追われてるんだろうな」

「長話はできないわけですか」

「多分ね」

「スライムの森の方に行ってますけど誰かと待ち合わせじゃないでしょうか?」

「可能性は高いけど彼女とは関わらないほうがいいよ」

「そうですよね」

 楽がしたいのなら先人の警告に従うべきだからな。それにしてもアビゲイルさんはなぜ俺に魔王になれと言ったんだろう? 個人的な戦闘能力はアキラさんの方が高いのにな。

 アキラさんは勇者だから魔王にはならないか。

「ややこしい問題は後回しにしておやつにしようか」

「はい」

「ヒビキくんはラーメンだね」

「はい!」

 カップ麺とは言え久しぶりのラーメンである。次にいつ食えるか判らないし十分味わって食わねば。転移希望者に警告しておくが異世界に転移すると不便で仕方がないところも少なからずあるぞ。

「超時空コンビニ様々だね」

「次はいつ頃来るんでしょう?」

「多分来年以降だろうな」

「問題はお金よ、お金」

「円はほとんど使い切っちゃいましたからね」

「銀貨や金貨も使えるよ。この辺は物々交換しかないけどね」

「通貨があるんですか?」

 通貨があるという事は通貨を作った国家があるということだ。

「金貨や銀貨は古代文明の遺物らしいけどね」

「ということは……」

「数千年前に滅んだ国の通貨らしい」

 数千年って気長に流通してるんだなあ。いや埋蔵されて流通してないから残っているのかね? 金貨を延べ棒にしたりはしないだろうし。

「おかえり。大漁そうだね」

 食堂のおばちゃんが俺たちを待っていた。肥料に使うスライムの捕獲量が気になるらしい。スライムを入れたビニール袋をちらちら見ている。

「そこそこ取れましたよ。足りなければまた取りに行きますし」

「はいはい。いつもすまないね。今すぐ食べるかい?」

「はい」

「すいません。お湯いただけますか?」

「何に使うの?」

「超時空コンビニでカップ麺買ってきましたから」

「みんなにお芋出してからお湯沸かすからちょっと待ってね」

「はい」

 おばちゃんが小さなサツマイモを二個ずつアキラさん達に渡している。

「お待たせ」

 おばちゃんがカップ麺に薬缶からお湯を注いでくれる。カップ麺でもノンフライ麺のプレミアタイプなので五分間待つ。

「いろいろ買ってきたんだね」

「安いテントを買うより竪穴式住居を作れる道具があった方が便利だと思いましたから」

「確かにテントもいつまでも使えるわけじゃないからね」

 丈夫なテントでも紫外線で劣化するしな。自分でメンテできる茅葺の小屋の方が長く使えるだろう。

「いただきます」

 久しぶりにラーメンを食う。みんなの分を買わなかったのは失敗だったな。次に超時空コンビニがきたときにはみんなの分を買っておこう。今回使った非常時用貯金とは別に財布の中身がまだ千円ぐらいは残ってるはずだし。

「スライムだけどもうちょっと取ってきてくれる?」

「判りました」

 みんな視線が痛いのでもったいないが速攻でラーメンを食う。

「ゆっくり食べればいいのに」

「そりゃ我慢できないよね」

 アヤさんとアキラさんの声はやっぱりトゲがある。

 仕方がない。食い物の恨みは恐ろしいからな。

「財布の中に千円ほどあったんでみんなでラーメンを買ってきましょうか」

「いいの?」

「もちろんですよ。いろいろお世話になってますし」

 食い物の恨みでパーティから追い出されたら大事だ。そんな事になったら一人で生きていかねばならないが俺にはまだ一人で生きていける自信はない。

「おばちゃんの分は?」

「もちろん買ってきますよ」

「ありがと。晩御飯はサービスするよ」

「ついでに乾パンも食べましょう」

「乾パンは取っておいた方が良いような気もするけど」

「久しぶりにお腹一杯食べたい」

 ミオさんが戦時中の欠食児童のような事を言うが欧州中世的ファンタジー社会の当たり前なので転移希望者は覚悟しておくように。

「ミオさんもあー言ってますし」

「今年は畑も順調だし乾パンは消費期限があるだろ」

 おばちゃんもミオさんに助け舟を出す。

「しょうがないね。今晩はご馳走だ」

「じゃ、超時空コンビニに行きますか」

「カップ麺じゃなくて袋麺にしない?」

 アヤさんは一人暮らししていたのだろうか。割と節約志向だな。

「その方がたくさん買えますよね。最近はおいしいのがありますし」

「メンマとかどうする?」

 アキラさんはめずらしく空気を読まなかった。

「袋麺を買えるだけ買うの。メンマとかはなしで」

「えーーー。せっかくラーメン食べるんだからメンマぐらいは……」

「ダメです」

 アキラさんは不満そうだがアヤさんとミオさんは妥協する気はないらしい。俺はもちろんアヤさん達に逆らうような馬鹿な事はしないようにしている。正直、もう少し待遇改善を要求したい。ご主人様なんだし。

 食事の後にアキラさんがトゲトゲ釘スタッフを作ってくれた。

 アキラさんのトゲトゲ釘スタッフの名前が「諸行無情」で俺のトゲトゲ釘スタッフの名前が「主人公属性」と言う。

 だがしかし、この世界の主人公属性は今ひとつ信用できないんだよなあ。

そろそろアキラさん、ヒビキくんに続いて三人目が登場するはずなんですが……。三人目がカオルくんというのもアレですしねえ。困ったもんです。

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