二章ー43 L
〜東区〜
「クソッ・・・クソッ・・・私に、こんなことをしておいて、ただで済むと思うなよ!」
醜くも地面に這いつくばっているもの、それはランである。
先程までの余裕の態度、そして何となくこちらを舐めているような口調がガラリと一変、かなり残念な、惨めな感じになってしまい、喚いている。
またヤクザ達は、それをただ無言で見下しており、それがより一層の恐怖を作り上げている。
するとヤザが、大きな魔力に気がつく。
「・・・お前たち・・・何人かで一般人を中央区まで運んでやれ」
「えっ?」
「ここは危ない・・・それからデンジャー、お前もだ」
いつになく深刻な表情であるため、ヤクザたちもすぐに行動した。
ヤクザのうち、あまり戦闘が得意ではない三人が一般人の元へと駆け寄り、一般人を中央に、守るように陣を組んだ。
するとデンジャーが、ヤザへと近づいてきた。
「か、勝てるのか、デュフ・・・」
「・・・・・・本当に、お前、いいやつだな」
問には答えず、しかしどうやら二人が通じ合ったようで、ヤザも笑顔を見せる。
そしてデンジャーは、ラン(拘束済み)を抱え、三人のヤクザ等と共に中央区へと急ぐ。
また、ここに残ったヤクザたちも、それぞれ次の大一番に備え、デンジャー提供のポーションを飲み、各々ストレッチ等し、回復させている。
「さて・・・・・・生き残れるかな・・・」
ヤザはぼんやりと、遠くを見ている。
そしてーー
ーー絶望が到来した。
ゆったりゆったり、堂々と堂々と入ってきた。
四足歩行に立派なツノ、見た目的にはかなり大きめの鹿である。
全身には謎の模様が入っており、また赤く鋭い目でこちらをただ見つめながら、しかし冷静さを欠いているとは思えず、そして重々しい魔力を纏っている。
「・・・何や・・・俺、目がおかしくなったんか? ぼやけて見える・・・」
ヤクザの一人がそう言って、何度も目を擦っては、その姿を見ようと試み、やはり失敗している。
「いや・・・薄っすら光って見えるような・・・」
前のヤクザとはまた違い、今度は薄っすら光って見えるらしい。
その他、人によって少々認識に差異があるようで、全体として、やや困惑の表情を見せている。
するとここで、一人のヤクザが何か閃いたような顔をする。
「間違いない・・・あいつがボスってことですよね、組長!」
「・・・あ、あぁ。そうや」
ヤザは、相手のその不思議な、どこか神秘的なものを前に、僅かながら動揺し、同時に心を奪われてしまっていたが、何とか気を保った。
相手はやはり、ゆったりとこちらへ接近してきている。
ヤクザたちは、こちらもこちらで準備万端、指示を待っている。
「よし・・・全員大丈夫そうやな・・・。ほんなら・・・皆、暴れてこい!」
ヤザの合図とともに、それぞれの発した野太い声が響き、ヤクザたちは敵へと、魔王によって召喚されたうちの一体である、個体”L”へと向かっていく。
「これでも喰らえっ!」
まずは挨拶代わりに一発、元気よく弾を向かわせる。
だがそれは、Lに到達し、消えた。
「何や?」などと考える暇もなく、次の二人が同時に接近し、それぞれ違う角度から発砲。
だがLは止まることなく歩き続け、しかしある時停止し、角を前に出すように、前傾姿勢を取った。
そこへ弾丸が到達、角へと当たってしまったーーその二つの弾丸は、そこで役目を終えてしまった。
「兄貴!! コイツにはピストル効きませんぜ!!」
などと動揺していると、一人が颯爽と駆け出す。
「どけっ! やはりここは俺の出番や!」
そう言って、日本刀を携えたヤクザが元気よく飛び出していった。
「おいっ! 組長の指示をーー」
仲間の静止などまるで気に留めることもなく、静止する”L”へと一直線、抜刀し、やや遠くから大きく踏み込んでから、その全面に押し出されている角へと攻撃する。
「日本刀が一番に決まっとるわ!!」
縦方向に振り抜いたーーそれは角の一部を見事切り落とした。
「!!」
「流石は刀や! 俺の気持ちに答えてくれる」
ヤクザ等は、当の本人も含めて攻撃があたったことに驚いているが、しかしLは、痛みだとか、悲しみだとか、そういったものを表すでもなく、静止を続け、ただまっすぐその日本刀の男を見る。
