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異世界での生活始めました。

 サブタイトルどおり異世界での生活が始まります。戦闘はあいかわらずないです。

 悪夢のような一夜が明けた。

 人生初の野宿だったし正直死ぬかと思った。アキラさんが手放したがるハズだよ。

 いやいや本日も良い天気である。村の一角でアキラさん達に持ってきた道具を見せて今後の相談をする。

「乾パンに水、水袋、簡易毛布にライター、準備がいいわねえ」

「異世界に来るのが判ってたらもっと持ってきましたよ。テントとか」

「そりゃそーだな」

「でも、あのテントとか持ってきた人もいるんでしょう?」

 俺は食堂の倉庫として使われてるテントを見る。かなり年季の入ったテントだ。

「キャンプ中にこっちに来たそうだからね。今もたまにいるよ。テントごとこっちに来る人が」

「運が良い人なんですね」

「正直に言えば運が良いのならばこの世界には来ていない」

 ミオさんがぼそりと呟く。確かにその通りだ。

「便利な道具を持ってる人は面倒な事に巻き込まれやすいから注意しておいてね」

 アヤさんが補足する。俺も気をつけねば。

「一つだけ絶対に守って欲しいことがある。誰が何と言おうとその武器を手放さないでほしい」

「わ、判りました」

 普段は穏やかなアキラさんの気迫に気圧される。いろいろと経験があるんだな、この人も。ということは面倒事が向こうからやってくるということだろうか?

 アキラさんは自分から面倒な事に首を突っ込むタイプじゃないみたいだし。

「と、ところで、お尋ねしたいことがあるんですが?」

「なんだい?」

「ど、奴隷っていいんですか?」

 我ながら支離滅裂な質問だ。

「そりゃいざと言うときには僕はこの子達を守って死ぬんだよ。そのぐらいの役得はあってもいいんじゃないかと思ってる」

 しれっと答えるアキラさん。要するに昔の男尊女卑ですね。建前上は男性が優遇されているという。

「男女平等とか気にする人はいるんじゃないですか?」

「この世界の男女平等があるとしたら女性も平等に戦って死ねっていう事なんだ」

 男と同じように働きたい女性は多いけど男と同じように戦いたい女性は少ないって事か。いないわけではないんだろうけど。正直、男女が純粋な生存競争としての殺し合いをすれば女性には体格とかいろいろハンデはあるよな。

 女性は一年三百六十五日戦えるわけでもないだろうし。

「今日の仕事を始めようと思うんだが、その前に報酬の相談に行こうか」

「はい」

 アキラさんと昨日の食堂のおばちゃんの所にいく。アキラさんがおばちゃんと交渉して薪と水を取りにいくことが決まる。その報酬の前払い分として丼一杯分のサツマイモとお湯をもらってきた。

 朝食には向いてないかもしれないが贅沢は言ってられない。

 食べる物が無い人もいるようだし。四人で黙々とサツマイモを食う。

「乾パンを一袋明けますね」

「ホントに! ありがとう!」

 アヤさんもミオさんも満面の笑みを浮かべる。うう、この状況じゃ先が思いやられる。俺はこの世界で暮らしていけるのだろうか?

「大丈夫。すぐに慣れるさ」

「だと良いんですが……」

「しばらく前までは僕もそう思ってたよ」

「ありがとうございます」

 先輩がそういうのなら何とかなるのだろう。

 絶望した所で良い事はなにもない。

 乾パンの缶を開けて一袋取り出す。人間一人の一食分だからそう多い事はない。みんなで半分ほど食べて残りはおやつにすることになった。

 そんなわけで朝食が終わり四人で森に移動して枝打ち作業を始める。

 森の中に木は山のようにあるし斧と鉈があるので結構ハイペースで薪になりそうな枝が集まる。手で枝を折ったり、落ち葉を集めている人達が俺達をすごく羨ましそうな目で見ている。ちょっと怖い。

「薪集めは初級冒険者向けのクエストだね」

 そうは言うものの今のところ焚き火ぐらいしか熱源が無いので薪取りは重要な仕事である。

「頑張ります」

「そんなに頑張らなくていいよ。他の人たちに悪い」

「そうします」

 薪の供給過剰を起こして他のパーティに恨まれるのはイヤだしな。

 アヤさんとミオさんが持てるだけの薪用の枝が集まったところでひとまず村に戻ることになる。アキラさんと俺が手ぶらなのは誰かが襲ってきた時にすぐに戦うためである。楽をするためでは決してない。男は辛いよ、マジで。

 薪取りの次は水汲みらしい。森の中の小川で非常用水袋に十リットルほどいれて村に戻る。俺の奴隷候補というので、ミオさんが水袋を持つことになる。アヤさんは楽がしたいんだろう、多分。

 村に戻って食堂のおばさんに水を渡すとアキラさんが大豆の根っこをもらっていた。食うのだろううか? 大豆には根粒菌がいるけど人間がソレを利用するのは不可能だろう。

「コレはスライムに食わせるんだよ。あいつらは有機物ならほぼ何でも食うから」

 にこにこ笑っているアキラさん。ちょっと怖い。

「食わせてどうするんです?」

「根粒菌と共生したスライムを作りたいんだけどね。なかなかうまくいってくれない」

 ぼやいているアキラさんを初めて見た。

「マジですか!」

 そ、そんな事して大丈夫なのか? スライムが大発生したりしないんだろうか?

