二章ー28 エヴィリオ
〜ヤザ領〜
あれからユウは仕事を求めて下へと降りたが、しかしやはり流石は精鋭、もうやることは残っていなかった。
ユウは少しがっかりした。
結局例のごとく迅速に敵を制圧、もう既に一階の部屋にて仕上げの確認を取っている。
「お疲れ様です! 皆さん、やはり早いですね!」
無事姫様とも合流、いよいよ仕事はなくなったようだ。
「これで全員か?」
「・・・いえ、一人・・・組長が足りません!」
「何だと!?」
なんと、ここで問題発生。
構成員のうちの一人、それもボスである組長の姿がない。
「すいません、五階には特に誰も・・・こいつしかいなくて・・・おまけにこいつ、何も知らなさそうですし・・・」
こいつとは、しょうもない男Aである。
結局この男はジョウロしか所持しておらず、やはりここの者とは無関係だと判明した。
しかし一応念のためということで、まだ縛っている。
「・・・そうだな」
そして次に、構成員たちに目を移すが、それと同時にそいつらは、それぞれ視線を泳がせる。
「・・・お前たち、なにか知ってるんじゃないのか?」
マブロの部下Pは構成員に質問する。
しかし構成員は「知らない」の一点張り。
だが、それをただただ信じるわけもなく、改めて、今度は剣に手をかけて質問する。
「わかっ・・・分かった分かった! まずは落ち着こう・・・」
すると構成員の一人が、ついに声を発した。
因みにこいつは二階にて、「男は黙って拳だ!」などと意気込んでは、瞬殺された奴だ。
「実は、もうすぐ摘発されるっていうタレコミがあってよ・・・それで、一応組長だけ逃がそうって事になったんだけどよ・・・」
「それで?」
「それでやっぱりタレコミ通り、あんたらが来たから、やばいと思って組長逃がそうとしたら、もういなくなってたんだよ・・・」
そうして話を結び、構成員Aはうつむく。
すると、同じく別の構成員が「あの人、危険察知能力と、逃げ足が早いのが取り柄って言ってたしな・・・」と付け加える。
「姫様・・・信じますか?」
「・・・嘘は言ってなさそうだけど・・・タレコミ? っていうのが気になったわね」
タレコミ、つまりこちらの動きを知ったうえで、それを漏らした人物がいる、ということになり、それ即ち内通者の可能性を示す。
嫌な雰囲気が漂い始めたまさにその時、
「うっ・・・・・・うぁ、ああア・・・」
構成員の一人が唸り始めた。
周りの構成員たちは、「どうした?」「大丈夫か?」など、心配し声をかける。
すると突如男が、なにか怪しいモヤを生成し、風が起こる。
周りの構成員たちは、上手く身動きがとれないのもあり、壁に壁に、吹き飛ばされて激突した。
「何だ!?」
「姫様を守れ!」
またユウ側も、少々の焦りはあるものの、なんとか姫だけは守ると、マブロの部下三名が、姫の前で壁を作り、護っている。
しかし構成員の異常は止まることはなく、そして驚くべき変貌を遂げた。
「これは・・・・・・姫様を襲った奴と同じ!!」
「ということは・・・!」
「えぇ・・・やはりあの男が関わっているのでしょう・・・」
「ーーエヴィリオ」
その言葉で、周囲の雰囲気が変わった。
そう、制圧対象は、国王を除けば残るはエヴィリオ唯一人。
そしてそれと繋がりのありそうな人物が目の前に。
「けど・・・なんか前見たのよりも、もっと人間に近くなってるような・・・」
「それに・・・魔力の上昇量は比ではありません」
そう、以前の個体と比べると、サイズはやや小さくて人間味がある。
しかし魔力量はかなりの物で、精鋭たちのそれを超えるかもしれない。
「これは、私ではないといけないようですね・・・ユウ君、よければ一緒に、どうですか?」
「ーー勿論」
魔力量の比較による判断、部下では役不足だと、そう直感した。
マブロは部下に引き続き姫の護衛を任せ、いざ狩猟開始しようとした、その時ーー。
するとそこへ空気を読まない奴が一人、ノリノリで入ってきた。
