二章ー48 クライマックスへ
「デンジャー!!」
デンジャーがやられたーーヤクザは何か策があるわけでもなく、思わず飛び出していった。
「皆さん!!」
「お前はそいつら守ってろや!!」
ザックは一歩出遅れた、疲労のせいか、はたまた恐怖のせいかーーそして一般人とともに、より広間から距離を取るべくゆっくりと後退する。
「なんだ・・・まだいたのか・・・」
「当たり前や!! 一人おったら百人おんねん!!」
まるで何か、人類最大の宿敵を彷彿とさせるようなセリフを放ち、それぞれ銃口を野郎共へ向ける。
そして次々と発砲ーー走りながらであるため手元がブレ、標準がなかなか定まらないが、しかし構わず発砲、正確性には欠けるがしかし、今二人を撃ち抜いた。
「なんなんだ、あの武器は!?」
遠距離から、詠唱なしに発動する未知の攻撃、そして新たな犠牲者、野郎共は動揺し、狼狽える。
だがーー
クラスレッド・トリ・クイック
「< 赤魔術・速射・三連射 >」
襲来した魔術、三撃同時に同箇所にヒット、それにより、ヤクザが一人やられた。
「サリー!!」
「「「サリー!?」」」
相棒がやられ、敵から視線をそらす。
銃口も敵からそれ、明後日の方角を向いてしまっている。
そこへ、その致命的な隙をついて、指揮をしていた野郎が瞬間距離を詰めてきた。
「・・・」
「はっーー」
剣筋が見えなかったーー気がつけば、自分も斬られていた。
「・・・雑魚が」
相棒に続いてそのヤクザも倒れ、僅かな静寂が訪れる。
「さ・・・流石はマブロ様の右腕のレフト様!!」
「剣の腕前はあのアフォス様から一目置かれるほど・・・!」
静寂の後ーー味方ながら驚愕し、思考が停止していた野郎共も、ようやく思考が運転を再開、誰かがレフトに媚びたのをキッカケに、それに続いて次々と囃し立てる。
だがレフトはそれを受けて尚静かに、そして無表情でいるため、次第にまた静かになっていった。
こうして、ヤクザは全員完全に無力されてしまった。
「・・・」
またレフトは、倒れたヤクザに剣を向け、いつ斬ろうか、素振りをしながらぼんやりと考えているようだ。
「お前・・・」
「・・・ん?」
「お前・・・どうしてーー」
「本気を出さないのか、だろ? そんなの簡単、つまらないからさ。君等相手に本気を出しても楽しくないし、そもそも・・・お遊びなんだから、長〜く楽しまないと、損だろ?」
ヤクザの問いかけで、ようやく思考の世界から戻ってきたレフトは、虚無から脱却したため表情も戻り、そして彼からの質問に対しては、薄っすらと笑みを浮かべ、楽しそうに答えている。
「まぁでも・・・気が長いわけじゃないから、素直じゃなくてもいいけど、ずっと駄々こねてると、間違って殺しちゃうかもしれないな」
そう言って、女性等を見る。
その曇った瞳は本気、それが彼の本性であり、同時にそれが彼の愉楽である。
「だから、さ・・・いつまでもそうしてないで・・・」
そう言って、ヤクザの血の付着した剣を携えて、女性たちのもとへ、ゆっくり歩みを進める。
「やめ・・・こな・・・来ないで・・・」
物凄い目力、狂気じみた視線に当てられ、女性たちはまた声も上手く出せないほど恐怖に怯えている。
「来ないで? ・・・違うでしょ? いいから早く服を脱ーー 」
そこで、レフトの声は途絶えた。
あとには何も、彼がいたという痕跡全て、残ってはいない。
「なん・・・何が・・・・・・今の今まで、確かに・・・」
ーー何かがやって来た。
「・・・何だ・・・何かが・・・?」
すると周りで一つ、また一つ、声が消えていく。
野郎共は統制を失い、それぞれ散り散りに、懸命にその場から逃げ行こうとするがーー。
ーーチリンーー
今、この瞬間をもって、野郎共およそ三十人は完全に消え失せた。
それと同時に、怪しくも耳に届いた音につられて振り向く、するとそこにいた女性たちは皆眠ってしまっているようで、そして自分も眠気に襲われた。
ーーチリン、チリンーー
サリーの方を向く。
彼も、もうまるで動かない。
おそらく死んではいないだろう、それほど出血はしていない。
ただ、寝てしまっているようだ。
正面を向く。
そこには一匹の、小柄な黒い猫が。
ーーチリン、チリン、チリンーー
何となく、空を見上げる。
眠い体をゆっくりと動かして、仰向けになる。
そして気がつくーー。
「すごく、綺麗な・・・」
見上げるとそこには、満天の星空。
〜玉座の間〜
「もう、終わりね・・・」
殆ど全身から出血、体の感覚も、さっぱり残っていない。
あれからの戦いは、酷いものだった。
ただ一方的に蹂躙されるだけ、しかも相手は技も使わず、少しも焦った様子も見せず、斬り刻まれた。
もう痛みーーというのからも開放され、ならば自分には何も残っていないようで、心も折れている。
「ユウさんは殺さないでくださいね。まぁ、最悪殺してもいいですけど、傷はあまりつけないでくださいね」
「・・・ご安心を。心配には及びません」
敵は余裕磔磔、優雅にユウへと死を届けに参る。
対するユウはもう消耗しきってしまい、心身ともに擦り切れてしまった。
深い絶望だ・・・残るはただ無力なまま、死を待つのみ、だがーー。
「フフッ・・・フッ、アハハハハハハ」
ユウが突然笑い出した。
「終わり・・・終わり、ね・・・フフッ、そうか・・・終わりか・・・」
