そして太陽は昇る(3/3)
それから幾つかの夜が過ぎた
毎夜、これまで記した程度の事が繰り返された
『 』は疲弊してしまったらしく、あまり喋らなくなっていた
僕は『 』が抵抗する様に悦びを感じる人間だったので、本来なら既に飽きてしまっている筈だった
「どうしてお前はそんな苦しみを得ながらも毎晩、僕とここに来るんだ?」
僕は問いかけた
実際にこの関係に本気になっているのは、むしろ自分の方であるという事も解り始めていた
だが、だからこそ、僕はそれを聞かずにはいられなかった
『 』は何も言わず、意思のない眼で僕を見つめるだけだった
「こんどはなにをころすの?」
『 』が僕に言った
僕は近くの暗がりを指差した
そこには、僕たちと同じくらいの歳の子供が横たわっていた
「そろそろ人間をやってみたいだろ?」
『 』がそれを見る
少しの間、彼は静かに人影を観察していたが、それが何であるかに気付くと目を見開いた
「お前の妹だよ、今夜は楽しくなるな」
僕は、『 』の眼の前にナイフを投げ捨てた
「やってみろって、こんな楽しいことなかなか出来ないぞ」
『 』は立ったままナイフを見つめる
俯いているせいか、僕からは表情は解らなかった
「それともお前、本当は僕から痛くされると嬉しいのか?」
僕はズボンのポケットからスタンガンを取り出した
通電させると、ばちばちという音とともに少しだけ辺りが明るくなった
「僕は、これをお前に押し当てたい」
「そうすると嬉しいからだ」
『 』の表情が照らし出される
彼は、意志のある瞳で僕をまっすぐに見ていた
次の瞬間、僕は『 』に突き飛ばされて後ろに倒れていた
実際には、突き飛ばされたのではなかった
僕の胸にはナイフが柄まで刺さっていた
「君は、生きていたらきっと、いつかこれよりひどい事をするよね」
震える声で言いながら、『 』が僕に馬乗りになる
そして何度もナイフを僕の躰中に突き立てた
乱暴ながらもたどたどしかったが、躊躇のあるそれでは無かった
僕は初めて感じる『 』の重さに恍惚として、痛みも感じなかった
考えてみれば、行為の時はいつも僕が上だった
それをいまさらに僕は思い出していた
「ねえ」
しばらく蹂躙されたその後で、僕は熱い息をゆっくりと繰り返しながら言った
いつまでもこの時間に続いて欲しかった
『 』はこの瞬間、今まで僕が見た中でも一番美しかった
「お前が初めて殺したのは僕だよ、絶対に忘れないでね」
優しく微笑みながら僕は『 』を見た
夜が明ける時間になったようだった
僕から見た『 』の後ろには、昇り始めた太陽の眩い輝きが見えた
総てが輝きの中にあった




