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[ 第一話 ] 美少女って・・・なんかズルイ

「今日、ね・・・?家に私しかいないんだ・・・。心細くて、さ」


クラスの男子が憧れてやまないマドンナ、椎名美咲にごくごく平凡な佐藤勇介が頼み事をされたのは、彼女と二人きりの放課後のことだった。


「だから今日八時ごろに、さ。うちに来てよ。着替え持って」


着替えを・・・持って?

これはひょっとして、いやひょっとしなくてもムフフな事件が起こってしまうのか、そうなのか!


★ ★ ★ ★ ★


「何やってんだ?あれ」


いたいけな純情少年が期待で胸をいっぱいに、八時五分前に椎名家門前に到着するとそこには先客━━門の前をウロウロする不振人物の姿が。大きなリュックを背負い、もしやストーカーかと思い勇介が警戒していると、


「お?勇介ェ?お前何やってんの?」


「それはこっちのセリフだ!」


心配は無用だった。怪しい影の正体は勇介の知り合い、新垣直樹だった。


「おいおい、ストーカーか?こんな時間に女子の家の前にいるなんて」


少し強い口調で声をかける。

ここが美咲の家だと知らないわけではあるまい。


「いやいや、俺、美咲に呼ばれて来たんだよ」


「は?」


今日呼ばれたのは俺だけのはずだ。

お泊まりムフフ計画・・・


「え?勇介も呼ばれてんの?」


「え、あ・・・うん」


二人の間に微妙な空気が流れる。居心地の悪い沈黙が続く。先ほどの幸せな緊張はどこへやら、心の中は猜疑心が支配していた。


二人で立ちすくんでいると、後ろから爽やかな声が聞こえた。


「何やってんだ?お前ら」


「「ええっ!?」」


再び登場する知り合い。一ノ瀬拓海がそこにいた。長身のイケメン、性格は温和な草食系男子である。


勇介と直樹はこの場に三人揃ったことで、淡い期待を捨て去ることにした。


「あがってあがってー」


玄関から美咲の声。マドンナ直々とて嬉しくない。二人っきりだったら素直に喜べたのに。


「ここが私の部屋だよ」


階段をのぼってすぐ右にある美咲の部屋に通された。夢にまでみた女の子の部屋。なんだか、いい匂いがする。あぁ、なんで女の子ってこんなにいい匂いがするんだろう・・・


そしてなぜ、ここに見知った男がいるのだろう・・・


「ななな何で、勇介に直樹、拓海までここにいるんだよ!」


「「「それはこっちのセリフだ!」」」


部屋の中には四人目の男がいた。喧嘩においてその右に出るものなしと言われる喧嘩番長━━それでいて気さくな兄貴肌を持つ。不知火蓮である。


お前も犠牲者だ・・・


アイコンタクトで状況を察したらしく、蓮はガックリと肩を落とす。

やはり番長も、美咲のかわいさには勝てなかったらしい


「みんなに今日集まってもらったのは・・・その・・・お兄ちゃんの部屋を掃除してほしいの!」


「え?掃除?」

直樹の顔に疑問の色が浮かぶ。


「お兄ちゃん引きこもりでね、いつも部屋は荒れ放題。今日お父さんとお母さんがカウンセリングに連れていったんだけど、私にね、片付けを頼んでいったの。でもね、ちょっと量がありすぎて、昨日、全然進まなかったの・・・」

重い口調の美咲。


「・・・事情は分かったけど、どうして俺らなんだ?正直、力仕事ならもっといい奴らがいるだろうし、女の子同士でわいわいしながらでもできたはずだろ?」


はたから見れば最もな意見だったかもしれないだがしかし!この四人は知っていた。ここに集いし四人は、全員椎名美咲に恋してるということを。


「あの・・・ね。女の子呼ぶと、その・・・えっちな本とか・・・でて、きちゃったときに・・・なんか、気まずいでしょ?そ、それに、」


「「「「それに!?」」」」

四人の声が見事にシンクロした。


「・・・みんな、カッコイイから・・・。な、なんでもない!が、頑張ってね、そこの廊下を突き当たりだからっ。それと・・・終わったらぁ、ゴ・ホ・ウ・ビあげちゃうぞっ」


天使のようなウインク。完全にハートを射抜かれた四人は、


「(か、かわええ・・・)」だの、


「(ががががががんばろう)」だの、


「(ゴホウビってまさかゴホウビってまさかゴホウビってまさか)」だの、


「(全身全霊をかけて取り組むっ!!早く終わらせて美咲と)」だの。


ライバルたちのことも忘れて悶えていた。


己のうちに思いを確認し、とっとと終わらせようと彼らは歩き出す。


このとき彼らはまだ知らなかった。

惨劇を。誰も予想しなかったであろう惨劇が待ち受けていたことを。地獄の門が開かれていたことを。





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