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一章ー37 灰色

サブタイトルに関して、話数入れ忘れたので修正しました。

 ゆうは、見知った魔力を不意に感じ取る。

 ゆうは振り返る、きっと、彼女の姿があると。


「やぁ!二人共、面白そうな相手と戦っているね!」


 聞き慣れた声だ。

 振り返ると案の定、彼女の、マギナの姿があった。


「二人共、大丈夫そ?」

「・・・!マギナ、さん・・・。」

「何故貴女がここに・・・!」

「おっ、いいね〜。驚いた表情。」


 マギナは相変わらずの自由奔放さである。

 だが、やはり彼女はたった五人の、選ばれしSランクの冒険者なのである。

 先程、即座に用意した防御の術式は、しっかりと、危なげなく役割を果たしている。


「・・・全部、防いでる・・・。」

「流石、と言う他ありませんね。」


 現れざまの術式は、とうとう完全に相手の、必殺技ライクな攻撃を防ぎ切ってしまった。

 この事実に、二人は最早、驚きを通り過ぎてしまったようだ。


「二人共、何ぼーっとしているの?・・・まぁ、私に任せなさいって!」


 そしてマギナは軽くストレッチを開始する。

 一方の、マギナによって技を完封されてしまったトルトも、めげずに再度出力準備を始める。


「また・・・っ」

「相手、また何かしそうですよ。準備は大丈夫なのですか?私、あんなのくらいたくありませんよ。」


 クルースは、未だ悠長にストレッチをしているマギナを少々急かす。

 しかし彼女は、今度は気持ちよさそうに背伸びをし始めた。


「・・・来ます。」

   オーシス・トルト

「< 大地ノ怒リ・三重奏 >」


 クルースの合図と共に、あちらから、物凄い衝撃波がーー地面が尋常ではないほど振動する。

 ゆうはそれに足を取られるが、しかし相手は、まるで水を得た魚のように、颯爽と不安定な地面を駆ける。


「・・・・・・っマギナさん!」

「落ち着いてください。」

「でも・・・。」

「大丈夫です。もう既に・・・勝ってますから。」


 ゆうとは対照的に、やはりクルースは冷静である。

 その表情はかなり落ち着いた、まるで困難が去ったかのような、そんな安心しているような表情であり、その視線は、迫りくる敵へと向かっている。

 そして次のシーンでは、相手に背を向け、そのままそちらへと歩き出した。


 しかし相手はそれによりスピードを緩める訳はなく、依然、こちらとの距離を詰める。

 焦ったゆうは、せめて防御魔術を展開しようと試みる、が、


「・・・発動しないっ!」


 何度試しても、魔術が一向に発動しない。

 それどころかーー


(魔力が・・・感じられない!)


 何も進捗しないゆうに、相手は標準を合わせてぐんぐん向かってくる。

 

(どうしよう・・・魔術が使えない!そしたら他には何が、、確か剣が一振り、いや・・・)


 ゆうは必死になって考えるが、全くもって考えが纏まらない。

 頭が動かなければ、体も動かない。

 ゆうは、ただただ立ち尽くすしかなかった。

 

 そして、とうとうトルトはゆうと、およそゆうの伸ばした右腕一本分といった距離まで到達した。

 依然ゆうは動くことができず、動けたとしても、最早為すすべは無い。

 相手は、あの膨大なエネルギーを収束させた右拳を、そのまま真っすぐゆうへと振るう。


(・・・なんか・・・世界がゆっくりに見えるな。多分これは、死ぬ前のあれだ・・・。)


 それが顔面に当たる直前に、そんなことを考えた。

 それ以降妙に冷静になり、ただゆっくりと進んでいく世界を、向かってくる凶器の拳を、じっと観察する。

 

(凄いな・・・動きが全部見える・・・。これが時間の余裕ってやつか?・・・多分違うな。・・・拳が当たる・・・。思ったよりも、早かったな・・・。)


 ここで、トルトの拳が当たる直前で、スローな時間は終わりを告げる。

 ゆうの意識は完全に戻り、そして目の前には、いつの間にかトルトの姿はなくーー。


(今一瞬・・・何だ?)




