第11話 血に濡れた街で
第11話 血に濡れた街で
不穏な報せが、街に届いたのは夕暮れ時だった。
「西の街が魔王軍に襲われている!」
息を切らせた兵士が叫ぶ。
俺たちはすぐに武器を手に取り、現場へと駆け出した。
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燃え上がる街。
家々は炎に包まれ、瓦礫と悲鳴が夜空を裂く。
剣を振るう魔族の兵たち。その顔には迷いがなかった。
「くそっ……!」
剣を抜きながら、胸に別の疑念が広がる。
(……おかしい。魔王が変わってからは、人間を襲わなくなったはずじゃなかったのか?
なのに、なぜ……!)
考える暇もなく、俺は突撃した。
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必死で人々を避難させていると、不意に聞き覚えのある声が耳に届いた。
「ゆうさま……!」
振り返った先にいたのは、かつて果物を差し出してくれた町娘だった。
彼女は腕から血を流し、必死に倒れた母を庇っている。
「おい、しっかりしろ!」
駆け寄って彼女を抱き起こす。
「だ、大丈夫です……私なんかより、お母さんを……」
震える声でそう言った彼女の頬には、煤と涙が混じっていた。
胸の奥が締めつけられる。
(まただ……守れなかった。また、俺の目の前で……!)
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必死で周囲の魔族を退けるが、次々と兵が押し寄せてくる。
リオが炎を放ち、カレンが剣を振るいながら叫んだ。
「この数はおかしい! ただの襲撃じゃない、軍勢だわ!」
その言葉に、俺は奥歯を噛みしめた。
「……誰かが意図的に仕組んでいる」
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やがて、魔族の兵は引き上げていった。
だが街は焼け、泣き叫ぶ声が夜空に響いていた。
町娘は布で腕を押さえながら、それでも笑みを浮かべた。
「……助けてくださって、ありがとう……」
その笑顔が、余計に胸を痛めた。
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燃える瓦礫の前で、俺は拳を強く握る。
「……もう、見過ごせない。
魔王城に行く。真実を、この目で確かめる」
炎に照らされた決意は、二度と後戻りできないものになっていた。




