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異世界チートは標準装備〜ピンチでも、ピンチじゃなくても起死回生〜  作者: 悠悠ー自適
二章 二等世:プロドシア篇
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二章ー37 魔王の企み

〜東区〜


「これは・・・どういう・・・」


 西区は大丈夫、ならば自分は東区へ戻ろうとここへ急行したザックの目に映るのは、無造作に打ち捨てられ、土にまみれ臥している、仲間たち。

 理由はわからない、認めたくもない、しかし、また彼らが起き上がって、自分の指示を仰いでくれることはなかった。

 

 だがザックも、流石ハイランクの冒険者なだけあり、本人も驚くほど早く現実へと戻ってきた。

 まずは周囲の確認、魔物は見受けられない。

 一応の安全は確認できたので、次は彼らの身に何が起きたのか、それを解明するべく傷跡を見る。 

 それらはどれも一様に腹部から大量に出血していたが、しかしよく見てみると、不自然な点が。


(この傷は、おかしい・・・まるで剣で斬られたみたいに・・・) 


 それはあまりにも綺麗で、そして恐ろしく的確である。

 もし魔物にやられたのだとしたら、九分九厘このようにはならず、それどころか最悪身元さえ判別できないことだってある。

 だが、その傷跡からは何か、人間味のある知性、そういったものを感じた。

 

(それに、こいつらがやられたんだとしたら・・・魔物が侵入したということに・・・だが、どこにもいない。それに仮にも冒険者およそ20人を殲滅するなど・・・考えられない)


 そう、彼らとて弱いわけではなく、寧ろ連携も取れるようになり、その連携を駆使した戦闘においてはこの国でもかなりの戦力としても数えられるであろう、というのがザックの見解であり、実際そうなのだろうが、それがこうも全員やられたとなると、それは由々しき事態というほかない。


(こいつらを倒しうる魔物・・・・・・Aランクの、しかも下位ではなくそれなりの、高度な知能も有した魔物・・・いや、だとしたらもう、ここら辺一帯はそれこそ惨状になっているはず・・・)


 すると魔物が、また例のように数体でこちらに向かってくるのが見えた。


「まったく、次から次に・・・」


 もうここまで来ると、殆ど呆れてしまっているが、しかし向かってくるならば手加減する道理もない、直ぐ様切り替える。

 

「すまないお前たち・・・もう少しだけ・・・。あいつらを片付けたら・・・綺麗なところに持ってってやるからな・・・」


 壁の外へ、迎撃へと向かう歩みの途中、仲間たちにそれぞれお辞儀をして、そしてそう伝える。


「さて・・・一撃でーー!」


 魔術の行使の直前、まさに台詞の途中、後から僅かな魔力を感じ取った。

 頭で思考する、それ以前に、もう体が回避をしていた。

 するとやはり、後方から魔術が飛んできた。


「ザックさん、遅かったですね。でも、想定より早くて驚きました」

「!! ・・・ラン」


 振り向くと、ランがいた。

 「どうして・・・」と、彼の顔を見るなり、口が勝手に質問する。

 どうして、自分を西区へと送り出してくれたお前が、自分に攻撃をするのか。


「・・・人って、本当に、理由がだ〜〜い好きですよね〜。まぁ、答えるならば、僕のため、かな。・・・魔王様のため、でもあるんだけど〜、でも・・・やっぱり僕のため」


 ランはそう、ニンマリとした笑みを浮かべ、高揚気味にしゃべる。

 その様子は、さっき言葉をかわしたランとはまた別の、違う誰かと会話をしているようで、ザックは何となく違和感を感じたが、それ以上に困惑が勝り、その違和感はすぐに気にならなくなった。


「魔王のため・・・って、一体どういう? それからこいつらの事、何か知らないか?」

「そんな同時に聞かないでくださいよ〜。まぁ、いいですけど。魔王様のためってのはそのまんまの意味で、言われたとおりに俺たちがこいつらを攻撃したんですよ〜」

「・・・何だと? お前が・・・っ」


 ランはやはり笑みを浮かべ、妙に馴れ馴れしく、そして軽い口調で話す。

 ザックは仲間たちへと目をやる。

 もしかしたらーーしかしどうしても、動いてくれないらしい。

 ならばザックは、せめてこの男を地面に埋めてやろうと、そういったやりきれない怒りが、ひしひしと湧いてきた。


「お前ーー何だ!?」


 怒りが丁度沸点に達しようとした時、同時に何か魔力の大きな流れを感じた。

 それは壁の外、魔物の本隊から感じられた。

 見ると、また魔物の数は増えていたようで、更に数百、もしかしたら数千単位で増えている、そんな


「あ〜もうそんな時間か〜」

「・・・時間?」

「俺は善意で、始まる前に終わらせてあげようとしたのに・・・ちょっと残念だな〜」


 何ともオーバーに、体を使って表現する。


「でも安心して〜すぐに終わるからさっ!」

「終わる?」

「そう。君を殺すの。ほら、一応人手用意してきたから〜」


 するとぞろぞろと、どこからか剣を携えた男たちが湧いて出てきた。

 ザックは始め、最悪この男一人程度ならばすぐに片付くと、半ば高を括っていた節もあったが、しかしこの男たちの登場により攻略の算段が頓挫し、それどころか状況は最悪なものになった。


