異世界でスキルをゲットしました。
超時空コンビニでいろいろ買い物した主人公たちは怪しげなスキルカードを引くことになるのだが……。
超時空コンビニはエアコンが効いてて非常に快適だ。
俺は申込書を書き終えると早速チート&スキルくじを引いてみる。結果は初級戦士技能/初級生活技能とリバーシブルなスキルカードが出てきた。
「初級戦士はそのまんまですにゃ。初級生活技能はその世界での会話や一般常識が身につきますにゃ」
会話には不自由してないので戦士技能を使う。カードを手に持って戦士技能と念じるとカードが発光して消滅した。これで初級戦士スキルをゲットしたらしい。
アヤさんとミオさんは十八禁スキルの箱からカードを取り出していた。
二人に何が出たのか教えてもらおうとしたが秘密だそうで教えてくれなかった。何故か非常に嫌な予感がする。
その直後にアヤさんがどこからともなく一万円札を取り出して、イブキちゃんに使えるか確認した。
「もちろん使えますにゃ」
「俺も村に戻れば一万ぐらいはあります!」
五百円玉貯金箱を持ってこれなかったのが残念だ。
「僕も五千円ぐらいはあったと思う」
「じゃ、必要最低限なモノを買って出直しましょうか」
「はい!」
俺は迷わずカップラーメンを選ぶ。ミオさんは百均コーナーの板チョコを三個。アキラさんは考え込んだ末にでっかい釘のお徳用パック。アヤさんは百均コーナーの手鏡、ブラシ、石鹸などの生活用品を選ぶ。
やはりアキラさん達は大人だな。
しかし、釘って……。食うわけじゃないのは判るが釘打ち込んだ六尺棒って普通は悪役の使う武器だよなあ……。
「じゃお会計させて頂きますにゃ。カードお願いしますにゃ」
「はい」
アヤさんが一万円札を渡して、イブキちゃんからお釣りを受け取る。
「アキラさんはご存知だと思いますが、お買い物百円につき一ポイント貯まりますにゃ」
「後二回ぐらいカードを引けそうだね」
「アキラさんは何ポイントくらい貯まってるんですか?」
「確認しますかにゃ?」
「じゃお願いしようか」
イブキちゃんがアキラさんのカードにバーコードリーダを当てて顧客情報を読み取る。猫店員さんの手は人と同じ構造のようだ。
「スキル勇者が中級で、ポイントが三百八十二ポイント貯まってますにゃ」
「ありがとう。ポイントはもうちょっと貯めとくよ」
「それがいいですにゃ」
イブキちゃんはにっこりと微笑みながら答えた。アキラさんの苦笑が気になって仕方がないのだが、俺には聞くほどの度胸はない。
「じゃ、一回村に戻りましょうか」
超時空コンビニはしばらくこの場所にいるらしい。俺達はのんびり村に帰った。
「アキラさん、勇者なんでしょ?」
「らしいね」
「魔法使えるんですか?」
「おそらく」
「使ってみてくださいよ」
「ヒビキ君が使ってみたほうがいいと思うよ」
「俺は戦士だから魔法は使えませんよ」
「この世界での魔法は精霊さんにお願いすることだから誰でも使えるよ。必ず成功するわけじゃないけど」
「どんなふうにお願いすればいいんでしょう?」
「じゃ、四方の精霊に願い奉る。我に力を与え給え、と頼んでみてごらん」
「四方の精霊に願い奉る。我に力を与え給え」
俺は言い終わってから頭を下げる。他者にお願いするのだから頭を下げるのは当然だろう。するとなんだか腹のあたりから力が湧いてきたような感じがする。
「なんかいい感じに体力が湧いてきたような気がします」
「おめでとう。最初から成功する人は珍しいんだよ」
「ありがとうございます」
「魔法は精霊さんの機嫌次第で使えない事もあるからあてにしない方がいいわよ」
「肝心な時に使えない場合が多いし」
アヤさん達は魔法に良い思い出がないらしい。俺も気をつけておこう。大体、精霊さんの加護なんて勇者が魔王を倒す時に使うものだろうしな。
