二章ー16 方針
〜翌日・宿〜
朝、昨日は早く寝ていたため、身体的には元気な朝だ。
しかし、薄暗い空模様も相まって、憂鬱な気持ちをかなり引きずっている。
「・・・大丈夫?」
「あ・・・うん。」
「えっと・・・昨日のは、あんたのせいじゃないわ。あんなクズ男のことなんか、さっぱり忘れたほうがいいわ。」
フィーネルは、彼女なりに勇気づけるが、しかしユウは依然として俯いたままだ。
「まぁ・・・あんたなら、絶対忘れないとは思ってはいたけど。・・・もう、私もこんな思いしたくないから、ちゃっちゃとこの世界を攻略しちゃいましょうよ!」
「・・・うん、そうだね。」
フィーネルは、最大限明るく振る舞う。
しかしユウは淡白な返事ばかり。
(元気ないわね・・・まぁ、無理もないわ。そういえば彼もまだ、新人なのよね。なら尚更きついでしょうね。・・・それにしても、こんな異質な世界は初めてだわ。・・・本当に、ロマンも何もないなんて・・・異常としか・・・。)
そうして若干考え込んでいると、ユウに情報収集の成果を尋ねられた。
フィーネルは、今の彼の精神状態を考慮して、二、三回は躊躇ったものの、それでもやはり話すべきだと判断し、そして自分の見てきたものを伝えることにした。
「この国、なかなか終わってるわよ。」
それをきっかけにして、フィーネルは話し出す。
「まず、人身売買。本当にこの国はこれが多い。私ももう既に、四個ぐらい組織を潰してきたわ。でも、やっぱり貴族が絡んでくると、どうも厄介で・・・。それに国王も、最近はいろいろな悪事に首を突っ込んでるみたいで・・・もう正直収集がついていないわ。」
国王、結局何がしたいのか。
操られてやっているのか、それとも別なのか。
そしてどうしようもない貴族やら何やら。
それを調べ上げてくれたフィーネルに、ユウは頭が上がらない。
「他にも変な薬だったり賄賂やら殺人狂やら・・・お陰でこの数日間は、すごい濃密だったわ・・・。最悪だったけど。」
この国自体がまさに犯罪の温床、とでも言わんばかりだ。
「でもやっぱり、そういう事が横行しているのに、なんでか知らないけどこの国は、少なくとも一般人の生活は標準的なのよね。だから余計に気持ちが悪い。」
そう、そういった数多の犯罪と、そして普通の生活とが何故か共存してしまっているのだ。
一般人は恐らく、多くがこれらを知らないだろうが、しかしそれでも、普通の生活を送れているのは奇跡というほかない。
と、ここで報告のターンは終了、次へと移る。
「でっ! 私のプランなんだけど、まずはエヴィリオを名乗る輩を片っ端から叩き潰しつつ、エヴィリオ本人を見つける。で、そいつを民衆の前に連れ出すのよ。こいつが本物のエヴィリオだ! って大々的に宣言すれば、もうそれを名乗る馬鹿は現れなくなるはず。」
私のプラン、つまりこれから二人が行動の指針とするべきものだ。
今何が問題なのか、どうしたら解決できるのか、などなど、状況や考えを整理するという意味でも、ユウは余計に真剣になる。
「そして次に、やることは二つ。というか、これができればクリアなんだけど・・・なかなか、ね。」
「・・・何をするの?」
「この国で最も偉い貴族、公爵を攻略する。まずマブロ家、彼は噂によるとかなりの人格者で、民衆からの信頼も厚い。そして何より、公爵は制約はあるものの、抵抗権及び統治代行権を持っているの。これで民衆と、一部のいい貴族とか冒険者とかで反乱を起こす。それで、王城を制圧して代わりに統治してもらうの。これなら私達がいなくなったあとでも、しっかりとした政治が行われて、少なくとも私は安心して帰還できるわ。」
なるほどと、ユウは頷く。
そしてこの、僅かな机上の光ですらとても明るいものに感じ、少しだけ希望がもてたようだ。
「じゃぁ魔王はどうするの? 国王はただ操られてるだけなんでしょ?」
「だから、国王とか変な貴族とかをとっ捕まえて、誰にも取り憑かせないようにするのよ。それで、本体を引っ張り出して、全員で攻撃するのよ。」
フィーネルは自信満々に、熱くそれを説明する。
一方のユウは、最初は感触良かったが、しかしまだ何かを憂えでいるようだ。
(・・・城を制圧するまではいいけど・・・魔王は、そんなに上手くいくかな?)
そんなことを思っていると、ふとフィーネルと目があった。
「・・・」
「えっと・・・どうしたの?」
「あんた今、無理とか思ったでしょ?」
「!!」
流石に顔に出過ぎたようだ。
フィーネルにもバレバレだった。
しばらくフィーネルに睨まれた後、しかし「まぁ、今はそれでいいわ。」と、本題へ戻る。
「そして二つ目、これは言わば、反乱を成功させる鍵、ね。」
「鍵?」
「そう、一番の難関ね。」
(難関・・・。)
ユウは何となく、姿勢を正す。
「それは、アフォス家を味方につける、少なくとも敵対しないことね。」
アフォス家、それは今までにも何度か出てきたものの、漠然と”強い”だとか、そういう程度のことしか知らない。
(そういえば・・・確かこの国で最強っていうのがアフォス家の当主で、国王の護衛をしているとか・・・言ってたような。)
「とにかくこことは戦いたくないわ。圧倒的に強いのだけは分かっているんだけど・・・それ以外の情報、特に戦闘に関するものがさっぱり見つけられなかったわ。ただ、恐らく私達の脅威にもなり得る存在であることは確かだから、ここは本当に、何とかして説得して、反乱のときにあっち側につかないでほしいのよ。」
情報、それは最早一つの武器であり、それは多方面に大きな影響を与える。
そして一般的に、情報を隠すのが上手い人物ほど、最も警戒すべき人物であるという可能性は高い。
また、不確定要素はできるだけ最小限にしたいので、そういった点からも、アフォス家は一番の脅威と言えるだろう。
「っとまぁ、計画はこんな感じね。なんか質問ある?」
不安はあるが、質問はない。
ユウはすぐに首を横に振る。
「じゃぁ私は、明日からも情報収集頑張るわ。メインはマブロ公爵との交渉と、アフォス家の情報収集、それからエヴィリオの情報も収集して、ついでにまた変な奴らを叩き潰しておくわ。」
「・・・そんな沢山で大丈夫?」
「う〜ん、そうね・・・それならアフォス家のことは任せるわ。それからエヴィリオの情報は、それぞれ収集するってことで。それから二日に一回はここに集まって、情報共有しましょうよ。」
「・・・分かった。そうしよう。」
「決まりね。・・・じゃぁ支度したらすぐに行ってくるわ。また二日後。」
フィーネルは、圧倒的な切替速度で話し終わると同時に仕事モードへと移行。
すぐに隣の、自分の部屋へと戻っていった。
(・・・これなら、なんとか攻略できそうだな・・・。でも、一刻も早く攻略しないと、また被害者が出るかもしれない・・・。)
「・・・よし。」
何かを決心、そしてすぐ、ユウも支度を開始、完了してすぐギルドへと向かった。
その晩のことだった。
王城へと向かう、一つの影がーー。
[雑談]二章、今年の内に、クライマックスくらいまで持って行きたい・・・。
多分二章が、そしてまさに今ら辺が一番暗くてファンタジーから離れてる。多分。
[ブクマしましょう!!]
[予告]次回の更新は、14日を予定しています。