「根粒菌と共生したスライムは良い肥料になると思わないか? まあ、今でも結構良い肥料なんだけどね」

 後から聞いた話ではスライムの天日干しは良い肥料になるらしい。

「良い肥料になるとは思いますけど……。大丈夫なんですか?」

 爆発的に増殖したスライムで満ち溢れた世界は勘弁して欲しい。

「僕らだけじゃなくてこの世界で農耕する他の知的種族も狩りまくるだろうから大丈夫だと思うよ。むしろ、変異スライムが絶滅しないかが心配だ」

 思ったよりマッドな人なんだな、アキラさんって。

 その後は森の中の竹藪で直径十センチぐらいの竹を切って村に持って帰る。

 竹を運んだのはアヤさんとミオさんだ。

 女性を働かせてるヒモのようであまり良い気分ではないが、何かあったときには守ってね、と言われると複雑な気分になる。

 法や警察があって秩序があるわけじゃないからな。

 ちなみに攻略組と呼ばれる連中はいる。元の世界に帰ろうとする連中と、この世界の生活を改善しようとする連中だ。

 この二つの集団は表立って敵対はしていないが仲が良いとは言えない関係らしい。リーダー同士は仲がいいらしいが強敵とかいて「とも」と呼ぶ関係なのだろうな。

 そーゆーこの世界の知識を教えてもらいながら、アキラさんと竹で水筒を作ろうと試行錯誤した。

 だがしかし、世の中そんなに簡単にうまくいくはずはない。竹製食器を大量に作ってしまった。食堂のおばちゃんには喜んでもらえたけど。

 明日は竹を専門の職人さんのところに持っていこうか。

「二日目から大活躍だな」

「俺じゃなくて斧と鉈がですけどね」

「君のものが活躍するなら君が活躍するのと同じだよ」

 アキラさんは親切だな。

「ありがとうございます。他のパーティの方は大丈夫なんでしょうか?」

「他人の心配とは余裕だなあ」

「トラブルが怖いんで」

「竹を乾燥させるらしい。薪の需要は増えるから恨まれることは無いさ」

 そうだと良いんだが。まあ、竹は明日も取りに行ってくれと言われたし、竹には旺盛な需要があるようだ。

 そのうちに晩御飯の時間帯になった。昨日と同じくおばさんんがいる食堂で食べる。メニューは豆腐と大根の味噌汁だった。早速竹の食器が使われているんだが、大丈夫なんだろうか? 有毒成分が入ってたりしないだろうか?

「大丈夫だよ。竹の子は重要な食料だし。少なくとも即死するような毒は無いから」

 それって遅効性の毒とかあるかもしれないってことじゃないですか、ヤダーー、などと言っても仕方が無い。

 日本に帰れない限り殺されるか病死するかで七十や八十まで生きることは無いだろう。実際、この村で年寄りを見たことが無い。

「お米はないんですか?」

「ないわけじゃないんだが、僕らはつくってない。十分な水が無いからね」

「河口の村に行けば作ってるわよ。ジャポニカ米じゃないけど」

 アヤさんは食べたことが有るらしい。ということはアキラさんも食べたことがあるんだろう。ミオさんはわからないけど。

「田植えと収穫を手伝えば、秋祭りに招待されてご馳走してくれる」

 河口の村の人達はあんまり太っ腹な人達ではないんだな。旱魃や大雨で確実に収穫できるとは限らないから仕方ないんだろう。

「あんまり美味しくないのよねえ……」

 なるほど。品種改良されて食味が向上した稲ではなくて、限りなく野生種に近い稲なのか。取れた米も「米のような食べ物」という認識なのだろうな。あれ……? 

「この世界、梅雨があるんですか?」

「ないよ。あれば田んぼも増えるんだろうけど」

 梅雨が無い分快適だとプラスに考えるとしよう。しばらく野宿が続きそうだし。冬はどうするんだろう? 

「そろそろご奉仕の時間」

「ミオもライバルが増えるかもしれないし大変ねえ」

 敢えて考えなかった事実をアヤさんが突きつけてくる。アキラさんは他人事だからか、面白そうに笑ってる。これが同級生ならば後でおぼえてろよ、とか言えるのだがいろいろお世話になってる先輩なので何もいえない。

 頼む、誰でもいいから助けてくれ!

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