一章ー1 異世界:アルにて
今までの物凄くざっくりしたあらすじ
”探索者”として働き出した主人公は、地獄の特訓を経て、難易度は最低だが、一つの異世界を攻略した。
そして新たに、勇者・賢者・聖女を探せという任務を請け負い、次なる異世界へと向かうのであった。
〜アル(三等世)〜
制限:Lv(1からスタート)
その他:Lv制限に伴い、能力値も修正されています
世界に降り立つと同時に、何やらよくわからんことをアナウンスされた。
それ曰く、どうやら能力値が修正されたらしいが、まだまだ素人よりなので、あまり関係ないなと思い、軽く受け流した。
そして、改めて
「よし、今度こそ念願のギルドへ!」
そう言って、歩き出した。
しかし、勿論ここらへんの地理に詳しいわけではなければ、ギルドがあるのかさえ不確かであるため、取り敢えず街を目指すことにした。
歩くこと少し、気づけばいつの間にか、周囲を木に包囲されていた。
正確に言うと、道もわからず彷徨っていたら、森を見つけ、興味本位で足を踏み入れてしまい、帰り道がわからなくなってしまったのだ。
取り敢えず、武器が欲しかったので、道に落ちていた木の枝を拾っておいた。
すると、茂みからなにやら物音が。
異世界・三獣士*(スライム・ゴブリン・オーク)だ。 *諸説あり
茂みから突如(大量に)現れたそいつらは、一斉に襲いかかってきた。
すると、ゆうは先程の木の枝を早速取り出た。
クラスホワイト・ブースト
「< 白魔術・性能上昇(中級) >」
そしてそれに強化魔術をかけ、湧き出てくる敵を木の枝で薙ぎ倒す。
スライム、ゴブリン、オーク、スライム、ゴブリン、オーク、スライム、ゴブリン、ゴブリン、オーク(亜種)、スライム・・・
無限に湧き続けるモンスターを、無心で狩り続ける。
狩り続けること数分、木の枝が折れた。
折れないようにうまく立ち回っていたものの、よくここまで耐えきったと、称賛すらしたいところだ。
とりあえず、武器を失ったので少し距離を取り、観察してみることにした。
既にかなりの数を倒したのだが、なぜだか無限に湧き続けている。
(これ・・・いつまで続くの? もしかして、ホントに無限?)
ここで、早くギルドに行きたいというゆうの純粋な衝動が、彼を突き動かした。
相手を見据え、魔力を集積し、そしてーー。
クラスレッド・ファイア
「< 赤魔術・火炎 >」
ゆうは、出元を一気に焼き尽くせるように、出力高めで魔術を行使した。
練り上げられた炎は、膨張及び進行を開始した。
放たれた炎は、必要以上の魔力を携えて、かなりのエネルギーを放出しながら、モンスターの密集地帯に向かって一直線に進んでいき、敵を焼き尽くした。
そして、尚もエネルギーが有り余っている炎は、そのまま敵の発生源と思われる茂み(かどうか怪しいが・・・)のある方角に直進、次々に敵やら木やら魔人やらを飲み込んだ。
その後、しばらくして、炎は虚空へと帰った。
(やべ、ちょっとやり過ぎた・・・)
終わってみると、出力の度合いを圧倒的に間違えたことに気づいた。
そんな彼の眼前には、必要以上の魔力により肥満気味となった炎の影響で、少々禿げてしまった森が広がっていた。
それを見て、やや後悔の念が湧いてきた。
ピロン!
”Lvが49に上がりました”
しかし、何やらそれを上回るワクワクがやってきたことにより、そんなことは直ぐに忘れた。
「おっ! 一気に凄い上がった。」
と、自然な流れで禿げてしまった森から意識をそらした。
すると目の前に、画面が表示された。
レベルアップ報酬(Lv10,20,30,40)
・運気アップ
・スキル:威圧
・スキル:魔力保有量上昇
・スキル:魔力相乗
・称号 :抗ウ者
・霊力アップ
異世界に来て早々の、思わぬご褒美に、テンションがまた一段と上がった。
(しかし、まさかただの茂みからあんなに沢山出てくるなんてヤバいな、異世界)
恐らくこんな体験をする人は、そうそういないと思うが、異世界だから、そんなこともあるのかもしれない。
まあ、何にせよ、レベルアップ報酬があると分かったので、かなり楽しみが増えた。
心機一転、いざ、街へと足を進める。
しばらくして、何か、とても大きいものが遠くの方に見えてきた。
「何だあれ?」
不思議に思いつつも、近づいてみると、どうやら城壁であるということが分かった。
街を目指して(適当に)歩いていたら、どこかの都市にでも辿り着いてしまったようだ。
取り敢えず、街についたのは良かったが、ここでまた、別の憂いが生じた。
そう、都市へ入るには、身分証のようなものが必要なのではないか、と。
しかし、そんな不安も、杞憂に終わった。警備の人はいたが、普通に通行できた。
(入れたのは良かったけど、逆に防犯意識足りてない気が・・・)