後で聞いた話では勇者だけあってアキラさんには精霊さんのお友達が多いそうでアキラさんの近くにいれば誰でも一般人の倍以上の呪文発動率が得られるらしい。
そのうちに村についた。食堂のおばちゃんに預けている荷物を受け取って現金を集めてみる。アヤさんのお釣りとアキラさんの財布の中身、俺の非常時用貯金などをあわせて二万四千円強になった。
これでテント本体と寝袋六個、テント用シート中外が買える。冬を越せる手段が確保できたわけだ。しかし、テントの寿命を考えればおそらく十年は持たない。いっそ斧や鋸や砥石を買った方が便利な気がする。
竹でフレームつくって、茅で壁や天井を葺けば何とか簡易竪穴式住居が出来るはずだ。というわけで再度みんなで相談する。
必要そうな物はシャベル、備中鍬、鋸と替刃、斧、砥石、金槌、釘、ナイフ、ハサミ、台車、隷従の首輪、悦楽のピアスなどという事になった。
買うべき物が決まったので俺達は再び超時空コンビニに向かう。エアコンの冷気が恋しいしな。
「それにしても下手なホームセンターなみに商品が揃ってるわね」
「超時空コンビニですからにゃ」
「空間を超えてるのは店の外側だけじゃないってわけか」
「そうですにゃ。どなたがお支払いされますかにゃ?」
「アキラさんで」
「まとめておいた方がいいわよね」
「じゃ、カードおねがいしますにゃ」
「クジはどうする?」
「アヤさんとミオさんが普通のクジを一枚引けばいいと思います」
「私は十八禁クジ引くから」
「私も」
アヤさんとミオさんが怖いことを言っている。
「ヒビキ君にクジ引かせてあげた方が戦力になるんじゃない?」
「女の子に戦って欲しくないしね。戦士中級は出ないだろうけど、冒険者か狩人が出る可能性は高いだろうし」
「戦士カードの二枚目が出たらどうなるんですか?」
「経験値ボーナスになりますにゃ。十年以上武道の修行されてる方なら二枚目の戦士カードで戦士中級になることもありますにゃ。ずぶの素人なら三枚以上は覚悟しておくべきですにゃ」
イブキちゃんの説明からすると引いてもそう損はないようだ。
「ミオもヒビキ君でいいね?」
「はい」
「じゃ、俺が引いていいですか?」
「いいです。私はお金出してないし」
「気にしなくていいよ。僕達が運が良かっただけだし」
「アヤさんは年の功ですよね」
笑いを取ることはできたがにっこり笑ったアヤさんにぐーで思いっきり殴られた。かなり痛い。実はアヤさんは中級戦士スキルを持ってるんじゃないだろうか。アキラさんの相方だし。
「じゃ、引きまーす」
「私も」
俺が引いたカードは初級冒険者/初級生活技能だった。
「この初級冒険者/初級生活技能カードが一番多いカードですにゃ。戦闘、野外行動と便利な技能が揃ってますにゃ。とりあえずコレがあれば冒険者として生活できますにゃ」
「じゃあ冒険者取った方がいいですよね」
「もちろん」
俺が初級冒険者と念じるとカードが発光して消える。アヤさんの引いた十八禁スキルカードも発光して消えた。
「ん? レベルアップしたかな?」
レベルアップは本人にしか判らないようだ。
「カードで確認できますにゃ」
「どれどれ」
アヤさんがイブキさんにカードを渡して技能を確認してもらう。
「確かにレベルアップして中級になってますにゃ。かなり経験値を貯めてたようですにゃ」
「それほどでも」
アヤさんがホホホと笑ってごまかしてるがアキラさんは冷や汗を流してる。アヤさんは一体どんなスキルを手に入れたんだ? だいたい見当はつくけどな。
「俺も確認して下さい」
「ヒビキさんは初級戦士と初級冒険者ですにゃ。ちょっと技能が被ってますけど両手武器や盾も使えるようになりますから問題はないですにゃ」
やった! これで勝つる。
問題は勝つ相手で大魔王や邪神ではない事を祈りたい。