「全員手練れ、か・・・」


 強者は相手の力量を正しく測ることができるというが、ザックも冒険者として培ってきた経験で、それを可能にしている。

 そして今、目の前の男たちを見て、この上ない絶望を感じた。

 というよりも、もう強者と渡り合うだけの気力と体力が切れかかっているため、胃もたれしているような気分になった。

 だが一方のランは笑顔で、楽しそうである。


「大丈夫、さっさと終わらせてあげるよ」


 こうして、魔物の異変をバックに、人間同士の戦いが始まった。




〜ラヴィア城〜

 ザックとランの戦い開始と同時刻のことーー。


「さてと・・・私もそろそろ仕上げをしないといけませんね」


 先程までの激しい攻防とは打って変わり、魔王は一転してエヴィリオへの攻撃をやめた。


「なんじゃ急に?」

「いえ、ただ魔物に攻撃司令をだしたと言いましたが・・・それはまだ完成ではないのです。魔物たちはもう準備万端、実際すぐにでも侵攻を開始できますが・・・しかしまだ、一つだけ準備が残っているんですよ」


 そしてどこからか、二つの怪しい液体の入った瓶を取り出した。

 片方は最早液体かどうかすら怪しい、純黒のもので、もう片方は赤紫色で、森に撒かれた液体と同じもののようだ。


「それは・・・」


 エヴィリオはそれに反応し、そして魔王は後者の入った瓶の蓋を開け、豪快にそれを飲み干した。


「お前さんも持っていたのか・・・」

「当然です。それに、こんなにも性能の良いポーションなんて、いくらあっても足りませんもの」

「そうじゃが・・・しかし儂が言いたいのはーー」

「まぁ、私やあなたレベルの魔力の持ち主でなければ、一瞬で自我を失い、自身の魔力に食われてしまいますが・・・それもそれで面白いですね」


 魔王はどうやら自己完結したようで、そして何か楽しかったことでも思い浮かべているのか、満足そうな表情をしている。

 そしてその表情のまま、もう一方の瓶を手に取った。


「なんじゃ・・・それは?」

「これは私の研究の、言わば集大成の一品です。これを創るのに、いったいどれほどの時間と、労力と、そして人間の数を要したことか・・・」


 魔王は研究の過去を想起しているようで、ため息交じりに愚痴をこぼす。


「やはり・・・お前さんが正真正銘の黒幕、というわけのようじゃな。まさか、馬鹿な貴族どもの人身売買も、巡り巡ってはお前さんの実験のためだったとは、まったく・・・・・・困った弟弟子だ」


 もういよいよ看過できない、魔王の驕りに、そして彼女を野放しにしてしまった自分自身に、エヴィリオは怒りをあらわにした。


「まぁ・・・でも結局は、自分の望みを叶えたら勝ちなんです。そのためには、その程度の犠牲など厭いません」

「・・・他人に犠牲を強要など、言語道断じゃな。親の顔が見てみたいものじゃ」

「あなたこそ、よくもずっと引き籠もっていられましたね、その忍耐力は流石の一言に尽きますね。ですが・・・師匠がいなくなった途端これですから・・・そろそろ自立したほうがいいですよ」

「引き籠もっているのはお前さんのほうじゃろ。いつも人を盾にして、もう何年も出てきてないじゃろ?」


 エヴィリオのその言葉を最後に、魔王は反論をやめた。

 よってエヴィリオは、口論で勝利したと思い、ややいい気分になっていたが、しかし途中から、魔王の真意に気づいた。


「まさかーー!」 

「あなたの話が長くて助かりました。お陰で、ようやく仕事を終わらせられそうです」


 そして魔王はいよいよ瓶の蓋を開け、その粘性のある純黒の液体を自分の足元、床に垂れ流した。

 液体が地面に到達するギリギリで、エヴィリオは何とか術式を構築した。


(間に合え!)


クラスレッド・ブラスト

「< 赤魔術・疾雷 >」

[雑談]ここら辺まで来ると、なかなか執筆のしがいがありますね。(ただし、タイプする手がサクサク働いてくれる訳では無いが・・・)

[ブクマしましょう!!]

[予告]次回の更新は、25日を予定しています。

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