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異世界チートは標準装備〜ピンチでも、ピンチじゃなくても起死回生〜  作者: 悠悠ー自適
二章 二等世:プロドシア篇
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二章ー33 開戦

クラスレッド・フォルド

「< 赤魔術・炎撃 >」


 魔力によって形作られた炎の槍が、ユウへと向かってくる、言わば魔物の小隊へと向かう。

 そして正面から次々と、その纏った炎で魔物たちを灰へと変えていく。

 が、しかしーー


「・・・キリがないな」

 

 燃やしても、灰にしても、その後ろに控える夥しい数の魔物の、言わば本隊にはもう、欠けた分の魔物がすでに充填されている。


 ここは王都北区の、外との境界線。

 賢者が作り上げたとされる、街の外周を囲む恐らくコンクリート製の壁の、そのたった四つしかない出入り口の一つ。

 壁のお陰でちょっとやそっとの攻撃ではびくともしないだろうが、しかしもし長期戦になれば物資の不足に陥ってあしまう恐れがあり、また防御力がある分脱出が難しい。


 するとまた、王都への侵入を試みる魔物の小隊が。

  

       フォルド

「< 赤魔術・炎撃 >」


 だがもう手慣れたもので、機械的に魔術を放ち、葬り去っていく。

 しかし大本の魔物の数自体は減っていないように見える。


「本当に・・・誰か役に立つやつはいないのか・・・?」


 ユウはそう嘆き、振り返る。

 だがそこに、仲間の姿はなく、チラホラと、老人を始めとする一般市民がいるだけだ。


 ではここで、ここまでの経緯を説明しよう。

 ユウはつい先程まで、ギルドで手紙を読み、その内容について深く考え込んでいた。

 すると外が次第に騒がしくなっていき、次いでギルドの受付嬢なども慌ただしく動き出した。

 そのすぐ後、ギルドによって緊急魔災害警報が発令、冒険者、特にユウをはじめとする高ランクの者たちが集められ、緊急の依頼についての説明を受けた。


 概要はこうだ。

 魔物の特別指定区域において、突如魔物の動きが活発化、それらは王都及びその他街の周辺に集合。

 今のところ被害は報告されていないが、魔物に襲われそうになったケースも既に発生、その場にいた冒険者が何とか対応している状況。

 市民は中央区へと避難を開始したが、しかし未だに完了したわけではなく、また王都へと侵入されてしまった場合、犠牲者の数は指数関数的に増大する危険性がある。

 よって、避難完了までは四つの出入口で魔物を撃退、死守し、その後完了し次第こちらから侵攻を開始する、とのことだ。


 そしてその結果、ユウはここに派遣されたわけだが、しかし彼は現在ボッチである。

 だがそれは、彼が望んだ結果ではなく、やむを得ない事情があるのだ。

 それはーー


「金による昇級、か・・・」

 

 高ランク冒険者の殆どが、分不相応のランクを賜ってしまっているためだ。

 よって実質的に使える冒険者の数が足りず、単体で任務を遂行できる人物が、その場にいたのはユウを含め五人程と、それから現地で応戦している一部冒険者だけであった。

 そのため二人が北区と南区を護り、二人は地方へと向かい、残る一人は低級冒険者たちと共に比較的魔物の数が少ない東区と西区を担当している。


「まぁ・・・この国ではそんなの可愛いものか・・・。それに、不相応とはいえ、最低限の事はできるみたいだし、魔術は何とかギリギリ使えるみたいだから、それだけは救いだな」


 だが所詮は実戦経験もろくにない奴らが多く、あまり期待はできないのが現状だ。

 またギルドも、正直かなり焦っている。

 なぜならば、頼れるはずのハイランカーの殆どが使えず、またフィーネルのように行方不明など、折角の戦力もまともに集まらず、また最強の男・アフォスも何処かへと姿を消した。


 そしてユウも同様かなり焦っている。

 理由はーー

 

クラスレッド・ブレイズ

「< 赤魔術・豪炎 >」


 < 赤魔術・炎撃 >の実に三倍以上の魔力を込め、そして魔物たちへと向けて発射。

 距離による威力の逓減等も計算したうえで、魔力をその分余計に込めているため、万が一近距離で喰らおうものなら一瞬で溶けてなくなる、それ位のレベルの魔術なのだが・・・しかし、いざ放ってみると、何故か途中で消滅し、また威力も< 赤魔術・炎撃 >と同程度しか出ていない。