あまりに唐突で、それでいて少し不気味であった。
アフォスはそこで一度、歩みを止める。
「・・・どうしたんですか? 頭おかしくなったのかしら?」
これには一同驚いたようで、魔王とマブロは二人似たような表情をしている。
「頭・・・? あぁ、心配ありがとう。でも頭がおかしいのは元からだ。だからそう気にすることもないさ」
つい今さっきまでの様子が嘘のよう、笑顔でそして通常時と同様に話している。
「・・・・・・」
これにはマブロも驚いて、だが目的は変わらず、アフォスの隙をじっと狙い続けている。
「まぁ、なんでもいいですけど・・・ではアフォスさん、どうぞ、彼に引導を」
驚きつつも、魔王はそうアフォスに指示を出した。
それを受け、またアフォスは歩みを進め、剣を携えユウのもとへと着実に近づいていく。
「アフォスさん・・・・・・」
「・・・何か?」
「ありがとうございました」
ユウはそう言って、満面の笑みを浮かべた。
ーーピピピピピ!! ピピピピピ!!ーー
すると突如、ピリついた空間に、異質な音が流れる。
「・・・・・・」
「? 何? どうしたの?」
奇っ怪な音、そして恐らく、この世界の人にとってはまるで聞き馴染みのない未知の音。
それ故魔王、マブロ、この二人は不思議がり、警戒し、若干の恐怖さえも覚え、あたりを見回す。
ーーおはようお兄ちゃん、早く起きて!ーー
「何だ、これは・・・? 女の声・・・誰か居るのか?」
「これの・・・発信源は・・・!!」
魔王は振り返る。
振り返るとそこには、操られ、自我を失い、そして先程殺したはずの、用済みの国王が座っているだけ。
だが確かに、その方向からそれは聞こえてくる。
魔王は思ったーーでは、一体誰が、と。
すると次の瞬間、魔王にとってはありえないことが起こった。
「・・・そんな・・・ど、どうして・・・!?」
「おっと、スマンスマン。マナーモードにするのをすっかり忘れておったわ」
死んだはずの人間が、切り捨てたはずの国王が、突然流暢に喋りだしたのだ。
「お父様・・・どうして? ・・・いや、あなた誰?」
魔王は咄嗟に国王から距離を取り、マブロは剣を向ける。
だが国王は、そんなことはお構いなし、スマホもどきを徐ろにポケットから取り出し、アラームを止めた。
「それは・・・無線機か何かなのかしら? さっきの声の主は、あなたのお仲間?」
「ん? そうか、無線機は知っておるのか! それを一部とはいえ普及させるとは、流石は賢者、といったところかの?」
魔王の問を上手はぐらかし、ようやくといった様子でイスから立ち上がる。
国王は一度咳払いをして、そして改めてスマホもどきに向かって告げる。
「ごホンっ・・・あー、僕です。・・・皆さん、ご協力ありがとうございました。例の件は無事完遂しましたので・・・どうぞ、存分に暴れちゃってください」
若い声だ、それも、聞き覚えのあるーー国王から発されるのは、まさにユウの声に他ならない。
それなりに年を取り、年季の入った見た目から、しかし中身はまだ若き青年とでも言おうか、そんな不可解で且つ有り得ないような現象に直面し、魔王等は自分の耳や、目や、すべてを疑う。
そして魔王等は、先程まで戦っていたはずの、ユウを見る。
やはりユウだーー加えて、元気そうに立ち上がり、こちらに向かって笑顔でピースサインまでしている。
「「あなた/君達は・・・一体?」」
「・・・」
思わず口に出てしまった。
「すいませんね・・・僕、別にユウでも何でもなくて・・・」
「・・・それは・・・どういう・・・?」
クランクアップ
「「< 終劇 >」」
何か能力が発動したようだ。
マブロはそれと同時に、比較的近い距離にいた国王に斬りかかった、がーー。
「何!?」
剣が止まったーーその国王もどきはただ普通に、剣を片手で、しかも素手でつかんで止めたのだ。
今の自分の攻撃は、威嚇でもなんでもなく、対象を制圧しようと全力で放ったもの、それをこうもやすやすと止めるとは・・・マブロは驚き、そして恐れた。
「あの〜、もういいですか?」
国王もどきは如何にも余裕そうに、尚も力をかけ続けているにも関わらず、だがそれをものともしない。
そしていざ、この男の顔を見ると、それはマブロや魔王の知る国王のそれではなく、しかしよく知った顔であった。
「お前・・・ユウ!! いつの間に・・・!?」
「あっ、どうも、改めまして、僕がゆうです」
「では、あちらのユウは!?」
攻撃をやめ、距離を取り、そちらにも目をやる。
するとそこにはまるで知らない男がいた。
「君は・・・君は誰だ!?」
「あっ、はじめまして、ハイユウというものです。彼の同僚です。よろしく」
「偽物・・・!?」
「いえ、彼もユウと呼ばれているので、偽物ではないです」
「「・・・」」
さて、いい感じに屁理屈も述べ、相手方が黙り込んでしまったところで、お返しとばかりに決め台詞を。
「さぁ、無双の時間だ!!」
[雑談]魔王の名前なんですけれども、シルヴ=シリアスに変更致しました。
元々そうだったのですが、”シル”と略したら、一章のキャラと名前被りましたので・・・。
何となく、しっくりくると思ったら、既存だからでした! すいません!
[ブクマ&評価しましょう!!]次回、連載100部目です!
[予告]次回の更新は、25日を予定しています。




