二章ー47 広間の惨状
〜中央区〜
中央区にある広間、皆の憩いの場所のハズだったがーー。
「女はここに並べぇ!」
「あの・・・やめてください!!」
「早くしろ!」
そこもまた、ある意味では一番凄惨な現場だと言っても良い。
普段ならば皆が集まり、楽しく遊んでいる場所だがしかし、今ここにいるのは中規模の軍隊とそして女性のみだ。
「これ・・・一体どういう状況だ・・・?」
何者かの推定軍隊が、魔物とは無縁なここに布陣、およそ三十人の武装した男たちが、この広間内に居る。
それぞれ広間の端、おおよそ全方位を警備し、そして残りは真ん中に固まっている。
「あれ・・・あいつら、もしかしたら・・・いや、絶対そうだ・・・! でも・・・」
遠くから、気づかれないよう彼らを観察していると、ザックがなにかに気がついたようだ。
「・・・どうしたんや? なにか奴らに心当たりでも?」
「あれ・・・恐らくマブロさんの軍隊です」
「マブロって・・・あの貴族のか?」
確証はないが、しかしそうに違いない、例えば服装、というよりも、そもそもこのレベルの軍隊など保有しているのは国とマブロ程度、しかし国の軍はあのアフォスの指揮下なのであり、となると可能性として考えられるのは、マブロなのだ。
するとそこへ、恐らく仲間であろう野郎共が、街の方から女性を数名強引に引っ張りここへ連れてきた。
「おいおい、また連れてきたのかよ?」
「だって、多いほうがいいだろ?」
そう言って、彼らはニヤニヤと、そしてネットリとした視線を女性等に向ける。
女性はもうどうしたらいいのか分からず、ほとんど皆が無口で、しかし何とか身を守ろうとしているが、そこで野郎の一人が女性の腕に触れると、その女性は僅かに悲鳴を上げ、全力で振り払った。
「抵抗するな! あんまりしつこいと、ぶっ殺すぞ!!」
野郎共は、必死になって抵抗する女性たちに剣を見せびらかして脅す。
「や・・・やめっ・・・やめてください・・・お願いします」
「あ? なら大人しくしてろよ。まじで次はぶっ殺すからな?」
「はい・・・」
野郎共のその鬼気とした気迫に、女性等はただ恐怖のみを感じ、とてもではないが逆らうことなどできない。
剣を前にして、女性たちは最早抵抗しようなどという気は失せてしまったのか、目に涙を浮かべ、しかし恐怖に支配され、男たちの言いなりとなる。
その様子を見て、周りを警備している野郎共が「お前らだけで楽しんでんじゃねぇよ!」と、しかしその顔には、厚く不快な笑みを浮かべている。
「じゃぁまずは・・・服を脱げ。もちろん全部だ」
ニヤニヤと、舐め回すように、汚い視線を女性たちに向ける。
だが流石にその命令は聞けない、女性たちはなかなか動き出さない。
「なんだ・・・どうした? あいつらも、ずっと仕事で疲れてるんだよ・・・だから皆に見せて、疲れを取ってくれよ」
「・・・っ・・・」
「・・・あぁ、脱がせてほしいのか?」
女性たちは、その言葉でより恐怖を与えられた。
中には泣き出してしまう人も、だがそれを見て野郎共は、より一層気持ちの悪い笑みを浮かべる。
そして一人が、女性の服に手をかけようとしたまさにその時ーー叫び声とともに、何かがこちらへと向かってくる。
「・・・ゴミどもが暴れ出したか? クソッ・・・もう少し痛い目見せてやればよかったか・・・」
野郎共は剣を構える。
だが、そこに声の主の姿はなく、彼らは混乱した。
「どこだ・・・?」
するとーー
「死ねぇっ!!」
「横から!! ・・・いつの間に!?」
正面ではなく右方向から、一人の男が突っ込んできた。
男は手に包丁を持ち、かなりの素早さで野郎共の陣の中へと侵入、そして今、一人を切りつけたのだ。
「グアッ・・・!!」
切りつけられた男は、変に抵抗したため余計に深いところまでやられたようで、その場にうずくまり、何とか声を殺して、痛みを我慢している。
「何を・・・早くそいつを殺せ!!」
しかし包丁男は決して止まらない。
トップスピードを維持しつつ、そして目に入った野郎の元へと瞬時に駆け寄っては、何度も何度も切りつけようとそれを振り回す。
また野郎共も、魔術で対抗しようと試みるがしかし、なかなか標準が合わず、結局対処しきれずにいる。
「お前ら!! 絶対許さないからな・・・妻を返してもらう!!」