「・・・なんや? 恨むなら、いや・・・・・・なんて透き通ったーー」
二人はしばらく、近距離で見つめ合った。
最初、男はこのLが、自分に対して負の感情を持っていると、それが当たり前だと思っていた。
しかしそうではなく、そこにあったのは、ただ純粋な瞳だったーー美しい。
次第に男は心惹かれていった。
「どうした?」
男の動きが止まり、ヤクザたちも流石に心配する。
と、男の手から日本刀が離れ、それは静かに地面に着地した。
「っ! 左右から発砲! 相手を少しでも撹乱して、その隙に刀で攻撃、あいつを救出するんや!」
皆が事の成り行きを、ただ呆然と見守ってしまっていたが、ヤザははっと気が付き、指示を出す。
それにより、ヤクザたちもまた動き出した。
「家族殺されるっちゅうのは、この上ない恥やぞ! 死ぬ気で行くぞ!」
一人が主体となり、声を上げ、士気を高める。
そしてヤクザ等は、刀を携えている者たちは、Lへとどんどん距離を詰め、一方の銃所持班は左右へと散りやや後方から、Lを狙う。
「よし・・・発砲や!」
誰かの合図で、一斉に発砲。
左右そして斜めからも、角度にバリエーションを持たせて、かつ仲間に当たらないよう配慮したうえで、ギリギリを攻める。
それらはおおよそ全て、Lへと到達したが、しかしあまり効いている様子もなく、だがそれでも、刀部隊が急接近、まずは二人が攻め入る。
「背後ががら空きや!」
一人は背後から攻撃を試みるーーが、それは虚空を斬った。
「なんやて!?」
目の前、すぐそこにあるはずなのに、斬ることができない。
一方のもう一人は、堂々正面に回り、刀男を回収しようとする。
「こいつ・・・ずっと見つめ合って・・・不気味やな」
しかし動かないのならば、と、角に攻撃を仕掛ける。
だがーー
「刀が通らない・・・! 何やこれ!?」
確かにそれを、実態として捉えることはできたのだが、それ以上は何もできず、硬直してしまった。
尚もLは動かない。
「クソッ・・・おい! どないしたんや!? はよ逃げんか!」
硬直したので仕方無しに、その大勢で刀男に話しかける。
しかし、返事はない。
不審に思ってよくよく顔を見てみるとーーまるで魂を抜かれたような、そんな虚無だった。
「どういう・・・」
するとここで、先程この刀男が切り落とした、Lの角が光を発し始めた。
「撤退や! 皆退け、退け!」
ヤザは本能的に、何か嫌な、不気味さを感じたので、すぐにそれから離れるよう指示した。
が、しかし、僅かに遅かった。
「 εξ■χ■ωση >」
Lの角が、いっそう強く輝いた。
そうして気づいたときには、半分以上のヤクザが地面に臥し、その表情は虚無へと変貌していた。
「・・・おいっ、どうした? 皆、いつの間に・・・?」
「早く戻れ!」
残った刀部隊の数人は、この異様な雰囲気の中、しかし何とかヤザの元まで退こうと、必死に駆ける。
(なんや・・・今のは? 殆ど全員やられた、のか? あいつ、今何をした・・・?)
ヤザは思考を巡らす。
その中で、いよいよ自分も戦わなければならないと思ったのか、はたまた無意識のうちか、立派な日本刀を手に持ち、抜刀しようとしている。
「組長、あいつら・・・何が・・・?」
走りながら、必死に自分の見たもの、感じた恐ろしいことを訴えている。
その後ろ、Lはやはり動いていない。
「あいつの狙いはなんや? ・・・ん?」
右方向から、ヤザは魔力を感じた。
しかしLは正面にいる。
とても不可解だ。
すると、超高速の魔術、恐らく< 赤魔術・疾雷 >がこちらへと向かってきていた一人に直撃、意識を持っていかれたようで、ドサリと倒れた。
「何!?」
その後、間髪入れずに二、三発の魔術が、右方向からやって来て、そしてまた三人がダウンした。
残ったのは、ヤザを入れて三人のみ。
すると、魔術のきた方向に、人影がちらほら、こちらへと向かってきている。
「・・・お前たちは!? Maーー」
[雑談]かなり遅れてしまいまして、申し訳ないです!!
何とか帰宅して、風呂上がってすぐ寝てしまいました・・・。
今日と明日、今年初の二連休ということで、つい。
日曜以外に休めるなんて、素晴らしいですね!
[ブクマ&評価しましょう!!]
[予告]次回の更新は、12日を予定しています。




