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異世界チートは標準装備〜ピンチでも、ピンチじゃなくても起死回生〜  作者: 悠悠ー自適
二章 二等世:プロドシア篇
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二章ー31 真実

「・・・フィーネル」


 ユウは瞬間それを理解した。

 それはフィーネルからのものだ、と。 


「死んだとみなしてって言われても・・・」


 口に出してはみるが、しかしそれの意味を理解するまでには至らなかった。

 そしてまたユウは、食いつくようにそれを読み進めた。


”それから、もしこれよりも前に、私からの手紙が届いてないとしたら、それは全て魔王かそれに操られている国王か、そいつ等によって妨害されている、その危険性も考えて、依頼という形で送ったわ。多分これ、二回目はバレるからと思って、使えなかったのよ。(中略)エヴィリオは悪人ではなかった、それは私が保証するわ。そして彼は、魔王は自分に会うために一連の事件を起こしたと、そう言っていたわ。理由は何か、賢者に関係する何かだとは言っていたけど・・・詳しくは分からなかったわ。”


 速攻で読み終えたが、しかし一読では足らず、二度三度と繰り返し読んだ。

 

 しばらくして、時間の経過とともに段々と落ち着いてきて、代わりに内容が段々と頭に入ってくるようになった。


「手紙・・・これが初めてってことは・・・」


 今まで手紙を受け取った記憶はなかった。

 ということはつまり、誰かに妨害されていた、ということのようだ。


 そして個人的に気になるのは、エヴィリオの話。

 ここには悪人ではなかったと書かれているが、しかしまだ、何となく納得できない。


「・・・そもそもエヴィリオって、何だっけ? もう沢山いすぎて分かんないな・・・。って、そういえば! 前に捕まえたニセ・エヴィリオ、最近何してんだ?」


 ニセ・エヴィリオ、と言われても、該当者が何人もいて困るが、今回の場合はユウの協力者となり、結果的にマブロと接触する機会を与えてくれた人物だ。

 そして最近全く気にしていなかった、その事すらも忘れていたので、後ほど尋ねると心に決めた。

 その事はいいとして、その先の内容へと進む。


(エヴィリオは、魔王に狙われている・・・。そしてその理由は、賢者に関係する何か・・・と言われても・・・)


 一応頭の中で整理する。

 そもそもエヴィリオは最悪の人間だと、そう思って今まで追ってきたがしかし、発見されるのはいつもそれを語る偽物の、小悪大悪党ども、肝心の本人は見つけられず、悪名だけが飛び交う。

 すると今度は、そもそもエヴィリオが悪人ではないという。

 一体全体わけがわからない、そう思った。


(そういえば・・・じゃぁあの変な薬、何か人をゴリラみたいにする薬は、結局誰が開発していたんだ? もしエヴィリオじゃないなら、姫様を襲ったやつは、別になるってことに・・・それから国王を襲ったやつも、未だ謎のままだし・・・それからあのエヴィリオの屋敷ってとこも、じゃぁ誰の屋敷だったんだ?)


 そう、エヴィリオが仮に悪でないとするならば、それはそれで、言い方は悪いが謎を解くうえで、都合が悪いのだ。

 そしてユウは、この未解決問題たちをどうしたらいいかと、更に頭を悩ませる。


(・・・それにそもそも、リースさん、いや< 竜の巣 >は、どうして賢者を探しているんだ? ・・・なんて、考えても無駄か・・・)


 怒り、混乱、またそういった類のものが、一挙に< 竜の巣 >への不満として現れたがしかし、もうそこにまで思考を巡らす程の気力も、余裕も、ユウにはなく、すぐにその気持ちは冷めた。

 もう嫌だと溜息をついて、それからやっと、最後の一文へと赴く。


「そして最後に、魔王の正体はーー」




〜ラヴィア城・玉座の間〜

 玉座の間ーー綺羅びやかというよりはむしろ、重厚感の権化の如き玉座、それを中心として、長方形に広い作りになっているこの部屋は、異様なまでの厳粛さを静かに語っている。

 その部屋では皆が平等、平等にただ、中央に鎮座する者に対してひれ伏すのみ。

 

 そんな部屋に、今三人の人物が。

 一人は玉座に、これは勿論国王だ。

 そして一人はそれを見上げる形で、玉座の前で跪いている。


「お久しぶりでございます、国王陛下」


 老いた声だが、しかしまだどこか力強さも感じる。

 また頭髪はもう殆どが白く染まっており、そしてあまり散髪をしないのか、伸び切った髪を後ろで束ねている。

 

「・・・」


 やはり国王は返答しない。

 しかしそれも折り込み済みなのか、ただじっと、男は黙っている。

 すると、国王の代弁をするように、玉座の裏から声が。


「あら・・・それは可笑しいですね。だってあなたは、先代が亡くなる前に姿をくらませたじゃないですか」


 今度は若い声だ。

 美しく、よく通っている。

 

