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魔王城の門

第19話 魔王城の門


 ついに――

 俺たちは、魔王城の正門の前に立っていた。


 空気が違う。

 重く、静かで、それでいてどこか張りつめている。


 黒い城壁は空を切り取り、巨大な門は固く閉ざされている。

 ここが、すべての答えの場所だ。


「……ここが、魔王城……」


 リオが息を呑む。

 カレンは無言で剣の柄に手をかけていた。


 俺は一歩、前へ出た。


「――俺は、勇者だ」


 門に向かって、はっきりと告げる。


「魔王に会いに来た。

 戦うためじゃない。話をするために来た」


 一瞬の沈黙。

 やがて、低い音を立てて門がゆっくりと開き始めた。



 現れたのは、漆黒の鎧をまとった魔族の男たちだった。

 だが、剣はすぐには抜かれない。


「……勇者が、自分から名乗って城門に立つとは」


 先頭に立つ一人が、淡々と告げる。


「魔王様は、無益な戦いを望まれぬ。

 その言葉が偽りでないなら――中へ通す」


 胸がわずかに緩む。


 その時だった。



「――お優しいことだ」


 冷たく、嘲るような声が城内から響いた。


 ゆっくりと、一人の男が現れる。

 他の魔族とは明らかに放つ気配が違う。


 細身の体。

 長い影のような存在感。

 その瞳は、最初から俺たちを“殺す気”で見ていた。


「勇者が“話し合い”だと?

 笑わせるな。お前は“討つ者”だろう?」


 城門前の空気が一変した。


「下がれ。そいつは魔王様の前に――」


「――出る前に、死ぬべき存在だ」


 次の瞬間だった。


 男の姿が消えた。


「――っ!」


 反射的に剣を振る。

 だが、金属が弾かれる甲高い音と同時に、衝撃が腕に走った。


「遅い」


 背後――!


 カレンが割り込むように斬りかかり、ようやく距離が開く。


「っ……なに、こいつ……!」


「……幹部級だ。間違いない」


 城門を守る魔族たちが、緊張した声で呟いた。


 男は愉快そうに口角を上げる。


「“勇者”というだけで、ここまでやれるのか。

 だが――魔王様に会う価値があるかどうかは、俺が決める」


 殺気が、空気を裂いた。



「来い、勇者。

 お前がどれほどの“器”か――試してやる」


 次の瞬間、男が一歩踏み出す。


 真正面からぶつかった。


 剣と剣が激突し、衝撃波が地面を抉る。

 リオの魔法が炸裂し、カレンの斬撃が追い打つ。


 それでも――


 倒れない。


 むしろ、楽しそうに笑っていた。


「いいな……いいぞ……!

 これほど“壊しがい”のある人間は久しぶりだ!」


 その言葉に、背筋が凍る。


 ――こいつは、戦いを楽しんでいる。


 俺は歯を食いしばり、剣を握り直した。


(……絶対に負けられない)

(ここで倒れたら、真実に辿り着けない)


 城門の向こうには、

 きっと――真緒がいる。


「リオ、カレン――下がれ!」


「無茶だ!」


「今だけだ――信じろ!」


 全身の力を剣に込める。

 真正面から男へと踏み込んだ。


 ――次の一撃で、すべてが決まる。

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