二章ー10 小さな手掛かり
現在二人は、助けた姫様とお話している。
「お久しぶりですね。そして、助けていただき本当にありがとうございます」
そう言って彼女は頭を下げるので、こちらも自然と頭を下げる。
姫様は襲われたばかりだというのに、気をしっかりと持って、とても冷静である。
また、唯一彼女が心配だと言っていた戦士、もとい護衛たちだが、怪我が浅く、簡単な< 白魔術 >をかけておいたのでもう大丈夫だろう。
「いえ、皆さん無事で良かったです。・・・フィーネル? 何してるの? 失礼だよ」
ユウが姫様の手前、敬語などなど気を使っている最中、フィーネルは何かを探している。
どうやら座るものがほしいようだ。
「なんか、うちの犬も冬場、こうやって布団の上に巣を作ってたな・・・」
しばらくして、「これでいっか!」と妥協して座ったのは、さっき気絶させた男だ。
ユウは、いちいち突っ込みたくなかったので、スルーすることにした。
「それで・・・お父様を襲撃した犯人は分かりましたか?」
「えっと・・・」
(・・・完全に忘れてた!)
ユウはなんとか平静を装い、返答に困っていると、姫様は続けて、
「って、冗談ですよ。もう、お父様の事はお調べになったんですよね? 私だったら、少なくとも父に好感は持ちませんね」
「それは・・・」
「いいんですよ、遠慮しなくても。では・・・私のこともお聞きになったのでしょうか?」
私のこと・・・それは恐らくラック伯爵に教えてもらったことだろう。
しかし、それを口に出していいものなのか、配慮の方法に頭を悩ます。
「えっと・・・」
「私が人々にどう呼ばれているか・・・それは知っています。でも、しょうがないことだって割り切っていますから。・・・だから、そんなに気にしなくていいですよ」
そう言って微笑む。
ユウは、それが眩しすぎて、それでいて”強さ”を感じて、何とも言えない気持ちになった。
(この人は・・・多分大丈夫だな)
するとここで、男はハッと意識を取り戻した。
「クソッ・・・ただのガキだと思って油断した!」
「あんた、もう諦めなさいよ」
男を椅子にしているフィーネルが、男を押さえつけながら言う。
すると男はしばらく抗った後、敗北。
諦めたのかと思いきやーー。
「ありがとうございます!」
どうやら何か、未知のものに目覚めてしまったらしい。
またフィーネルは、男のあまりのキモさにすぐにそこをどく。
ようやく自由の身になった男は、しかしさっきまでのもあれはあれでよかったと思いつつ、何かを探している。
「・・・まだだ! まだ俺にはこれがある!」
そうして謎の薬を取り出した。
「あの、そういうの、飲まないほうがいいですよ」
異世界において怪しい飲むと、体が変形したり、自我を失ったり、そして結局破滅するというお決まりがある。
百害あって一利なしとはまさにこのことで、一応忠告はしたが、残念、聞き届けてはもらえなかった。
「はぁ・・・変なのになっちゃった・・・」
そして男は薬を飲み、そして謎の変貌を遂げた。
薬を飲んだ男は苦しみだし、そしてーー肩幅が凄い、まるでゴリラのような人間のようなゴリラ? へと変貌した。
だいたい四捨五入すれば人間である。
「・・・ヴィ・・・ヒ・・・・・ロス」
そして、わけのわからないことを言いながら、姫へと近づこうとする。
なのでユウは、姫様の前に出て、その化け物から姫を守るようにしている。
「あっ、そういうパターンのやつね」
「ねぇ、ちょっとそいつ、こっちに飛ばしてくれる?」
すると、やや離れたところに移動したフィーネルから声がかかる。
「えっ? ・・・えっ、あっ、いいけど」
フィーネルの合図に、取り敢えずその通り従う。
「飛ばすよ〜。三、二、一、反射!」
スリーカウントの後、ユウはゴリラもどきをフィーネルの方へと吹き飛ばした。
待ち受けるフィーネル。
しかし徐々に顔が曇る。
やはりワイルド系なキモさは苦手のようだ。
「こういうキモいやつは・・・」
剣を鞘へと収め、そしてそれごと構える。
そのゴリラを待って、待って、待って・・・。
「今! < 峰打ちの鞘打ち >」
鞘で思い切り、吹き飛んでくるゴリラをまた沼へと吹き飛ばした。
そしてそれは、どんどん進んで行き・・・焼却予定のカエルの収容施設へ。
「・・・まさか!」
クラスレッド・ブレイズ
「燃えなさい! < 赤魔術・豪炎 >」
「グアァァァァァァァっァァァァァ!!」
炎が男へと迫る。
両者ともに、すでに速度を持って空中にいるので、もうどうしようもないのだが・・・。
「人名優先! < 赤」
しかしユウは男を助けるため、消化しようと試みるが、しかしそれは意味のないことだと分かる。
「流石に殺しはしないわよ。」
その言葉通り、炎は男を追い抜いて、結局カエル(もどき)のみを焼き尽くした。
男はただ地面に放り出されただけの形になってしまったが、しかし命はあるので大丈夫だろう。
「フィーネル・・・倫理観とは無縁かと思ってたよ・・・」
「・・・失礼ね」
「さて・・・この男、どうする? 生きてはいるけど・・・これ意思疎通できない、よね?」
大体この手のやつは自我を失ってしまっていると、相場は決まっているのだが・・・。
すると男の体に変化が。
「体が戻っていくーー」
「さっき鞘で腹を突いたとき、変な薬を吐き出させたのよ」
(・・・・・・何だと!?)
