二章ー30 手紙
目の前に立ちふさがった人物、それは国王だった。
「・・・・・・」
「何? ・・・なんの用?」
フィーネルは警戒心マックス、剣に手をかけて、また声も平常時よりも低くして威嚇。
だがやはり国王は何も喋らず、その代わり、静かに抜刀した。
(結局こうなるのね・・・ていうかやっぱりあの時気づいてたじゃない! なんでちょっとしてからやってくるのよ!)
フィーネルはかなりご立腹のようだ。
「あんたがその気なら、私・・・本気でやるわよ?」
相手の殺気は本物だ。
それに加えて何か、得体のしれないものを感じ取ったフィーネルは、ならばこちらも負けじと対抗。
(間違いない・・・魔王の魔力ね。まったく・・・そういえばここ、二等世でしたっけ? だから難易度高いのね・・・)
クラスレッド・ファイア
「< 赤魔術・火炎 >」
クラスホワイト・エンポディオ
「< 白魔術・風魔障壁 >」
即撃ーー国王は、抜刀するもしかし、魔術を行使。
しかし魔術に関して言えば、フィーネルに分があったようで、ただ顔色一つ変えず、なんということもなく、防御魔術を展開、炎は出てきて早々にかき消えた。
「何? ふざけてるの? そんなの使うなんてーー」
ファイア
「< 赤魔術・火炎 >」
「ーーって、話聞きなさいよ!」
国王はやはり問いかけには一切応じず、ただ黙々と、魔術を行使。
だがやはり、それは無駄なようで、フィーネルを包む魔力を孕んだそよ風が、それの一切を封じる。
ファイア
「< 赤魔術・火炎 >」
「本当に何なの? もしかして、私の魔力切れでも狙ってるの? だとしたら、本当に無意味ね。そんな攻撃防御魔術をかけてなくても、無傷で済むわ。それに、別にこの程度の魔術、四六時中かけてられるわよ」
それでも尚、国王は魔術を行使し続けた、それもずっと同じものを。
そしてそれは、フィーネルに近づいては消えての繰り返し、まるで生産性がない。
(本当に何なの? なんで抜刀しておいて、こんな低火力の魔術をずっと・・・? 油断を誘っている、それか、魔王の操る力はそこまで万能ではなく、この程度の魔術で精一杯・・・いや、流石にそれは・・・)
フィーネルは防御魔術を展開しつつ、火の粉を払いつつ、敵の真意を探る。
ファイア
「< 赤魔術・火炎 >」
「まったく、埒が明かないわね・・・なら今度は、こっちから!」
じれったいのが大嫌い、フィーネルが動いた。
勿論剣は抜刀済みだ。
国王は迫りくるフィーネルにまたも同じ魔術を打ち続けているが、しかし彼女の防御はなおも継続、まるで通らない。
そしてそのまま彼女は、最も予備動作の少ない剣技を発動。
「・・・悪いけど、一旦ケリを付けさせてもらうわ。< 剣技・迅速斬 >」
斬撃は最短距離で国王の首もとへと向かう、完了まで僅か数cmもない。
勝ったーーそう思った。
「なっ!?」
「・・・・・・」
しかしここで、国王の動きが明らかに変わった。
剣と自らの皮膚との僅か数cmの間に、たった刹那の瞬間に、刃を割り込ませた。
それは隠し持っていたらしい短刀だ。
フィーネルは、若干体勢を崩した。
そこへ、先程とはまるで別人の動きとなった国王の、鋭い剣撃が追随する。
「・・・・・・」
だがフィーネルも、大勢が整わずとも、なんとか剣でこの攻撃をしのぐ。
(油断した!! ・・・ここは一旦落ち着いて対処して、あとはタイミングを見計らって距離を取り、焼き尽くすわ!)
接近戦は不得意なため、しっかり丁寧に攻撃を流す。
そして今、数度の猛攻を凌いだ折、僅かな隙が生まれた。
(今!!)
フィーネルは直ぐ様後方へと移動、考えている暇はない、そのまま魔術で終わらせる。
(これで終わらせる、わ・・・!? 魔力が・・・まさか!)
