そして太陽は昇る(2/3)
僕たちは昨夜と同じ場所で、明るい色で燃えさかる炎のはじける様を見ていた
炎の中からは絶えず低い猫の鳴き声のような音がしていた
それは投げ込まれた傷だらけの猫の躰が燃えて、喉の中を風が吹き抜ける音だった
「お前が殺さなかったから、こんなに苦しんでるんだよ」
僕は『 』の顔を嬉しそうに覗き込んだ
『 』は血の気が引いた真っ白な顔をして、呆然とその様子を見続けていた
「次はちゃんとやれ」
出来る限りの冷たい視線と言い方でそう告げると、暗がりにあった木箱から僕は次の猫を取り出した
四肢の切り取られた、逃げる事も出来ない哀れな子猫だ
血塗れのそれは『 』を見ると消え入りそうな声で少しだけ鳴いた
『 』が僕に視線を向ける
眼の中に強い怒りの感情が見て取れた
「ほら、これでやるんだ」
僕はナイフの柄を『 』に向けると、差し出した
ナイフは少年の全力と言っても差し支えない力で強く握り締められ、そして次の瞬間には放たれた矢のようにまっすぐに僕の喉へ迫った
それでも『 』は結局、僕を刺す事は出来なかった
『 』は震えながら涙を流していた
その泣き顔はどんな名画よりも美しかったが、僕は既にそれを見慣れていたし、本当に見たかったのはもっと美しいものだった
「刺さないのか?」
僕が言うと、『 』は刃の先端を静かに下へと向けた
頰を伝う涙の量が増えたように僕には見えた
しばしの沈黙が2人を包む
僕は死にかけの子猫を掴むと、頭の上まで持ち上げた
そのまま炎に投げ込もうとすると、僕の手首を『 』が掴んだ
「やめて、ちゃんとやるから」
震える声だった
僕が猫を地面に置くと、『 』はナイフを逆手に持った
そして、もう片方の手を持ち手に添える
意を決したように眼を閉じると、ナイフを猫に振り下ろした
血液が少し飛び散り、『 』のシャツを汚した
僕はそれを嗅ぎたいと考えたが、それでも静かに見続けていた
『 』が眼を開ける
僕は先程の木箱の蓋を開き、両手で持つと中身を見せた
中には、まだ沢山の命が詰められていた
すべてが終わる頃には『 』はぐったりとして、言葉を発する事も出来なくなっていた
もしかすると、最後の一匹が彼の家の猫だったからかも知れなかった
僕は『 』の頭を撫でると、口づけした
「ご褒美をあげるよ、おいで」
口づけを繰り返しながら、僕は『 』の躰を引き寄せた
行為のあと「続きはまた、今夜な」と僕は言った
聞こえているのか、そして『 』が理解出来ているのかは解らなかった