「やっぱり・・・高レベルの魔術が上手く使えない・・・」


 あれだけの数の魔物を相手にするには、通常レベルの魔術ではとてもではないが心許なさすぎる。

 これが自分だけに起きている現象なのか、ただの不調なのか、それともーー。

 一刻も早くこれをどうにかしなければ攻めるにも攻められない。

 ”ジレンマ”、という言葉が頭から離れない。

 そしてまた、機械的に魔術を放つ。

 



〜東区〜

「魔物がこちらへ向かってきます!」

「数は?」

「数は・・・8・・・いや、9体です!」


 所変わってこちらは東区、例のエセハイランカー達がいるところだ。

 東と西とで分かれているが、それでもそれぞれ二十人程度ずつはいる。

 

「ザック様!」


 出入り口で魔物の動きを観察していたもののうちの一人が、そして誰かに指示を仰いでいる。

 

「・・・魔術部隊A、ノルマは一人一体だ。あと五秒引き付けて放て」


 すると指示通り、後ろで準備していた九人が壁のやや外へと進出、その後前から迫りくる魔物をこれまた指示通りに引き付けそしてーー


  クラスレッド・ファイア

「「「< 赤魔術・火炎 >」」」


 一斉に放つ。

 どれも大した威力でも、スピードでもないが、しかし確実に一体ずつ削り、向かってくる小隊を見事撃破した。


「俺たち・・・戦えてるよ!」

「あぁ・・・何とか、戦えてる・・・!」


 男たちは口々に言う。

 実はこの男たち、ついさっきまではビビリにビビっており、戦意がまるでなかったが、しかし適切な統制下で確かな結果を出し、そろそろ自己肯定感さえもが上がってきたようだ。


「すぐに撤退!」


 そしてこの指示を出している男こそ、本物のハイランカー、Aランク冒険者のザックだ。

 その後九人はすぐにまた、壁の内側へと退避した。


「よしっ! この調子で防ぎ続けるぞ! ではまたローテを回せ!」


 そうして監視、休憩、魔術部隊が再編成された。

 こうすることで、確実に誰かは休めるようにし、また魔力の回復や魔術構築までの時間も稼いでいるのだ。

 だがーー


「また来ます!」

「今度は何体だ?」

「それが・・・中型を含む二十体ほどです・・・」


 その言葉で、場の雰囲気が一気に急降下した。

 そして何人かはかなり取り乱し、それにつられて皆が騒ぎ出した。

 流石に長いこと実践から距離を起き、金に物を言わせてきただけあり、相当にメンタルが弱いようだ。


「ザ・・・ザ、ザ、ザック様!」


 喚いて喚いて、挙句の果てにはやはり確かな実力者に縋る。

 この際彼らにプライドなどないようで、それはそれは子供のように騒ぐ。


(クソッ・・・そろそろ西区の様子も見に行かなければならないのに・・・)


 そう、彼にはこれと同じような奴らを、もう一グループ任されてしまっているのだ。

 などとやっているうちに、魔物たちはすぐそこへと迫ってきている。


「ゔぁぁぁぁぁっ!!」


 すると一人が遂に逃げ出した。

 だがかなり脂肪を蓄えているためか上手く走れず、一人で地面に倒れてそのまま気絶した。


「クソッ! 子供じゃないんだ!」


 と、文句を言っても魔物と喚く大人たちは迫りくる。

 故に、男が取った行動はーー


「ザ、ザック様!?」

「・・・いいからそこにいろ!」


 ザックは壁の外へと、単身で乗り出した。

 魔物はもうすぐそこだ。

 

「ザック様! 戻ってください! あなたがいなくなってしまったら・・・」

「僕たちを見捨てないでください・・・」


 男たちは、壁の内側からそう呼びかける。

 しかしザックは応じず、静かに魔力を集積。

 いよいよ目の前には中型の、ヘビのような見た目をした魔物が到達、するとーー


 クラスレッド・ベント

「< 赤魔術・風切 >」


 鋭利な一撃ーー魔力を帯びた風が、それを切り裂いた。

 そしてそれだけに留まらず、その風はそのまま後ろの小型ゴブリンたちをも切り刻んだ。


「・・・、・・・・・・!」


 それを見て、男たちは目を見開いて、何ともいえない表情をしている。

 後ろの、魔物の本隊からすれば、なんでもない損失だがしかし、そんな事実は関係ない。

 これが、一撃で二十もの魔物を屠る魔術が、男たちに希望を与えた。


 またザックは静かにそんな男たちの元へと帰り、一言。


「俺は冒険者だ」


 その言葉のお陰か、士気は最高潮だ。

[雑談]思いの外明るくなってしまった・・・反省せねば。

[ブクマしましょう!!]

[予告]次回の更新は、13日を予定しています。

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