最後の大きな一撃、そのための術式構築中、何か異変に気づいた。
(これじゃ構築できない・・・それも、これは私個人の話ではなくーー)
と、その一瞬、フィーネルにも僅かな隙が生まれた。
頭を働かせるあまり、前が見えていなかった。
クラスレッド・マブリ
「< 赤魔術・黒炎 >」
すると突如国王は、今までの魔術が嘘のよう、桁違いに強大な黒い炎を放出した。
フィーネルの体は反応できなかった。
しかし防御魔術はそれでも作動した。
だがーー
「このレベルのは・・・想定してなーー」
次の瞬間、フィーネルは吹き飛ばされた。
防御魔術は破壊され、それを貫通してもなお有り余る力で、炎で、かなりのダメージを負った。
フィーネルは、それでもなんとか立ち上がる。
「最初から・・・これをやりなさいよ・・・」
「・・・・・・・・」
「!! しまっーー」
気がつくと、もう手が触れそうなくらいの距離に国王の姿があった。
振り下ろされる刃が、ゆっくりと、僅かでも見逃すことなく、フィーネルは認識した。
気がつけば、魔術と剣術、両者を巧みに利用した国王の戦術にまんまとハマった、と、まるで他人事のように、客観的に自分を分析する、冷めた自分がいることに気がついた。
(まったく、本当に意地悪なんだから・・・こんな世界なんて、二度とごめんだわ・・・)
フィーネルは終始、自分の身体を斬り去ろうとする刃をまじまじと見ていた。
(そういえばユウ、大丈夫かしら? ・・・でもまぁ、一応手紙も出しといたから、”あの事”は最悪伝えられるけど・・・)
そして最後に、「ごめんね」と一言残した。
ーー次には既に、振り下ろされていた。
〜三日後・ギルド〜
ヤザ制圧作戦から三日の後の朝、もうその作戦についての後処理も終わった頃、しかし未だにヤザ本人だけは行方をくらましたままだ。
ヤザ本人を見つけなければ、完全に制圧したとは言えない。
よって、マブロ自身が指揮を取り、今日も朝から捜索に励んでいるらしい。
勿論内々に、だが。
また、捜索といえば先日、大ニュースがあった。
なんと、姫がようやくエヴィリオ本人の居場所を探し当て、捕らえたそうだ。
こちらも勿論まだ明るみには出ていないが、現在姫は、絶賛取り調べやらに勤しんでいる。
「エヴィリオ・・・一体どんなやつだったんだろう? できれば僕の、僕自身の手で捕まえたかったな・・・」
結果として自分はそれに関わることはできず、また自分の役目だと決めたものを、呆気なく他人にやらせてしまった、その悔しさは否定できない。
だが、別にそれを競っていたわけでもないのだと、この世界を攻略する、そしてその先に自分の目標やらがあるのだと、改めて自分と向き合った。
(あとはヤザ座単体に、国王のみ、か。・・・ていうのはこっちの世界の人の話で、僕たちには魔王を倒すという使命が残っているからな。・・・国王を捕えたら、上手く出てきてくれたらいいんだけど・・・いや、城に乗り込むとき、その混乱に乗じて、城の中を探索して回るか? どこかに隠れてる、いや、誰かに化けてるとか? ・・・でもどっちにしても、僕は探索系苦手だからな・・・フィーネルがいれば、多分簡単なんだろうけど・・・)
フィーネルがいれば・・・そう、これはあくまでも仮定の話。
その時までにフィーネルと合流できたらの話。
あれから探し続けてはいるが、残念ながら見つからない。
目撃者は見つけたものの、それは何日も前の話で、ここのところどうやら何処かへ潜入捜査でもしてたらしく、痕跡がそれ以上辿れない。
(フィーネル・・・どこへ行ったんだ? もしかして、何か重大な情報を掴んで、まさにその捜査の真っ最中とか? ・・・ないとは思うけど、魔王に始末された・・・とか?)
「いや、それはない」と、その最悪の考えを、すぐに否定した。
「しかし・・・これからどうしようかーー」
「ユウさん、あなたにご指名の依頼が来ていますよ」
「指名依頼?」
これからどうしようか、方針が固まらずにいると、そこへギルドの職員が駆け寄ってきた。
ご指名の依頼とのことなので、情報収集がてら、というよりも、何かをしていないと不安な気がして、取り敢えず受けることにした。
「ただ内容が・・・手紙を届けてほしい、とだけでして・・・」
「えっ? それならギルドの郵便のシステムを使えばいいんじゃ・・・?」
「えぇ・・・ですがしかし、ご指名ですので・・・」
わざわざ依頼するようなことか、と不思議がりながらも、受けたからにはしっかりと遂行しようと、そう決心した。
「さてさて、誰に届ければ良いのかな・・・」
そして職員からその手紙をいただき、届け先を確認する。
「えっと・・・ユウ様へ・・・ん? その名前、どこかで・・・あっ、僕、ん? 僕!?」
同姓同名だか知らないが、しかしユウに届けてほしい、とだけ。
「これは・・・ラブレターの類か? こういう渡し方が流行ってる、とか?」
これは恐らく、十中八九自分へのものだろうと確信し、漠然とした何かに対して期待もした。
だがまだ他人宛の可能性もある。
それを確かめるために、ユウは恐る恐る中身を確認することとした。
”この手紙をギルド経由で受け取った時点で、私は死んだとみなして構わないわ。”
この一文が目に入ってきてすぐ、ユウは口調で、筆跡で、それを理解した。
[雑談]更新すっかり忘れてました・・・すいませんでした。
[ブクマしましょう!!]
[予告]次回の更新は、5日を予定しています。




