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元暗殺者は聖騎士になりたい

作者: 結城絡繰
掲載日:2026/09/15

「十三番ッ! 何をしている、早く立て!」


 上官の怒鳴り声が鼓膜を叩く。

 僕は気力を振り絞り、倒れた体を起こした。

 すぐさま対戦相手がナイフを突き出してくるも、紙一重で躱して蹴りを浴びせる。

 そのままなんとか勝利することができたが、すぐに新しい相手がやってくる。


 たとえここで勝ってもまた次の相手が用意される。

 その繰り返しだ。

 気絶するまで連戦連勝しなければならないのが、今回の訓練だった。


「お前達は一流の暗殺者になる定めだ! 力が足りぬ弱者は死んで糧となれ!」


 何度聞いたかもわからない上官の言葉が室内に響き渡る。

 結局、僕はナイフで刺されて重傷を負い、気が付くと独房の中にいた。

 疼く腹を撫でつつ、芯まで冷えた体を丸めてふと考える。


(こんな生活がいつまで続くんだろう……)


 僕は暗殺者として育てられている。

 いずれ道具として外の世界に出て、培った技術で誰かの命を奪うのだろう。

 果たしてそんな人生に意味があるのか。

 少なくとも僕は魅力を感じなかった。


 その時、遠くから爆発音が聞こえてきた。

 間を置かずに上官の怒鳴り声も響いてくる。


「侵入者だ! 始末しろォッ!」


 施設内で戦闘が始まったらしい。

 多数の声と殺気、そして断末魔が聞こえる。

 そのうち僕のいる独房の鉄扉が切断された。

 そこに立っているのは、白銀の鎧を着た赤毛の女の人だった。


「えっ、誰……」


「もう大丈夫。君を助けに来たんだよ」


 その女の人は優しく僕を抱きしめる。

 彼女が聖騎士と知ったのは、保護された翌日のことであった。

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