そんな事を考えながら、しばらく歩いた。
〜ギルド前〜
「これがギルドか・・・」
そこには、白を基調とする、大きな建物が、眼前にどっしりと構えていた。
装飾も綺羅びやかであるが、決してそれが先行しているわけではなく、優美さや気品といったものも、感じることができる。
また、それを見つめる人の瞳もまた、喩えるならば、夢を抱き、将来への希望で満ちる少年の、まさにそれである。
(長かったな、この道のり)
念願のギルドの感動を胸に、いざ、中へと足を進める。
〜ギルド〜
中に入ると、やはり活気にあふれている。
そして、取り敢えず受付の列に並んだ。
そこまでは良かったが、左右のスペースには、恐らく仲間であろう冒険者同士が雑談しており、少々孤独を感じたので、見ないようにした。
しかし、前を見ると、筋骨隆々の大剣持ったヤバそうなやつ、後ろを向いても長剣を引っさげた筋肉、どうやら目の安全地帯はないらしい。
かなり困惑したが、鍛え上げられた陰キャ精神で、心を無にして自分の番を待った。
「はい、レベル15、かなり凄いですね! 勿論合格です」
どうやら前の人が終わったらしい。
「こんにちは!」
「あっ、こ、こんにちは」
まずい、陰キャが出てしまった・・・。
「本日は、どのようなご要件ですか?」
「えっとーー」
そして、自分はギルドに登録したいので、その手続きをしてくれと伝えた。
その後、いくつかのやり取りを経て、遂に、お決まりのアレが登場した。
「では、こちらの水晶に手をかざしてください」
(こっ、これは!!)
ラノベファンである少年にとって、夢にまで見たレベル測定イベントーー。
「・・・? どうかしましたか?」
「!! すいません」
正気を取り戻し、やや顔をほころばせながら水晶に手をかざす。
するとーー
「えっ、レベル49!?」
周りがザワつきだした。
そして、おおよそ全員がこちらに目を向ける。
因みに、この世界の冒険者の平均レベルはおよそ25。
それを、新参者が軽々と超えたというのだから驚きである。
「あの、本当に初心者ですか?」
「あっ、はい。そのつもりですが・・・」
「そうですか・・・えっと取り敢えず、仮ではありますが、Dランクからのスタートとなります」
「わかりました」
因みに、冒険者のランクは上からS、A、B、C、D、E、Fであり、ゆうはいきなりおおよそ真ん中のランクからのスタートである。
「また、後日上層部が正式なランクを決定いたしますので、変動等あるかもしれませんが、ご了承ください」
了解したと一言返事をして、注目が集まっている手前、早々にギルドをあとにした。
もちろん、依頼は先程ササッと受注したので問題ない。
依頼内容は、”黒い影(仮)”の討伐である。
なぜこの依頼を受けたのかと言うと、討伐対象の名前がかっこいいからである。
絶対に何かある、いや、あって欲しいと思い、謎の義務を感じたからだ。
そしてそいつはどうやら隣町の近くで、目撃情報が相次いでいるらしい。
なので、隣町を目指して歩き出す。
道すがら、なぜ自分のレベルが一気に上がったのか考えてみる。
(よし、便利機能、ログを使ってみよう!)
これにより、倒した敵の名称を確認する。
スライム、ゴブリン、オーク、スライム、ゴブリン、オーク、スライム、ゴブリン、ゴブリン、オーク(亜種)、スライム・・・
(なんか不純物混ざってるな・・・原因はこいつか?)
さらにログを読み進める。
すると、
(ん? なんだコレ?)
何かを発見したようだ。
(’邪竜の怨念’?)
なんとも物々しい雰囲気のモンスター?の名前が記されていた。
そして、レベルが上がった原因は、十中八九これだろうということは、言うまでもない。
ただそれがどんなものだったのか、何故そこに居たのか等々、分からない事だらけである。
また、欲を言えば、名前の割に経験値が少なかったと思わないこともない。
そんな強欲なことを考えながら、歩き続ける。
すると、一瞬、体がふわっと浮いた気がした。
「えっと・・・何これ?」
気づくと、何やら自分が変な所へ迷い込んでしまったということは分かった。
「ここはどこ?」
それは分からないが、どうやら別空間に隔離されたらしい。
「別空間、ね・・・。じゃぁ、あれも幻覚か何かかな?」
あれーー即ち目の前にいる、かなり、とてつもなく巨大な竜である。
(まさか、さっき(知らずに)倒したやつの報復か?)
「いや、ただの大きいトカゲ、そう、ファンタジー・・・トカゲって英語で何て言うんだ?まぁきっと異世界産のトカゲだ!」
ゆうは、現実から逃げた!
ステータス
スキル :見切り 即死耐性 剣術(中級) 白魔術(上級) 赤魔術(上級) 魔力操作 具象剣 威圧
スキル(レア):魔力相乗
恒時スキル :魔術強化 回避率上昇 魔力保有量上昇
称号 :抗ウ者