「いっけな〜い、遅刻遅刻!」
「「!?」」
〜フィーネル視点〜
王都から南西に行った先、小さな村。
王都近辺の発展具合とは対象的に、自然がとても豊かで、なんともスローライフという言葉が実にマッチする、そんな村だ。
住人はそれほど多くなく、またあまり若者の姿は見かけない。
「なんか・・・落ち着くわね・・・もういっそ、ここに住みたいくらい・・・」
この、忙しなさを忘れさせる光景が、彼女をノスタルジーにさせる。
しかし、そういうわけにもいかず、彼女は更に自然へと進み行く。
その後、だいぶ自然を満喫した時分、いよいよ人の姿を見なくなったあたり、自然に紛れてひっそりとある、外観の様子からして凄く時代を感じる家を発見した。
そしてこの家こそまさに、エヴィリオが現在暮らしている家らしい。
(こんな田舎の・・・それもこんな奥地の、なんか前の時代からあるような家にいたなんて・・・まぁ、まだ居るかは分からないけど)
分からない、そう、分からないのだ。
ただ人から教えてもらったに過ぎない、なんの確証もない希望だ。
(しかしあいつ・・・あの”P”とか名乗るあいつ・・・なんで私が欲しい情報を、話してもないのに教えてくれたのかしら・・・それに、そもそも情報源はどこから? ・・・いえ、今は集中しましょう)
すると背後に、気配を感じた。
「!!」
フィーネルはさっと振り返る。
「エヴィリ・・・オ?」
後ろにいるのはエヴィリオに違いない、そう思って振り返った。
しかし、そこにいたのは見た目的に変人だった。
その、恐らく男であろう人物は、服装や髪型なんかはいたって普通の装いなのだが、何故か顔パック(ととても類似しているなにか)を装着したまま、その上からさらに美顔ローラー(に限りなく近しいなにか)を使用している。
フィーネルの脳は、それを見た段階で情報の処理をやめ、サ終寸前にまで追い込まれたところを、何とか踏ん張った。
「えっと・・・・・・あなた、エヴィリオ?」
「あっ、いえ、違います」
「・・・本当に? それで顔を隠して、正体がバレないようにしてるとかも?」
「ないですね。はい」
顔パックマンは、淡白に受け答える。
またその際も、美顔ローラーを動かす手を止めることはなく、ずっと目を合わせ続けてくる。
そして、沈黙が続く。
すると突如、顔パックマンが技を行使。
パケット・プロソープ
「< 強制美肌ケア >」
「!!」
フィーネルは何とか反応、後ろ方面にジャンプして、距離を取った。
だが、何も起こらなかった。
(・・・? 今、あいつ何したの?)
この男の端から端まで何一つ理解できずにいると、顔パックマンは「なるほど・・・これは素晴らしい・・・」と一人なにかに納得したようで、その嬉しそうな様子が顔パック越しに伝わってきた。
「あっ・・・えっと・・・エヴィリオさんをお探しで?」
「そう・・・ですけど・・・」
「そうですか。なら私が案内しますよ!」
そうして顔パックマンは、フィーネルに着いてくるよう促し、先程彼女が通ってきた道を戻っていく。
ちょっと歩いた先、道の途中で止まった。
「ここです」
「?」
「あっ、すみませんエヴィリオさん? あ〜どうも、ご無沙汰しております。なんかお客さんが来てますよ」
と、こんな調子でお地蔵様に話しかけだした。
それを見たフィーネルは、もう帰ろうかとまで思ったが、なんと次の瞬間、そのお地蔵様が喋ったのだ。
「お前さんか・・・儂に用があるというのは? 因みに先に言っておくが、これは決して奴らから身を隠すためなどではなく、趣味でやっているだけじゃ。気にするな」
「なるほど・・・」
「それからお前さんの用件も分かっておる。なに、手短に話してやるわい」
そうして、フィーネルが何も喋らずとも、聞きたいことは全て知ることができた。
[雑談]年明けとともにタイトル変更します
[ブクマしましょう!!]2023年最後!
[予告]次回の更新は、2024年1月1日を予定しています。