今の発言を危うく聞き逃すところだったが、しかし何とか反応できた。
まさか、フィーネルがそこまで色々考えて、配慮することができたなんて・・・と、ユウはひどく感動した。
そうして感動しているうちに、男は意識を取り戻した。
「・・・」
「あんた、誰の手先?」
「・・・俺は偉大なるエヴィリオ様の手先だ!」
(・・・・・・コイツ馬鹿だ!!)
黒幕を喋る奴が、しかも僅かな躊躇いもなくバラす奴がいるとは・・・。
ユウは驚いた。
「・・・さっ! 聞きたいことは聞いたけど・・・もうやっちゃう?」
「いやいや、なんてこと言うの!? ・・・取り敢えず、気絶させておこう」
そしてまた、男は夢の世界へと旅立った。
「エヴィリオって言ってたっけ? ・・・誰?」
「エヴィリオ侯爵、爵位だけで見れば、アフォス公爵やマブロ公爵には劣りますが、しかしかなりの軍事力と、悪事で得た巨万の富で、多くの貴族に影響力があります」
(うわっ! めっちゃ模範的な悪党じゃん!)
エヴィリオ侯爵ーー大体の悪党における必須事項を満たしている人材。
フィーネルは、それほど興味を示していないが、ユウとしては、ようやく明確な敵が見つかって、そして相手がしっかりとした悪党で、少し安心したような、何とも言い表せない複雑な気持ちを抱いている。
「そしてまた、最近新たに悪い噂が。・・・なんでも、人間の能力を引き出す薬を研究しているようなのです」
「人間の・・・能力・・・? それって、さっきのこいつみたいな?」
そう言ってユウは、意識が飛び、地面に伏している男を指差す。
すると姫は、ただ短く肯定する。
(なるほど・・・やっぱり異世界の悪党って、ちょっとポンコツだよな・・・。だいたいあんな感じで失敗して、いいとこ無しで成敗されるし・・・)
ユウは、ほんの少しだけ同情した。
本当にほんの少しだけ。
「あんな自我もない雑魚なんて、いくらいても同じよ」
「まぁ、それもそうだけど・・・」
実際あの程度のやつならば、いくらいてもすぐに無力化できるだろう。
(人間の能力・・・本当はどういったやつなのだろうか・・・?)
「彼は以前、賢者様から色々と教わっていたと聞きますから、きっとその時の知識を悪用しているのでしょう」
「・・・賢者様!?」
「えぇ。私は実際にあったことはないのですが、大公爵という唯一の地位を与えられていたとか」
「あの、それはーー」
「はっ! 姫様! ご無事で・・・ん? お前たち、何者だ!?」
ユウが大事な質問をしようとしたその時、突然、姫様の護衛の隊長格と思われる男が気絶から覚めた。
どうやら< 白魔術 >が思った以上に効いたらしい。
「やめなさい、失礼ですよ。この方達が、あなた達が寝ている間私を守ってくれていたのです」
「・・・何と! ・・・・・・申し訳ございませんでした!!」
こうして遅い起床を遂げた護衛の方たちとともに、取り敢えずギルドへと向かった。
[雑談]もうすぐ12月だなんて・・・信じられない。
早く作品名決定しないと・・・。
[ブクマしましょう!!]
[予告]次回の更新は、28日を予定しています。




