二章ー15 思惑
姫とのデートの回想を終え、ユウはようやく現実へと復帰、考えをまとめる。
「もしかして・・・エヴィリオって名前で悪事してるやつが沢山いるのか? だとしたら・・・一旦報告に帰ろう」
そして、しょうもない会話をする男たちが去るのを今か今かと待つ。
「そういやここに何しに来たんだっけ?」
「お前そりゃ〜・・・散歩だろ」
「あっ! そっか! じゃぁ早く帰ろうぜ!」
「それならあのしめじ専門店寄ろうぜ!」
こうしてしょうもない男たちは、何をすることもなく、部屋をさっさと出ていった。
「やっとか・・・」
続いてユウも、こっそりと屋敷を抜け出した。
〜依頼主の家〜
「取り敢えず、報告だけ・・・ん? これは・・・フィーネルの魔力だ!」
ようやく依頼主の家が見えてきた時分、同時にフィーネルの魔力も感じ取った。
しかもそれは、まさに目的地から発せられているようだ。
不思議に思って、ユウは気持ち急いで向かう。
家の前についた。
「やっぱり・・・いるな。何してるんだ?」
そしていざ、ドアを開けようと手をかけた瞬間ーーなんとドアのほうからこちらへと向かってくるではないか。
ユウは勢いよく後方へと飛ばされてしまった、扉とともに・・・。
どうやら中で爆発が起きたようだ。
「・・・何だ!? 危ないな」
不覚にも吹き飛ばされたユウは、しかしすぐさま立ち上がり、改めて中へと向かう。
すると、二つの人影が。
一つは床に座り込んでいるようで、もう一つはそれを見下すように立っている。
(あっ・・・多分立ってるのがフィーネルだな・・・。なんか・・・影でも凄く分かる)
と確信しつつも、何故か躊躇してしまうが、ようやく声をかける。
「あの・・・フィーネル、だよね? ここで何してるの?」
すると、やはり予想通りの声で返答が。
「あんたこそ、こんなところで何をしてるのよ?」
「いや、僕はその人から依頼を受けて・・・」
「そう・・・事情は知らないけど、こいつ、悪いけど速攻で始末させてもらうから」
そう言ってフィーネルは、魔力を練り始めた。
「ちょっ、どういうこと?」
流石にユウも動揺し、戦意むき出しのフィーネルに詳しい説明を求める。
しかし「そういうことよ」とか、「いいでしょ、別に!」など、何も理解させる気のないものばかりが返ってくる。
「そうじゃなくて・・・」
「だから! この男、人身売買の常習犯なのよ!」
根気強く質問し続けると、その先に待っていたのは余りにも意外な答えだった。
いや、状況を見れば明らかであったが、それが証拠を携えてやってきた、といった感じだ。
そしてフィーネルは、殺気のこもった魔力を男へ向けて発散した。
男は先程の爆発で、かすり傷程度だが傷を負い、それ以上に恐怖に駆られ、加えて今ので完全にやられてしまったらしい。
「ち、ちち違う! 俺、俺お、は、何もしてない!」
視線は定まらず、また声のトーンや挙動も実に異常である。
しばらくこの異常行動が続いた後、急に静まった。
「・・・そうだよ! 俺があの方に、エヴィリオ様に女共を売りつけていたのさ!」
そして次には、開き直ったのか、それともこれが素であるのか、高らかにそう自分の悪事を白状する。
「・・・その人達は、どうなるの?」
恐る恐る、ユウが。
すると男は口角を上げ、興奮気味に返答する。
「さぁ? ・・・でも、多分エヴィリオ様がまた、バレたらまずい大貴族様や王様なんかに売ってるから・・・まぁ、その後どうなるのかは、本人に聞いてみな!」
男は大きく口を開け、大きな声で笑う。
「いや〜ホント、ユウ君、だっけ? 君、お人好しすぎるよね」
「・・・」
「・・・もう、殺るわよ」
「待って! 一つ、聞きたいことが。あの依頼は、どういう意図があったんですか? そもそも、例の女性は実在しているんですか?」
しかし男は答えない。
ほんの少し、考える素振りを見せたものの、次の瞬間にはもう笑っていて、とても正常な意思疎通が図れそうにもなかった。
クラスレッド・ブラスト
「はぁ・・・< 赤魔術・疾雷 >」
ため息を付きつつ、静かに悪を成敗。
フィーネルの魔術は勿論男に直撃、低威力で、かつ無意識下で若干威力を抑えたとはいえ、かなりのダメージだ。
男はそれに対し、痛がるでも泣き叫ぶでもなく、ただその場に倒れた。
フィーネルは、それの身柄を拘束すべく、それに近づく。
すると、やはりこれも先程の爆発によってであろうか、そちら側には色々なものが散乱している。
その中に、一つだけ、有機的なものが。
「・・・!!」
フィーネルは、慌てて駆け寄る。
そして何かを確認した後、死にかけているその男に尋ねる。
「この女性はどうしたの?」
その言葉で、ユウは大体の状況を察した。
瓦礫の隙間から見えた何か、それはやはり、そうであったと悟った。
そして、此処から先の展開が、自分の考えついたとおりでないことを、切に願った。
男は何とか起き上がった。
とは言っても、下半身はどうも動きそうはないが、それでも口はまだ、達者に動くようである。
「・・・そいつは偶々街で見つけてな・・・この家も、もともとこいつのものなんだよ。最初はこいつも王様あたりにでも売りつけようかと思ったが、たまには自分用のものがあっても、いいと思ってな。」
その醜い口から出てくるものは、やはり醜い言葉ばかり。
男は続ける。
「でもこいつ! 人に逆らってばかりで! ・・・だから、こうなったのも、こいつが悪い。こいつの選択の結果だ」
激昂、後の平静。
この男の精神が、いや、何もかもが異常なのは、一目瞭然だ。
「・・・・・・なぜ僕に、その、まさに自分で殺した人間の捜索を?」
怒りを何とか抑え込み、男に尋ねる。
だが、返答はない。
「・・・・・・」
見ると、どうやらもう、終わってしまったようである。
「・・・どうしてこいつらは、そうやって直ぐに人を殺せるのだろうか? そうやって直ぐに死ねるのだろうか?」
そして、助けられなかった命へと目を向ける。
「フィーネル・・・」
「あんたは先に宿に戻ってなさい。・・・今日は早く寝たほうがいいわ」
「・・・・・・うん」
ユウは、もう何も考えたくなかったため、言われるがまま、宿へと重い足を向かわせた。
その少しあと、フィーネルもその場を去った。
その後でーー
「・・・あなたの・・・ご命令通り、私、しっかりと、やりましたよ。あなたの 」
男の意識が一瞬戻り、流れるように何かを呟いて、そして男は、完全に終りを迎えた。
[雑談]年末は、いろいろ忙しいですね・・・。
そして、遅くなってすいません!
取り敢えず、お詫びとして明日も投稿します!
[ブクマしましょう!!]
[予告]次回の更新は、12日を予定しています。




