初任務と、忘れられない影
初めての町に着くと、すぐに依頼が舞い込んだ。
「最近、この辺りの街道に魔物が出るんです。どうか退治してもらえませんか」
俺はためらった。勇者と呼ばれてはいるが、自分が本当に戦えるのか、不安しかない。
だがリオは勢いよくうなずき、カレンは落ち着いた声で言った。
「試しにはちょうどいい任務だな。やってみよう」
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夕暮れの街道。藪から現れたのは牙をむく狼型の魔物だった。
喉がからからに乾き、足が震える。剣を構えるのがやっとだった。
「リオ、援護を!」
カレンの声が飛ぶ。
「はい!」
リオの放った火球が魔物の進路を逸らし、その隙にカレンが盾で受け止める。
衝撃にカレンがよろめいた瞬間、俺は無我夢中で剣を振り下ろした。
――ズバッ!
光を帯びた一撃が魔物を切り裂き、地面に倒れ込ませた。
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「……やったのか」
手が震えていた。俺ひとりじゃ、とても勝てなかった。
隣にリオとカレンがいたからこそ、立ち向かえたんだ。
「すごいです! 本当に勇者様なんですね!」
リオは無邪気に笑い、目を輝かせている。
カレンは大きく息を吐いて肩を叩いた。
「悪くない。だが次はもっと落ち着いて構えろ」
その言葉は厳しいはずなのに、不思議と嬉しかった。
自分が誰かに認められたような気がした。
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町に戻ると、人々が歓声で迎えてくれた。
「勇者様! ありがとうございます!」
その輪の中から、一人の町娘が駆け寄ってきた。
「勇者様……お怪我はありませんか?」
栗色の髪を揺らし、不安そうに俺を見上げるその瞳に、胸がわずかに熱くなる。
こんな風に心配されたのは、いつぶりだろう。
笑みを返しかけた瞬間、脳裏をかすめたのは真緒の面影だった。
同じように俺を気づかってくれた、あの頃の優しい眼差し。
思わず口を閉ざすと、町娘は小さく首をかしげ、何も言わずに去っていった。
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その夜。宿の部屋で、リオがはしゃいでいた。
「僕たち、最高のチームですね! これなら魔王だって倒せるかも!」
彼の声に、カレンが苦笑する。
「調子に乗るな。今日だって勇者が一歩遅れていたら危なかった」
「う……でも、勇者様は最後に決めてくれました!」
そう言って笑うリオを見て、俺は少しだけ胸が温かくなる。
勇者かどうかはわからない。
でも――仲間と一緒なら、もしかしたら。
そう思いながら天井を見上げた。
浮かび上がるのはやっぱり真緒の笑顔で、胸の奥が締めつけられた。




