二章ー26 同調
「・・・」
「姫様、どうかされましたか?」
「・・・いえ、なんでもないですよ。それよりも皆様、お疲れ様でした」
デンジャーの屋敷の玄関口にて、全員が集結した。
全員というのは、この作戦に参加したマブロの精鋭たちとマブロ自身、それに姫とユウだ。
皆、朝早くから仕事をこなした疲れも見せず、勿論誰一人としてかすり傷一つ負っていない。
ただやはり、仕事の際は緊張感があり、なかなか和やかな雰囲気とは程遠かったが、今はようやくそれから脱して、談笑している。
(みんな凄いな・・・僕はずっとあくびを我慢してるのに・・・眠い・・・)
しかし唯一人、ユウはやはり眠そうだ。
そこへ姫が近づいてきた。
「ふふっ、眠そうですね?」
「あっ! えっと・・・」
「別に怒りはしませんよ。朝からお疲れ様でした」
そう言って姫は、少しだけ背伸びをして、ユウの頭を優しく撫でる。
人前で、恥ずかしさはあれど、しかしそれが何とも心地よかったのか、ユウは思わず顔が緩む。
(フィーネルも・・・これくらい優しかったらいいんだけどな・・・)
するとそこへ、今度はマブロがやって来た。
「姫様・・・宜しいですか?」
マブロは二人の仲睦まじい光景を見て、一瞬話し掛けるのを躊躇ったが、しかし姫がそれに気づいて手を止めたので、やはり話を続ける。
「いや・・・二人の邪魔をして悪かった」
「いいんですよ。ね、ユウさん?」
依然だらしない顔をしているユウは、はっと我に返り、そして取り敢えず姫の問いかけに同意をした。
「では改めて、報告します。まず、こちら側の被害ですが、何一つ、誰一人として被害を被っておりません。そして捕えた者に関しましては、金で雇われたと思われる護衛が15名ほど。あとはデンジャーの手下が10人と、デンジャー本人、全員拘束して、あちらで見張っています。また、犯罪に巻き込まれたと見られる女性が一人、しかしまだ連れてこられたばかりのようで、こちらも外傷等なく、しっかりと保護、現在は眠っております。」
「そう・・・流石、完璧ね」
「そして最後に押収品ですが、やはり国王などとの人身売買の記録が見つかり、その記録の中には、エヴィリオの代理と思われる人物に関する記録が、また武器取引に関しても、例のヤザとの記録が見つかりました。・・・以上です」
姫は、報告を静かに、頷きながら聞いていたが、やはり後半のエヴィリオとヤザのところで反応を見せた。
そして現在、何か考えるような素振りを見せている。
恐らくは、エヴィリオを優先するか、ヤザを先に制圧するか、といったことだろう、二人もそれを静かに見守る。
「・・・マブロ公爵、ユウさん、あなた達の意見を聞きたいわ」
「それは・・・どちらを先に片付けるか、ということですか?」
「えぇ」
ユウが姫に質問、答えを聞いてすぐにマブロは答えた。
「やはり、エヴィリオを追うべきです。確かにヤザも気になりますが、しかしやはり、エヴィリオは見過ごせません・・・」
「・・・僕は、ヤザを先に制圧すべきだと思います。なぜならエヴィリオは、不確定要素が多く、ハズレの可能性も否めません。なら先に確実な方を早く片付ける、そうすることで、より多くの人が助かると思います」
そこで一度、息継ぎをする。
するとマブロが、ユウに何かを言おうとしている様子であったが、しかしユウは、それよりも早く再開する。
「勿論、エヴィリオは見過ごせません。なので、ヤザは少数精鋭、今回よりも更に少数の人数で制圧、その間他のメンバーが別働隊となり、エヴィリオの捜索を行う・・・こんな感じでどうですか?」
すると、なにか言いたげだったマブロも、満足したような顔でユウを見る。
「まさか、全く同じ考えだとは・・・ユウ君、やっぱり君は最高だね!」
ユウはその言葉に思わず笑顔になり、また姫も、二人を見て微笑んでいる。
「では姫様、そろそろ撤収しましょうか。色々とやることが山積みですのでね」
「そうですね・・・ユウさん、嬉しそうだけど、どうかした?」
「えっ・・・あぁ、いえ。ただ、仲間っていいなと思いまして・・・」
ユウは、段々とゴールへと向かっている、その感覚がとても嬉しかったのだ。
「さぁ、行きましょう」
そうして一行は、今だ朝霧が晴れぬうちに、屋敷をひっそりと出た。