包丁男は目に薄っすらと涙を浮かべながら、しかし怒りのエネルギーのみで体を動かし、そしてまた、奇襲を仕掛けた。
だがーー
「うおおぉぉぉぉぉぉ!!」
「・・・甘いんだよ、考えが」
流石に相手も戦闘経験があるだけあり、すぐにこの男の速さに対応、そのまま一撃斬り捨てる。
「うあっ・・・」
「おらっ! あいつの礼だ」
更に、よろけた先にいた男からももう一撃、ノーガードで受けてしまう。
呆気なくも、包丁男は地面に転がる。
「このゴミ、どうします?」
周囲にいた野郎共が、続々と集まってきた。
皆苛立っており、殺す気満々、では誰が殺すかを笑いながら話し合っている。
だが、話合いはなかなか進展せず、また野郎共も特段急がず悠長にやっていたため、その時間で包丁男は僅かに回復、駆け足気味の感情を抑え、そして何とか立ち上がろうと試みる。
「おいおい、早く決めねぇと、またこいつが暴れだすぞ」
一人が笑いながら、周囲に訴える。
「せめて・・・あと、一人・・・」
そう自分を鼓舞、体を無理にでも動かそうとするが、しかし包丁を持っていた方の手を斬られてしまい、なかなかそうすることが難しく、また実際かなりの致命傷、うまく体に力が入らず、結局立つことができない。
「クソッ・・・なんで? ・・・もう少しだけーー」
「ゴミの分際で良くもやってくれたな・・・・・・それに、死んだ人間を返せって言われてもな、俺等は神でもなければ奇跡の使い手でも何でもない。・・・まぁつまり、それ意味ないよってことだわ」
野郎共は笑う、爆笑する。
包丁男は泣き叫ぶ、すべてを出し尽くす勢いで、涙が枯れる勢いで、そしていよいよ身体が悲鳴を上げ始め、再度その場に倒れ込む。
「なんで・・・どうして・・・?」
「じゃぁ悪いけど、もう殺すから・・・俺等には、楽しいことが待ってるから、さ・・・お前に割く時間なんて無いんだわ」
そう言って、皆の視線が女性等に集まる。
女性等は、先程の命令を未だ遂行していない。
「お前ら全員・・・地獄、に、落ちろ・・・!」
「・・・そうかい・・・じゃぁ、先に地獄に行っててくーー」
「やめろデュフ!」
「なっ・・・誰だお前!? どこから入ってきやがった!?」
気がつけば、デンジャーがそこへ突入していた。
すると野郎共は直ぐ様対象をデンジャーへと向ける。
「そんなしょうもない真似、今すぐやめろ・・・デュフ・・・」
「あ、何だと? いいか? 俺等は市民を守ってるの、命張って、怖い魔物と戦ってるの? だから、それを労るのは市民の当然の努めだろ? これの何が悪いんだよ?」
目を見ればわかる、こいつらは、本気でそう思っているのだと。
いや、目を見なくても分かっていた、恐ろしいまでに自明であったのだ。
「・・・他の、ここに避難してきた人たちは、どうしたんだ・・・? デュフ・・・」
「あぁ、それね・・・それならもういない。残りはコイツラと、あとあっちの方に転がってる奴らだけ。因みにあっちの奴らは全員仲良く死んでるけど」
「いない・・・デュと?」
「フッ、あっ・・・あぁ。スマンスマン。しかしあんた、変な喋り方するね。それわざとやってるの? ・・・面白すぎ」
そう言いながら、しかしそのどさくさに紛れ、後ろにいた男二人が、また女性にちょっかいをかけ始めた。
女性は勿論のこと嫌がっているが、だからといって、下手に抵抗もできず、ただ黙って、されるがままだ。
と、二撃ーー突然の発砲音ーーデンジャーは隠し持っていた銃で、その野郎二人を正確に撃ち抜いた。
野郎の血が、女性の頬に僅かに付着、女性は何が起きたのか分からず、しかし悲鳴を上げるでもなく、ただ身を寄せ合い、震えている。
「・・・お前っ!!」
「女性がこんなにも恐怖して、嫌がっているのを分からない奴が、女性に触れる資格なんてないデュフ」
「あ? 別にいいんだよ・・・俺等はーー」
「お前らみたいな奴は、畜生以下だ、デュフ・・・」
そしてもう一撃、デンジャーはその正面の野郎に標準を合わせたその時ーー背後に控えていた野郎が。剣を振り抜いた。
「デュ・・・!!」
音を立てず、しかし的確に、そして深い一撃を背後からお見舞い、かなりダメージが入り、出血も酷い。
倒れざまに、デンジャーは何とか引き金を引いたーーそれは遥か虚空を撃ち抜いた・・・。
[雑談]寝たい・・・。
[ブクマしましょう!!]
[予告]次回の更新は、22日を予定しています。




