一章ー4 「憩」
ぐっすり寝ること数時間、気づくと、変質者(中年男性)に囲まれていた。
この時、(ある意味)竜と相対していたとき以上の恐怖を感じた。
そして、その中年男性の一人が、起床したことに気づき、こちらへやってきた。
その後、そいつの仲間も集結し、全員で見つめてくる。
「・・・僕を襲うの?」
「なわけ無いだろ! こっちから願い下げだわ! だけど、お前は金になるんだよ!」
質問をすると、逆上され、挙句の果てに自分は金になるんだと言われた。
取り敢えず、何となく無性に腹が立ってきた。
敵は四人、しかも人間。
「やるか!」と決意し、実行した。
まず、周りの雑魚A,B,Cと肉体言語で意思疎通(?)をはかり、秒殺。
その後、未だに状況を理解できていない、恐らく主犯と思しき人物の背後に回り込み、手刀で一撃。
意外と呆気なかった。
ただ、問題は、こいつ等をどうするかということである。
(よく分かんないけど、悪い人だよね・・・多分・・・)
取り敢えず、ギルドに持って帰ろうと思い、袋を取り出した。
これは、メイサが、盗賊イベで使うかもしれないとくれた、収納袋だ。
スキルに、そういった物があるらしいが、残念ながら所持していないので、ありがたく使わさせてもらっている。
その袋に愚か者たちをやや雑に突っ込んでいく。
「よし!」
面倒なことが一段落し、疲れも取れているので、とても清々しい表情をしている。
そして、ギルドへと向かっていった。
〜ギルド〜
「申し訳ございません!」
ギルドに入るやいなや、男女二人に頭を下げられた。
女性の方は、この前の、受付のときの人。
もうひとりは、全くすこしも知らない人である。
「あの依頼は、不明な点が多く、危険度も判明していなかったので、念の為、高ランクの冒険者が対応する予定だったものなんです!」
「あっ、そうなんですか」
「怪我などはないですか?」
「大丈夫です」
どうやら、受注した依頼に不備があったようだ。
まぁ、あれだけの依頼が初心者用とはとても思えなかったので、間違いであってくれてよかったと思った。
大丈夫だと言ったのだが、流石にギルド側も肝が冷えたらしく、ご丁寧に応接室まで案内された。
「改めて、深く謝罪を」
改めて、深々と謝罪されてしまった。
「じゃあ、取り敢えず、名前を教えていただけますか?」
少しでも打ち解けられるように、名前を聞いてみた。
すると、上司っぽい人が応えた。
「私の名前はガイで、こっちのは受付嬢のミナです」
「ミナです。・・・すいません・・・」
「僕は、ゆうと言います。宜しくお願いします」
その後、なんとか打ち解けることに成功した。
そして、そのまま流れで先程までの出来事(依頼)について、簡単に話した。
「なんと、竜だったとは!」
と、ガイが驚く。その横で、ミナさんが未だに頭を下げている。
「あの・・・もういいですから・・・」
一応何度も止めるように言っているのだが、尚も頑として頭を下げ続けている。
ここまでされると、こちらの心も痛くなってくる。
取り敢えず・・・話を戻そう。
「しかし、妙なこととはやはり続けて起きるものなんですな」
と、なんとも神妙そうな面持ちで呟く。
「妙なこと?」
「ええ。まぁ、妙と言うか、面倒なことですけどね」
「詳しく教えて下さい」
気になったので、野次馬精神で根掘り葉掘り聞いた。
話によると、つい数年前、人々が”勇者”と崇めていた人がいたという。
その人物は、突然この世界に現れ、人々に、”大いなる龍”という存在について聞いて回っていた。その傍ら、モンスターを狩りまくり、僅か2、3週間日で、ランクSに到達した。しばらくして、突如として龍が現れ、街を襲った。その強さは、到底人間が太刀打ちできるものではなかった。しかし、勇者はこれに向かっていき、およそ半日で仕留めた。そして、勇者は忽然と姿を消した、ということらしい。