一行が去ったあとも、やはり周囲は静寂に包まれている。
〜ラック領・領主邸宅〜
ユウ達のデンジャー制圧作戦開始と時を同じくして、ラック領。
やはりこちらも静寂に包まれているが、しかし何か一波乱ありそうな、そんな雰囲気を醸している。
すると一人、人気のない道を悠然と歩く者が。
その人物はそのまま屋敷の敷地内を進み、玄関へと向かう。
その後、玄関前で使用人らしき人物となにかやり取りをして、中へと入った。
「これはこれは国王様! ほ、本日はどのようなご要件でしょうか?」
中に入ると真っ先に、ラック本人が出てきた。
そしてどうやらこの人物は、なんと国王であったようで、使用人含め全員がその突然の来訪に驚いている。
だが流石は貴族、それを表情に出さぬよう振る舞い、国王を応接室へと案内する。
〜応接室〜
「・・・」
「えっと・・・」
応接室に入り、しかし国王はまるで何にも話さない。
なにか話を切り出すべきか、それともこのままただ黙って待つべきか、ラックは困り果てている。
(突然、それもこんな早朝にいらっしゃるなんて・・・一体どうしたんだ? まさか・・・例の件がもうバレたか!? いや、しかしそれならば私ではなくもっと別の所へ行くはずだ。しかし・・・他には何がある?)
すると王は、突然周囲をキョロキョロとし始める。
「・・・・・・」
「い、いかがなされましたか?」
「・・・いや・・・いい」
ようやく、国王は声を発した。
「それで・・・本日はどういったご要件でーー」
「ラック伯爵・・・最近なにかコソコソとやっているようだが・・・それはそんなに楽しいか?」
「!!」
やっと喋りだしたかと思ったら、その口からは突如として重い言葉が発される。
これには流石のラックも意表を突かれ、とうとう表情を顕にしてしまう。
(これは・・・! 対応を間違えれば、私はーー)
膝の上で拳を強く握りしめる。
呼吸も若干乱れだし、首元を汗が伝う。
「こ・・・コソコソだなんて、とんでもないです。・・・さ、最近人攫いなんかが多発していますから・・・それの対策として、警備等について話し合っていただけですよ」
しかし腐っても貴族、口は達者に弁解を始め、直ぐ様取り繕う。
するとまた、国王はラックを鋭く睨みながら黙り込む。
その間、ラックも同じく国王から目を離さず、ただじっと次の一声を待つ。
しばらくしてーー
”ーーiruか? ・・・聞こえているか? ・・・そいつはもう駄目だ・・・処理しろ”
そんなモヤのような声がした。
同時に、なにか暗い魔力が国王を包み込む。
「!! こ・・・これはなんだ!?」
動揺に動揺を重ねるラック。
「国王様!! これは一体?」
すると国王は、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
「国王様?」
そしてゆっくりとラックに近づく。
ラックは本能的に恐怖を感じ取ったのか、つい後退りする。
「国王様、国王様!」
何度も何度もそう叫ぶ。
段々と距離を詰めてくる国王の目には最早、生気を感じられなかった。
少なくともラックはそう思った。
それでも、この部屋の扉は国王を挟んだ先、また戦闘なども大概不得手なので、叫ぶよりほかない。
だが、それが効き目を発揮することはなくーー
「こ・・・国王、様・・・」
国王はいよいよ、ラックの首を片手でつかみ、力を込める。
ラックはそれから必死に逃れようとするが、しかし国王の力は人間のそれではなく、びくともしない。
その後国王は、ラックの首から手を離し、代わりに剣を抜刀した。
ラックは依然首を抑えてむせている。
故に、もう次まで頭が回らなかった。
国王は、間合いに入り、剣を振り上げる。
”ーー殺せ”
もう一度、闇から声が。
国王の剣はそれに同調するように、その闇のようなものを纏い、そしてーー
「ko・・・こくっ・・・こくおーー」
[雑談]今、真面目に作品タイトル考えてます!
以前も似たようなことを言いましたが、今回は次回更新のときに発表できるようにするという目標のもとで頑張るので、きっと大丈夫だと信じています!
候補はあるのですが・・・ベクトルがかなり違うので・・・。
[ブクマしましょう!!]頑張ります!
[予告]次回の更新は、30日を予定しています。




