二章ー11 ヤザ
〜宿〜
「王様余計に怪しいな・・・」
「そうね。」
あれから姫と別れ、そして情報を整理すべく、宿で作戦会議をしている。
「それと、賢者様・・・。」
「そうね。この世界の賢者様なのか、はたまた”起源”なのか・・・。」
「・・・。」
賢者ーーこの世界に来た目的でもある人物。
ようやく名前が挙がり、いよいよ、といった感じだ。
「でも、王様以外にも、変なやつがいたもんだな・・・。エヴィリオってやつは後回しじゃだめ・・・」
「あんたは困ってる人を見捨てるわけ?」
「ですよね。分かってます。」
「・・・それに、そっちの方は心配いらないわ。」
今、ボソッとフィーネルが何かを言ったような気がしたが、恐らく気の所為であろう。
「とにかく!今は目の前の悪に立ち向かいましょう。」
なるほど、何やらふわっとはぐらかされたがしかし、この気難しいフィーネルが折角やる気になったので、その通りにする。
〜???〜
「デュフッ、デュフフフ・・・」
某所にて、気味の悪い、というよりもとても不快、不愉快で気持ちの悪い笑い声がする。
これは、城の一件でもお馴染みの、デンジャーという貴族である。
「それで、例のものは・・・デュフッ?」
「それはもう、良いものを入荷いたしました。」
そしてもう一人はアーネル伯爵、先日の城での集まりにも出席せず、せっせとこうして売りつける”商品”を探し求めていたらしい。
「・・・品質は? まさか、手を出したりなどはしてないだろうな? デュフ」
「ご安心を。万全の管理で上質なものを、既にここにご用意しております」
「デュフフ・・・それは結構」
「勿論ですとも。普段から、デンジャー侯爵様にはお世話になっていますから」
お互いニヤニヤと、上機嫌で言葉を交わす。
そして二人は一緒になって部屋を出た。
しばらくして、地下へと続く階段を降りた先、何やら声がする。
「デュフフフ・・・」
最低最悪な笑いをするデンジャーの視線の先には、若干名の少女が。
彼女らは、憔悴しているのか全員眠っており、またその状態は悪く、数名に至っては腕などに腫れや傷が。
「・・・」
突然黙り込むデンジャー。
すると直ぐ様アーネルは血相を変え、「いかがなさいましたか!?」と、デンジャーの機嫌を伺う。
だが、デンジャーは「何でもない」と断り、そしてーー。
「全員買おう・・・デュフッ」
「!! 左様ですか!! お気に召したようで何よりです・・・では・・・支援の方も・・・」
「勿論、今後ともエヴィリオ侯爵の偉大な研究のため、より一層の支援をお約束しましょう、デュフッ」
そうして男二人は、顔を合わせていつまでも、不気味な笑いをしている。
〜ギルド〜
所変わって、こちらはユウ。
「貴族様からの依頼です。」
ギルドに入ってすぐ、そう言われた。
「僕たち・・・まだランクが足りないと思うんですが・・・。」
「ですが、ご指名ですので。」
「ご指名?」
「ご指名ですので!」
何とも回答を得られた気がしなかったが、謎の圧を感じたので、従うことにした。
(なんか・・・流されてばっかりだな。)
次に奥の部屋へと案内され、そこにいたのはまさかの黒服スーツのヤッちゃんだ。
異世界仕様なのか、立派な日本刀を携えている。
「やはり。」
「・・・・・・不審者よ! 絶対ヤクz」
「やめなさい!」
フィーネルが、とても失礼なこと、もとい気持ちの代弁をしてくれそうになったので、何とか黙らせる。
そして小声で「殺されるぞ!」と釘を刺す。
すると、不意に黒服と目があった。
ユウは反射的に視線をそらすが、しかしーー。
「テメエら! この二人を運べ!」
「えっ?」
そして二人は、男の屈強な舎弟たちによって搬送された。
〜ヤザ領〜
「お前たちが、そうか・・・頑張れよ!」
そう言って、知らないおっさんに出迎えられた。
しかしまだ、ゴールではないようだ。
もう暫く歩く。
「ここだ」
その後、とある部屋の前で止まった。
恐る恐る部屋に入ってみるとーー真っ先に目に飛び込んできたもの、それは・・・ピストルだ!
他にも日本刀が飾ってあったりと、いろいろとイカつい。
「あの・・・僕たちはなんで呼ばれたのでしょうか?」
「君たちを呼んだのは、この俺だ!」
突然、そう言って陽気な男が出てきた。
(この人だけ、場違い感凄いな・・・)
「ようやく・・・か」
すると、中央の机にいた人物が、会話に入ってきた。
右目には古傷、歳はややとっているがしかし、未だにガタイが良く、明らかに雰囲気が違う。
「「組長!!」」
「「組長!?」」
なるほど、どうやら一番の危険人物らしい。
「さっきの質問ですが、実は、組長からお願いがありまして・・・モンブランをいくつか作って頂きたいのです」
「・・・モンブラン!?」
まさかの単語が飛び出し、若干のフリーズを余儀なくする。
(モンブランって、あのモンブランか? ・・・いや、なにかの隠語か!?)