「成程」
何となく、この話が重要だということは感じた。
だが、考えることが沢山あり、取り敢えず今は任務に集中して、あとで、非番のときにでも考えることにした。
すると突然、「そうだ!」と何かを思い出した様子で、徐に小袋を取り出した。
そして、これまた徐に、先程返り討ちにした盗賊を取り出し、床にテイッと放り投げた。
「!! この人達・・・一体どこで?かなり有名な盗賊ですよ!」
「ふーん、そうなんだ〜」
「はい。発見することが困難なのもそうなのですが、戦闘能力が高く、難易度はBです」
「ふーん、そうなんだ〜。戦闘力が高く、難易度はビー・・・へ? こいつ等が?」
「そうですよ! それを登録初日にソロで、しかも全員生存したまま捕らえるなんて・・・凄すぎます!」
なんか、雑魚を狩ったら褒められた。
まさかあんな奴らがBランクだなんて、夢にも思わなかった。
ただ、嬉しい気持ちがある反面、道で寝ていたら連れてかれた。
だからお返しをした、だなんてとても言えないので、取り敢えず、笑ってごまかす。
そして、トントン拍子で話が進んでいき・・・
「おめでとうございます。Cランクに昇格です!」
なんか、Cになった。
うん。いい感じ。
ヤバイ竜+知らんおっさん達=Cランク
(異世界って・・・難しいな)
因みに、「もう少し実績を積めば、すぐBランクになれるでしょう」だそうだ。
意外と早く出世できそうだ。
取り敢えず今日は他の依頼は受けずにギルドを出た。
もう既に日も暮れてしまっている。
今すぐにでも寝たいが、今日の教訓に習い、ガイに教えてもらったおすすめの宿に向かう。
〜宿〜
暫く歩くと、それらしき建物が見えてきた。
宿の名前は”憩”。
なんとも落ち着けそうな名前である。
入る前からワクワクが止まらない。
そして、いざ宿へと足を踏み入れた。
中に入ると、もはやそこには実家の安心感があった。
いや、実家以上かもしれない。
照明も、装飾品の配置もすべてが心地よさを演出している。
取り敢えず、受付まで足を運ぶ。
すると、そこには美女がいた。
(異世界って・・・スゴイ・・・)
具体的にドコがスゴイとは言わないが・・・スゴイ、らしい。
「話は聞いているわ。あなた、すごい人なんでしょ? イケメンだし」
情報の伝達が早い。
どうやらランクアップがどうこうしているうちに、連絡してくれていたらしい。
ガイさん、できる男だ。
「いえ、僕はまだ駆け出しなので」
「そんなに謙遜しなくてもいいのに」
と、ここでも褒められた。
「新人さんなのに、難しい依頼をクリアしたって聞くわ。疲れてるでしょうから、すぐにお部屋にご案内しますね」
こうして部屋まで案内してもらった。
因みに名前はミテラさんと言うらしい。
「では、しっかり休んでくださいね」
「あの・・・!」
「はい?」
「お金は後払いですか?」
大事なことなので、訪ねてみた。
すると、彼女は微笑んだ。
「そんなこと気にしなくていいのよ。まだまだ新人さんなんだから」
取り敢えず、一挙一動すべてが美しいと分かった。
「それに、ギルドからもう一月分くらいはもらってるから」
そう言って、舌をペロッと出し、再度微笑んだ。
ピロン!
”体力及び気力が全回復しました”
やかましいわ!と心のなかで突っ込んだ。
「だから、一ヶ月、しっかり毎日ここに泊まりに来てね。おやすみ」
ゆうは、絶対に毎日泊まりに来ると、そう心に決めた。
(毎日の帰宅が楽しみだ・・・)
そして、風呂と食事をとって、速攻で眠りについた。