   ラゾン・グレイ

「< 灰魔術・終逸律 >」


 マギナはそうささやき、これにて術式を終了させる。

 これ以降、誰の視界にもトルトが映ることはなかった。



(何が・・・どういうこと?もしかして、アイツを倒したのか?)


 そうしてゆうは、満面の笑みを浮かべながら、天を見上げている彼女の姿を見つめる。

 ゆうの瞳に映った彼女の姿や表情は、とてもあの化け物を退治した、言わば英雄の姿ではなく、ただ遊び疲れただけの、無垢な少女のようであった。 


「はぁ〜〜たのしかった~。」

「流石ですね。」

「まぁね〜。でもまぁ、クルースも、ゆうちゃんも、よく頑張ったんじゃない?」

「本当に余裕ですね・・・。あなたはどこまで化け物なんですか・・・?」


 戦いが終わり、疲労はあるもののそれでも、まだまだ元気そうに、二人はやり取りをしている。

 そしてそれが一段落つくと、クルースはゆうへとゆっくり近づく。


「ゆうくん、お疲れ様です。すみません、こんなことに巻き込んでしまって。」

「・・・あっ、いえ、全然。」


(僕はまた、誰かに助けてもらった・・・。)


 ゆうは、締め付けられるような何かを感じながら、仲睦まじい二人の強者へと目をやる。

 その後しばらくして、三人はようやく帰宅を開始した。

 マギナは元気いっぱいで、クルースもいつも通りでーー。 



「セツさん・・・」

「?・・・あっ!そういえばさ、シルさんが、セツちゃんと一緒に任務しているんだって!」 


 気が沈んでいるゆうだが、何となく、セツの名前が口からこぼれ落ちた。

 すると、マギナはそれに反応し、何やら話し始めた。


「シルさん、戻ってきたのか?」

「そうなんじゃな〜い。久しぶりに会いたいな〜。それよか一緒に任務してみたいかも。」

「・・・そうですね。私も久々に手ほどきをお願いしたいですね。」


 シル、ここにきて新出の単語が出てきたが、二人の会話から察するに、かなり信頼のできる、それもマギナさんと同等以上に強い人なのだろうということは分かった。

 会ったことも無ければ、今初めて名前を聞いたのだが、それでももう既に、尊敬のできる人物としてゆうは認識し、だんだん興味が湧いてきた。


(二人よりも強い人・・・もしかしたら・・・)


「その・・・シルさんって人は、どんな人なんですか?もっと詳しくお願いします。」

「おっ!何々、シルさんに興味あるの?」


 マギナは一瞬で食いついた。


「そうですね・・・」


 クルースは、ゆうの質問に対し、真剣に思考を開始する。


「シルさんは、優しくて頼れる、みんなのお父さん!みたいな。」

「・・・意見が殆ど被ってしまっていますが、そうですね。付け加えるならば「絶対負けない!」」


 マギナはクルースのセリフを遮る。


「・・・そうですね。”最強”が誰かと問われたら、勿論我らがギルドのマスターと答えるでしょう。一方のシルさんは、圧倒的に強い、といったわけではなく、ただ、絶対に負けない、といった人物です。」


 クルースも、珍しく食い気味に話し出す。

 やはり彼は、自分の興味のあることは無限に喋る、まるでヲタクのような人物であると、ゆうは後々感じた。

 その後も二人は、シルという人物について、無限に語り合う。


(セツさん・・・なんで急に名前が浮かんできたんだろう・・・。何となく、寂しいな・・・。)


 ゆうは、得も言われぬ寂しさと、苦悩と共に、着実に帰宅の足を進める。

[雑談]なかなか決着の描写が完成せず・・・難しい。

   今日は英検のCBTのやつを受けてきまして、疲れてます。

   10月になるのも、一週間が始まるのも早すぎる・・・。

   あと、遅くなり申し訳ございませんでした。

[いちばん大事]ブクマ&評価欲しいです。

[予告]次回の更新は、4日を予定しています。

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