「材料ならここに」
そうして出されたのは、紛うことなき栗だった。
「まぁ別に、無理なら無理と言ってくれて構わねぇ。俺は半端なものを食わされるのが大嫌いだからな」
と、組長が一言付け加える。
「あの・・・その前に確認なんですけど・・・なんで僕たちは選ばれたんですか?」
恐る恐る聞いてみる。
「それは純粋なる勘です」
「そういう理由や。まぁ、あんたらが無理ならしょうがない、引き止めはしないが・・・代わりにコイツがケジメつければいいだけの話や」
「け・・・ケジメ」
つまり、今自分たちには、あの人の親指がかかっている、と。
「あんた・・・料理できんの?」
ずっと沈黙していたフィーネルが、ようやく小声で話しかけてきた。
「・・・まぁ、一応は」
ユウは自信なさげに、それ相応のボリュームで答える。
「いいんだ、親指の一本くらいっ・・・」
陽気だった男が、自分の親指を気にかけながらユウに視線をやる。
(・・・なんか罪悪感が)
ユウはどうしよう、といった感じで、そしてフィーネルは、完全に黙り込んでしまった。
殆ど空気か背景か、だ。
一方の陽気な男も、流石に組長の迫力にあてられたのか、”陽”が消えかかっている。
陽気だった男の陽気を取り戻すため、今こそ我が必殺の奥義を放つときーー。
「キッチンはどこですか?」
「えっと・・・」
「いや、ここでいい。用具もある」
なんともう準備は万端、今にも取り掛かることができる。
ユウはその用具たちを一つ一つ確認する。
オーダー
「・・・いきます。< 料理 >発動。< 注文:スイーツ >」
そうして初めて使うが、いつの間にか入手していたスキルを使用する。
これはバトルには大変不向きだが、材料さえ用意すれば自動で手が動き、料理をしてくれる。
そう、これは実質あのなんでも自動調理家電だ!
そうして皆の注目が集まる中、ユウはシェフ顔負けの手際で、さっささっさとモンブランを作っていく。
フィーネルは、それをぼーっと見つめる。
そしてーー。
「あっ・・・できました」
「組長、まずは私がお毒見を」
そうして出てきたのは、あの陽気だった男だ。
毒見と言いつつ、途中から理性が飛びかけていたので、多分我慢できなかったのだろう。
いざ、一口。
「・・・・・・ん! これはうまい!」
モンブランがうまい、その事実は明らかになった。
ユウもなんとか胸をなでおろす。
そして陽気だった男はついに、”陽”を取り戻した。
「もう良い!」
「え〜。」
「え〜っ、とはなんじゃ、え〜っとは! 私組長! お前舎弟! まったく、図々しいやつめ」
組長は、殆ど子供のようだが、威厳そっちのけでモンブランを取り返す。
そして一口分を丁寧にすくい、ゆっくりと口へ輸送する。
いざ、実食。
「ーーん! こ、これは! これ、これが真のモンブランよ!」
どうやらご機嫌なようで、息をするのも忘れるがごとく、それを食べ進める。
「おい!」
「はっ、はい!」
「お前、これがモンブランだ! 分かったな?」
「おい!」と呼びかけられた男は、フィーネルと同様、完全に気配を断って、しかし部屋にいた、シェフらしき男だ。
どうやら取り敢えず、ケジメは回避したようで、こちらも安心したようだ。
「悪かったな、無理言って」
「あっ・・・えっと、喜んでもらえて良かったです」
「・・・あんた、あとでそれ作りなさいよ!」
「材料があったらね・・・」
「うちのもんに、ギルドまで送らせようか?」
そういった申し出も、最後にはあったがしかし、丁重にお断りした。
「さぁ・・・行こうか」
そうして二人の、謎の貴族依頼は幕を閉じた。
二人が去ったあと・・・。
「く・・・組長!」
「テメエら、何だその怪我は!?」
満身創痍の男が二、三人ほど部屋へと入ってきた。
「すみません・・・・・・例の馬車の襲撃、失敗しました」
「・・・・・・」
しかし組長は黙っている。
そして男たちは、時間が経つにつれて焦りの色が濃くなっていく。
「・・・すいませんでした! け、ケジメつけます!」
「やめろ!」
「組長・・・」
「こっちにも、協力者がいるからな・・・もうそいつに任せるしかない」
「ですが!」
「お前らは取り敢えず、うちのシマ、しっかり守れ!」
「・・・・・・はい!」
そうして部屋からは、組長を残して皆出ていった。
残った組長は、徐ろに机の引き出しを開け、そしてそこから一丁の銃を取り出す。
「・・・少し、早めたほうがいいかもしれんな・・・」
[雑談]あげるの遅れました!
あと、(やや)ふざけていたら、若干長くなりました。
[ブクマしましょう!!]
[予告]次回の更新は、12月1日を予定しています。