「・・・やっぱりお前さんか」


 すると男は、またもそれを予期していたかのごとく、ただ自然に、一切に対して特段の動揺も見せずに対応する。


「こんにちはエヴィリオ、久しぶりですね。凄く反応薄いですけど、私だって、やっぱり分かっていたんですか?」

「久しぶりじゃな・・・あともう暫くは、会いたくなかったが・・・」

「酷いですね、私は会いたかったですよ。何せたった二人の、あの御方の弟子じゃないですか」


 弟子、その言葉に僅かながら反応したこの男は、正真正銘あのエヴィリオであった。

 また女の方はひどく高揚していると見えて、声の調子もなかなかにハイになっている。


「それよりも見てください、今の私の姿を。今私、この国のお姫様なんですよ」


 そうして女は、とうとう玉座の裏からようやく出てきた。

 その際も満面の笑みで、まるで子供がはしゃぐように登場した。


「今は、マリスって名前なんですよ」


 そう言って姫は、玉座に座る国王の頬をペチペチと、軽く叩く。

 どうやら遊んでいるらしく、また国王はなんの反応も示さない。

 するとエヴィリオは一つ、溜息をついた。

 

「・・・お前さん、人様に迷惑をかけるなと、あれほど言ったんじゃが・・・どうやら無駄だったようじゃな・・・」

「迷惑? 何が? 何で?」


 姫は国王で遊ぶのをやめて、真顔で、正面のエヴィリオを見る。

 そしてエヴィリオはまた一つ溜息をついて、それから話を始めた。


「儂は研究を、そしてお前さんはこの国を、それぞれ預かった・・・。今、進むべき方向は、託されたものは違えど、儂らは同じ師のもとで学んだ研究者じゃ。・・・そして研究者は、周りの助けがあって、ようやく成り立つもの・・・」

「・・・何が言いたいの?」


 エヴィリオの説教に、時間の経過とともにひどく冷たい顔になって、いや、恐らく少しの困惑を孕んだ顔で、怒気を含んだ声で、そう聞き返す。

 するとエヴィリオは、聞かれるまでもなく答える。


「それなのに、じゃ。・・・知っておる、お前さんのしてきたこと、その全てを。お前さんのその能力は、確かに素晴らしい。じゃが、それはもう使わないと、そうあの御方と約束した・・・忘れたのか?」

「・・・」


 姫は答えない。

 ただ黙って、俯いて、エヴィリオの言葉を聞いている。

 そしてエヴィリオは、更に核心へと迫る。

 

「・・・その男、つまり今の国王を、お前さんコントロールしてるじゃろ。それと他にも何人か」

「だったらーー」

「お前さん、何がしたいんじゃ?」


 姫がいよいよ反論しようと打って出た、しかしそれを、エヴィリオは上手く遮った。

 姫はお陰で段々とクールダウン、怒りを捨て、そしていつもの余裕の表情へと戻った。


「・・・そうですね。あなたの意見は正しい。ですが、私の意見も間違ってはいない・・・」

「何?」

「確かに約束はした、しました。・・・しかし、それもあの御方あっての話。いなくなられてしまった今、私にはそれを守る義務などありません」

「なんて事をーー」

「私はあの御方に会いたい!!」


 エヴィリオが反論する、それを今度は姫が上手く完封、さっきのお返しをした。

 またエヴィリオも、姫の言葉と、溢れる思いの前に、口を閉ざす。

 姫は続ける。


「私はただ、あの御方にもう一度会いたい、同じ世界へ行きたいのです」

 

 会いたいーー姫の瞳は、それが本気であると、純粋な想いであると告げていた。

 するとエヴィリオは、何やら一人腑に落ちたようで、少し納得の表情を見せる。


「・・・それでお前さんは儂と、あのフィーネルと名乗る娘を探していた、と」

「そうですね・・・おおよそは合っています。・・・でも、私が探していたのはその女ではありません。あの女のスペックでは、世界を渡ることはできない・・・」


 それがどういう意味か、エヴィリオには分かった。

 そして分かるからこそ狙われたんだということは、ここへ来るずっと前から分かっていた。


「当たりは、そう、ユウさんただ一人。彼はきっと役に立つと、そう思って最初からアプローチして、キープしてきました。でももしかしたら、彼以上のがいるかも知れないと、彼とともにやって来た彼女の方が、彼を上回っているのではないか、と。なので先程お父様を使って確かめましたが・・・やはりユウさんでないといけないようです」


 その言葉に、エヴィリオは少し驚いたような顔を見せた。 


「・・・目的はわかった。じゃが、しかしまだ分からないことがある・・・それはーー」

「どうしてこの国を荒らし回ったのか、貴族間で犯罪を横行させたのか・・・でしょ?」

「・・・そうじゃ」


 エヴィリオの思考を読んでいるのか、彼の発言の先回りをする。

 そして段々と、自分のペースへ持ち込もうとする。


「それは私の意思ではなく、あの御方の意思だから、ですよ。しかしあの御方はこうも言っていた、国を生かせ、と。だから私は国民には極力手を出さず、普通の生活を送れるようにした、国を生かした! その上で、貴族たちを使って、表の世界と逆の世界を、犯罪にまみれた混沌とした世界を作り出した・・・」

「・・・そんなわけないじゃろ。あの御方は、そんな・・・」


 そこでエヴィリオは、言葉を終わらせた。

 少しして、動揺を隠せないエヴィリオに、最後まで聞く勇気のなかった男に、少しの笑みを浮かべながら、どこか誇らしげに姫は答える。


「いいえ・・・これがあの御方の意思なのですよ・・・。私達が師、”起源の賢者”テナス=フィロソフォス様の、ね」

[雑談]ブクマしてほしい! と、強く思っております。

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[予告]次回の更新は、7日を予定しています。

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