一章ー38 ユキドケ
〜ギルド〜
「・・・ゆうさんっ!・・・・・・本当に、本当に無事で良かった・・・。」
あれからゆうは、睡眠欲求に抗いながらも、なんとかギルドへと戻ってきた。
するとテレスは、それをいち早く察知し、真っ先に駆け寄る。
言葉がやや先行してしまったが、続いてゆうの無事な姿を改めて確認し、何とか落ち着きを取り戻す。
「これ、ポーションです。体力も魔力も削りに削られているので、これで少しでも回復してください。」
「ありがとうございます・・・。」
「テ〜レス〜!私にもそれちょうだ〜い!」
マギナもポーション乞食をしようと、というかただテレスに絡みたい一心で・・・テレスに抱きついた。
そして抱きつかれたテレスはと言うと、態度を180度豹変させ、とても嫌そうにマギナを引っ剥がそうとしている。
「あなたはっ!もう少し疲れていてもっ!いいんですがっ!」
少しの格闘の末、ようやく引っ剥がすことに成功したようで、テレスは何とも清々しい表情をしている。
一方のマギナは引っ剥がされた後、急にキリッとした表情になり「・・・強くなったね。」と一言。
するとテレスは、彼女と目を合わせずに「あなたのせいです。」と。
そしてまた、マギナは懲りずにテレスに絡む。
しばらくして、テレスの元に黒いスーツに身を包んだ、とはいってもサングラス等々のオプションはついていないが、良き役職についていそうな男が近づく。
そのためマギナは、すっとテレスから離れた。
「テレス様、実はーー」
声は聞こえないが、確かに何か会話をしている。
テレスが真剣なのは普段通りだが、マギナも(珍しく)空気を読んで、彼女の邪魔をしないように適当に周辺をぶらついている。
「珍しいですね、あなたが空気を読むなんて。」
「ん?なにか言った?」
「・・・」
クルースは今が好機と捉え、マギナに絡む。
しかし、残念ながらマギナには効かなかったようで、クルースも絡むのを諦め、同じようにブラブラとしている。
「ーー了解しました。」
しばらくして、会話を終えたテレスがこちらへと近づいてくる。
「ゆうさん、私は今から特別会議があるので、本日はこれで失礼します。・・・あと、今日はしっかり休んでくださいね。」
「あっ、はい。・・・お疲れ様でした。」
そしてテレス、マギナ、クルース及びスーツの男は奥の部屋へと入っていった。
こうして、とうとうすることがなくなってしまったので、またゆうは疲れていたため宿に直行し、ご飯を美味しく頂いて、現在はベッドの上で寝転んでいる。
目をつむり、いつものように、一日を振り返る。
そして、ため息を一つ。
(なんか・・・今日は凄く絶不調だ。精神が・・・。色々と思うことがありすぎて、もう収拾がつかない・・・。どうして急に・・・?)
そんなことを思い悩みながら、過去の自分を思い出す。
(・・・・・・そういえば、この前までただの陰キャだったわ、実は。それに・・・)
ここでゆうの意識は途絶えた。
〜翌日〜
まだ朝日が登ってから間もない頃、ゆうはギルドにいた。
昨日は早くに寝て、かつ熟睡したお陰で、体はだいぶ元気になったようだ。
そんなゆうの耳に、これまた聞き慣れた、朝からエネルギーに満ち満ちている声が訪れる。
「お婆さん、ちょっと・・・やめてください!それにお爺さんも・・・!」
「いや何・・・ちょっと爺さんに制裁を加えるだけじゃよ・・・。」
「安心せい、婆さん・・・。害虫は儂が全部駆除してやるわい。」
彼の名前はアニキだ。
そういえば最近まるで姿を見ていなかったが、どうやら元気そうだ。
そしてアニキが何とかして宥めているのは、いつかの老夫婦である。
歳はおよそ70代位だろうが、だがしかし、元気そうに声を張り上げ、そして益々驚くべきことに、まるで支障もなく背筋を伸ばして立ちながら会話している。
「お爺さん、今は害虫はいいですから・・・あなたが先に駆除されそうですよ。」
「なんじゃと!?」
「まったく爺さんは・・・」
「お婆さんも、危ないですから・・・。」
(アニキ・・・さん、大変そうだな。それにさっき、害虫って単語がーー。)
蘇るのは、畑を荒らす虫と、それを木っ端微塵にせんと、爆発させていた老人の、エネルギッシュな姿・・・と、その後制裁をくらっていた姿ーー。
ゆうは、アニキが可哀想なので、というよりも興味本位の方が先行したが、声をかけようと一歩踏み出した、その時、
「おはようございます。ゆうさん、昨日は本当にお疲れ様でした。体の具合はどうですか?」
「あっ、ありがとうございます、もう大丈夫です。」
「それはよかったです。」
テレスが話しかけてきたので、あちらに行くのは諦めて、こちらに集中する。
「ところで、初めてのSランク冒険者との任務、どうでしたか?」
「・・・・・・」
言葉よりも先に、沈黙が発される。
そして、それに続いて言葉がやって来る。
「クルースさんも、マギナさんも、とても凄くて・・・」
「そうですよね!我がギルドが誇る、Sランク冒険者ですから!」
テレスは、ゆうの彼らへの称賛の声に、激しく同意し、やや興奮気味に相槌を打つ。
しかし、ゆうの言葉はまだ終わってはいない。
「とても強くて・・・少しだけ、自信、なくしました・・・。」
(本当に・・・)
ゆうの言葉から、何かを感じ取ったテレスは、俯くゆうの目を見て、彼女なりの配慮なのだろうか、同じく沈黙する。
しばらくこれが続き、テレスは、あるタイミングで何か言葉を紡ごうとする。
「ゆうさん・・・あのっ」
すると突然、男がギルドに入ってきた。
その慌てきった声が、テレスの言葉を飲み込む。
テレスも何事かと思い、セリフを一時中断する。
「どうしたんですか?」
息を切らした男に、テレスが話しかける。
思えばこの時点で既に、不穏なものの、不吉な兆しがすぐそこまで迫っていたのかもしれない。
男は四度深呼吸をして、そして腹の底から声を絞り出すようにして、なんとか声という形にした。
「 Sランク冒険者がーー」
[雑談]ここから第一章、ラストスパートです。
主人公はいつ働かせるべきか・・・。
[ブクマ&評価しましょう!!]ここ、テストに出ます。
[予告]次回の更新は、7日を予定しています。




