一章ー3 『 竜炎の覇者 』
ピロン!
フォーチュン
”固有『 起死回生ノ一手 』を発動します”
「なん、だ?」
”・・・”
スフィラティス
”限定『 竜炎の覇者 』を獲得しました”
何かが、自分の知らない何かが、自分の身に起きたらしい。
アナウンスと共に、この能力についての情報が流れ込んできた。
「ーーっ、これは・・・」
”<竜炎ノ加護>が発動しました”
”<癒ノ炎>を発動しました”
その福音とともに、瞬く間に欠損部位が全回復した。
そしてなんとなく、愉悦に似たようなものを、力で満たされる心地良さを感じる。
(身体能力が凄く向上されている。それに、感覚も凄く研ぎ澄まされている・・・)
と、危険を感じた竜が、瞬時にゆうに接近した。
その喉元は、僅かに青白く発光しており、恐らくまた”溜め”ているのだろう。
そして、今度は必ず仕留めると言わんばかりに、ゆうと僅か数歩程度の距離からブレスを放った。
先程と違い、威力を吸収されていないブレスは、一瞬にも満たない速度でゆうに直撃する。
が、ゆうはそれを、右手のみで受け止める。
「!?」
竜は、驚くが、更に出力を上げる。
(へぇ・・・炎への耐性が、ついたのか・・・)
四方八方炎に包まれている、そんな感じだが、大して熱くも感じない。
出力を上げても尚、ゆうは平然としている。
「この程度・・・もう熱くない!」
そして、ブレスを受け止めたまま竜の方へと歩み寄り、ブレスを竜の口の中に押し込んだ。
すると、口内で小さな爆発が起き、口からは、黒煙が出ている。
ただ、あまりダメージを負っていないところを見ると、流石は竜である。
しかしゆうは、その隙に距離を取り、有効な攻撃を考えるーーよりも先に体が動き出した。
不思議と攻略法が、この竜と同等以上の力が、もともと自分に備わっていたかのように・・・。
「いける・・・気がする!」
そう言うと同時に、周囲に魔力が満ち始める。
竜は、ようやく自分の劣勢を悟り、距離を取る。
そして、互いに魔力を集積し、魔術の構築に専念する。
次で決めるためにーー。
先に仕掛けたのは竜の方であった。
放たれた炎、言わばエネルギーの塊は、敵を滅ぼさんと、唸りを上げてゆく。
これは、先程のブレスとは異なり、この竜の、純粋な魔力の塊である。
(あいつ・・・炎が効かないと分かり、純粋な魔力を飛ばしてきたな・・・)
しかしゆうは、焦る様子もなく、防御する様子もない。
そして、直撃寸前にようやく、始動する。
なんと、今度は魔力塊に合わせて、左手を前へと差し出した。
アル・フレイム
「貰うぜ、この魔力・・・!! < 奪炎 >」
突如、ゆうの左腕にその魔力がまるごと吸い寄せられた。
そしてそれを左手に纏い、魔力を完全に自分の支配下においた。
竜はその光景を見て、ほんの半歩、後退りする。
「フフッ、なんだか・・・いい気分だ!!」
そう微笑んでみせる。
そして静かに行使するーー俗に言う、”必殺技”ってやつを。
ニル・イグニ
「・・・いくぜ!! < 限定魔法・龍滅滅炎 >」
瞬間、ゆうの周りに満ちていた、すべての魔力が消失した。
否、消失ではない。
一瞬にして、魔力が圧縮されたのだ。
そしてそれは、ゆうの左腕から音もなく放出され、竜へと向かった
ーー色さえも失ってしまった、竜自身の放った炎を纏い・・・
竜は、咄嗟に両翼で我が身を守ろうと試みる。
だが、それの前では意味をなさなかったーーー。
轟音と爆風、そして訪れる静寂。
断末魔のようなものは、かき消されたのだか否かは不明だが、ゆうの耳に届くことはなかった。
ピロン!
”レベルが50に上がりました”
レベルアップ報酬(Lv50)
オートヒーリング
・< 自動治癒 >
・炎竜の両手剣
「新しい武器だ! というかかなりいい物貰えたわ!」
”裏ミッション達成を確認”
(裏ミッション?)
達成報酬
・<竜特攻>
(よくわからんが、貰えるもんは貰っとこう!)
そして、事後処理が一段落すると、一気に気が抜け、大きく背伸びをする。
「ーー、なんとか勝てた〜!」
戦闘自体、それほど長い時間やっていたわけではないが、”死”というものを目の前にして、神経をすり減らし、考え、勝利した。
かなり濃密な時間であった。
「ホント、メイサさんに感謝だわ」
すると
ピロン!
”メイサへの好感度がかなり上昇しました”
「・・・そんな事アナウンスせんでええわっ!」
と、思わずツッコミを入れる。
「取り敢えず、帰るか! 出口は・・・、・・・?」
驚くべきことに、出口らしきものがない。
それどころか、ここがどこなのかさえ分からない。
一難去ってまた一難、絶望以外の何物でもない。
(あれ? ・・・帰れない?)
打つ手なし、最早竜と戦うよりも、ここから出られない、つまり孤独であることのほうが怖く感じられた。
しかし、そこら辺は心配しなくても良かったようだ。
”スキル:世渡りを使用します”
どうやら帰れそうだ。
気づくと、無事に元の場所に戻ってきていた。
ピロン!
”限定『 竜炎の覇者 』が消失しました”
どうやらあの能力は消えてしまったらしい。
役目を果たしたからなのだろうか?
(よくわからんな・・・。まぁでも、日光が気持ちいい・・・暖かい・・・)
完全にリラックスモードに入った。
平凡な、やや舗装されているだけの道だが、それにさえ自宅のような安心感を感じている。
そしてそのまま、流れるように天然(半分人工物)のベッド(道)で寝てしまった。
これもある種の特訓の成果であるのだろうか?
ステータス
スキル :見切り 即死耐性 剣術(中級) 白魔術(上級)
赤魔術(上級) 魔力操作 具象剣 威圧
スキル(レア):魔力相乗
恒時スキル :魔術強化 回避率上昇 魔力保有量上昇 自動治癒 竜特攻
称号 :抗ウ者