元暗殺者は聖騎士になりたい
「十三番ッ! 何をしている、早く立て!」
上官の怒鳴り声が鼓膜を叩く。
僕は気力を振り絞り、倒れた体を起こした。
すぐさま対戦相手がナイフを突き出してくるも、紙一重で躱して蹴りを浴びせる。
そのままなんとか勝利することができたが、すぐに新しい相手がやってくる。
たとえここで勝ってもまた次の相手が用意される。
その繰り返しだ。
気絶するまで連戦連勝しなければならないのが、今回の訓練だった。
「お前達は一流の暗殺者になる定めだ! 力が足りぬ弱者は死んで糧となれ!」
何度聞いたかもわからない上官の言葉が室内に響き渡る。
結局、僕はナイフで刺されて重傷を負い、気が付くと独房の中にいた。
疼く腹を撫でつつ、芯まで冷えた体を丸めてふと考える。
(こんな生活がいつまで続くんだろう……)
僕は暗殺者として育てられている。
いずれ道具として外の世界に出て、培った技術で誰かの命を奪うのだろう。
果たしてそんな人生に意味があるのか。
少なくとも僕は魅力を感じなかった。
その時、遠くから爆発音が聞こえてきた。
間を置かずに上官の怒鳴り声も響いてくる。
「侵入者だ! 始末しろォッ!」
施設内で戦闘が始まったらしい。
多数の声と殺気、そして断末魔が聞こえる。
そのうち僕のいる独房の鉄扉が切断された。
そこに立っているのは、白銀の鎧を着た赤毛の女の人だった。
「えっ、誰……」
「もう大丈夫。君を助けに来たんだよ」
その女の人は優しく僕を抱きしめる。
彼女が聖騎士と知ったのは、保護された翌日のことであった。




