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一章ー43 『 保熾定力 』

「ゆうちゃん・・・」

「大丈夫ですか?僕はもう・・・大丈夫です。」


 マギナはフフッと微笑み、


「そうだね・・・うん・・・そうだよね。別にあれくらいで落ち込むなんて、私、流石にちょっと舐め過ぎだよね・・・うん。」

「そうですね。貴女は失敗とかそういったものとは無縁ですからね。でも良かったじゃないですか。なかなか貴重な人材ですよ、貴女の意表を突くなんて。」


 クルースはこのように、いつもの如く淡々と喋っているが、その中にやや照れが見え隠れする・・・ような気がするとゆうは感じている。

 でもこれも、彼なりの励ましなのだろうか。


(・・・クルースさん、ツンデレなのか?) 


 そんなことを思いながら、自然と笑顔が溢れる。


「・・・ありがとう。」

「いえ・・・それに、僕はもうーー。」


ピロン!


     フォーチュン

”固有『 起死回生ノ一手 』を発動します”


    スタグリア

”限定『 保熾定力 』を獲得しました”


 刹那、セツへの、仲間たちへの思いが加速する。




〜ギルド本部・ICU〜


「もう・・・クルースさんたちは、戦っているのかな・・・。」


 時は少々遡る。

 ゆうは未だ、セツのもとにいた。


「僕も、僕だって行きたいけど・・・でも僕じゃまた・・・。はぁ、自分の弱さが嫌になる。今まで、色んな事から逃げてきたから、か。」


 ゆうは最早、感情の収拾がつかなくなっていた。


「セツさん、ごめん。・・・僕ーー」

「ゆうさん・・・またいつか、一緒に任務、行きましょうね。」


 誰もいない病室、正確には、この場にいるのは昏睡状態のセツとゆう自身のみだが、それなのに、確かに声が聞こえた。

 それも、聞こえるはずのない、そして、馴染み親しみのある美しい声だ。


「セツ・・・さん?セツさん!」


 ゆうは即座に彼女の元へと視線を移す。

 だが、彼女は依然、意識すらないような状態である。


「無理はしなくていい。好きなようにやれば、楽しければそれでいいじゃないですか。・・・まぁでも、毎日って結構疲れちゃうんですよね・・・。私も冒険者になったばかりの、家族と離れて暮らすようになってから暫くは、私も結構つらくて・・・。なので、逃げてもいいんですよ。いつでも逃げていいんです。逃げて逃げて、それで挑戦したくなったら挑戦すればいいじゃないですか。それにーー」 


 そこで、その声は途絶えた。

 いや、声だったのか、気の所為だったのか、それすらも不明瞭であるが、それはそこで消失した。

 

 そしてまた、沈黙が戻ってくる。


「・・・セツさん、だったのかな?まぁ、何となく、あったかいな、心が。」


(そうだよね。別に僕は特段強いわけでもないし、特別でもないし。・・・ただやりたいようにやればいいか。そんな考えることでもないよね、うん。)


 そうしてゆうはようやく立ち上がった。


「セツさん・・・あなたはここでやられるような人じゃないって、僕、知ってますから。それに、ギルドのことも信じてますし・・・だから僕は、自分のやるべきとこをやってきます。」


 こうして、静かに病室を去った。

 彼の目にはもう、迷いはなかった。




〜XX(座標不明)〜


「うわぁー、やだよやだねー、ホント嫌。またなんか増えたし・・・。」


 クロノはゆうの登場に、とても迷惑そうな表情をする。


「ところで・・・あいつがセツさんを?」


 ゆうがクルースに問いかける。


「分からん。でも、もしかしたら・・・。」

「?」


 何か含みのある言い方だが、


「まぁ、倒せば分かる。」


 キリッとした表情で、何を言うのかと思えば、まるでマギナ地味たことを言う。


「そだよね〜。」

「・・・そうですね。」


 マギナは勿論即同意し、遅れてゆうもそれに(やや)賛同する。


「だからなんで?脳筋なの?」


 実にご尤もな意見だが、残念ながら、多数決では大負けしている。


「クルース・・・ありがとう。取り敢えずゆうちゃんと二人で特攻するから、さっきみたいな感じで後ろからフォローよろしく〜。あっ!別にそこそこフォローしてくれたらいいから、無理しなくて良いよ〜。」

「勿論、最初からそのつもりです。私、不慣れなこと、向いてないことは絶対にしない主義なので・・・存分にどうぞ。」


 ピッタリ利害が一致し、クルースはそうすべく、やや後方へと退避する。

 そしてマギナとゆうは二人、並んで相手と相対する。


「行くよ!ゆうちゃん!」

「はい!」

「いや来ないで!」

「ゆうちゃん、まず相手の能力についてだけどーー」


 と、マギナがいよいよ説明を開始するが、ゆうは思わず、勢いそのままに飛び出す。

 確かにそういった流れではあったが、まさかそのまま速攻で突っ込むと誰が予想できただろうか。


「!!」

「えっ!ゆうちゃん!?」

  フォームド

「< 具象剣 >」 


 ゆうは剣を顕現させ、一目散にクロノへと向かってゆく。 


「なるほど・・・凄く元気なんだね。若い頃はそういうのも大切だからね。」


 そしてある程度間合いを詰め、その後ゆうは剣を振り上げる。


「まぁでも・・・速度は、あんまりだね。」


 一方のクロノは特段焦ることもなく、ただ振り下ろされる剣に対してゆっくりと、人差し指を添えにいく。


  ペリオタクト

「< 速度制限 >」


 すると例のごとく、剣がクロノのその人差し指の前でピタリと止まる。

 

「ゆうちゃんっ!」


 マギナは咄嗟に、ゆうの助けへと向かう。

 しかし彼女の心配も杞憂に終わる。


 次の瞬間、ゆうの剣が僅かに右に傾き、そしてバッサリとクロノの腹部を切り裂いた。

  

「・・・は?」

[雑談]あと2話で50話!

[ブクマ&評価しましょう!!]しましょう。

[予告]次回の更新は、22日を予定しています。

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