プロローグ
こんにちは
あらすじを読んでね
『其の月は常に凡人の世を見つめる目である。
其の月は凡人に最初の文明を与え、荒れ果てた大地を耕した。その後、世界の理を書き換え、凡人の一生に無限の魂と有限の命をもたらしたのだ。
月の慈愛は大地を潤し、地を耕したが、彼女は深い眠りについた。彼女の権威がなくなったかのように、月は光を失った。
凡人は深い悲しみに暮れ、闇に包まれた夜を嘆き、毎夜其の月に祈りと信仰を捧げた。
黒き月はその祈りに応えるように彼女の血液である泥と月の意志を凡人に与えた。
泥は月の代わりに人々の文明と科学の生贄となり、凡人の文明の歩みを支える礎になり、月の意志は、眠り続ける月の代わりに凡人の神となった。
現在に至るまで月は眠り続け、もう彼女に理性は感じ取れない。際限なく泥を産み続け、其の泥は人を害している。これまでに産み落とされた月の意志は人類の鎖から逃げ出し、今や行方すらもわからない。
しかし、それが何だというのか?これらは所詮、人類という狭い視野しか持たない愚か者が遺したものに過ぎない。それらは都合の良い用に解釈され、改変されてきたものだ。
憤りを覚えるが、しかし、私は其の真実を見つけ出すための方法と、その真実についての仮説をたてた。人々は私を異端者と罵るであろうが、これが真実であると証明されれば、あの愚か者どもこそがあの月下の冒涜者となるだろう。
すでに手段は出揃った。あとは、あの万象の湖に顔を浸すのみである。』
――とある学者の手記――
さようなら