二章ー18 アフォス
「・・・お前、誰だ? なぜこの部屋に?」
男の姿を完全に捉えるやいなや、ユウは携えていた剣を抜刀。
少なくとも、この人物が王でないのは明らか、それでいて、王がいるべき部屋にいる。
そんな男が只者のはずがない。
「それは・・・こちらのセリフですが・・・」
男は剣を向けられてもなお、先程と変わらずまるで焦った様子はなく、窓の外の、街の景色をぼんやりと眺め、ユウに対してもローテンポで緩く対応する。
(・・・なんだこの男は? まるで敵意がない・・・。)
もしかしたら、と、ユウは半ば自分の願望を問うてみる。
「お前も、王を狙っているのか? ・・・もしかして、前に言っていた、王を襲った犯人か?」
すると、男ははじめて反応を見せた。
もしかしたら・・・期待が現実味を帯びてきている。
王を襲った犯人、それは即ちこちらの味方になりうる人物。
少なくとも、王の敵である、と。
そうして期待していると、いよいよ男は振り向き、そしてユウをただ見つめる。
「・・・! あなたはーー」
その顔には見覚えがあった。
「・・・お久しぶりです。ギルドぶりですね。」
男はそういって、美しいまでのお辞儀をした。
この美しい所作、これにも見覚えがあった。
以前ギルドでフィーネルを圧倒し、礼儀正しいイケメンの、そしてあとから知ったのだが、この国最強であり唯一のSランクランク冒険者。
その名前はーー
「アントラスーー」
「ーーアフォスです。改めまして、お見知りおきを。」
(アフォス!! もしかしてこの人が・・・計画の”鍵”である、あのアフォス公爵か!?)
動揺を隠せない、なんてものではない。
最強にして最大の障壁、これからの行動や発言が、この異世界の攻略を不可能としてしまう可能性。
でも、だからこそ、勇気を出してはっきりと。
「あの・・・僕、たちは・・・国王を倒し、この国を改革しようとしています、近いうちに。なので・・・なのでどうか・・・こちら側についてくれませんか?」
「なるほど・・・本気、のようですね・・・。ですが、私の命はあの方を護り支えること。障害を取り除くこと。なので、申し訳ありません。」
アフォスは深々と、頭を下げた。
「そして・・・陛下の計画を乱す輩を、そのまま帰すわけにはいきませんね。」
瞬間、溢れ出す殺気。
あたりは一気に重苦しく、そして月が隠れたせいだろうか、一段と暗く感じられる。
ユウは本能的に、一旦の回避を選択して、その場から遠ざかろうとしたが、僅か数歩、出遅れたようだ。
ホワイトスター・ディバイデッドエリア
「< 清白魔術・隔離空間>」
一歩後ろへと下がったときには、もう既に術式が発動していた。
「・・・! やられたっ!」
あたりを見回す。
あたりは相変わらず暗い。
そればかりか、先程の部屋と全く同じと言ってもいい。
しかし何となく、感触が違う、そんな気がした。
「ここは・・・」
「ここは、先程までいた白をベースにして生み出した隔離空間。パラレルワールドとも言えるかもしれません。ただ、私のはまるで完璧からは程遠く・・・陛下の力量の素晴らしさを改めて認識いたしました。」
アフォスはその殺気や魔力とは裏腹に、とても嬉しそうに、とても上機嫌に自分の主の素晴らしさを語る。
しかしユウは、とてもそれどころではない。
(一瞬にして隔離空間を生み出してしまうなんて・・・これは最早別次元の何かだな・・・。そして王は、それを凌駕する、ということなのか? いや、それは流石に・・・それに、そうだとしたら、国王を襲った犯人は、とんでもなく強いということになるけど・・・。)
「ではこれで、心置きなく戦えますね。」
戦う、最強と。
本当に敵うのだろうかと、心底思う。
しかしもし、万が一、この男に勝てればそれは、この世界を攻略したと言っても過言ではない。
「お先にどうぞ。」
「・・・では、遠慮なく!」
挑発に乗り、そして一気に間合いを詰める。
対してアフォスは、ただユウが到達するのを眺め、待っている。
するとやはり距離が短いため、瞬き二回分程度でユウは間合いにまで到達。
直前で踏み切り、アフォス頭上から剣撃を繰り出す。
高さのおかげでかなりスピードがでていたが、軽々とそれを受け流される。
しかし、着地と同時に振り返らずに胴体に合わせて一振り。
流れるように振り返り、体のひねりを利用して上下に二振り。
「なるほど・・・かなり動けるみたいですね。」
だが以前、アフォスはその場から動くことなく攻撃を受け流し続ける。
しかも、鞘に入った状態の剣で、だ。
「クッ・・・ならば!」
再度アフォスへ突撃、怒涛の五連撃を繰り出す。
「・・・単調、ですね。」
だが案の定、軽く受け流される。
「それはどうかな?」
しかし、どうやらここからが本命らしい。
アフォスの剣筋を予測して、それを上手く上方向へと勢いづけて弾いた。
すると、ようやく彼の胴体を拝むことができ、そしてーー
クラスレッド・e-フォティア
「< 赤魔術・炎撃爆爆 >」
自分へのダメージなどお構いなしに、超至近距離からの高火力魔術を発動。
なんとかバックジャンプをしたが、少し掠ってしまったようだ。
だが、お陰でがら空きの胴体に、全力で打ち込むことができた。
「・・・どうだっ!」
距離を取って未だ煙い、アフォスの方に目をやる。
自分的にはかなりの手応えがあり、これで決まってもおかしくないと、そう言える一撃だったがーー。
「なかなかの威力ですね。少々驚きました。」
そう言って、また、予想に反して無傷のアフォスが出てきた。
(無傷!? 一体どうやって・・・)
あれだけのものをどうやって防いだのか、魔力の流れに目を凝らすと、驚くべき事が判明した。
なんと彼は人差し指と中指に魔力を集中、たったその二本のみで防いでしまったようだ。
(たった、指二本で・・・だと!? そんなの化け物としか・・・。)
そうして絶望していると、いよいよあちらのターンになってしまったらしい。
「・・・では、次はこちらから。」
そう言ってアフォスは、恐ろしいほどの瞬間的な加速で、瞬きするまもなくユウの間合いに入る。
思わず後ろへと体重をかけるユウに対し、お手本とばかりに超高速の一振り。
ユウは奇跡的に防ぐことができたが、それを目で捉えることはできなかった。
そう思っていると、追撃がもう目の前に。
すべての動作に無駄がなく、加えて次の動作のための動きが既に存在している。
「ーーはや」
言葉を発する間もなくユウは腹部を十字に斬られた。
(あぁ・・・意識が・・・・・・)
気づくとユウは、アフォスと対峙していた。
(・・・・・・え? あれ? さっき確かに・・・。)
やられたはずだ、そう思って自分の腹部を見てみる。
きっと斬られたあとがある、と。
しかしそれは認められなかった。
「・・・どういう・・・こと、だ?」
自分の身に、一体何が起きたのか。
断片的でもなんでも、とにかく知りたかった。
「それは、あなたに与えられたチャンスなのです。」
「チャンス?」
チャンス、と言われ、思わず聞き返す。
果たして何がチャンスなのか。
今傷が完全に癒えていたことがチャンスなのか、それともそもそも攻撃などされていなかったのか。
「どういうことだ?」
「それは自分で解明するのです。存分にそのチャンスを使って、私を攻略してみてください。」
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